ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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キヴォトスへの『外の世界』の文化の流入と影響、調べたらちょー面白そうだけど先生とゲマトリアとかくらいしか伝わらなさそう

 口を滑らさずに済んだ。もうちょっとで怪談おたくトーク全開!!おばけの話大好き御蔵イヴ爆誕!!!(ミレニアム内での噂)になるところだった、ジルです。

 イヴちゃんに叱られてしまう……♥いや♥ちゃうんよな。多分今まで一番でかい怒られが発生しそうだったのを躱した安堵感で、うっかりスルーしそうになってしまった。

「イヴは怪談や都市伝説が大好きなのですね」

「凄く楽しそうに聞いてましたね。無理してるって感じでもなかったですけど、大丈夫ですか?」

「あんまり部長を調子づかせないで。放っておくと1日中喋りかねないんだから」

 宇沢レイサさんは心配してきゅっと手を握ってくれる。優しい。

 アカーン!!!!!!態度に出てた!!!まあありがちな話から、キヴォトスならではみたいな話一杯あったからな。

「す、好きじゃないですけど?!」

 アカーン!!!!!!変なツンデレみたいになっちゃった!!

「……か、環境に慣れるまでは、振らないでください……お化けの話……」

 よく判らない苦し紛れの発言をしてしまった。この後言葉をもうちょっと頑張って尽くして、何とか「クッションを一段置いてから話して」というのは理解してもらえたっぽい。いやごめんねイヴちゃん。

 

 帰ってから、イヴちゃんにめっちゃ怒られてしまった。叱られてしまう♥とかいうとる場合じゃなかったね。いやほんまごめんて。怪談大好きガールになっちゃったからな~。特異現象捜査部案件、多分ビナー、廃墟関係で2体(ケテルとケセド)、場合によってはホドくらいだろうから……いや多いな。

(と、とりあえず特異現象捜査部案件は僕がやるから……ね?)

(……ぷんぷん……)

 ぷんぷんって口(じゃないけど)で言うイヴちゃん可愛~~!!

 寝る時には何とか許してもらえてよかった。手作りお菓子約束することになったのでそのうちなんか珍しいもん作らないとな。

 

 そこからは比較的穏やかな日々が過ぎて、実力テスト2週間前、勉強会をそろそろ始めようというタイミングで、イヴちゃんと宇沢レイサさんの楽器お披露目会をすることになった。報野モユルさんもリハビリしてくれて、参加者全員で何回か学校近くのスタジオで音合わせもできて頑張ったね。

 エレキ楽器なのでギターとベースのアンプとドラムセットが置いてある音楽室もしくは音楽準備室を借りようと思うと結構激戦で、3曲しか準備できてないから準備と片付けを含めて余裕を見て1時間借りるだけでも結構大変だった。

 ともあれ、放課後すぐ宇沢レイサさんグループの全員(下江コハルさんと伊落マリーさん含む)に円堂シミコさんを加えて第9音楽準備室にやってきた。

「いや遠~。ドラマーでよかった~」*1

「ここしか取れなくて、ごめんなさい」

「しょうがないしょうがない。みんなわざわざ学校の外でやりたくないしね」

「お3方、というかコハルさんも、楽器してたんですね!」

「……サプライズ成功……」

「わ、私は3人が仕方なくって言うから!しょうがなく!」

「とっても楽しみです」

 そう、4人なのだ。下江コハルさんがトランペットがちょっとできるというのを割と最近のお昼休みご飯時にぽろっと言ったことで、「みんなに当日まで内緒にして急遽一緒にやろう!」となった。特に下江コハルさんが忙しいし練習時間足りなくて1曲だけ、と思いきや割とトリニティでメジャーな曲を選んだのと、下江コハルさんがブランクからの復帰が早かったみたいで2曲練習できた。ギターケース*2にDea4hっぽいバンドのロゴを縫い付けたイヴちゃんと、ベースケースに星っていうかヒトデを模したラバーストラップを模した宇沢レイサさん、かたつむりのストラップをつけてるトランペットケースを持ってる下江コハルさん。

