ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
試験が始まった。イヴちゃんは一応監督官ってことで、皆が後ろから見えるような位置。
といっても、一緒に試験を受けるんだからあんまり意味は無いんだけども。
「こ……これは、うーん……」
「ふむ……」
「うふふ」
唸り声や呻き声、小さな笑い声時折静寂を破る以外はかりかりとペンが走る音だけが静かに流れる。
(イヴちゃん、これ、簡単だね?)
(……うん、小テストに近い……難しくはないかな……)
結構カマされてた気がするけど、実際は救済措置的なものなのか?それともイヴちゃんに渡されてるテストだけめっちゃ簡単だとか。そんなことないか。
それとも事前に揺さぶりを掛ける事でボロが出る狙い?うーん、言うて阿慈谷ヒフミさんと先生以外には退学どうのこうのの話はされてないはずだし、テスト始まったら逆にわからんなってきたな。
休憩時間を兼ねた夕ご飯中(先生が買ってきてくれたのはカツ丼だった)、イヴちゃんは皆に手応えを聞いてみた。
かなり余裕そうな阿慈谷ヒフミさん。信用して大丈夫そうな安心感。
「あはは……まあ、皆さん大丈夫そうですね?」
精一杯伸びをする下江コハルさん。怪しい。これは駄目かも。
「元々実力を隠してたんだし?簡単!」
平静な感じの白洲アズサさん。もうかなり当てにならん前世知識で、イヴちゃんより表情わかりやすいはずって思ったけどそうでもないんだよな……。まだ付き合い短いからかな。
「何とでもなるはずだ」
余裕綽々という感じの浦和ハナコさん。この子も判りづらいなあ。この子の場合は意図してやってるのか疲れ切って作り笑いしか出ないのか、考えると闇が深すぎるけど先生にケアしてもらってほしい。先生気付いてくれるよね?
「うふふ、さて、どうでしょうか」
イヴちゃんが煎茶を淹れてくれている先生をちらっと見る。先生は小さく頷いた。生徒を信じるってことなんかな。
全科目が終わり、先生が採点のために一旦席を外した。旧校舎入口まで採点を手伝ってくれる事務局のオートマタさんが来てくれてるらしい。
監督官のイヴちゃんが試験受けてなかったら試験を見てる間に平行して採点できたんだけど、まあしょうがない。
安堵の混じった目でふぅ、と息をつく阿慈谷ヒフミさん。皆、雑談したりお手洗いに行ったり思い思いの時間を過ごしている。
今年になってから大幅に電子化が進んだトリニティの試験、大半はマークシートをタブレットの写真で取り込んで自動採点なのだけれども、もちろん記述式問題もある。5人分しかないとはいえ、自動採点そのものの確認も含めて、先生とオートマタさんのダブルチェックも必要だから、1時間くらいはかかるらしい。
イヴちゃんは下江コハルさんを待っていたけど、中々戻ってこないし、戻ってきたけどスマフォ片手に何だか落ち着き無くうろうろしているので、イヴちゃんはそれとなく水を向けてくれる阿慈谷ヒフミさんに応えて皆の会話に本格的に加わるべきか、下江コハルさんを待つか少し困った目で座っている。
「今日でこの合宿も終わりかと思うと、少し寂しいですね」
「ああ、ご飯も美味しかったし。先生とヒフミ、イヴのご飯が食べられないのは残念だな」
皆の言葉にうふふ、と微笑む浦和ハナコさん。
廊下で手伝いに来てくれたオートマタさんにお礼を言って見送ってから*1引き返してきた先生と、廊下を彷徨っていた下江コハルさんが戻ってきた。
「"それじゃ、皆に採点結果を渡してから、結果を発表するね。ちょっと特殊だけど、補習授業部の要件でもあるから"」
先生を睨むというか、何というか、すがる感じ?で見てる下江コハルさん以外の一同が頷いた。
全員に結果が手渡されて、安堵の溜息をつく阿慈谷ヒフミさん、小さく震えてから蒼白になった下江コハルさん、自分の成績をちらっと見てから心配そうに下江コハルさんをちらちら見てるイヴちゃん。特に反応が無い浦和ハナコさんと白洲アズサさん。
「"部長のヒフミから発表するね"」
「は、はい。お願いします」
阿慈谷ヒフミさん、78点
小さく拍手するイヴちゃんと、釣られてだろうけど拍手する白洲アズサさん。
「あ、ありがとうございます!前よりちょっとだけ上がりました!良かったです!では……」
「"次はイヴね。監督役だし、本当は最後に回したかったけど……"」
ちょっと気になる台詞のあと、点数開示。
御蔵イヴ、97点
「おお~!こんな点数本当にあるんだって気持ちになりますね」
