ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
ティーパーティーの子達によって偉い子達が順次案内されていく。おかわりのお茶とお菓子が運ばれてくると同時に、空いた席に案内された正義実現委員会や自警団の子達もお茶とお菓子を供されて小さな歓声が上がる。まあ、この後に警備についていかないといけなくて早く食べないといけないから、量はそんな多くないし、人数多いからか紙コップと紙皿だけど、まあそこはしょうがない。
イヴちゃんと宇沢レイサさんも案内されて、紅茶とお菓子を出してもらった。イヴちゃんはチョコケーキ、宇沢レイサさんはサイダーケーキ*1だ。当然のように半分に分けて、あーんしあう宇沢レイサさんとイヴちゃん。宇沢レイサさんは何度やっても変わらず真っ赤で恥ずかしそうだけど。イヴちゃんは全然気にしてない感じで小さく微笑む。
2人の様子を見ていたらしい周りの子達から、小さな歓声がまた上がった。
イヴちゃんと宇沢レイサさんはミレニアムから来た子の護衛役になった。セミナーの子らしいけど、会ったことない子だ。長袖ミレニアム制服ジャケットを着崩し、白スカート、黒ベスト、灰色髪セミロング、ルックスはほぼミレニアムモブちゃんだな。目隠れではなくて、知的好奇心に灰色の目が輝いている感じ。2年生らしい。
こっちは知らなかったけど、向こうはイヴちゃんの事を知っているらしく、「ああ、あの実験体の……あ、すみません」と砕けた雰囲気でのスタートになって、人見知りする宇沢レイサさんとイヴちゃんには丁度良かったみたいだ。当然のように手を繋いでいる宇沢レイサさんとイヴちゃんに一瞬目を剥いたけど、小声で「トリニティの習慣なのでしょうか」と呟いて納得したようだ。習慣では無いと思う。多分。
案内しようと席を立ちかけたところで申し訳なさそうにセミナーの子が言う。
「あ、ごめんなさい。私はこれから別の用事があって……。トリニティの皆さんにはもうお伝えしています」
あれ、じゃあミレニアムの人は案内しなくて良いのかと思ったところで、後ろから小さく肩がつつかれた。
「先輩、お待たせしました。イヴ、こんにちは」
同じくジャケットを着崩して、ゴーグルをかけて大胆に胸元を開けたシャツ、短めのスカートに網タイツ。あれっ、猫塚ヒビキさんやんけ。入れ替わりに小さく頭を下げてから席を立つミレニアムセミナーの子。
「今日は私が代わりに、ね」
「……ヒビキさん、セミナーじゃない、よね……」
「今日だけ、ちゃんと臨時のセミナー所属になってるから大丈夫」
へー。しかし中座するセミナーの子と猫塚ヒビキさんを寄越すってことは、ミレニアム的には
「あ、ごめん。ミレニアムの猫塚ヒビキ。1年だよ」
「あっ、と、トリニティ自警団の宇沢レイサです。1年です」
出鼻をくじかれてしまったからか、宇沢レイサさんの自己紹介にちょっとキレがない。
「……ヒビキさんは、私の翼のウィッグとかも作ってくれた、友達……」
イヴちゃんが猫塚ヒビキさんと撮った、翼ウィッグをつけてミレニアムの制服を着た写真をスマフォに表示し、宇沢レイサさんに見せた。
「な、なるほど……よ、よろしくお願いします……」
宇沢レイサさんがなんかしなしなになってしまった。テンション低下速度が速すぎる。大丈夫?
