ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
エンジニア部にはお土産を渡すだけで*1ゲーム開発部にやってきた。
「……ヴェリタスとセミナー用のお土産も持ってきてたのに、さっきヴェリタスのを渡し忘れてた……」
「ん、ヴェリタスには私が渡しとくよ?セミナーは……ユウカとか来るんじゃない?プライス入賞の偉業を称えにね!」
「……ありがとう。私が渡してくれる……ワタシだけに……?」
「う、うん??いや、渡しておくけどさ」
滑ったなあ。才羽モモイさんも宇沢レイサさんも小首を傾げた。
ゲーム開発部の扉を開けると、イヴちゃんの顔を見て笑顔を浮かべた花岡ユズさん、才羽ミドリさん、天童アリスさん。
あ、花岡ユズさんは宇沢レイサさん*2がいるので顔色蒼白にしてロッカーに引っ込んだ。
「えっ、どうしました?!」
「あっ、いいからいいから。部長の花岡ユズなんだけど、レイサが初めてだから怖がってるだけ。ついでに紹介するね。イラスト担当で妹の才羽ミドリ、デバッグ担当兼プログラム勉強中の天童アリス。ユズはプログラマ」
「……ユズさん、レイサちゃんは、怖くない……」
「初めまして。イヴちゃんから聞いてます。姉が失礼なことを言ってませんでしたか」
「鋼の翼の戦士の相棒ですね!アリスはアリスです!」
「あ、あはは……。え、えっと、宇沢レイサです。レイサって呼んでください。ところで、先生がいると聞いてましたが」
怖がられて結構落ち込んだっぽいけど、自己紹介*3を挟んで自力で持ち直した宇沢レイサさんえらいなあ。少しずつこういうところが強くなってると思う。
「先生はミレニアムプライスの冒頭に挨拶頼まれちゃって、ノア、あ、生徒会のセミナーっていうところなんだけど、そこの人に連れてかれちゃった。挨拶終わったら戻ってくるって」
「お姉ちゃん、それより、昨日の晩に作品公開したのはイヴちゃんに言ったの?」
「えっ?イヴに返事してから1時間くらい後にモモトークで送ったけど、イヴ、見てた……よね?」
「……知らない……」
「えっ、あっ、添付ファイルが写真じゃなくて動画になってて、エラーで送れてない!!ごめーん!」
ゲーム開発部の存続に関わる事態だし、やっぱり緊張してるんだなあ。才羽モモイさんは普段以上に落ち着き無く部室内をうろうろしてるし目線が宙の何も無いところを彷徨ったりしているし、普段通りとはいかないらしい。
よく見ると才羽ミドリさんもイヴちゃんのジャケットを抱きかかえながら部室の隅をうろうろしているが、片側の手と足が同時に出たりしている。
「……ううん。評判、どう……?」
緊張を汲み取ってか、イヴちゃんはかぶりを振って小さく微笑む。
「すごくいいよ!おまけ要素抜きでトータル5~6時間くらいのボリュームで、499円って手頃な価格にしておいたから、感想とか評価もだけど、売れ行きもいいし!」
勝手知ったる人の部活で、ゲーム開発部向けのお土産を才羽ミドリさんに渡して、残りの荷物を置いてから宇沢レイサさんをソファに案内し、インスタントコーヒーを入れ始めるイヴちゃん。
「そんなに安くて大丈夫なんですか?」
「利益より『お金を払ってでもやりたい』っていう面を査定材料にする意味が大きいから。部費自体はミレニアムから出るので、本当は無料でも良いのだけど」
「利益はどっちみちセミナーに見られちゃうしね~」
才羽姉妹が宇沢レイサさんの疑問に答える。なるほど~と頷く宇沢レイサさん。
「あっ、イヴ用のコップをアリスとユズで選んで買っておきました!使ってください!」
「レイサちゃんは紙コップだけど、ごめんね」
「いえ、お邪魔した身ですから!!」
