ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
夏休みもあっという間だったね。
色々あった。勉強に百鬼夜行のお祭りに、不良狩り、宇沢レイサさんとその友人を交えてのランチに。
僕がお安いけどしっかりした蕎麦屋を選んだせいではないと思いたいけど、イヴちゃんと宇沢レイサさんの人見知り力が共鳴しあってちょっと最初は微妙な雰囲気になってしまったものの、最後は打ち解けてよかった。
2軒目のファミレスでもみんな楽しそうだったしモモトークの友達アカウントが増えたしよかったね。
っていうか1軒目で隣の席に座ってた角尻尾翼あり美人3人組、美食研究会じゃなかった??僕お勧めの店は大満足だったみたいで絶賛してたし爆破されなくてよかったけど。
宇沢レイサさんも正義感強いし、僕も自分が気に入ってる店ケチつけられたらキレてただろうからアブナイだったね。
一応イヴちゃんに警告はしておいたけど、これに関しては無駄になってよかった。あの子ら目が据わってたし。
それはさておき、新学期ですよ。
お昼は宇沢レイサさんグループに混ぜてもらって食べる日々が増えてたけど、今日は定期検診で学校を公休。
入院してた病院の担当医さんが平日午前しかいないシフトになってしまったので学校で手続きをして1日お休みになった。
午前中には病院を済ませて、お昼休み前のミレニアムサイエンススクールへ。エンジニア部の入館許可証を見せて受付を通る。
今日も良い天気で、やっと暑さも和らいできて過ごしやすくなってきたね、なんてイヴちゃんと脳内でお話ししながら暢気にお散歩気分で歩いている。
ミレニアムの未来感溢れる校舎の廊下、授業中なので人気の少ないところをてくてく通過し、エンジニア部の工場前で、後ろから聞き覚えのあるガラの悪い声に呼び止められた。
「おいテメエ。何者だ?」
「……ぴ……!」
イヴちゃんが可愛い声をあげてビクッとする。可愛いね。いうてる場合か。僕も威圧感で脂汗たらたらだ。僕単品には汗出す機能ないけど。
(……ジル、知り合い……?)
(うーん、知り合いっていうか、お互い一方的に知ってる感じ……?)
出た~~凶悪スカジャンメイドロリこと美甘ネルパイセン!
本当は何も知らないイヴちゃんが対応してくれる方がボロが出なさそうだけど、かなり怯えちゃってるからなあ。代わるか。
「こ、こんにちは……。トリニティ中等部3年、御蔵イヴです」
「そういうのを聞いてんじゃねえんだが」
舌打ちしながらネルパイセンの目がすっと細まる。この人マガジン漫画かなんかの人でしょ。明らか頭の横に『!?』って出てるし。コワイヨ~。
「ん?その馬鹿でかい銃と右腰のがお前の得物か?」
「は、はい……。こっちの盾の後ろのがウッドペッカーちゃん、こっちがクラリオンちゃん……です」
「それも聞いてねぇ」
(……怖い……ジル……)
僕も怖いなあ。ネルパイセンは、はぁーと大きく溜息。大きく目を見開いて小さく右手をチョップの形に突き出す。
え、チョップか?チョップという概念になるのか?相当鍛えたと思うけどカラテでも勝てる自信全然ないぞ。
「だが、悪かったな。人違いみてぇだ」
「誰か探してるのですか……?あの……」
「あー、ム○クみたいな『××ですぞ~』とか喋るチビだ。お前と歩き方が似てて髪の色も一緒なんでよ。得物がアサルトライフルだったがな。よく見りゃ翼も全然違うな。あぁ、あたしは美甘ネル。時間取らせて悪かったな」
チビて。大して身長変わらんやろがい。何となく身長に関しては対抗意識出ちゃうな。*1
それにしてもわざわざ得物変えておいてよかった。キヴォトス人は銃を持ち替えるのはあんまりしないのを活かした身分偽装ライフハックよ。
まあ、銃の撃ち方は一から練習になるけどね。
「大丈夫、ですか……?それでは……」
「ああ、じゃあな。あんま変なとこ覗きに行くんじゃねぇぞ」
ニカっと笑ってご機嫌に歩き去って行くネルパイセン。
(……怖かった、ね……)
(怖かった……)
(……それと、さっきの喋り方、私の真似……?あんまり、似てない、かも……)
(マジで?!)
