ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
百夜堂の裏手、路地といっても人4人は横に並べるくらいの道で、楽しげな観光客が行き交っている。
とはいえ、別にこうやって道ばたに立って話してる人の盗み聞きなんかはする奴はいないだろう。一応、強化した聴力で警戒はしておくが。
水羽ミモリさんが言い辛そうにもじもじしている。もじもじしてるのも何というか、楚々としている感じがあるな。宇沢レイサさんがイヴちゃんを前にした時のもじもじさは何というか、小さい子が、好――。
「その、イヴさんの中にいる誰か、あるいは何かのことです」
?!?!?!?!?!?
(……ジル、どうする……?)
(え、ええ~~~~?!いや、これ神秘由来なんじゃない?!)
「ごめんなさい。いきなりぶしつけでしたね。ご病気であるとか、言いたくなければそれでも構いません。私は、人の挙動をよく観察することで、その人の心が少しわかるのです」
(うーん、嘘が下手だな。ミモーリィ)
(……どうして……?)
(今日、イヴちゃんと僕は入れ替わってないし、身体のどこかを借りたりしてない)
「嘘だとお思いですか?」
「……挙動を観察することで、というところが。……違いませんか……?」
ピクリと固まる水羽ミモリさん。
心を読めること、まあもちろんアドバンテージも凄いんだろうが、発覚した時のアレも相当だもんな。『家族八景』『さなぎ』なんかでもお馴染みのテーマ。人間、誰しもやましい心を持たずに生きられないからな。
「……別に、責めたり暴いたりは、したくありません……。逆に、ミモリさんも、そう、ですよね……?」
まあそうだよな。僕を暴いて晒してみたいなのをしたいなら、さっき店の中とか、あるいはもっと早くても良かったわけで。
ふぅ、と小さい溜息をついた水羽ミモリさん。
「ごめんなさい。侮っていたつもりはありませんでしたが」
「……お互い、仮定の話、ということにしませんか……」
頷く水羽ミモリさん。
交通事故に遭ったこと、それを助けてくれたジルという存在が自分の中にいること。身体の主導権は自分にあるが、話し合って自分が主で行動していて、預けることができること。推測ではあるが、病気ではないこと。悪い存在では無いと思うこと。初めての大切な友人であること。
イヴちゃんが訥々とした語り口で告げる。僕は感動してしまった。
「すだれ、あ、あそこの窓にかかっている竹でできたカーテンですね。その向こうにいる、ように私は思えます。その……今、暴れてませんか……?」
(……ジル、少し静かにして……?)
(ご、ごめんね……?)
喜びの余り跳ね回ってたのが怒られてしまった。てへぺろ。僕がてへぺろしても可愛くねーのが難。
今度は安堵の溜息をついた水羽ミモリさん。
「とにかく、悪い物では無いのであれば、一安心です。私が何かできるかというと、残念ながら大した事はできないのですが」
「……心配してくださる気持ちは、伝わりました……ありがとう、ございます……」
僕がイヴちゃんに害なす悪い生き物なら直ちに自害するんだけどなあ。もう生きておられんごつ、的な。
でも生きあがいちゃうかなあ。やだなあ。
なるべく、大好きなイヴちゃんと一緒にいたいと思っちゃうかも。
(……大丈夫。ジルは時々変だし、時々臭いし気持ち悪いけど、大事な友達だから……)
(か、辛辣ぅ~!!!でも凄い嬉しい!!!ありがとうイヴちゃん!!!!ちなみに比率でいうとどれくらい?)
(……駄目なところが、38%……40%を超えたらアウト……)
(わァ……ア……!)
(……ふふ、冗談。5%くらい……?)
ふふ、と笑いあう僕達。
(ところでさ、接触したら僕から話しかけられたりするのかな?)
(……聞いてみる……)
イヴちゃんの問いかけに応えて文字通り手を貸してくれるのを、両手を握る握手で握りしめた。ほんのり顔を赤らめる水羽ミモリさん。
(聞こえますか……聞こえますか……エンチキ*1ください……)
「今のところは、なにもありませんね……。そもそも、漠然としたイメージに近いもので、思考の文字を読んだりはできないのですが」
(あっ、この状態で変わってみる??)
「……今、ジルに代わりますね……」
(エンチキを……エンチキを売ってください……)
「鶏??鶏のからあげ??ですか??」
脳内でハイタッチする僕達。なんのまじないだ。
ところでこの絵面、清楚和お姉様と天使ロリのおね百合じゃない??かなりいいやつ。
と思った途端、水羽ミモリさんが鼻をひくつかせた。
「???何か、凄い悪臭が……??」
ごめんて。イヴちゃんも割とお冠なっちゃった。
「何かあったら相談してください」という水羽ミモリさんとモモトークを交換した。本当に優しい子だなあ。
(それに、イヴちゃんと僕に気付かれるかも、っていうリスクがあっても確かめようと思ってくれたんだもんなあ。あ、イヴちゃん的には大丈夫?)
