ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
陰陽部への愚痴を聞かされつつ歩いて行くことしばし、現代人感覚としても割とでかい、4層の天守を持つ城にたどり着いた。低い土塁と幅広の縄張りは一応火砲にも対応
「おお~!要塞というか、お城ですね?!」
「……前、百鬼夜行来たときは見に来なかったね……」
「"エレベータとかあるとありがたいな"」
「大丈夫、エレベータはありますよ!」
「……先生は、運動した方がいいかも……」
「一緒に登りましょう!」
ええー、って顔をする先生と、まあ大して時間変わらんだろうし良いかって顔の河和シズコさん。
「そもそも罠や防衛システムがあって、普通には入れないはず……」
「あ、先生だ。イヴも、お久しぶり」
「"チセ?"」
「あ、あの……」
ほんわかというかふんわりというかな雰囲気を漂わせた和楽チセさんが天守閣前に向かえに来てくれた。
「……レイサちゃん、チセさん……シャーレの当番で、仲良くなった……。チセちゃん、宇沢レイサさん。私の大切な、お友達……」
「よろしくね、レイサ」
「チセ、陰陽部の部長は?」
「タヌキさんと先生と、先生の護衛に2人来るのは、ニヤ部長が言ってた。でも、部長はもう下校したからいないよ」
「はあ?!っていうか、タヌキさんって私?!」
「部長から伝言。『今の困り事、私達は助けられないし百花繚乱も多分動けないけど、修行部に頼んでみて』だって」
イヴちゃんが鮫の顔を模した財布を取り出して、その中から小さい蟹の食玩を取り出す。銀色に塗装された変な奴、イヴちゃんがガチャガチャで引いて「チセさんに会うことがあったらあげよう」って言ってた奴だ。
「カニさんくれるの?ありがと~」
イヴちゃんはにこりと微笑み、先生も微笑ましいものを見ている顔。河和シズコさんはスマフォを取り出して何事かを調べてメッセージを送っている。多分修行部がどこにいるか知りたいのだろう。宇沢レイサさんは何というか形状しがたいもにょもにょとした顔をしている。しわしわピカチ○ウが近いかな。
「……どこか、痛い……?」
「い、いえ?!元気です!すごく元気ですよ!はいっ!」
その場でバク転する宇沢レイサさんと近づくイヴちゃん。熱がないか、おでこを触っている。真っ赤になって熱くなってきたけどこれは風邪とかじゃないだろうから、ややこしい。
「え、えっと、レイサさん、大丈夫?」
「は、はい!平気です!」
力こぶを作ってみせる宇沢レイサさんと、あらあらって感じで微笑む先生。
「ま、まあしょうがない。チセ、ありがとうね」
「うん、またね、タヌキさん達」
「タヌキじゃないし!!!」
まあ確かにどっちかというと河和シズコさんはタヌキ顔ではあるが。
修行部の本部というか、春日ツバキさんと水羽ミモリさん、勇美カエデさんの家らしいんだけど。修行部の存在は当然把握しているから、河和シズコさんが先頭で迷いなく歩いて行く。
「それでですね、この通りができたときに、あの大きな橋を通すために川を一旦せき止めたらしくて」
「へえ~」
「"シズコは物知りだなあ"」
「観光で成り立ってる学園ですからね!名所の説明くらいはできないと。それに、この道の先には百夜堂の倉庫があ、ぐえっ?!」
「"?!"」
宇沢レイサさんが河和シズコさんを突き飛ばし、イヴちゃんが先生の襟首を掴んで盾の後ろに引きずり込んだ。
もちろん2人がおかしくなったとかではない。銃弾と少し遅れて銃声が河和シズコさんのいた位置を通り過ぎる。先生は狙われてなかった*1が、念のためだ。魑魅一座がわらわらと周囲を囲むように沸いてくる。
「いたぞ!先生とお祭り委員長だ!」
「あたた、びっくりしました。でも、助けてくださったんですね。シズコ嬉しい~☆」
「ご、ごめんなさい……」
フォローのつもりなんだろうけど、逆に宇沢レイサさんはどういうノリで反応していいか固まってしまった。
先生の指揮による情報がイヴちゃんの視界に入ってくる。今朝もだけど相変わらず不思議なシステムだ。
盾と
「やあっ!」
「……シッ……!」
久田イズナさんの綺麗な飛び蹴りを全身を小さく跳ねさせ上段受けで受け止める。
反動を使って飛び退き、空中で一回転しつつ短機関銃の弾をばらまいて着地した久田イズナさんは天真爛漫な笑みを見せた。
「さっきも最初の一撃を受けられましたし、雇い主に聞いたとおり、2人ともトリニティの実力者というのは本当ですね!」
「"雇い主?イズナ、どうして魑魅一座と一緒にいるの?"」
「真の忍びとなるためです!任務をこなし、主を探す。それがイズナの夢で、目的なのです!わっ?!」
イヴちゃんは鎖を引いて盾を引き寄せつつ
「させません!」
クナイ・ダートを投擲しつつイヴちゃんが盾を引き寄せるのを妨害しようとして突っ込んでくる久田イズナさん。
