ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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ミレニアムプライス、もちろん他校からも注目のイベントだけど学校行事の一環イベントだから平日開催らしい

 百鬼夜行から帰ってきていつもの日常に戻って数日。お土産のお菓子とモモフレンズグッズ*1

 いつも通り鍛錬と寝る支度をしてから、追込2台体制でデバッグを進めていると、モモトークにメッセージが入った。

『完成!!ついにできたよ!!ここからはおまけ要素ちょっとだけ詰めるのとデバッグに順次メンバーが移行するので、もうちょっとだけよろしく!!』

 と、才羽モモイさんからメッセージが届いた。デバッグは昨日の実装部分までちゃんと進んでいるので慌てることはないけど、何が原因でバグるかわからないから、ボタン連打だの壁突撃だのを念入りにもう一周通しでやっておきたいかなあ。

 『おまけ要素って?』とイヴちゃんが送ると、『コンソールコマンドでGKBKaihatsushituって入れて!』と即返事が返ってきた。Game Development DepartmentじゃなくてGame Kaihatsu Buの略称ナンデ?

 っていうか、もう作ってるんだ。あー、F○4とかクロ○トリガーとかポケ○ンでお馴染みのあれかな。

 開発室は世界観を壊さない、グラフィックは色替えだけして既出キャラクタとBGMを流用したもので、シナリオライターの才羽モモイさん、グラフィッカーの才羽ミドリさん、プログラマの花岡ユズさん、デバッガの天童アリスさん、特別協力者の先生がそれぞれ一言コメントをくれてふふっとなる。あれ、もう1人いるな。お、白髪のサイドテールの女の子。話しかけるとデバッガとアドバイスの御蔵イヴと出た。

「……私だ……ふふ」

(良かったねえ)

「……うん……うん……?」

 話しかけると画面の中のイヴちゃんが台詞を喋った。

『……私はイヴ……勝負、する……? はい/いいえ』

 イヴちゃんは躊躇わず『はい』を選択。アンブッシュ*2バックアタック*3パーティ全員対象攻撃でパーティが半壊するところからスタート。思わず「……は?……」と声を漏らすイヴちゃん。

 かなりムキになって勝負したが、デバッグ用の平均レベル調整*4チームでは全然歯が立たなかった。

(メガ○ンの『メギドラ○ンでございます』みたいなもんだね)

(……考えてみたら、ああいうイベントって勝てるまであんまりやらない、かも……)

 『強すぎるんじゃ?』ってイヴちゃんが送ると、『でもイヴはスニーキングと広域攻撃両方『廃墟』でやってたよね?攻略必須じゃ無いしこれくらいでいいんじゃないかなってみんなと決めたんだ。ちなみに倒すと『機械天使の羽』っていう強めアクセサリーをもらえるから』

 あーうん、廃墟の取材体験がちゃんとフィードバックされて良かった、かな。うん。普通(?)の子から見たイヴちゃんってこんな感じなわけ……?イヴちゃんはもう一度返事を見て首を傾げた。

 

 イヴちゃんが寝てから、僕はまだデバッグしてたパソコンのモニタを睨みつける。デバッグモードでまあまあレベル上げしてラスボスにそこまで苦戦しない想定までレベル上げて……と。

 目的はイヴちゃんの敵討ちだ。まあ相手が当のイヴちゃんなんで何の敵かようわからんけど。これは単にゲーマーとしての好奇心。背中側から話しかけたら案の定最初のバックアタック先制攻撃は回避できた*5、けど回避力高いし盾でダメージ軽減してくるし、相手がイヴちゃんじゃなかったら(?)普通にクソボスって罵ってるわ。いや強すぎやろ。レベルカンストまでは上げないと駄目かこれ?はーやめやめ。コンソールでぶっ倒した扱いのコマンド入れて満足してしまったし、こや()マンチキンにごつ。僕も寝よ。

 

 更に何日か。ついにマスターアップを前日に終え、今日がミレニアムプライスの日。トリニティではもちろん関係が無いので*6、普通に授業、お昼ご飯(伊落マリーさんは来てくれたけど下江コハルさんは来てくれなかった)、授業を終えて、宇沢レイサさんを背に乗せてエンジニア部クソデカバイク(スケルチ)でミレニアムへ。