「……レイサちゃんは、とっても大事な、友達。クラスも自警団でも一緒……」
あっ、元気になった。ふふ、と猫塚ヒビキさんが微笑む。
「よろしく。レイサって呼んで大丈夫?」
「は、はい!ヒビキさん!」
猫塚ヒビキさんを案内し、最初は3人で美術展を見ながら小声で話していたのだけれども、宇沢レイサさんがイヴちゃんのミレニアムでの噂についてぐいぐい聞きに行っていて、何だか美術展そっちのけで2人で盛り上がってしまっている。これはこれで、よその学校から1人で来た子に対してのコミュニケーション能力を最近上げてきた宇沢レイサさんの気遣いなのかもしれないが。うーん、でも後方彼女面みたいな顔してる気もするな。イヴちゃんが褒められるとなんか得意げだし。
イヴちゃんは特に気を悪くした様子も無く、その分護衛をしっかりしようと周囲を見渡している。5分おきごとの出発で分かれて歩いているから、さっきより人の密度は減ったけど、暗く落ち着いた照明の下、部屋ごとに美術部*2の学芸員らしき生徒と正義実現委員会の子*3がいるし、窓もないから安全度で言えばこっちの方が高いだろう。
キヴォトスでは銃を持ち込ませない社会的合意ができるのはお風呂くらいだ。『服を着ずに歩く人より銃を持たない人の方が少ない』世界、本当にヤバい。
とはいえ、治安が完全に息をしてないキヴォトスだと、壁を爆破して突入してくるような奴も日常茶飯事なので、油断をしないイヴちゃんは正解ではあるのだろうな。
警備要員も別に美術品を見てはいけない訳では無いので、前後のグループも真面目に展示品を見る子と、小声ではあるけどおしゃべりに花を咲かせる子達に分かれてきた。宇沢レイサさんと猫塚ヒビキさんはちゃんと打ち解けられたようで、展示品の話とかをしている。イヴちゃんはついでに展示品をチラ見する程度。
「さっきの先輩、トリニティに彼女がいるらしくて……」
「へえー!用事ってもしかして……」
2人のひそひそとだけど楽しそうな声を聞いてイヴちゃんもご機嫌そう。一緒に歩いている皆が友達だからという安心感もあるのだろうな。
(護衛終わったら、もうちょっとちゃんと見たいな。いい?)
(……レイサちゃんとヒビキさんがいいなら。駄目なら、他の日にしよ……)
(そうだね~)
『ティーパーティーの至宝』展なので、当然ティーパーティーに献上されたりした品が多い。トリニティというか、ティーパーティーの威光とこんなに愛されてるんですよ~みたいな*4解説が微妙に鼻につく。よその学園から見た一般的なトリニティって「傲慢と高慢と偏見とお嬢様と金」みたいな感じらしいけど、実際どうなんだろ。イヴちゃんの周りのミレニアム*5とゲヘナの子はみんな良くしてくれるから逆によくわかんね~んだよな。まあもちろん罵倒とかされたい訳じゃないんだけども。
あっ、でもこれはいいな。10何年か前の
『なお、両名は卒業式の後に結婚式を挙げられました。時計の文言は『最愛の貴方へ』だったそうです』
結婚式の写真がパネルとして横に掲載されている。紫髪ボブ巻き毛、両こめかみに短い角のある穏やかそうな巨乳垂れ目の子と、金髪ストレートロング、気の強そうなこっちも巨乳の天使の子が満面の笑顔、2人ともウェディングドレスを着ている写真が横に飾ってある。キ、キマシ!!!!!!
(……ジル……凄い臭い……)
(ごめんて)
判定きびしー。折角のキマシタワーなのに。
しかしまあ、トリニティとゲヘナの和解というのも押し出していきたいっていう政治的意図もあるんだろうけど、この写真は実際幸せそうで良い写真だわ。宇沢レイサさんも写真に釘付けになって完全に足が止まってしまっている。
「あの……」
「はっ!?ごめんなさい!行きましょう!」
宇沢レイサさん、もうちょっと眺めていたかったというのが全身から伝わってくる歩き方で、小さく笑ってしまう2人。
明日はIron Maiden大阪公演を見に行っているはずなので多分明後日は投稿できないと思います。
(投稿予約時間を普通に間違えてしまいましたが21:30に投稿時間揃えたいな〜ってだけなので、削除や再投稿等はしません)
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