ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
マコト様はギャグ時空に生きてはいるけども有能な面もあるという解釈での回です。ギャグ時空に戻る回もある予定です。
先日の桜花祭、といっても祭り自体は一週間は続く。生徒達の力を借りて問題を解決したのは初日だ。
お祭り実行委員会委員長であるシズコが問題の自力解決に拘ったのは経験への自負だったのか、それともデッドラインが初日だったのか。本人に聞いても教えてはくれないだろうが。
朝9時過ぎ、私は最初に捕虜になった元魑魅一座の生徒を連れて、ゲヘナにやってきていた。
事前に受け取ったゲヘナの制服を着て居心地悪そうにしている手を引いて、駅でリムジンの迎え、一番後部座席に乗せてもらう。
「"イロハ、お迎えありがとうね"」
「ふぅ……いえいえ、とんでもありません」
「"溜息が隠しきれてない……"」
「めんどうな用事だとは思ってますよ。授業がサボれるのはありがたいですが」
びくりと身を震わせる隣に座った生徒を宥めつつ、ミラー越しに軽くイロハを見る。
「あなたのことではありませんから、ご心配なく」
「"そうそう、イロハはいつもこんな感じだから"」
「はいはい」
あれやこれやと気を紛らわせようと話しかけるが、表情が柔らかくなってくれない。
幸い、渋滞もなく、車内据付の冷蔵庫で冷やしてあったジュースを飲んで落ち着いた生徒を連れてゲヘナの事務局へ。イロハは授業に一応出るらしい。
「せ、先生……。ありがとうございました」
「"ううん、また様子も見に来るから。元気でね"」
彼女はこれから転校というか、百鬼夜行の学籍は既に無くなっていたので転入手続きだ。基本的な手続きは私が済ませておいたので、サインくらいだろう。今日はオリエンテーションがメインになる。頭を下げる生徒に軽く手を振って、私自身は万魔殿へ。
いつも通り混沌としているなあ、という校内を好奇や親愛、時には猜疑や不信の目で見られながら歩くこと数分、万魔殿の入口で形式的なチェックを受ける。IDを提示する程度だけれども。おや、今日の門衛は片方が悪魔族、もう片方が天使族だ。もちろん、どちらも万魔殿親衛隊の制服を着ている。
あまりじろじろ見るわけにもいかないからさっさと中に入った。小さく口論するような声が聞こえたが、大丈夫だろうか。
案内に来てくれた生徒の後に続き、金色に輝くマコト像の間を抜けて議長室(厳密には議長応接室というらしい)へ。
「キキキッ、よく来たな、先生!」
議長室ではマコトが座り心地の良さそうな椅子に座っていた。他の生徒は授業中だからか、イブキも含めていない。
「"マコトは授業出なくて大丈夫なの?"」
「先生を迎えるのに勝る用件の授業はない。それに今日の授業だと、4時限目しか取っていない」
意外とというと失礼だけど、ちゃんとスケジュール管理しているようで一安心。
ふかふかのソファを勧められて腰掛ける。美味しそうなコーヒーとプリンを出してもらった。
「さて、今日は転入生、いや編入生か。1人連れてきたそうだな?」
「"うん、急にごめんね"」
「キキキッ!構わんよ。ゲヘナの門戸はあらゆる種族に開かれている。今日連れてきた生徒は百鬼夜行の獣人だそうだな?」
「"そうなんだね。そういえば、門の入口で天使族の子を見たけど"」
心底おかしそうに笑うマコト。
「あいつは他学園からの編入生だ。幼馴染みの悪魔族が嫌いでしょうがないというのにわざわざついてきた変わり者でな。気に入ったからその幼馴染みと共にシフトを組ませている」
隣の子がその幼馴染みだったのだろう。なるほど。
「先生はゲヘナ内での私への支持率が何%か知っているか?昨日、クロノスのゲヘナ支部が集約したばかりのものだ」
「"いや、知らない"」
「3%だ」
「"3%"」
思わずオウム返ししてしまった。またおかしそうに笑うマコト。
「ゲヘナで秩序を樹立し、政治指導を行おうなどという変わり者など数えるほどいないし、それを支持する生徒もほとんどいないということだな。一応補足しておくが、不支持が97%ではなく、無関心が90%、不支持が1%、残りは無回答だ」
「"ええ……"」
「元々、こういう傾向はゲヘナに強かったが、ここまで酷くなったのは雷帝の――」
言葉を切ったマコトは、わざとらしい咳払いを何度もする。
数分間の沈黙、コーヒーを飲み終えたマコトが何も無かったかのように話し始めた。『雷帝』については調べておかないといけないかな。
「先生、私はな。ゲヘナに新しい勢力を作りたいと思っている」
一転、真面目な顔で身を乗り出したマコト。
「"具体的には?"」