小さく息を吸って弾の切れたクラリオンでクナイを叩き落とし、空中に銃を放り投げて身体を小さく躓いて転ばせるように前進、左腕を引いて腰を入れ右の中段突き。受けて投げか何かの動作に繋げようとした久田イズナさんはイヴちゃんの拳を見て蒼白になって回避に切替え、イヴちゃんから見て右側に宙返りして避けた。あんまり嬉しくないけど、動体視力も反射神経もイヴちゃんより上だな。キヴォトスでリアルニンジャの看板上げてる*2のは伊達じゃない。
イヴちゃんの本気パワーでしっかり腰を入れた中段突きがしっかり入れば大体の場合一発で勝負が決まるのだが、そんな楽には当然やらせてくれないな。身体を右に捻る勢いで盾を回収して短機関銃の弾丸を凌ぎつつ、クラリオンの弾を込め直す。
(イヴちゃん、投げとか関節技もあるっぽい。気をつけて)
(……わかった……)
「……ノーカラテ・ノーニンジャ……あなたのニンジャは上っ面の邪悪から出たもの?カラテに裏付けられてる……?」
「じゃ、邪悪ではないですけど?!それに、空手は百鬼夜行で生まれたんですよ!トリニティ産でもミレニアム産でもありません!今や巻き返しの時です!」
イヴちゃんは盾の下端を落とすように足の甲を狙って叩きつける。蹴りを入れて距離を取ろうとするのをクラリオンで追撃。
宇沢レイサさんは障害物も活用しつつ、大人数で押し包もうとしてくる魑魅一座を上手く捌いて時間稼ぎしている。が、いくら宇沢レイサさんが強いといっても何十人で囲んで叩かれ続けては無理だ。
「せ、先生!レイサさんが危ないです!あと、あっちは桜花祭で使う物資が入った倉庫が……」
上空から見ると片仮名のトの次の横棒と縦棒の交わる付け根の辺りに僕達がいて、倉庫は真っ正面の北側。敵は正面と右手から沸いてきていて、宇沢レイサさんだけが分断されている状態。ひとまず先生は頑丈そうな作りのお店に避難してもらうことにした。先生は宇沢レイサさんと河和シズコさんの2人で北側の敵を何とかするつもりらしい。ウッドペッカーの流れ弾も心配だし、妥当な判断だろう。30mmMGの弾だと並の倉庫なんて瓦礫にあっという間に変換されてしまう。
「"イヴ、相図したら2秒だけ10時の方向にウッドペッカーを撃って、3、2、1、今。撃った後、盾を水平に振って"」
久田イズナさんの左ローキックを右脛で受けて踏み込みつつ右フック、反撃の前蹴りをかわして少し間合いが開いた瞬間に先生の指示通り火力支援。ぶっ倒れた魑魅一座の身体を容赦なく踏んで河和シズコさんが前進。身長より大きな盾を左フックで振る。くぐるようにタックルして来た久田イズナさんに向けてイヴちゃんが倒れ込み、タックルを切る。2人とも倒れ込む前に久田イズナさんがするっと抜け、立ち上がりざま右手を取られた。久田イズナさんの目が輝く。まずい、関節技か?
(イヴちゃん、持ち上げて!)
蛇のように両手が巻き付いて右手首が極められる前に膂力で無理矢理投げ上げて久田イズナさんは宙を舞い、逆側に叩きつけられるのを避けて追撃を阻止する短機関銃の連射、後転着地。
「いや、どんな力ですか?!」
「……筋トレの力……?」
久田イズナさん換算だと10人分を普段から片腕で抱えてるからね。返し方としては下の下なんだろうけど、無理矢理筋力で何とかできちゃうこともある。
はっと久田イズナさんが周りを見ると、魑魅一座はほぼ壊滅して、あと何人かが宇沢レイサさんと援護してる河和シズコさんにやられるか逃げるのが先かみたいな状態になっている。イヴちゃんの周りは2人のカラテラリーと銃弾の流れ弾でやられたか逃げ散ってしまっている。銃声も疎らになり、先生は建物から出てきて真摯な顔で久田イズナさんに声をかけた。
「"イズナ、みんなが楽しみにしているお祭りを妨害するような、そんな忍者になりたいの?"」
「え、ええっ?!雇い主からは『祭りを滅茶苦茶かつ台無しにしようと企んでいる相手を排除しろ』って言われてますけど?!」
マジかよ、って顔をする先生以外の面々。イヴちゃんもちょっと眉をしかめた。
「"主催は、そこにいるお祭り実行委員長のシズコ。シズコも私も、もちろん一緒に来てくれたレイサもイヴも祭りを台無しになんてしない"」
「は、あ、えっ、そ、いや……。で、でも、シャーレの先生といえば!生徒の足を舐めたり、首輪をつけたり、メイドの格好をさせたりしていると雇い主も言っていました!私を騙そうとしているのでは?!」
うっ、と言葉に詰まる先生。詰まらんといて?!?!やっとるんか?!?!?!ある意味、場の空気が変わったな。
先生のプレイ(意味深)に付き合っているというか被害にあった子はゲヘナ、ゲヘナ、ミレニアムの生徒です。
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