ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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定期試験の対応、性格が出るかも 中間試験初日

 日常のルーチンをこなしながら大体2週間。中間試験が始まった。

 宇沢レイサさんの苦手は潰しきれなかった。まあ僕がつきっきりでイヴちゃんと毎日1時間くらいやってても半年以上かかったしね。同じくらい判ってないなら、睡眠学習が使えない分、それ以上は見ておいた方が良いだろう。イヴちゃんはどこまで宇沢レイサさんの成績アップを狙うつもりか判らんけど、僕は宇沢レイサさんグループの全員が3年間の学生生活で勉強に追われてみんなと遊ぶ時間が無い!!みたいなことさえ回避できたらいいわけだし。面白おかしく遊びつつ学業もちゃんとこなせるならそれがベスト。

 試験勉強その他の日常生活をしてる間にリフィニッシュ*1されたギターとベース、その他の小物がイヴちゃんと宇沢レイサさんの部屋に届いたけど、塗替えのついでに弦を新しいものに換えておいてもらったのもあり、部屋の壁にギターハンガー*2を設置して、ストラップ*3をつけて自撮りをしただけで何もできてない。

 宇沢レイサさんはなぜかみんなで買った水着にベースを持って自撮りをした写真をモモトークのグループに送っていた。写真でも判るくらい顔真っ赤だったし、ウケ狙いだったのかな。凄い可愛かったけども。

 

 中間試験、イヴちゃんは2年生の範囲を受ける1年生として、普段と違う教室を指定されている。今回は10人程度が受けるようだ。

 イヴちゃんは10分くらい前に着いたけど、既に着席してる見知らぬ顔の中で下江コハルさんがぷるぷるしている。イヴちゃんが小さく手を挙げて振ると、一瞬ホッとしたようなというかすがりつきそうな表情を見せてから、顔をしかめてぷいと黒板の方を向いた。

(……コハルさん、大丈夫かな……)

(直前にでも1年の試験に変更できるんだから、変更してないってことは大丈夫なんじゃない?)

 下江コハルさん、あの後、お昼ご飯には毎回では無いけど顔出してたんだけど、イヴちゃん始め皆が何回か試験の話を振ったらぷんすこしちゃったので、皆聞けなくなっちゃったんだよな。僕的にはまあ、本人が大丈夫って言うならええんちゃうかって感じだけど。試験の自信、生徒の小遣に直結するから、年収聞くのに近いちょっとセンシティブなふいんき*4もあるんだよな。

 教室最前面のホワイトボードに注意事項が投影されて試験が始まる直前、イヴちゃんが小さく両頬を叩く。

(……うん、心配は後で、する……)

(そうだね、頑張って!)

 落第が60点だけど、1年生が2年生の範囲を受けるときは30点がボーダーになる。3年生の範囲を受けるときは20点。

 まあ、実際にはこんな点数を取ったら学園側からやんわりと「次回は自分の学年次の試験を受けるのを勧める」と言われる*5らしいけど。

 

 イヴちゃん本当に試験の本番弱いなあ……あっあっケアレ=スミスしそう、大丈夫大丈夫?!ってってやきもきしながら見てること50分。これが進学進級だの退学だのに繋がるなら僕も間違ったりしたところにヒントとか出しちゃうんだけど、そもそも90点以上は行けてそうだから黙ってた。脳内で正答出してくれる第三者持ち込みは多分ルール的にはセーフだろうけど、イヴちゃんも良い気はしないだろうしね。

 

 トリニティの中間試験は4日間。取ってる科目によって1日何科目受けるかは違うけども。イヴちゃんは取れる授業全部取ってるので4時間ずつある。

 下江コハルさんは取ってる授業が違うからか3科目が終わった時点で教室を出て行った。イヴちゃんの目線にも全然気付かず、魂が口から出てるみたいな顔してた。イヴちゃんが一応モモトークでメッセージを送っておく。