 今日はミレニアムプライスだからか、学外から来ている訪問客でごった返していて、別に入場客を捌く受付が臨時に作られていた。あ、ティーパーティーの制服着た人がいる。知らん人だけど。

 いつもの守衛さんロボには連絡が行っていたけれども、待つこと5分ほど。猫耳ヘッドフォンの子が訪問客と迎えの生徒や職員をかきわけてぱたぱたと走ってきた。

「ごめーん!遅くなった!イヴ、来てくれてありがとね!手伝ってくれて本当に助かったよ!」

「……ううん、私も、面白かった……」

 イヴちゃんに飛びつこうとした直前で、宇沢レイサさんに気付いたらしく急ブレーキをかけた才羽モモイさんに、一息吸い込んでから口を開く宇沢レイサさん。

「あっ、あの!!!初めまして!!!宇沢レイサです!!!!」

「あっ、イヴから聞いてるよ~!私、ゲーム開発部の才羽モモイ!レイサって呼んでいい?よろしくね!」

 宇沢レイサさんの回りをくるくるぴょんぴょんと跳ね回る才羽モモイさん。目線は宇沢レイサさんの顔としっかり繋いだ両手を行ったり来たり。

「さ、行こ!もうすぐ始まっちゃうよ、ミレニアムプライス!」

 才羽モモイさんがイヴちゃんの盾と脇の間に手を突っ込んで左手をわしわし握ってから、守衛さんロボに間違いなく招待客であることを伝え、宇沢レイサさんスマフォを預かりぽちぽちと手元のスマフォで処理をして、にっこり微笑む。

「お待たせ!これで入れるよ!」

「……一応、エンジニア部までと、ゲーム開発部まで、で、大丈夫……?」

「もー!イヴは心配性だなあ!あ、ミレニアムのジャケット持ってきた?」

 事務処理に関してはあんま無条件に信用できないからなあ。イヴちゃんが守衛さんロボに確認して、間違いないことを確認してから、スケルチのサイドにつけたリアボックスを開いて才羽モモイさんに渡す。

「ふふ、よしよし。後でサプライズがあるから!」

 サプライズがあるって言ったらサプライズじゃ無いのでは。同じ事を思ったらしく、イヴちゃんは完全に聞こえなかった事にしたようだ。

「……まず、先にエンジニア部に行こう。ミレニアムプライス、まだ2時間くらい先……」

「え~!オープニングイベント見たくないの?!」

「……別に……モモイさんは、見たい……?」

「良く考えたら別に知らないアーティストだったからいいや!先輩とかがバンド演奏とかしたらいいのになー」

 宇沢レイサさんもミレニアムプライスのイベントのWebページを見てるけど、別にあんまり興味無さそうだ。僕も知らないなあ。名前は聞いたことある気がするから有名人なんだろうけど。

「スケルチでぴゃーって行ったらいいんじゃない?400km出るんでしょ?」

「……この距離だと、乗ってすぐ下りるし、徐行……」

 勝手知ったるよその学園だもんね。イヴちゃんはもう自律走行モードで最寄りの駐車場まで走らせ始めている。

「ちぇー」

「ま、まあまあ。行きましょう、モモイさん!」

「そうだね!初めてのレイサに案内もしてあげないとだし!」

 エンジニア部までの道中に案内するものあったっけ?って顔をするイヴちゃん。校舎の外周回ってエンジニア部の工場もとい部室までだから、風力発電塔とか、食堂とか売店くらいか?

