ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
落ち着いて気品がある内装の美術館大会議室(3階)は偉い子達でごった返している。警備の子を含めるとざっと8、90人くらいか?
トリニティ生が大半で、ティーパーティー、シスターフッド、正義実現委員会、自警団や派閥の領袖、大手部活の部長クラスらしき普通の制服姿に混じって、ミレニアムや知らない学園の制服も混じる。
正義実現委員会の子達が部屋の壁際に警備のために陣取っているのを見たイヴちゃんと宇沢レイサさんは連れ立って空いている部屋の隅に歩いて行く。もちろん手は繋いだまま。なんだけど、並の相手なら片手でノせるしな……。
(何か面白そうなイベントのポスターが多いね)
(……うん、『ミレニアム前・ミレニアム後の家電』展とか、ちょっと面白そう……)
あっ、古関ウイさんだ。人が多いからか日光が当たっているからか*1顔面蒼白で死にそうな顔をしている。イヴちゃんとばっちり目があって、口をもにょもにょさせた。
参加者達に紅茶と茶菓子が配られて良い匂いがしてきた。配ってるティーパーティーの子曰く、警備要員も後でもらえるらしい。
慌ただしく生徒達が行き交う中、大柄でヘイローの無い黒髪長髪、デッッな美人女性、先生が入ってきて演壇に近づく。
ざわめきの波が大会議室前から後ろに伝わっていき、各自が思い思いに席に着いたり、警護対象の横や後ろに陣取ったりする。
演壇の辺りに桐藤ナギサさんと聖園ミカさん、歌住サクラコさん、古関ウイさん、先生、羽沼マコトさんと並んだ。羽沼マコトさんの後ろに警護要員としてだろう、剣先ツルギさんが立つ。桐藤ナギサさんに随行していた守月スズミさんが聖園ミカさんの後ろに。
桐藤ナギサさんは全体を一瞥、イヴちゃんにも気付いたっぽいけど特に反応はなし。まあそんなもんかもな。
聖園ミカさんは目があって一瞬だけ小さく微笑んだ。
歌住サクラコさんは真面目な顔を崩さず目礼してくれる。
古関ウイさんはまだ何も言ってないのに大勢の目線でしおれて3日目のもやしみたいな状態になっている。
剣先ツルギさんは完全にお仕事モードで辺りを見渡している。
先生と羽沼マコトさんはお客さんだけど特に気負った様子はなくニコニコしている。後者はニヤニヤが近い気もするけど。
天使が通ったというのは、本当に天使がたくさんいるトリニティではあまり言わないのだけれども。とにかく沈黙が大会議室を覆って、司会を務めるティーパーティーの子が列席者を紹介した。フィリウス分派なのか、単に良識的なだけなのか、羽沼マコトさんを紹介するときに特に嫌味とかも交えてない。
開会式典って別のところでやってテープカットとかするのかと思ってたし、司会の子も触れたけど、治安紊乱の折で、当初は美術館屋上の広場でやるはずが、ここで開会の挨拶をするだけらしい。
「ゲヘナとの友好関係をより深化させたい」という桐藤ナギサさんの挨拶を受けて、「招きを受けて光栄であり、より両校の関係改善に向けて努力したい」という趣旨の挨拶をする羽沼マコトさん。びっくりするほど真面目な仕事っぷりだ。
歌住サクラコさん*2は「学園成立の過程で集まった美しい品を是非楽しんでほしい。
司会の子がちょっと慌てながらも図書委員会の代表にと古関ウイさんに話を振る。古関ウイさんは力尽きたもやしから炒めすぎたもやしくらいの元気さを往復しながら「図書委員会も発掘と鑑定に歴代尽力しており、応援したい」的な話をもそもそとした。うん、もう喋るだけで大変そう。
最後に先生が「お招きいただいて嬉しい。美術展も好きだし楽しみ」的な挨拶で〆た。
先生の挨拶が終わる直前に、建物の外から喚声が上がり、イヴちゃんも宇沢レイサさんも外を見た。
トリニティの制服を着た一団、100人ほどが美術館というか警備の正義実現委員会に向けて発砲している。正義実現委員会も反撃し始めた。
