ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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あなたが雲だったのですね そんな我流は無形みたいな

 先生はじめ3人で百夜堂から追い出されてしまった。ちらちらと先生を見ながら通り過ぎていく通行人の視線を感じながら、顔を見合わせる一同。

 先生はしっかり繋がれた宇沢レイサさんとイヴちゃんの手を見てから、にこりと笑う。

 先生が口を開く直前、互いの目を見てから、一度深呼吸して宇沢レイサさんが口を開いた。

「先生!!!よかったら一緒に回りましょう!!!!」

 うわあ声でっか!でもイヴちゃんはニコニコしてる。*1

「"お邪魔じゃない?"」

「……大丈夫、です。一緒だと、楽しい……」

「そうです!!」

 左手はイヴちゃんの右手を握ったまま、宇沢レイサさんが右手で先生の左手を握る。

「一緒に行きましょう!」

「"ありがとう、レイサ、イヴ"」

 ちょっとうるっと来てるっぽい先生。3人並んで見た目は全然似てない3姉妹っぽい感じになったね。

 

 最終日前日は他校生が押し寄せてくるかき入れ時で、色んな学校の制服を着た子達と様々な屋台で溢れかえっている。宇沢レイサさんもイヴちゃんも1回百鬼夜行のお祭りに来ているけど、屋台のバリエーションも豊富だし目を輝かせて見ている。

 結局3人で手を繋いでると横幅取りすぎるな……ってことで、先生が前に、気持ち前に出た宇沢レイサさんがカバーしつつもイヴちゃんとしっかり手を繋いでいる状態になっている。

 宇沢レイサさんが主に先生と話しつつも、ちょっと手に力を入れると、イヴちゃんも力を入れて抜いて返事をして、宇沢レイサさんがニコニコするという不思議なコミュニケーションが成立している。可愛いね。

 

 お昼になって、先生が焼きそばとたこ焼き3種類、手羽先と綿あめ*2を奢ってくれたので木陰のベンチでパクつく3人。もちろんたこ焼きをお互いにあーんさせるのをやっている。先生は最初「"公の場だから"」と言っていたけども、「……シャーレの部室は公の場なのでは……?」という指摘を受けて撃沈していた。

 先生が最初に自分の分を食べ終わって、2人に断ってから業務連絡の確認にスマフォを見ていて悲鳴を上げた。背中に立って何かを首筋に突きつけられている。

「"うわひゃあ?!"」

 イヴちゃんが食べかけのたこ焼き舟皿*3を真上に放り投げ、クラリオン(STG)を構えて、ちょっと困った顔をして下ろした。

 同じく焼きそばの残りを一気に口に入れてシューティング☆スター(STG)を構えた宇沢レイサさんも相手を見て動きを止めた。

 落ちてきたたこ焼き舟皿をキャッチ。

「……こんにちは……」

「もぐもぐもぐ……ん。こんにちは!!」

「"あっ、えっ、誰?!何?!"」

「やや、これは失礼しました!主殿、レイサ殿、イヴ殿!」

 背伸びをして先生の首筋に缶ジュースを突きつけ、もとい当てていたのは久田イズナさんだった。

「"び、びっくりした……"」

「えへへ、そんなに驚くとは、すみません。あ、お2人もどうぞ!」

 ポ○ジュースっぽいスチール缶のジュースをもらってお礼を言う2人。ちゃんと冷えている。

「主殿、誘ってくださっていたのに遅くなってすみません!」

「"とんでもない。忍術研究部は無事に入れたの?"」

「はい!!心配してくださってありがとうございます!あっ、チャンネル登録者のイヴ殿にもよろしくと部長が言ってました!」

「……応援してる……」

 まだ新部員入った動画は出てないけど、久田イズナさんの身体能力だと凄い動画が撮れる、かなあ。

 