(……心配してくれてるのが、わかったから、平気だった……)
(イヴちゃんの心は清渓川より綺麗だから大丈夫!とは思うけど)
(……え、どこ?……私だって、できなくて悔しかったり、どうしてって思う事はあるよ……)
イヴちゃんでもあるんだなあ。そらそうか。
戻ってくるまで全員のメニュー提供を待ってくれていたらしい。
「お帰りなさい!」
「ミモリ先輩、イヴと2人で何の話してたの?」
「ふふ、今度、花嫁修業のためにトリニティの礼儀作法も勉強したくて。イヴさんに教わっていました」
「えー!私も素敵なレディーになるために教わりたい!」
勇美カエデさんの発言を皮切りに、飲み物と食べ物が順次運ばれてくる合間を縫ってみんなでモモトークのアカウント交換の流れになった。春日ツバキさんは寝てるから後で送ってくれるらしい。
宇沢レイサさんは無言で座り直したイヴちゃんの手を握って、目を見る。イヴちゃんが微笑んで頷いて、ちょっと赤くなった。でもこれで大丈夫だというのが伝わったみたいで、手を握ってる力が少し柔らかくなった。うっ、深く考えると僕がアカンようになるかもしれん。妬みの心をイヴちゃんの大事な友達に持つなんて駄目だ……鎮まれ……俺の邪心……。
自分の中の悪と戦っているうちにも皆は美味しいご飯を食べて楽しい話に花を咲かせている。
何気に屋根の仮修理が終わったらしく、業者さんが帰って行く中で料理を持ってきたり、百夜堂の中はちょー賑やか。
先生はやっぱり大人気だ。まあ今日も尽力してくれたし、同性だし珍しい大人だし先生はキヴォトスに1人しかおらんしな。
「"結婚とか、まだ考えたこと無かったなあ。ミモリは偉いよ"」
「そ、そんな……」
水羽ミモリさんがてれてれしてる。
宇沢レイサさんはにゅうめんセットを注文していて、イヴちゃんと味見でそれぞれのメニューをあーんさせていて注目を集めた。ほぼ毎日やってるのに宇沢レイサさん毎回顔真っ赤だし、自分がやるときもおぼつかない感じで全然慣れないよな。初々しさが可愛いのけども。
「トリニティってそんなのするの?!」
「……先生から、教わった……」
「"あっ、前に2人でシャーレに来たときのアレ?!"」
注目が一気に先生に移る。河和シズコさんのジト目と、他の一同の尊敬(?)のまなざしに冷や汗をかく先生。
「大人ってやっぱり進んでるんだ!先生みたいな素敵なレディーを目指したらいいのかな?」
「"あんまりお勧めはしないかな。なるべく、みんなに恥じない生き方をしようとは思ってるけど"」
全体の方向としては悪くないと思うよ。細かい駄目駄目なところは真似しないように気をつけないとだけど。ムシクイーンとかで散財して先生みたいに財布的な意味で大変な事になっても困るだろうし。
楽しい時間はあっという間だった。イヴちゃんと宇沢レイサさんは久田イズナさんにビデオ通話で近接戦闘を教わる約束を取り付けて、ライダースーツやらプロテクタやらをつけて
「大きいバイク……この音だと、寝られ無さそう……。zzz」
寝てる。めっちゃ寝てる。まあ静音/市街地モードではあるけど。
「ありがとう、レイサ、イヴ!百夜堂の屋根が直ったらまた食べに来てね」
「お待ちしてマス!」
「イヴさん、お気をつけて。レイサさんもまた」
「2人とも待ってるからね!次に会うときはもっと素敵になってるから!」
「今度は通話で!武道を学び直したりしておきます!」
「"帰り道も気をつけてね"」
「皆さん、また遊びにきます!」
「……また……」
もらったお土産をしまって、イヴちゃんと背中にしっかり抱きついた宇沢レイサさんを乗せて市街地なのでゆっくり静かに走り出すスケルチ。百鬼夜行、楽しかったけど、百花繚乱の人手不足とか大丈夫かなって要素もあったな。報野モユルさんにそれとなく聞いてみた方がいいかも。
アイドル?!アイドル実装ナンデ?!特にサクラコ様欲しい!!!なりましたけどこないだ百花繚乱生欲しくなってガチャ回したところなんですよね。限定、限定かァ~。
本作のミモリはぼんやりと人の心がイメージとして掴めるという解釈です。
普通なら一人にひと塊のイメージが概ね二個あって困惑したけれども、疾病や物の怪のたぐいの憑依ではないか心配して声をかけてくれました。
百合妖怪といえば妖怪だし、憑依ではあるんですが。
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