ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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 70話『うおDekkaでっかレーベルよりリリースした(略)セカンド・アルバム、"Tresspass"(邦題: 侵入)』に一部追記漏れがあったので行いました。
 トリニティの技術部→造兵廠(俗称)、小火器工廠(正式名称)であるという点の補記だけで、話の本題には何も影響が無いのですが。
 手元の原稿と実際に掲載してるものがコピペ漏れなのか修正途中で失念したのかちょっと違いました。済みません。



都市伝説とか怪談の話は大好きだけど、イヴちゃんはチョーニガテなんだよな

 展示品を見ていくと、トリニティの勢力下にある学園やゲヘナ、ミレニアムからの贈り物が中心らしいけど、トリニティの校内工事で発掘・発見されたもの*1や、ティーパーティー生徒の中で芸術に秀でた子の作品ももちろんある。加えて、ティーパーティーが購入した品もある。

 

 展示品を見て回る途中、40インチくらいの液晶モニタが壁に設置して動画がループ再生されていて、下に展示品が置いてあるスペースがあった。馬鹿でかい白い小さいビルみたいな何かと女の子達、あとオートマタとかが戦う映像。

「あっ、私とイヴちゃんの」

「え?」

「……本当だ……アビドスと、ゲヘナの人達も写ってる……あと、カイザーも……」

「おお、『アビドスの大蛇』の。検証用に何度も見たけど、やっぱりよくできている機体だ」

「……よく、撮れてる……」

 アビドスの大蛇(ビナー)戦じゃん!何に向けての配慮か知らんけど、背景に写ってるカイザーのロゴがモザイクで消されてて笑っちゃった。提出した動画データだね、これ。

 下にうやうやしく(?)展示されてるのはアビドスの大蛇(ビナー)からかっ剥いだ装甲板だ。

アビドスの大蛇(砂漠の大型機械兵器)はシスターフッドや古書館の文献、近年では都市伝説で噂されていただけですが、我が校の生徒により実在が確認できました。装甲板の素材については解析中です』

 素っ気なさ過ぎる解説文。何の美術品を見た時よりいい食いつきをする猫塚ヒビキさん。

ガラスケースに張り付いて「い、今すぐ解析したい……」とか呟いている。

「……そのうち、エンジニア部に持っていきます……」

「嬉しいね、解析できるのが楽しみだ」

「何がわかるんですか?」

「まず、破断面から破壊原因がわかる。といっても、動画を見たら済むけどね。これは……」

「……この、ナイフで剥いだ……」

 イヴちゃんは誇らしげに腰に差してあるナイフをぽんぽんと叩く。

「そのナイフも気になる。そうそう、成分分析といって、顕微鏡で見たり、機器分析といって電磁波や熱などを測定する方法が……」

 専門家の解説にほーとなる一同。ここで立ち止まってたので追いついてきてた後ろのグループも感心していた。

「まあ、結局、エンジニア部と新素材開発部がかかりっきりになってもアビドスの大蛇の装甲は良く判らなかったのだけれども。ただ、これを見ると、どういう意図で設計されているかはわかるかもしれない」

 なるほどなあ、と頷く宇沢レイサさんとイヴちゃん。

 

 猫塚ヒビキさんはアビドスの大蛇(ビナー)装甲にかなり未練たらたらだったが、今度借りられるなら……と10分くらい色々な角度から眺めて諦めたらしい。

 軽めに流しても1時間ちょいのボリュームの『トリニティの至宝展』、あと20品ってところか。

 今度はイヴちゃんが足を止めてしまった。

『純金製 ミートソーススパゲッティ食品サンプル(?)』

 解説文には『当時のティーパーティーホストが文化事業の一環として制作させた品ですが、あまりの評判の悪さに、間接的なホスト権限早期移管に繋がったと噂されていました。』と辛辣極まりない評価だ。

 現物は純金なので意外とギラギラしてない*2渋い色合いではあるけど、まあ金ずくめなんだよな。フォークで持ち上げられたミートソーススパゲティがそのまま純金になっている。

 さっきまでやってた周囲の警戒も全無視で、じりじりと展示品に吸い寄せられるイヴちゃん。手をつないだままなのでちょっと困惑した宇沢レイサさんもついてくる。

 イヴちゃんの目がきらきら輝いていて、ほあぁ……と溜息が漏れた。

(イヴちゃん、後でまた見に来よ!護衛しないと!)