「お2人は水に縁のある生物のストラップですね」

「……私も、アジの姿作りストラップをつけてきたらよかった……」

「ちょっと違うんじゃない?っていうか死んでるじゃない!」

 残念そうなイヴちゃんに思わずって感じでツッコミを入れてしまった下江コハルさん。可愛い。

 

 ドラムセットをまず準備してから全員分のパイプ椅子と足置き3つを引っ張り出して皆で準備して、自分達も座ってから右足の靴を脱ぐイヴちゃんと宇沢レイサさん。

「な、何で靴脱ぐの?!」

「いえ、足置きが借り物なので、靴は不味いかなって!」

「……コハルさんは、使う……?」

「うー、わ、私はいい!」

 2人分のフットレストを拭いてからふと思い立って、ふっと息を吹きかけるイヴちゃん。

「……フットレストを、フッと、いや、吹いたからレスじゃない……」

「なんて???」

 ツッコミしながらトランペットの支度をする下江コハルさん忙しそう。

 

 マイクスタンド4人分を立てて、下江コハルさんのだけ一旦オフ*3

 2人とも今日は特にエフェクタも使わないしアンプ直なので、サウンドチェックもすぐ終わった。

 イヴちゃんはヘッドレスのごてごて色んなパーツがついた暗めの赤から白にグラデーションするギター、ストラップは黒地に白抜きでリンゴの芯(?)を加えた蛇の骨の柄。いや攻めてるチョイスだなあ。

 宇沢レイサさんは爽やか水色カラーにしてピンクの星柄を入れたリッケンバッ○ー4004っぽいベースにストラップは茶色に大小様々な星をあしらったもの。うーん、渋くて格好良い。

 下江コハルさんもトランペットの支度が大丈夫そう。

 報野モユルさんも問題なさげ。イヴちゃんが確認してるのに気付いてドラムスティックを上に投げたりしている。あ、落とした。

 

 椅子に腰掛けて楽器を構えた4人の写真をみんな撮って、はにかんだ笑みを浮かべる宇沢レイサさん、かなり照れて目が泳いでいる下江コハルさん、報野モユルさんは教科書にドヤ顔の例として載せていいくらいのドヤ顔、イヴちゃんはちょっと緊張している無表情*4。後ろから緊張してるのに気付いたらしい報野モユルさんがドラムスティックで肩をつんつんしている。

 

 イヴちゃんと下江コハルさん、報野モユルさんの宇沢レイサさんに注がれて、宇沢レイサさんがどうしました?って顔をする。

「……レイサちゃん、否、リーダー、スタートのカウントして……」

「えっ、私ですか?!」

「宇沢レイサグループでしょ!」

「ドラマーがやってもいいんだけど、任せよっかなって」

「え、ええ~……。じゃ、じゃあ、ワン、ツー、スリー、フォー!」

 

 メジャーでみんなわかる曲から行こうということで、1曲目は『グリーンスリーブス』(16世紀版)*5。報野モユルさんの手堅いエイトビートに宇沢レイサさんのぶっといベース、イヴちゃんのシングルコイルで高めの音、下江コハルさんのトランペットがベース側に合わせる。宇沢レイサさんが歌い、報野モユルさんとイヴちゃんがちょっとしたコーラスを入れる。

 ちょっとだけアレンジして、15秒ほどだけどドラムソロ。ドラムソロから皆入り直す瞬間がちょっとヒヤヒヤ。4人とも細かいミスはあった*6けど、破綻せずに1曲目は演奏し終えた。

 おおー、という観客の拍手。

「よ、よかった~。1小節飛ばしちゃったかと思いました」

「飛ばしても大丈夫!間違ってるのは観客だって言い切ったら許されるから!」

「……もしくは『これは即興のアレンジ』って言おう……」

「リズムが迷走されると困るけど?!」

 報野モユルさんと、喋りながらチューニングを確認してるイヴちゃんの適当な発言に真っ当すぎるツッコミ。はい。それはそう。

 