 先生は忍術研究部の面々に挨拶したいということで、先生は久田イズナさんと学院の方に行くらしい。気を遣ってくれたのかな。

「レイサ殿、イヴ殿、案内できずごめんなさい!できれば、ご神木がよく見えるここはぜひ!」

「いえいえ!あっ、ありがとうございます!!」

「……ありがとう……」

「"レイサ、イヴ、ごめんね。夜、また百夜堂で花火を見よう"」

 申し訳なさそうな先生にニコニコの宇沢レイサさんと小さく微笑んだイヴちゃんが手を振る。今晩の花火は百夜堂で見るために集まるということになった。

 

 久田イズナさんがスマフォで座標情報を送ってくれたので、せっかくだしと行く事にした2人がのんびり歩いて坂を登ることしばし。お勧めの高台に出た。寺もあるし、そこそこメジャーな場所らしく、同じように神木見物に来ている生徒や屋台もあるけど、人混みで何も見えないってほどではない。

「おお~!!!本当に、凄く綺麗です!!!!!」

「……うん……」

 遠くに馬鹿げた高さとトリニティの校舎1つ分は余裕でありそうな太さの、桜の大木が満開の花を咲かせていた。馬鹿げたサイズの美に、2人とも小さく溜息をついた。直後、宇沢レイサさんが嬉しそうに小さく跳ねて、2人で神木を背景に自撮り。その後、数分ほど、2人とも無言で桜を眺めていた。

 

 イヴちゃんが屋台でサイダーを2本買っている間に、宇沢レイサさんが調べ物をスマフォでしていた。

「あの神木の下から眺められたら素敵かなと思いましたが、真下は虫も凄いそうで……どうしましょう?」

「……毛虫は、ちょっと……でも、手前まで行く?」

 まあ自然が豊かってことは、そういう事だよな。

 イヴちゃんの提案に嬉しそうに頷く宇沢レイサさん。

「そうですね!神社もあるらしいですし!」

 朱印帳買って集めてもらったら良かったかな、と思ったけど、いやいや、妬む神の信徒()が紛らわしい行動をするのは不味いな。寺とか神社に行ってるのはイヴちゃんであって僕じゃないから多分セーフ。

 

 ゆっくり歩いて、屋台やお店を冷やかしながら歩いて、2人とも溢れるよう*4な笑顔。桜花祭と百鬼夜行を満喫できてるようでよかったなあ。

 2人とも腕力的に何の問題も無いし帰りは違う道を通るだろうから、とがんがん気になったものを買っているので、やっと神木お膝元の神社にたどり着いた時点でエコバッグが凄いことになっていた。宇沢レイサさんのは何かの衛星の写真、イヴちゃんのはJudas Pr1estの"British Steel"っぽいジャケットの柄。『キヴォトス・スティール』ってなってる。

 神社に参ってから神木を斜め下から眺めるのに適した場所に行くと、そこそこの人混み。観光地だなあ。風が吹くと桜の花びらがふわあっと降ってきて歓声が起きる。何しろ大木なので半端()ない規模。花びらの雨みたいだ。

「わぁ!綺麗ですね!!!」

「……うん、本当に……」

 正面からごう、と少し強めの風が吹いて、イヴちゃんが目を横に逸らす。宇沢レイサさんはそのまま上空の桜を眺めている。

 イヴちゃんの目が、宇沢レイサさんのきらきら輝いて桜と空を映す瞳と、柔らかい笑顔に釘付けになった。

「……本当に、綺麗……」

 もう一歩近づいて、肩を宇沢レイサさんに寄せるイヴちゃん。宇沢レイサさんがこっちを見た。

「ど、どうしました?!」

「……綺麗だな、って……」

「そ、そそ、そうですね?!」

 は、はわわわわ……えらいこっちゃ……。イヴちゃんの好感度が明らかに上がっとるやないか。いやこれがえらいこっちゃって思うのは僕の勝手なんだけども。

 

 桜の花びらの驟雨を堪能した2人が神社のお土産販売店に寄ると、モモフレンズのここでしか売ってないらしい限定グッズがあった。割と安易なデザインの神木ペロロ*5と、木簡を持ったMr.ニコライ*6をイヴちゃんが手に取った。