「親議会派だな。親マコト派といいたいところだが、私が卒業して瓦解しては何の意味も無い。仮にも選挙で信任された万魔殿議長がこの支持率では、巨大学園であるゲヘナの実際に動員できる能力もたかが知れているし、私自身も身動きが取れん。こともないのだが」
こともないんだ。
「ゲヘナの実情は、風紀委員会、というよりは空崎ヒナ1人の暴力と、それに翼賛する風紀委員会で学園という枠組みが成り立っている。万魔殿の役割は風紀委員会を支援しつつ牽制するというものでしかない」
「"警察兼軍隊は政治の手段のはず、ってこと?"」
「話が早くて助かる。空崎ヒナが私、というより万魔殿の指揮下に服しているから何事もないだけだ。奴はあの天性の能力に反して植物のようにやる気もない。そこがますます気に食わんところで――」
ヒナの悪口が無限に出てきそうだなあ、と軌道修正を図る。
「おっと、すまんすまん。野心家がその位置につけばどうなる?」
「"クーデター……"」
「安定した政治権力の確立のために、生徒の意識改革を図りつつ、ゲヘナの理念と親議会の生徒受入を図るという寸法だ。元々、少数派の種族は在席している。人口比率が劇的に変わるほどではないだろうが、これからも生徒の受入は続けるつもりだ」
「"それで、『名前を書けば通る』みたいな試験を作ったんだ"」
「どっちみち授業を真面目に受ける生徒自体が少数派だからな。補講でカリキュラムまで追いつかせればいいだけだろう?廃校になった生徒もどんどん受け入れるつもりだ。生徒の身分を失えば路頭に迷いかねんし、そうなれば『ゲヘナでもいいや』と思うだろう。ゲヘナの良さを知ってもらうのは入ってからで構わん」
「"学園の受入能力は大丈夫なの?"」
「連邦生徒会は、ゲヘナが生徒を受け入れるなら必要なカネは出すと言っている。まあ、連中からすれば体の良い一次避難所といったところか」
内心、キヴォトスの現状に溜息をつきそうになる。
「"……困った時には、お願い事をしてもいい?"」
「生徒が増えるのは私にとっても望むところだからな。まあ、先生からならもう少し何か取り立てられそうでもあるが。例えば、キヴォトスの征服の手伝いとかな?」
「"できる範囲なら、努力するよ。征服は無理かな"」
「つれないな。キキキッ!」
誰もかれもゲヘナに丸投げするわけにはもちろんいかないけど、いざというときの駆け込める場所が増えるのは本当にありがたい。
それにしても、先生というのはどこまで介入すべきなのだろうか。さっきマコトが言っていたとおり、大人でない人間が学生としての身分を途中で無くせば生活にたちどころに困るキヴォトスでは放っておいては不味いことも多い。一応、連邦生徒会の事業はあるが、学生身分を復活させるための転校や編入の間のツナギに過ぎないのが現実だ。制度を知らないからか、連邦生徒会からの干渉を嫌ってか利用しない生徒も少なくない。
アビドスに関わって、不採算校の事例を調べてみたものの、中小校同士が連合したり、大型校に吸収合併される例が多いようだけれども、学校自体を愛している生徒からすれば反発もあるだろう。
頭が痛い。連邦生徒会の生活支援事業の拡充を頼んだところで、最終的には転校や編入が必要だし、社会制度そのものに手をつけるなんてそれこそ越権もいいところだろう。
マコトに次の予定があるらしく、案内してくれた子が呼びに来たので、マコトに手を挙げて万魔殿を後にした。
おや、シズコから『ミレニアムのこのアプリで正面・横・背中側の全身写真を撮って送って下さい』とメッセージが来ている。
生徒達の奇異の目に晒されながらも撮って送った。
門衛の子2人はケンカップルです。この作品のマコトは政治はわかりますが恋愛はわからないのでデキていることに気付いていませんし、門衛2人→マコトへの忠誠度が無限に上がっているのは「2人をいつも一緒にいさせてくれること」が原因なのですが、マコト自身は政策と自身の人格由来だと思っています。
万魔殿が種族を問わずに生徒を受け入れることが「ゲヘナは種族において差別をしない」というメッセージの発信にも繋がっています。
ブルアカ、先生が廃校になりそうな学校を片っ端から救っていこうとする話にならないのは何らかの対策があって、生徒が利用すればちゃんと生活を再建できる(諸事情でヘルメット団や不良グループ等々に加わらざるを得ない子も勿論いる)からだと当作品では解釈しています。
桜花祭「当日」と過去話で書いててかつ複数日あるのを書き忘れてたので補足しました。申し訳ありません。
仕事めちゃ出来るガールのシズコが最終日までトラブルを放っておくはずはないので。
最新イベント最高でしたね。素晴らしかった。なんちゅうもんを作ってくれるんや……。
明日はナ・ラーに取材外出予定なので多分お休みです。
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