 2曲目はVan der Graaf Genera4orの"Theme One"。下江コハルさんが一緒にやってくれるっていうことになって急遽入れた曲なんだけど、なぜかキヴォトスというかトリニティでは超絶メジャーな曲で、簡略版もたくさんある。VdGG、僕もそこそこ好きだけどこの曲が代表になってるなんてって意外度が高かった。

 下江コハルさんがトランペットを構え、全員の視線が集中する。下江コハルさんが演奏スタートをする役なので。一瞬きょろきょろと視線を彷徨わせた後、意を決したのか正面を見据えてトランペットの高らかな音を奏でる。

 原曲は確かソプラノサックスだったと思うけど、そのパートをトランペットの下江コハルさんがやって、トランペットソロをちょっと入れてる。まあ誰も作曲できないからリフの焼き直しではあるんだけど。

 とにかくトランペットが目立つので、下江コハルさんが大変そうながら、吹ききった。

 

 3曲目は『歓喜の歌』、第9第4楽章、というか、Rain6owの"Difficult To Cure"の方を下敷きにしたんだけど。これはキヴォトス全体でも著名曲。年末に演奏する習慣がやっぱり百鬼夜行にもあるんだとか。昔昔はゲヘナも年末演奏してたらしい。

 ベースソロを曲中で入れて、ギターソロも若干追加。下江コハルさんはこの曲が練習できなかったのでマイクをオンにしてハミングで参加。

(演奏中は笑顔だよ、イヴちゃん!)

(……が、がんばる……)

 演奏が難しくても笑顔。まあ難しいんだけども。あっ、チョーキングミスった。違う音を入れて良い感じに誤魔化すイヴちゃん。

 

 ぺこりと頭を下げる4人。ぱちぱちと拍手。

「凄かったです!」

「格好良かったですよ!」

「ブランクある人と初心者の集まりとは思えないですね」

「ま、まあ簡単な曲ばっかりだし?」

「……でも、楽しかった……」

「はい!すごく楽しかったですね!」

「やっぱ私もドラマー復帰するかな~。トリニティ一の豪腕ドラマーになっちゃうか~」

「すぐ調子に乗る」

 余韻を噛みしめてもらいつつもみんなの集合写真を撮って、部屋を片付け始める一同。油断して次のグループに渡せないと次使えなくなっちゃうからな。

 ちなみに、この予約も紙噛み君(書類絶対電子化自動処理マシーン)の電子化の余波で自動化されていて凄く助かった。鍵は単なる物理鍵なので返却もしないとなんだけど。

 

 今日はそれぞれ時間を作って来てくれていて、全員夜まで予定が入っていたけど晩ご飯は何とか一緒に食べられそうな感じ。

 一番手すきのイヴちゃんは自警団事務室に宇沢レイサさんのベースと下江コハルさんのトランペットを置いてから自室にギターを置いて、ちょっとぶらぶらするつもりらしい。

*1
ドラムスティック以外持ってきてない

*2
3人ともソフトタイプだからギグバッグの方が正しいかも

*3
部屋が狭いのでトランペット用のマイクは要らない

*4
かなりわかりにくいけど。

*5
16世紀の英国成立、だけどトリニティでは単に『グリーンスリーブス、16の方』と言われている。16の由来は伝わってないらしい

*6
下江コハルさんが一番安定してて、次いで報野モユルさん、初心者の2人はどっこいどっこいかな。




 コハルがトランペットやってるのはブルアカサントラのジャケからです。
正義実現委員会だからラッパ手の訓練を受けていたりするのかもなんて妄想していました。

 演奏後の反省会は大事なんですけど、キヴォトスの部活に入ってる学生は忙しいので……。

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