めっちゃ嬉しそうな阿慈谷ヒフミさん。このまま無事、補習授業部が役目を達成して解散になるなら胴上げでもってくらいの勢い。
ほう、と感嘆の声を上げる白洲アズサさん、あらあら、と相槌を打つような浦和ハナコさん。下江コハルさんはうつむいてしまった。
(……やっぱり、古代語が平均点下げたね……)
(見てた限り、1年の範囲は全科目ノーミスだったはずなんだけど)
(……あっ、そうだ……)
えっなになに、と思う間も無く、がたんと立ち上がって一同を見渡し、イヴちゃんが堂々と口を開いた。
「……満点には、行き満点でした……」
ぐっと両親指を立てる先生。一瞬で冷える教室の空気。あはは……という乾いた笑い。浦和ハナコさんが怪訝そうな顔をした。白洲アズサさんも首を傾げ、下江コハルさんはそれどころじゃないのかノーリアクション。
イヴちゃんは馬鹿ウケを確信していたらしく、不思議そうに首を傾げてから座る。無理があろうかと思われます……。
先生は何事も無かったかのようにというか、笑ってるといけないな*2、と2、3回とんとんと踵だけを浮かせて落とし、真面目な顔に戻った。
「"次、アズサ"」
白洲アズサさん、32点
「残念だな。紙一重だったか」
「いや、いやいやいや!待ってください!基準点60点ですからね?!紙一重って点数じゃ無いですよ!結構足りてないです!」
そうか?って顔をしてる白洲アズサさんとツッコミまくる阿慈谷ヒフミさん。
「……ちなみに、先生。発表の順番は……?」
「"衝撃の少ない順、かな……。ヒフミは部長だから最初にしたけど。次はコハルね"」
嫌な事言わはったな。こっから酷くなるってことでしょ?
下江コハルさん、14点
「?!」
「コハルちゃん?!?!?!?ち、力を隠してたのでは?!今回はちゃんと1年用の試験を受けたんですよね!?ま、まさかまた2年生用とか、ひょ、ひょっとして……?!」
イヴちゃんと同じ試験を受けたのか、みたいな意味なんだろう。困り顔のイヴちゃんと気持ちどう反応したものかなって顔の先生、顔面がもう白っぽくなっちゃってる下江コハルさんの間をキョロキョロと視線を彷徨わせる阿慈谷ヒフミさん。ふ、不憫だ……。やっぱり短時間じゃキツかったか。
「う、い……いや、すっごく難しかったし……」
「ほとんど小テストみたいな感じでしたよ?!」
(ちょっと先生と勉強の方針相談した方がいいかもね)
(……うん……)
イヴちゃんももうちょっとはイケるかなって踏んでて結構ショックだったみたいだ。
先生も引続き懊悩を頑張って隠そうとしてる感じの顔をしている。
「"じ、じゃあ、最後にハナコね"」
浦和ハナコさん、2点
全員の視線が浦和ハナコさんに集まる。
「2点?!20点じゃなくて?!20点でも結構大概ですけど?!いやそもそも、勉強をアズサちゃんに教えてくれてたとき、すごく勉強できる感じじゃ無かったですか?!」
「何だか私、凄く勉強ができる雰囲気があるらしいのですよね。まあ、雰囲気だけなのですけど」
「ふ、雰囲気だけ……?う、うう……そんな……」
「"ヒフミ、大丈夫?!"」
がたんと立ち上がったイヴちゃんが阿慈谷ヒフミさんの横に駆けつけて支える。ふわりと良い匂いがした。確か、これもモモフレンズコラボの香水だった気がする。
先生が重々しくしようと努力しながら告げた。
「"1週間の合宿の後、第2次試験を行うので、みんなよろしくね。今日は荷物を取りに寮や家に帰っていいけど、日付が変わるまでにはここに戻ってきて"」
ちらりと先生が阿慈谷ヒフミさんを見て、まだイヴちゃんに支えられたまま椅子に座ってる阿慈谷ヒフミさんが億劫そうに口を開いた。
「う、あ、はい……。では、皆さん、一旦解散で……」
第1次特別学力試験、結果
浦和ハナコさん――不合格
白洲アズサさん――不合格
下江コハルさん――不合格
阿慈谷ヒフミさん――合格
(参考:監督官)
御蔵イヴ――合格
補習授業部の合宿が決定した。やっぱりかぁぁぁぁ……。
ヒフミは先生から教わる時間増により少し点数が上がっています。
コハルは勉強時間激減による点数ダウンと理解しないまま飛ばした部分を潰せた理解力アップによる相殺で微増です。
アズサ、ハナコは点数変動要素が無く、同じ点数です。
ヒフミ、先生の助けがあるとはいえ補習授業部を背負ってたの凄いですね。特に序盤の心労は凄そうです。普通って何なんだろう。
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