(……何とも無いなら、いいんだけど……)

(そうだねえ)

 まあ最悪補習授業部行きだから大丈夫。いやー大丈夫じゃないな。

 

 試験期間中も宇沢レイサさんグループはお昼ご飯だけは集まることにしている。伊落マリーさんは来てくれたけど、下江コハルさんは既読すらつかない。

 みんな心配しながらも、ご飯は美味しかった。テスト期間中はみんな料理考える余裕無いかなって、ウー○ー的なやつで済ませることになっている。

 今日はみんなミレニアムに本店があるハンバーガー類。朝吹ソフノさんは鶏、伊落マリーさんとイヴちゃんは白身魚フライのバーガー。

 宇沢レイサさんが右手だけで器用に包み紙を使って、肉が2枚とチーズと卵が入った馬鹿でかいバーガーをパクつきながら陰鬱そうな顔で言う。

「みなさん、テスト、どうでした……?」

「今回、例年にない規模の勉強したから、赤点は全然回避できそうだけどね~」

「私も、モユルの『テスト前は授業が少ないから遊ぼう!』攻撃をかわしたからね」

 報野モユルさんが脂でべたついた指で朝吹ソフノさんの頬をつつこうとしてしばかれている。

「赤点は私も無さそうですけど」

 宇沢レイサさんはイヴちゃんの方をチラチラ見る。

「えー、何?リーダー的には私の方が成績良くないと的な?」

「そ、そういうわけではないんですが」

「いつも一緒にいる人が別々だと、少し寂しい、とかですか?」

 微笑む伊落マリーさんに宇沢レイサさんが頬を赤らめた。

 しかし伊落マリーさんが食べるとハンバーガーも凄い上品な食べ物に見える。けど、なんか瞬間瞬間にめっちゃ卑猥なもん咥えてるみたいにも見える。どういうこと???

 まあ伊落マリーさんの謎のやらしさは一旦置くとして。イヴちゃんも普段は繋いでる右手がちょっと手持ち無沙汰って感じになってたけど。お昼合流した瞬間から今までずっと手繋いでるもんな。イヴちゃんも段々左手だけで何でもこなせるようになってきてる。今も手を汚さずにバーガー良い感じに食べてるし。何でも訓練だね。

「……でも、2年の範囲を予習しないといけなくなるから……」

「そうですよね……」

 はぁ、と熱っぽい溜息をつく宇沢レイサさん。イヴちゃんの手をにぎにぎ、触感を確かめるように握る。イヴちゃんも小さく微笑んで握り返す。にぎにぎ。2人とも手ちっちゃくて柔らかいんだよなあ。

 2人が手を繋いでると、何だかあるべきところにしっくり収まってる、みたいな気持ちはするんで宇沢レイサさんの気持ちも判らんでもないけど。僕が出張とかできたら宇沢レイサさんに睡眠学習込みで「2,000年前に通過したテスト範囲だッッ」とかできるかなあ。

(宇沢レイサさんの方に僕が出張できないかな)

(……どうやって……?)

(額をこう、当ててみるとか?)

(……戻ってこられるなら、別にいいけど……)

(いや冗談冗談)

 イヴちゃんはハンバーガーの残りを食べて、手を拭いてから宇沢レイサさんの頬を触る。

「ふえ、な、何ですか?!」

「……ちょっと、おでこを借りるね……」

 あわあわする宇沢レイサさんのおでこに、イヴちゃんがこつんとおでこをつける。こ、行動が早い。

(……出張するにしても、レイサちゃんがうんって言わないと……)

(いやー、そもそも話かけて聞こえるかな?ノックしてもしもーし!)