 

 とはいえ、正面エントランスも含めて凄く未来的な建物が林立しているので、宇沢レイサさんは物珍しそうだし、才羽モモイさんは大した解説してないけどドヤっている。*7

 才羽モモイさんがぐいぐい押して行き、宇沢レイサさんが答える形で話が弾み(?)気がつくといつもの工場、エンジニア部室前。

「やあ、モモイ、レイサ、イヴ」

 今日は猫塚ヒビキさんが出迎えてくれた。

「あ、ヒビキさん!こんにちは!!」

「レイサ、面識あったんだね」

「……ヒビキさんが、出張でトリニティに来てた……」

 エンジニア部員用の百鬼夜行土産の紙袋を渡すイヴちゃん。

「この間のアビドスの大蛇の骨髄、ありがとう。新素材開発部がまだ解析してるけど、明日にでも終わりそう」

「……何か、わかった……?」

「もちろん、既存の金属の組み合わせではある。鉄が中心で炭素を減らしたマルエージング鋼に近いもので、他に添加された金属が幾つか。そこがわからなくて、新素材開発部が分析中。合金の作り方自体も、加工の仕方も、現在の技術で再現できなくはないけど、コストが掛かりすぎるから設計思想としてそもそも現状の我々と大きく異なるみたいだね。設計の趣旨としては、寒暖差が激しい砂漠で、しかも地中というそれなりに高圧の場所を通過し、更に自身が高出力のレーザービームらしきものを取り扱うために、気温差に耐える設計のようだ。恐らくだが、元々は光ファイバか銅線が通っていたと思しきものなんだけれども、設計変更か補修時の仕様変更か、単にワイヤレス化しただけなのか、あるいは剥ぎ取ったあの下に更に構造があって、これは単なる断熱材兼装甲板に過ぎない可能性もある。失われた尾部が回収できればいいのだけれども。ともかく、この構造自体がコストに見合う物になればだけれども、何らかのヒントにはなるかもしれない。そうそう、精神的な影響については、化学方面や音響、光学からも調べてみたけど全然わからなかった」

 凄い勢いで解説し始める猫塚ヒビキさん。

「……つまり……?」

 ぽかんとした顔の3人を見て、ちょっと顔を赤らめた猫塚ヒビキさんが目を逸らして言い直す。

「現状では大した事はわからないしお金がかかりすぎるけど、今後の設計のヒントになるかも、ってところ」

「……なるほど……」

「役に立たなくても『役に立たない』ってことがわかるから成果になる、んだっけ?」

 才羽モモイさんが不思議そうに言い、小さく微笑んで頷く猫塚ヒビキさん。

 ミレニアムでもアレが何だかわからんかったか~。アビドスの大蛇(ビナー)、キヴォトス人の前の人類(?)だかが作った古代兵器のなれの果てだったんだっけ?

 と、猫塚ヒビキさんのジャケットの中からぶるぶるとスマフォの振動音が響いた。

「コトリがいたらもっと詳しく解説してくれたんだけど、ミレニアムプライスの司会に抜擢されたからね。あ、私ももうすぐ会場に入らないとだから、私はこれで。お土産ありがとう。皆に後で渡しておくから」

 猫塚ヒビキさんであれなんだから、豊見コトリさんが解説し始めたら多分ミレニアムプライス終わっても本題に入ってないんじゃ無いかな。

「エンジニア部はいいな~。誰かは入賞ほぼ確実だもんね」

「それはどうかわからないけど、自信はある」

「ミレニアムプライスってそんなに凄いのですね」

「凄いよ!入賞したら左うちわだし、ユウカが、あ、ユウカは知ってる?すっごく怖い生徒会(セミナー)の先輩なんだけど、ユウカが泣いて詫びるって言ってた!」

「……そんなの言ってた……?」

 知ってる、のところに頷いた宇沢レイサさんがちょっと困ったような顔をしている。

 いや詫びるのは言ってないと思った。っていうか、早瀬ユウカさんは心配してるだけなのに謎に目の敵っていうか怖がられてるっていうか。ちょっと不憫。

*1
ペロキチ姐さんには直に渡してドン引きするほど喜ばれ、丹花イブキさんには宅配便で送って大喜びのお礼メッセージをもらった

*2
ダメージ2倍

*3
ダメージ2倍と先制攻撃

*4
過剰にレベル上げ作業をしてない想定、ゲーム終盤相当

*5
こういうギミック、才羽モモイさんは好きそうだなって思った

*6
ティーパーティーの人が何人か行くらしいけど

*7
関わり合い無い部室とか知らんのは当然なんだろうけど




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