宇沢レイサさんが外を警戒してくれているので、中を見ておいた方が良いかな。
イヴちゃんも同じ判断をしたらしく、窓側を通って演壇側に近づく。ティーパーティーの一部の生徒と物音に動揺したらしい正義実現委員会の1年らしい子がイヴちゃんに銃を向けて、慌てて下ろす。ティーパーティーの子達は動揺しているのか銃を下ろしたり下ろさなかったりまちまちだ。
(イヴちゃん、変な事する子がいないか気をつけてね)
(……わかった……)
多分大丈夫だと思うけど、買収だとか腹に一物あって……みたいな子がいないとも限らない。実力者がたくさんいるから大丈夫だと思うけど、先生に何かあっても困る。あとは、とち狂ってお友達になりにいったりする子とかいてもまずいしね。
イヴちゃんは部屋の中を意識しつつ、窓から
視界の隅、窓の外からロケット擲弾が飛んでくる。宇沢レイサさんが落ち着いて
窓際に駆け寄った守月スズミさんが頷いて前の方の窓を開ける。ほぼ同時のタイミングで唸り声を上げながら飛び出す剣先ツルギさん。イヴちゃんは剣先ツルギさんの着地点近くを掃射し始めた。
「ひゃははは!死ねぇぇぇ!!」
「うわっ!剣先ツルギだ!」
攻め寄せてきた不良グループが凄まじい勢いで叩きのめされていく。ふぅ、と安堵の溜息をついた宇沢レイサさんが銃をリロードした。イヴちゃんも敵味方が混淆してきたのでウッドペッカーの射撃を停止した。
当たり前かもしれないが、特に招待客が動揺している。イヴちゃんが部屋を見渡しているといかにも銃を撃ち慣れてなさそうな雰囲気で銃弾を込めていた生徒が慌てて机の下に銃をしまう。今の目線、「トリニティの実力を疑ってんのか?」みたいな取られ方をしちゃったかな。
先生が桐藤ナギサさん達に話しかけていたが、古関ウイさん以外は落ち着き払っている。羽沼マコトさんなんかは寧ろ楽しそうだ。
まあ実際、もう片付くだろう。展開している正義実現委員会の生徒はざっと20人くらいだが、仮に剣先ツルギさんが行かなくても何とかなっただろう。多少喧嘩慣れしたチンピラ程度では相手にならないくらい練度が違いすぎる。
あ、物置によじ登ってる正義実現委員会の子がいる。パルクール、地味に根付いてるっぽくて嬉しいな。
数分で外は静かになった。部屋の中でも見てた限りは変な事をした子は特にいなかった。
桐藤ナギサさんが小さく呟くように言う。
「さて、皆様。紅茶とお菓子は気に入ってくださいましたか?」
「ナギちゃん、そんなに急かさなくてもいいじゃんね☆」
「皆様もお忙しいでしょうから。さ、行きましょうか」
最前列の指導者層の子達、ついで座る場所が前の方の生徒から美術展を見て回るらしい。つまり前の方に座ってる子は偉い子とご一緒出来るってことだな。はえ~、座る位置も政治で決まってるんだな。まあそらそうか。
(……座る場所、どうやって決めてるのかなって思ってた……)
(別にな~~んも書いて無いのにね)
ティーパーティー側が派閥や部活の勢いとか、呼ばれた学園の力関係とかで座る場所決めてるんかなあ。面倒臭そ~。 あっ、前世でそんな仕事したような気がする……。さらりまんだったのかな。まあ、どうでもいいか。
サクラコ様の発言の真意(シスターフッドにも縁のあるイベントなのでシスターフッドとしても盛り上げていきたいです)
ティーパーティーの子でイヴに銃を向けてしまった後に銃を下ろさなかった子は、ナギサ様から事前に「自警団の動きに気をつけて」と言われていました。特定の誰とは言われてなかったので、スズミ、レイサ、他自警団の子にも気をつけないとと胃を痛めていました。
この暴動自体が保安部の意図的な情報流出とエージェントの扇動により複数の不良グループをたきつけた結果です。
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