結構渾身の物真似だったんだけどな。いや結構マジで、あんまり似てなさ過ぎるとモロバレルだしちゃんと練習しよう。
(もっとイヴちゃんの可愛さを再現できるように頑張るよ……)
(……頑張らなくてもいいよ……?)
(複数人格があるってバレると、病気か何かと思われて面倒臭いことになるかもだからね)
(……そっか……)
まーまじで僕の存在自体が病気かもしれんし、本当は治療を受けた方がいいのかも知れないけどね。
いや前世の記憶は病気から生えてこないか。イヴちゃんが才能に溢れてて映画も音楽も漫画も小説も無限にコンテンツ作れる説でないと説明付かないしな。
エンジニア部室の建屋入口前で盾に腰掛けて待つことしばし。イヴちゃんはお腹減ったより眠気が強くてちょっとうつらうつらしてる。エンジニア部も圧が強いので僕が喋ることになっているからそのまま寝ても良いよ、って話をしている。
昼休みのチャイムが鳴って数分、わらわらと部長はじめエンジニア部のメンバーが部室にやってきた。授業の合間だからか皆制服だ。
特に着替える様子もないし、今日はこのまま作業してくれるってことかな。持ってきたお土産のミニコーヒーゼリーを渡したけど、感謝の笑顔とお礼もそこそこに気もそぞろだ。甘味より実験!って感じだな。
「お昼休みなのに申し訳ありません」
「いやいや、こちらこそ!せっかく実験た……もといエンドユーザがわざわざ来てくれたんだ。もう放課後まで待っていられなくてね!午後からは公休を取ってるよ!」
今実験体言わんかったか?ナニカサレタヨウダしないだろうな?
「何しろ脊椎からの信号を使っての思考制御装置、普段からの実用例は数える程度しかありませんからね」
これは同じく駆け足でやってきた白石ウタハさん。
「電脳とか生体LAN端子の研究もまだあんまり進んでないしね」
「倫理的な問題があって人体実験もできません」
つけた後にはいいところ幻肢痛くらいで、最悪外せばいいし、大して問題は無いけども。まさかリユース・サイコ・デ○イスみたいについてる手足や翼を切断する訳にいかんしな。
「ですが他校のデータを参照できますからね。ある程度は何とか。そういえば山海経の先日出た論文を読みましたか?あのデータの取り方は」
途中で僕をそっちのけでわいわい楽しげな部員を気にせず、部長が僕の背中に回って一声かけてから翼を触り始めた。
「外部ユニットを追加するのと、ミドルウェアを更新して制御ソフトウェアをインストールしないといけないから、翼を根元から外すからね」
振り返ってちらっと見ると、部長の目がイッちゃってるというかギラギラしててコワイヨ~。
こくこく頷く僕を尻目に手際よく機械仕掛けの翼を外して凄まじいスピードで触り始める。翼に集まってきたエンジニア部員みんな、白石ウタハさん含めて凄い楽しそうだ。
僕は椅子に座って出してもらった缶コーヒーかエナジードリンクどっちか少し迷ってから、缶コーヒーを開けた。
余計な機能をつけられないか片目で作業風景を眺めつつ『SRT中級戦術教本 市街地編』を読みながら待つことしばし。無事にできたらしい。まるでF1のピットか何かみたいに手際よく翼をつけなおされた。
「ありがとうござ」
「お礼を言うのはまだ早いよ!試射をしないとね!それと、次からはホットプラグ*2でパーツ交換や追加もできるようにしたから!」
喰い気味で言われたけどなるほど確かに。翼の一番上というか外側の骨(?)っていうのか(?)、左右2つ追加しただけだから、残り6枠は余ってるわけだ。マジで?
