ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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政治の季節が始まりそう いや始まっても良いけど巻き込まないで

 トリニティの初夏は涼しくて過ごしやすいけど、雨が降る日も多い。合羽着たり傘さしたりしてるのを見るのは嬉しいけどなあ、って感じのジルです。

 キヴォトス人というか、トリニティとかミレニアムとかの人は傘ささないのかなと思ったけどもちろんそんなことはなかった。今日は朝から小雨が降り続いていて、色とりどりの雨具が咲いていた。

 もちろん、昼休みのご飯タイムの選択肢が限られてしまうし、今日は教室でイヴちゃんが選んできた購買のパン*1だった。下江コハルさんは雨なのに上級生向けの自主練に行くと言って出ていったので不参加。

 伊落マリーさんも今朝、大聖堂で流れ弾由来らしい雨漏りがあったので掃除の様子を見に行くということで欠席。

 円堂シミコさんもこの時期は湿気対策が忙しいらしく欠席。みんなで一度手伝いにいったけど確かに大変そうだった。宇沢レイサさんはビーフカレーパンとチキンピザ、朝吹ソフノさんはレタスと焼白身魚のサンドイッチ、報野モユルさんはウインナークロワッサンとチーズロール、イヴちゃんはチョココロネとアップルデニッシュ。みんなつまめる用に小さいチョコクロワッサンを人数分プラスアルファ。飲み物は宇沢レイサさんと報野モユルさんが無調整乳、朝吹ソフノさんが低脂肪乳、イヴちゃんはコーヒー牛乳。

「雨、うっとうしいですね!!!」

 全然鬱陶しく無さそうな宇沢レイサさんの大声で一瞬だけ注目が集まるけど、いつものことなのであっという間に視線が散る。

「……これくらいの雨なら、ちょっと嬉しいかな……」

 雨に濡れた花とか好きだもんね、イヴちゃん。今朝は通学路で小さいカタツムリを見かけてご機嫌だった。アップしてなかった写真をモモトークのグループにアップして、みんながへ~って見ている。休憩時間なのか、下江コハルさんからリアクションが一瞬ついたけど取り消したのか消えた。

「練習場所が変わるから、ちょっと気分転換にはなるかも」

「うちは湿気対策しないとだからな~。あ、イヴちゃんこれちょうだい」

 イヴちゃんが持ってるパンから器用にリンゴの小さいかけら1つを抜いていく報野モユルさん。

「……パンは、いい……?」

 笑って首を横に振る報野モユルさん。

「あ、そういえば戦車とホテルの予約ありがとうね」

 ううん、と首を小さく振るイヴちゃん。仮押さえでクラスの戦車を借りたけど、ぼろっぼろのヴィッカース 6トン戦車っぽい戦車で、あれ3人しか乗れないんだよな。

 ホテルも一応宇沢レイサさんグループ全員行けるようにはしてあるけど、実際どうなるかな。何事もなく穏当に終わったら全員行けると思うんだけど。

「正義実現委員会の戦車はまだ借りられないのだっけ?」

「1か月前かららしいです!」

 訓練用のボロ戦車がほとんどなんだけど、名目上は治安維持用だからギリギリまで予定は空いてないってことになってるらしい。

「免許は取ったし、何でもいいけど、エアコンがちゃんと生きてる戦車にしてね~」

「……取ったの、AT(オートマ)MT(マニュアル)……?」

「MT~」

「すごいですね!」

 戦車のAT、MT。ATだと軽戦車に限られるし、大体ミレニアム製なので自前の装備が多いトリニティだと選択肢がかなり限られちゃうんだよね。

「モユルに操縦させるの、不安だわ……」

 ひっど、って冗談めかしてむくれる報野モユルさんと笑うみんな。

 まあ暑いからエアコンは結構切実。2年だとクラスによってはトリニティだと現役最新のクルセイダーだし、エアコン完備なんだけど。

「……どうせそんなにスピード出さないし、全部のハッチ開けて走ったら大丈夫……」

「後の掃除が面倒だよ~。海沿いの道路走るしさ」

 ぱくぱく食べつつあーだこーだ言いながら楽しそうな一同。予鈴が鳴ったのでぼちぼち片付け始めた。

 

 いつもの見回り*2してから宇沢レイサさんとイヴちゃんが自警団事務所に行き、事務処理をさくさく済ませていると控え目なノックに続き、意外な来客があった。正義実現委員会の子に連れられた、目つきが悪い眼鏡、ティーパーティーの制服を着た人。