「買うんですか?」

「……うん、ヒフミさんと、イブキちゃんに……」

 お土産かー。確かに限定品だしいいかも。とくにペロキチさんこと阿慈谷ペロキ……ヒフミさんには。

 あれ、ゲヘナの子は今後百鬼夜行に来る機会が増えるんだっけ?まあそれにしても別に要らんって事にはならんやろう。

「あっ、スズミさんとソフノちゃんとマリーさん、コハルさんにも何か買っていきたいですね」

「……図書委員会と、正義実現委員会にも……」

 個包装のお菓子、結構色々あるんだけど、生ものは日持ちしないしな~。

(あっ、生八つ橋がある。美味しいよこれ。試食してみたら?)

(……どれどれ……美味しい……)

「……レイサちゃん、あーん……」

「はっはい!もぐ……あ、美味しいですね!!」

 2人が買っていった生八つ橋で、同級生を中心としてちょっとした百鬼夜行菓子ブームが起きたのは後の話。

 

 のんびり歩いて戻ってきたら、丁度日が暮れて良い時間になっていた。重量的には問題ないけどかさばるのでお土産は宅配便で送ることに。明日中には着くらしい。運送業者さんありがとうだな。

「あ、レイサ、イヴ、お帰り!桜花祭、どうだった?」

「お帰りなサイ!」

「すごく楽しかったです!!」

「……美味しかった……」

 朝、昼、そして今とお客さんを捌く接客と注文取り、配膳の合間を縫って河和シズコさんと朝比奈フィーナさんが声をかけてくれて、2人とも弾んだ声で答えた。

 2人ともヨーヨー釣りや型抜き、射的とかの屋台もちゃんとチャレンジしてきたしね。まああんま器用なタイプじゃないから、射的以外のはイマイチだったけど。金魚すくいは2人ともやって、宇沢レイサさんが1匹だけ取れたけど、近くでやっていて全然取れずに欲しそうな顔をしていた子に上げてしまった。自警団本部で飼おうかとも言ってたんだけど、生き物はちゃんと面倒見切れないと困るしね。

「先生とイズナが戻ってくるまで、お茶でも飲んでて」

「修行部の皆さんはパトロールでちょっと合流は難しいみたいデス」

「それは残念ですね」

「……パトロール、手伝えばよかったかな……?」

(偶然その場にいた作戦ならやってやれん事も無いだろうけど、きっと修行部のみんなもお祭り楽しんでくれた方が嬉しいんじゃないかな)

(……そう……?)

 1,000%推測だけど、そんなに間違っても無いだろう。

 

 先生が無事に戻ってきた。宇沢レイサさんとイヴちゃんの向かいの席に座る。

「あれ、イズナは?」

「"忍者研究部の部長が『花火を使った新作動画を思いついた』からまた今度だって"」

「残念デス」

「ま、しょうがない。忍術研究部も大きくなってもらって、百夜堂(うち)とタイアップしてお客さんを呼んでもらおう」

「"流石だね"」

「さあさあ、百夜堂の美味しい晩ご飯を召し上がって、シャーレのSNSでも投稿してくださいね!レイサとイヴもよろしくね!」

「……SNSは、やってない……」

「私もやってないです!!」

「じゃ、じゃあモモトークだけでいいから……」

 頷く2人。

 窓の外を指して河和シズコさんが言う。朝比奈フィーナさんは店の仕事に戻ったけど、河和シズコさんは先生の接待(?)をするつもりらしく、先生の隣に座った。

「今回の目玉のホロ花火もね!」

「"楽しみだね"」

 

 花火を見たイヴちゃんが「……綺麗な花火ですね……」って言ったので、宇沢レイサさんと僕は興奮した。変なところで気が合うなあ。

*1
イヴちゃん検定2級ならわかるくらいの変化

*2
宇沢レイサさん曰くデザートらしい

*3
古式ゆかしい竹の皮だ

*4
イヴちゃんは傍目にはわかりにくいけど凄く喜んでいる

*5
演芸会の「木の役」みたいに木の中にペロロが入って顔と手足が出てる

*6
神木の木の皮は、特別な行事用に使われていたらしい




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