ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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 かなり独自解釈かつ聖園ミカの対ゲヘナヘイト表現があります。気になる場合は今回の話を読み飛ばしても大丈夫なよう、次話前書きにあらすじを入れます。
 ミレニアムの上層部と結託した上で自警団からティーパーティーを牽制している(そういった事実はございません(ティーパーティー視点))御蔵イヴの活動のバタフライ効果で、本来頭がいい聖園ミカが先生相手以外にも寝技を使えるようになっています。



寝技も使えるようになった超火力アタッカー怖すぎわろた いや何も笑えんわ

 弱い小降りの雨も聞こえない、静かな部屋だった。家具はテーブルと椅子、隅にコンロとお茶やお菓子を用意する用らしい背の高い木製食器棚くらいしかない。

 入口に落ち着いた木製のガンラックがあって、既に2丁の銃が立てかけられてるけど、当然盾もウッドペッカー(30mmMG)も普通のガンラックだと重量的に耐えられない。

 イヴちゃんが盾を部屋の隅に置くと、床の木材がみしみしめりめりと悲鳴を上げつつ何とか耐え抜いた。

 聖園ミカさんがティーテーブルを挟んだ奥側に腰掛け、紅茶を飲んでいる。もう1人、ティーパーティーの人が脇に控えていて*1、イヴちゃんを椅子を案内し、白いポットからこれまた白磁のカップに紅茶を淹れてくれる。ふわりと良い香りが漂った。イヴちゃんは角砂糖を4つ入れる。

「や、イヴちゃん、急に呼んだのに来てくれてありがとうね」

「……いえ……」

「実力テスト、上位達成おめでと☆」

「……あ、ありがとうございます……」

 まさかお祝いのために呼んだとかないよね。だったら良いんだけど、無いよなあ。

「いや、ほんとにちょっとだけ真面目な話さ、パテル分派後援会のイヴちゃんが1年で3年のテストの上位を取ったの、結構評判になってて助かってるんだよね」

 あはは、と笑ってから「まあ私は負けてるんだけど!」って自分で言ってから更に笑う聖園ミカさん。少なくとも発言にも態度にも嫌味や妬心的なものは見えない。

 お付きの人がケーキを2個運んできた。1個は聖園ミカさんへのショートケーキ、もう1つはイヴちゃんへのチョコケーキだ。

「あ、ありがとうね。鈴木さん」

「はっ、はい!な、名前を……!こ、光栄です!」

「あはは、派閥のトップとしてはメンバーの名前はちゃんと覚えておかないとって思ってさ」

 なんか凄く感激してるお付きの人とけらけら笑う聖園ミカさん。今まで覚えてなかったんか……。

「それでさ、今日はそのお祝いを言いたかったのもなんだけど。イヴちゃん、パテル分派に入らない?」

 お付きの人がピタリと固まり「本気か?」みたいな目を押し殺そうとして失敗した目つきで聖園ミカさんとイヴちゃんの間に視線を彷徨わせる。

 イヴちゃんが首を傾げる。

「……もう、入ってませんか……?」

「あー、ごめんごめん。えっとね、後援会とかじゃなくて、正式にパテル分派、派閥の一員にならないかってことね」

「……自警団は、問題には……?」

「うーん、正義実現委員会だと確か規則上禁止なんだけど。自警団は補助団体で部活の兼任もできるし、自警団出身者も前例がないわけじゃないから大丈夫」

 マジで??本気で誘ってるんか?

 

 固まったイヴちゃんを面白そうに眺めつつ、ケーキを一口食べて飲み込んだ聖園ミカさんが言葉を続けた。

「成績優秀、ミレニアムと百鬼夜行、後、アビドスだっけ?よその学校の上層部ともツテがあって、喧嘩も強い。おまけに自警団までまとめてついてきてくれそう。正義実現委員会との連携も円滑になる。すっごい優良物件だから、他の派閥には取られたくないんだよね」

 かなりぶっちゃける聖園ミカさんと、考え込むイヴちゃん。今の発言、あからさまにゲヘナの語を避けてるんだよなあ。

(イヴちゃん、受けるつもり?)

(……ジルは、どう思う……?)

(ゲヘナとの付き合いが問題ないなら、っていうのと、もう一つ。クーデターとかには従えない、っていう条件かなあ)

(……クーデターって……正面から聞いていいの……?)