「こんにちは、イヴさん、レイサさん」

「あっ、こんにちは!!」

「……ハナハさん……?」

 ヘリパイロットと整備担当の先輩、飯郡(いいごおり)ハナハさんだ。目線の鋭さと真逆の穏やかでゆっくりした話し方で微笑む。

「ティーパーティーの、聖園ミカ様からイヴさんを呼んで来て欲しいとお願いがありまして。ご都合は大丈夫ですか?」

 頷いてから、作業が終わったノートパソコンを閉じて仕舞い、スマフォを取り出して予定を確認するイヴちゃん。

「あ、あの!私も一緒に行っていいですか?!」

 イヴちゃんが答える前に、宇沢レイサさんが詰め寄って、困った顔をする飯郡ハナハさん。頭ごなしに断ろうとするつもりはないようで、彼女もスマフォを取り出す。

「ミカ様に聞いてみてもいい?」

 イヴちゃんは一応予定と連絡を軽く確認したけど、丹花イブキさんと才羽モモイさん、早瀬ユウカさんから雑談的なメッセージが来てただけなので急ぎの案件は大丈夫そう。報野モユルさんがちょうど送ってきてたしょうもなさそうな本*3の表紙写真を二度見して保存してリアクションをパッとつけてから、スマフォを仕舞って了承の返事をした。

「ミカ様も大丈夫だって。ただ、お話中は外で待ってもらうことになるけど」

「大丈夫です!!!」

 食い気味に宇沢レイサさんが答える。心配してくれてるんだろうな。

 

 飯郡ハナハさんに連れられ、ティーパーティー本部へ向かう。

「そうそう、妹がお世話になったそうで。ありがとう」

「……いえ、本当はもっとしっかり教えたかった……」

「ふふ。すごく喜んでたわ。あの子、勉強が苦手で補習率が高いから」

 くすりと笑う飯郡ハナハさんに釣られて笑う2人。

(イヴちゃん、飯郡ハナハさんにパテル分派の人か聞いて!)

 脳内で肯定の返事を返してくれたイヴちゃんがさらっと聞く。

「……そういえば、ハナハさんは、パテル分派の人なんですか……?」

 うん、ちょっと僕も悪かったな。間が。急な話題転換で一瞬ギョッとした飯郡ハナハさんが笑顔で首を横に振る。この人も腹芸とかは苦手そうだな。

「ヘリのパイロットも整備も、専門技能職だから。私がティーパーティーにいるのは技能採用なのよ。こう見えても希少だから、どこかの派閥に入るのは逆にみんな困るのね」

 悪戯っぽく微笑んで明らか不慣れそうなウィンク。

「本当は、ミレニアムに進学するつもりだったのだけど。でも、トリニティに進学して良かった」

 遠い目をする飯郡ハナハさん。

 宇沢レイサさんが突っ込んで聞こうとしたがタイミングをちょっと逃してしまい、ティーパーティー本部に着いてしまった。

 

 いつものテラス前の待合室*4で待つこと数分。出された紅茶を飲む暇もなく、別のティーパーティーの人が呼びに来た。飯郡ハナハさんはここでお別れらしい。

「ミカ様から詳しい話は私も聞いてないの。悪い話ではないと思うのだけど」

 別の派閥のイヴちゃんと面識ある子を使ってまで呼んだっていうことはそうだと思うんだけど、逆にめっちゃ悪い事だからワンクッション置いた、みたいな可能性もあるんだよなあ。

 不安そうにぎゅっと握っている手を握りしめた宇沢レイサさんに、イヴちゃんは親指で手の甲をくすぐって返す。はっと握った手を緩められて、人差し指と中指も使ってくすぐる。ふふっと笑った宇沢レイサさんにイヴちゃんが微笑む。

「……レイサちゃん、いつも心配して一緒に来てくれるし、待っててくれるよね。すごく、嬉しい……」

「イヴちゃん……」

 イヴちゃんのまっすぐな視線に、宇沢レイサさんが赤面した。

 先に立ち止まった案内の子に何いちゃついとんねん、みたいな顔で案内されたのはティーパーティー本部から出た丸太小屋っていうかログハウスだった。本部の中に案内しておいて外って面倒臭いことするなあ。

 軒下にはお洒落な木のテーブルと椅子が置かれている。宇沢レイサさんはここでお茶しばいて待っててね、ってことらしい。ちょっと浮いてしまってる白いビニールタープ、クッションとケーキ、お茶が用意されている。外かあ~。まあ予定外のお客さんだからって事なのかな。間違っても雨に濡れたりはしなさそうではある。自警団の幹部を適当な扱いする訳にもいかんだろうから当然っちゃ当然だろうけど。

*1
トリニティはお嬢様学校なので購買や学食のレベル自体は非常に高いけど、それでも普段みんなで色んなものを買ってきてる宇沢レイサさんグループ的には複数日は厳しい

*2
校舎内で1グループ18人の不良をさくっと撃滅

*3
イヴちゃんは大好きそう

*4
テラスは1つだけど、お客さんはたくさん来るからだろう。待合室はたくさんある。




 飯郡ハナハさんがミレニアムに進学しなかったのは、「ミレニアムかトリニティどっちに進学するか悩んでいる」と相談した妹が泣いたからです。

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