棚の隅に置いてある、見覚えの無いコップがそうなんだろう。大事なものを触るようにイヴちゃんは持ち上げる。鉄パイプをそのまま組み立てたみたいなロボットがラーメンを湯切りしてる『
「……ありがとう、とっても嬉しい……」
コーヒーを配膳しながら、勇気を振り絞って出てきた花岡ユズさんが宇沢レイサさんに自己紹介してるのを横目で見て、小さくイヴちゃんが微笑んだ。
エンジニア部がほとんど出払ってたから予定よりかなり早めにゲーム開発部に来ていたので、コーヒーを飲んでお喋りに花を咲かせつつだらだらしている最中、うろうろするのを止めて部室の隅に腰掛けていた才羽ミドリさんが「できた」と呟いた。宇沢レイサさんは歓迎と称して対戦ゲームを天童アリスさんとやっている。2人とも腕前はあんま変わらなくて良い勝負で熱中しているみたいだ。やってるゲームは『フルゼリー大戦』*4だな。
「お、できた?」
「お姉ちゃん、ワッペン作るまではやったんだから裁縫もしたらよかったのに」
「デザインはミドリだし、才羽姉妹の共作にしとこうよ」
ジャケットの肩にオッドアイの猫、GAME DEVELOPMENT DEPARTMENTと書かれたゲーム開発部のロゴが縫い付けられている。おお、とイヴちゃんの目が輝いた。
「あっ、イヴが新装備を入手しています!」
「よかったですね!!」
「……ありがとう……」
イヴちゃんがぎゅっとジャケットを抱きしめた。よかったねえ。
自撮りやみんなと写真を撮ったり駄弁ったりしていると、才羽モモイさんのスマフォが震えた。
「ん、先生からだ。もしもし?」
『モモイ、みんな部室にいる?ミレニアムプライスの観客席、ちょっとだけ増やしてもらえたから見に来ない?』
ミレニアムプライスの会場は発電所の横に併設された打ちっぱなしのコンクリと鉄骨が逆に渋い大講堂*5だった。
花岡ユズさんの説得に時間がかかると判断した才羽モモイさんの「イヴ、ロッカーごと担いで!」の一言で、ゲーム開発部と宇沢レイサさん、花岡ユズさん入ロッカーを片手で軽々担いだイヴちゃんという取り合わせの一同が、迎えの生徒に案内されて会場に入る。一番後ろなんでステージは遠いけど、まあしょうがないだろう。ミレニアム生はもちろん優遇されてるとはいえ、抽選でなかなか席が当たらないらしいし。
席に既に誰かが座っていて、声をかけられた。
「遅かったわね」
「「ゲェーッ?!ユウカ?!」」
「ユウカ、こんにちは!」
「ユウカさんこんにちは!!!」
「……こんにちは……」
「アリス、ほらこっち空いてるわよ。レイサ、イヴ、わざわざ来てくれてありがとうね。って、イヴ、そのロッカーなに?」
才羽姉妹にジト目で視線をやってから、3人を見て微笑む早瀬ユウカさん。
才羽姉妹は横山光輝顔にまでなってどうしたん。ニッコニコの天童アリスさんと宇沢レイサさん、凄く笑顔*6のイヴちゃん。
「……ユズさんが入ってる……」
全てを察したらしく溜息を深々とついた早瀬ユウカさん。
「まあ、見に来ただけえらいっていうか……来たって言っていいのかしら?」
「ミレニアムプライス、トリニティだと広告しか見たことがなかったので楽しみです!」
宇沢レイサさんの言葉に頷くイヴちゃん。みんな思い思いの位置に腰掛ける。
天童アリスさん、早瀬ユウカさん、イヴちゃん*7、宇沢レイサさん*8、才羽モモイさん、才羽ミドリさん、ロッカー*9の順で座る。天童アリスさんの
早瀬ユウカさんが足下に置いていたビニール袋の中からペットボトルのミネラルウォーターを出してくれたのでお礼を言って受け取る一同。
ミレニアムプライスが終わったらすぐセミナーに戻るらしい早瀬ユウカさんに、イヴちゃんが紙袋を渡す。
「……今渡したら邪魔かな……セミナーの皆さんに……」
「えっ、お土産?!百鬼夜行行ってきたのね。イヴ、ありがとう!みんなでもらうわね!」