 ノックはしてねーが。宇沢レイサさんは不思議そうにしつつ顔真っ赤かだ。

 小声で3人が囁き合う。強化してる聴覚で辛うじて拾えるくらいだから、きっと宇沢レイサさんには聞こえてないと思う。

「デザートにちゅーするのかな」

「デザートって何」

「お、お2人はそういうご関係なのですか……?」

「付き合ってないらしいけどね~」

 ほんとだよ。僕のせいでなんか凄い絵面になってるけども。イヴちゃんは真剣な顔をしているし、ちょっと宇沢レイサさんがそのキリッとした顔を見て嬉しそう。

 

 数分やってみたけど、結局僕の呼びかけは全然伝わらなかったし、めっちゃ派手にぶつけて「入れ替わってる~?!」みたいなことしたらいけるかなって一瞬思ったけど、それで戻れなくなったら宇沢レイサさんも困るだろうしなあ、って事で何も言わなかった。「ご友人、サプライズをさせてくれないのですか?!」って一瞬口走りそうになったけど、宇沢レイサさんからしたら僕は向こうからしたら全然知らん人なんだよな。頑張りをイヴちゃんの次*6に見てる、知らん奴がいきなりPopしてきたら、うーん。不審者、ってなるな。

 

 テスト当日にもお掃除*7して、お祈りもして、美術館*8で黄金パスタサンプル見て、勉強会をする。

 ちょっとだけ切羽詰まった雰囲気だけど、宇沢レイサさんグループはテスト勉強会を始めたのがかなり早かったので、他のいかにも一夜漬けした後、ふらふらだけどまだ詰め込まないと、みたいな子よりは余裕がある。

 下江コハルさんはやっぱり来なかったし、既読にもならなかった。でも、羽川ハスミさんが正義実現委員会本部で目撃したそうでまずは一安心。

 

 勉強会が終わってからみんなで晩ご飯にカツ丼*9を食べた。円堂シミコさんは誘ったけど図書委員のシフトの都合で欠席。トリニティ近所の定食屋のカツ丼美味すぎる。取調べの時に一緒に食べられないか要望したいね。自警団は取調べ関わる事無いけど。

 

 帰ってストレッチ含むいつものトレーニング、平行してゲーム開発部の新作をデバッグしつつ寝る前にモモトークを見たら、羽川ハスミさんからメッセージが来ていた。

『テストが終わってから、ゲヘナ風紀委員会と合同訓練を行うことになりましたが、レイサさんとイヴさんは以前合同訓練をされているので、自警団側のお留守番をお願いしたいですが大丈夫ですか?』

 というメッセージが来ていた。

(……イブキちゃんに会いに行きたかった……)

(今度、プライベートで行ったらいいよ)

 それもそう、と得心したイヴちゃんが了承のスタンプを送る。なにこの……なに?頭がめっちゃ生えた変な鮫がデフォルメされたスタンプ。ゾンビとか骨だけとかメカになってる頭もある。

(……サーティンヘッドシャークのスタンプ……)

 あー見てたね、頭13個もある鮫の映画。尻尾も13本あって自力で飛べるとか言って、シャークネー○かよ!みたいなアクションシーンもあったC級映画。

 宇沢レイサさんもお星様の擬人化みたいなスタンプで了承を送っていた。まともなスタンプを見るとちょっと安心しちゃうな。

 下江コハルさんへのメッセージ、まだ既読になってないのを確認してからイヴちゃんはベッドに入る。スマフォも見ずに勉強してるとかなら良いんだけど。

*1
一旦塗られてる色を剥がして塗替えること

*2
ギターを吊すやつ。ピン3本分の穴開けるだけでかけられるのを買った。寮なのでネジ穴とか開けたくないし。

*3
肩紐

*4
何故か変換できない

*5
当然すぎる。でも勧告なので、だが断るできるらしい

*6
イヴちゃん視点で見てるからね。

*7
テスト当日だったからかさすがにいなかった

*8
開館時間が12~15時になっていた

*9
験担ぎ。実際は胃に負担かかるのってあんま良くないらしいけど




 コハルは試験の手応えが壊滅的だったので呆然としてスマフォを鞄の奥底にしまったまま一日のルーチンをこなしています。

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