(……う、離れがたい……でも、そうだよね……)

 1分くらいで諦めてくれたみたいだけど、警戒のために剥がした目線が諦め切れてなさそうにちらっちらっと金パスタの方に行く。宇沢レイサさんも猫塚ヒビキさんも苦笑い。

「そういえば、イヴちゃんはどうして食品サンプルが好きなんですか?」

「……美味しそうだし、見てて面白い。それに、本物より力が入ってる偽物って、好き……」

(偽物、まがい物、変な物、そういうのが好き?)

(……大好き……)

「イヴ、コスプレとかしてみない?」

「えっ?!」

「偽物とは違うし、場合によるけど、本物より、力を入れられるかも」

 宙を見るイヴちゃん。お、意外な反応だな。

「……恥ずかしそう、だけど……それも、いいかも。考えてみる……」

「す、するなら絶対見たいです!」

「……レイサちゃんも、一緒にする……?」

「……か、考えます……」

 宇沢レイサさん、凄く真っ赤で小声になって下を向いてしまった。可愛い。

 

 猫塚ヒビキさんはエンジニア部に緊急の案件が入ってしまったらしく、慌ただしく先生とティーパーティーの事務方の子に挨拶してお土産を買って*3慌ただしく帰って行った。

 イヴちゃんと宇沢レイサさんも護衛完了ではあるけど、今日の行事はまだ終わってないので、美術館全体の警護という名目で大会議室に待機を頼まれたので戻ってきた。

 ティーパーティーの子が紅茶とケーキを持ってきてくれた。今度は2人ともショートケーキで、急いで食べなくて良いからだろう、普通のサイズだ。

「その、イヴちゃん。コスプレって、やるなら!やるならですけど!何をします?」

 真っ赤な顔で宇沢レイサさんが聞いてくる。目線がイヴちゃんの目から胸元ちらちらしてて挙動不審気味。

「……ヴィック・ラトルヘ○ド……」

 あーMega6ethのか。ちょっと名前違うけど似たようなキャラがあるんだよな。宇沢レイサさんは検索してみてちょっとがっかりしてから、へーって顔をしている。まあ露出無いからね。

「……レイサちゃんは……?」

 うーん、うーんと悩み始める宇沢レイサさん。

「スズミさん……はおかしいですよね。イヴちゃん……もやっぱり変……」

 あ、ティーパーティーの子が紅茶のおかわりを持ってきてくれた。うんうん悩む宇沢レイサさんをニコニコしながら眺めるイヴちゃん。襲撃もあったけど、今日は無事終わりそうで何より。

 

 平和裏に2人で紅茶を飲みながら雑談に興じていたら、後ろからぽんと肩を叩かれた。

「お、お疲れ様、です……イヴさん、レイサさん……」

 買って2週間冷蔵庫で忘れてたもやしくらいには復活した古関ウイさんだ。やっとえらいさん方の解説巡業から解放されたらしい。

「あ!お疲れ様です!」

「……お疲れ様、です……」

「本当に疲れました。ティーパーティーのお2人も、1人は解説文の重箱の隅をほじくってきますし、もう片方の方は話を全然聞いてませんし。あんな政治的に偏った、書きたくも無いものを急かして書かせて、何度も訂正させて、やっとのことで稟議通したのに。ぎりぎり事実で無いことは排除しましたけど、山海経か百鬼夜行の人が見たら『曲学阿世』の現物と笑いますよ」