と、わちゃわちゃ楽しい時間を過ごしていると待ち時間はすぐだった。
「あ、始まるわね」
「先生だ……」
「先生頑張れー!」
「頑張れー!」
ステージ袖から堂々と先導する豊見コトリさんと戸惑いがちに中央に歩み出す先生に、ぽつりと呟いた才羽ミドリさん*10に冗談半分で応援を送る才羽モモイさん、釣られて(?)声援を送る天童アリスさん。わ、わあ……と微妙に声を上げる宇沢レイサさん。釣られてか歓声がまばらに起きた。まああんまミレニアムはそういうノリじゃないか。
イヴちゃんは普通に水を飲んでる。花岡ユズさんは……ロッカーの中だから全然わからんな。
開会の宣言と先生の2分くらいの軽い挨拶の後、豊見コトリさんが司会進行を始める。
「今回はミレニアムプライス最多のエントリーです。
「最多かあ……それは困るなあ……」
「3桁の応募に対して7作品、あ、TSC2も触れてくれたね」
よく見ると豊見コトリさんの服、普段の制服じゃなくて、スーツのジャケット的な上着の下に胸元がゆるいドレスを着ているな。っていうか普段の制服もそうだけど、豊見コトリさん、すげーガード緩いっていうかきわどい服装だよなあ。本人が好きで着てるんだろうからいいんだろうけど。
式典は恙なく進んで行き、ヴェリタスのハードウェアに挑戦した『先割れスプーン液晶付USBメモリ、DO○Mも遊べる!』はイヴちゃんがかなり欲しそうに身を乗り出していた。
「"みんな、お疲れ様"」
先生が後ろから声をかける。式典中なので、小声で皆が反応する。
「先生、お疲れ様でした。セミナーの無理を聞いてくださってありがとうございます。後でノアにはきつく言っておきます」
「先生、格好良かったです!」
天童アリスさんの発言にうんうんと頷く宇沢レイサさんとイヴちゃん。
「ゲーム開発部を推しておいてくれたらよかったのに。ま、そんなことしなくても受賞は確実か~」
「もう、お姉ちゃんったら。あ、先生、膝の上に座ります?」
ふんすと胸を張る才羽モモイさんだけど、ちょっと手が震えてる。緊張してるんだなあ。才羽ミドリさんはなんて?
「"私は立ってるから大丈夫"」
エンジニア部からは『光学迷彩下着セット』、改めて聞いてもすげー発明だな。露出症の方向けらしい。どっかのトリニティの痴女向けにありなんじゃないか……?
6位から順に呼ばれていく。
「早く、早く呼んで……」
「心臓痛くなってきた……」
「うう、緊張しすぎて、アリス、身が持ちません……」
2位まで発表されて、まだ呼ばれない。不安と同情の混じった目で皆を見る早瀬ユウカさん。
居心地が悪そうに水を飲む宇沢レイサさんに、イヴちゃんがチョコレートを左手で開けてあーんした。みんなステージを見てて誰も気付いてない。
「さて、注目の1位は?!」
「……1位、ゲーム開発部かな……」
「お願い、お願い……」
「CMの後で!!!」
天童アリスさんが光の剣:スーパーノヴァを充電して立ち上がる。イヴちゃんも盾を持って立ち上がった。
「ちょ、駄目よアリス、イヴ!わかるけど!」
「そ、そうだよ!撃ちたいけどさ!」
「……撃っちゃ駄目……?」
「駄目ですよ?!」
早瀬ユウカさんは天童アリスさんとイヴちゃんの裾を引いて止めるのに忙しくなってしまった。逆側から宇沢レイサさんもイヴちゃんを宥めている。
モモイがちゃんと送れてたかチェックしてなかったのは本当にテンパっているからです。
準備期間が長かった分、マスターアップしてミレニアムプライスにデータ送付してから緊張が続いていて、空気に当てられたアリス含めて結構精神的に疲労しています。
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ちなみに、特性:きんちょうかん を、 特性:てんねん で無効化することはできません。