(良くないねえ)

 何かあれだったよな。購入した小惑星を落下させて召されるであろ~みたいな演説をして……いや違うか。ヤバい、どんな感じだったか思い出せない。でも確か、聖園ミカさんがクーデターだかテロだかするんだった、気がする。

 で、多分、そのための戦力のひとつとしてイヴちゃんが欲しい、ってとこだろうと思うんだよな。

 自警団が戦力になるか、ならないにしても、自警団や正義実現委員会の一部の子はイヴちゃんと戦うのはあんまり気乗りしないって効果も期待できるだろうし。

「……ゲヘナに、友達がいますが……大丈夫ですか……?」

「ふぅん?」

 ゲヘナの単語が出た途端、ニコニコ笑顔だった聖園ミカさんが急に黙り込み、鋭い目でイヴちゃんを睨みつける。脳内で『ぴ……!』と悲鳴を上げるイヴちゃん可愛い。いや言うとる場合か?お付きの人も息を呑んでいる。さっきまでの空気が吹き飛んだ。寒気が伴うような圧がある。

「あのさ。私、あんまりそう見えないと思うけど、結構強い方なんだよね」

 らしいね。トリニティでも不良に絡まれることはあるし、聖園ミカさんが自衛した時の様子が噂として伝わってるんだよな。返り討ちにされた不良の証言曰く、弾がすげー痛くて重いらしい。

 聖園ミカさんも銃は入口近くのガンラックに立てかけたままだ。イヴちゃんとここでやる気って感じでも無いが、僕は盾とイヴちゃんの間に何も無い事を確認しておく。

「今まで何度絡まれたことかわからない。ゲヘナの子達って、トリニティの子っていうだけで、見ると絡んでくること多いんだよね。あんな子達と仲良くしたいの?」

 鋭い目線。イヴちゃんは懸命に目を逸らすまいとする。

 絞り出すように、全身に力を入れてイヴちゃんが答える。

「……大事な、友達がいます……」

(……こ、ここ、こわい……)

(代わろうか?!)

(……う、ううん……頑張る……)

 無限にも思えた10秒近くが過ぎ、聖園ミカさんが先に目を逸らした。

 ふぅー、と聖園ミカさんが溜息をついてうつむき、紅茶を飲み干す。

 顔を上げた彼女は、さっきまで同様の明るい笑みを浮かべていた。

「ごめんごめん。今日、言質を取れたら良かったんだけどね。ま、考えといてよ。そうだね、例えばさ。イヴちゃんは正義実現委員会にも友達がいると思うんだ」

 やっと緊張でこわばった体が動くようになって頷くイヴちゃん。

「でね、話は変わるんだけど。すごく成績が悪い子達向けの、補習授業部制度って知ってる?」

「……聞いたことだけは……」

 本来のトリニティの補習授業部制度は、兼部禁止の規定とセットで、他の部活動への参加を一時的に制限する趣旨のものらしい。トリニティというかキヴォトスの大概の学校の校則では、退学はよほどの事でなければ想定されてない。

 何でイヴちゃんが知ってるかというと、イヴちゃんは元々成績が良くなくて入院もしてたから心配になって確認しておいたものの、たまたま僕が数少ないお役立ち要素として勉強教えられたから活用せずに済んだ知識だ。

「もうすぐ、今年度の補習授業部が設立される。ナギちゃんが退学させたい生徒を集めるつもりでね。イヴちゃんのお友達も2人は入ってるはず」

 退学というのは学校が生活基盤であるキヴォトスではおおごとだ。

「ゲヘナにいるその『お友達』を諦める代わりに、その子達を助けてあげるって言ったらどうする?」

 再び硬直するイヴちゃん。

「決められないよね。すぐには。でも、そうだなぁ、さっきの話を飲んでくれるなら無条件で助けてあげる。ゆっくり考えておいて。どうかな?」

 笑みに見える何かを貼り付けたような聖園ミカさんの表情が、顔の良さと相まって逆に怖い。

(い、イヴちゃん)

(……ど、ど、どうしよう……正義実現委員会の友達っていうと、コハルさん……?そうなのかな……)

 消去法というか、まあ間違いなくそうだろう。

(実際のところ、まだ即退学って決まってるわけじゃない。時間を稼ぐってのもありはありだよ)

(……う、うん……)

 お付きの人が聖園ミカさんに小さく耳打ちをする。そろそろ時間ということらしい。

「今日はありがとうね。返事は、そうだなあ、補習授業部の試験は伝統的に3次試験までなの。2次試験の後に聞くね」

 立ち上がって握手を求めてくる聖園ミカさん。怖すぎる。ぷるぷる震えながら、何とか手を握り返したイヴちゃん。単純腕力だと結構良い勝負できるはずなんだけど、完全に飲まれてる感じ。

*1
2人ともキヴォトスらしからぬ、丸腰だ。




 ミカ、先生やアリウス相手にも色々やっているし、本気出したら全然余裕で出来ると思うんですよね。

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