まあ面白装備つけるのも全然吝かではないけどね。別に身体にメス入れるわけじゃないし。余らせてるのも何となく勿体ない気もしなくもない。
ミレニアム射爆場。いや射爆場がある学校is何?って思ったけど、トリニティにも普通にありますね……。
「安全装置を解除して、『モビーディックワイヤー飛べ!』って念じると飛んで行くからね。射程は50m、推進剤が切れるまではざっとした動きなら制御できる。飛行時間は12秒。動作の精密性は今後の課題かな。2個とも撃てるようになってるけど、同時に2個は撃てないし制御できないから注意して。左右の撃ち分けが難航してね。悪いけど安全装置で対応してほしい」
「わかりました」
(イヴちゃん、新しくついたこれは思考に反応して動くらしいから、1つずつ試し撃ちしてみよっか)
(……うん……)
基本的には僕しか使わないと思うけど、何があるかわからないし、僕かイヴちゃんどっちかしか動かせないなんて可能性も無きにしも非ずだ。
それにしてもダンバインみたいな言い方だなあ。よし一発目。左側の安全装置を解除して発射。
「わー飛んだ!」
「「やったー!」」
「モーターヤッター!科学の勝利だ!」
「さあ、空中で制御してみてくれたまえ」
何て?なんか不思議な歓声も聞こえた気がするが、左、右、上と軽く動作チェック。思考に応じてフィンが動いて噴射炎が見える。かっけー。
凄く制御自体が大雑把かつ旋回性能も上昇降下性能もまずまずなので細かい機動は無理だけど、大体狙ったところに刺せるな。射爆場の標的になってる電柱にぶっ刺せた。
「当然、巻上げ機構とワイヤ切断も実装している。試してくれ」
(イヴちゃん、ちょっと空飛ぶから心の準備してね)
ワイヤを巻き上げると凄まじい勢いで身体が宙に舞う。
(……わー!……すごい……!)
イヴちゃんも楽しそうで何より。巻上げを途中で止めて電柱を蹴り、空中でワイヤを外れろと念じるだけで切り離し成功し、着地。
イヴちゃんに交代してもうワンセット。これは楽しいな。身体を鍛えておいたお陰か空中機動もある程度はこなせるし、切り札として便利に使えそうだ。
取扱説明書をもらったけどワイヤも推進剤も簡単に調達できるし補充も自分でできる楽ちん仕様らしい。やっぱまともな時のミレニアムすげーな。
お礼を言って、実験後にもう1つ缶コーヒーをいただいて歓談。
「来年は、この白石ウタハくんが部長になる予定なんだ」
うん知ってた。まあもちろん知らんフリするけど。どこか照れくさそうな、でも誇らしそうな顔つき。
周りの部員も納得しているようで温和な空気が漂っている。
「気軽に遊びに来てほしい。翼に不具合だとか新しい機能をつけたかったら相談してほしいしね」
「よろしくお願いします。白石さん」
「ふふ、ウタハでいいよ」
「じゃあ、ウタハさん」
盾も凄い助かってるしエンジニア部のお世話になれるのは本当に助かる。自爆機能とかは何とか頑張って阻止しないといけないけどね。
いや油断すると自爆機能がつくメーカisなに……?
★2 御蔵イヴ(シールド+チェーンガン)
トリニティ総合学園中等部3年生
年齢 14歳 身長143cm
トリニティ総合学園中等部3年生、帰宅部。温厚でぼんやりした雰囲気の少女。交通事故後のトレーニングにより身体能力を大きく向上させ、重量級の盾とチェーンガンを携行できるようになった。少々変わった漫画や小説を好む読書家。右腰にSGを引き続きぶら下げている。盾はミレニアムエンジニア部の特製で、椅子として腰掛けたり様々な便利アイテムを収納しておくこともできるようだ。
役割 STRIKER FRONT 貫通 重装備 市街B 屋外C 屋内B MG
誕生日 7月24日
EXS Shot in the dark 狭く長めの扇型範囲内の敵に対して攻撃力の600%分のダメージ
ノーマルS 繰り返される諸行は無情 最大体力25%を切ると発動(3回まで) 5秒間行動不能になるが、最大体力の15%を回復する
パッシブS Power to the believe 防御力を10%増加
サブS カラテあるのみ EXスキルまたはノーマルスキルの発動後、攻撃力を29%増加、発動後すぐにリロード
固有武器 ウッドペッカー(NN-30)
イヴが使用するリヴォルバーカノン。携行可能なように銃身が短縮されている。キツツキのような衝撃と、銃を撃っている間に頭がトリガーハッピーになる自分への自嘲をかけている。
なお、キツツキの脳は小さ過ぎて脳震盪を起こさない。
紙での小説の書き方に基づいて書き続けていたロートルとしての改行等を改めつつ、同時に加筆修正を行いました。話の本筋には変更ありません。2025.01.19