 あー、あの解説文書いたの図書委員会だったのか。心の中でだけで悪口済ませておいてよかった。

 飲み屋でくそ上司相手の愚痴をぶちまけるOLじみた雰囲気を発散する古関ウイさん。

 ティーパーティーの子が古関ウイさんの分の紅茶と、全員分の追加ケーキを持ってきてくれた。ぺこりと頭を下げる宇沢レイサさんとイヴちゃん、小さく礼を言って受け取る古関ウイさん。3人ともバームクーヘンだ。

「バームクーヘンといえば口がパサつくものと思っていましたが、しっとりしてますね。コーヒーが無いのだけは残念ですが」

「美味しいです!」

「……ね……」

 お冠だった古関ウイさんが少し落ち着いたかと思ったけれども、まだ続きがあるらしい。

「ゲヘナの万魔殿議長が大人しかったのは意外でしたが」

 紅茶を一口。心配そうな宇沢レイサさんと、フラットな感じで見てるイヴちゃん。

「きっと先生とシスターフッドの長の目を気にしたのでしょう。私も、思い出しただけであの人の目は……本当に何人か消しているのでは……?」

 自分の肩を抱いて震える古関ウイさん。まあ、先生の方じゃ無いだろうな。*4

「お2人は、シスターフッドの前身組織、ユスティナ聖徒会はご存知ですか?」

 宇沢レイサさんもイヴちゃんもいいえ、と首を横に振る。

「秘密主義で極めて武闘派の組織だったそうです。異端者に対しての弾圧、武力行使も辞さない強硬なものだったとか。秘密主義なのは今もそうですけど」

(……武闘派、って感じではない、ような……)

(秘密主義、っていうのはどうかな?)

(……マリーさんに、聞いてみる?……)

(いやー、それも困るでしょ。1年だしね)

 「シスターフッドは今も拷問とかしてる?」とか気軽に聞いたら答えてくれるかなあ。いややってないはずだけど。なんか歌住サクラコさん見てたら不安になってくるんだよな。伊落マリーさんとか、若葉ヒナタさんを見るとまあまず無いだろうとは思うんだけど。

 

 紅茶をかけつけ3杯飲んで、やっと古関ウイさんは落ち着いたようだ。椅子のうえで少し力を抜く。

「失礼しました。後輩相手にみっともない」

「いえいえ!鑑定と解説文もして、今日の案内までされたのですよね!」

「……ウイさん、凄い……」

 宇沢レイサさんとイヴちゃんのキラキラした尊敬の目を前に、むしろもっと顔をしかめる古関ウイさん。

「う、ま、眩しい……」

 古関ウイさんが誤魔化しと視線を遮るように紅茶を飲み、あ、空だ。イヴちゃんが立ち上がって、ティーパーティーの子に3人分の紅茶をもらってきた。

「「ありがとうございます」!」

 言葉を探すように天井に目線だけをやる古関ウイさん。

「そう、あの装甲板の話をしないといけないのでした」

 はああ、と、もう一つ大きな溜息をついた古関ウイさん。嫌そ~。

*1
シスターフッドや図書委員会が協力したのはこの辺りだろう

*2
金は暗い中で光に当てると寧ろ渋い輝きを見せる

*3
3人で選んだ

*4
先生もある意味、駄目な方に時々大丈夫かみたいな目をしてることはあるけど




TIPS
 トリニティの噂話。
 「去年、シスターフッドで歌住サクラコと折合いの悪かった2年生が1人、歌住サクラコ自身の手によって消されている」
 あまり馬が合わなかった生徒が1か月病気休養し、現在復職していることから出た去年の噂話。消されたとされる生徒自身が今も公の場に出ているため、馬鹿馬鹿しい噂として気にする人間は少なく、当人達も知らない。
 しかし、これをカバーストーリーで本当に消された生徒が別にいると信じている者もいる。
※当然、そんな事実はありません。

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