ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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えっちなお姉さんが段々本領発揮してきた気がするな 風紀の乱れをたしなめる担当が愛しの家主ちゃんなんですけどそれは

 自警団の事務局に行くと、宇沢レイサさんだけでなく、朝吹ソフノさんと報野モユルさんもいた。

 嬉しい驚きで目を見開く*1イヴちゃん。

「……レイサちゃん、ソフノちゃん、モユルちゃん……!」

「えへへ、驚くかなと思って内緒にしちゃいました」

「正義実現委員会って初めて来たけどこんなんなんだね~」

「思ったよりシンプルな部屋ね」

 わー!ともみくちゃになる一同。可愛い。まあ今日もお昼会ったばっかりなんだけど。

 

 人心地ついて、宇沢レイサさんが予め淹れておいてくれた紅茶を飲む一同。

「まー明日以降も顔出すつもり……だったんだけど、そっちに行くのはちょいしんどいかも。忙しいのに来てもらわないとってのは悪いんだけど」

「ごめん、イヴちゃん。ちょっと、私もあんまり、行くのは難しそう……」

「……どうして……?」

 苦々しげな顔をする朝吹ソフノさん、報野モユルさん。2人のこんな顔、初めて見たな。

「や、先輩達が『補習授業部にあんまり近づくな』ってうるさくてさあ」

「私も……まあ、監督官はティーパーティーに任命されてるし、イヴちゃんとだけなら、って認めてもらえたんだけど」

「そ、そんな……」

 どんよりと落ち込む宇沢レイサさんと、不安げな顔のイヴちゃん。

「コハルちゃんの顔も見に行きたいんだけど……ま、こっそりなら大丈夫かな?って思ってるんだけど。ちょっと、お昼はどっかの空き教室かなんかの鍵借りとくよ」

「堂々とでなかったら多少は大丈夫そうだから、それが良さそう。内緒で連れ出したりできそう?」

「……夜は外出禁止だから、どっちにせよ厳しいけど……。お昼なら、大丈夫だと思う。先輩達は、なんて……?」

 この2人がこう言うってことは相当の何かがあったんかな。

 そもそも下江コハルさんが(恥ずかしい的な意味で)来たがるかはまた別だけど。

純文学部(ウチ)は何でも予算関係の連絡に来たティーパーティーの人が『今年の補習授業部は特にティーパーティーが注目してる』みたいな話をしてたらしくてさ。一昨年だったかな、そん時の補習授業部ができた年にはそんなことわざわざ言いに来てなかったらしいんだよね。で、イヴちゃんの事は皆知ってるからさ。まあ監督官は大丈夫でしょ、とは言ってたけども。他にも友達いるって言ったら『上手いことやれ』って意味もあるんだろうけど、めっちゃ釘刺されちゃって」

陸上部(こっち)は3年の先輩の何人かがティーパーティーにいる友達から『今年の補習授業部は特に札付きの面々だから、接触すると睨まれるかも』って言われたらしくて。私個人に対してじゃないけど、全体に周知があった」

 はー。補習授業部自体をトリニティから隔離する気なんかな。っていうか、他の部にもそんな話回ってるんだろうか。だとしたら図書委員会とか大丈夫かな。

 折角の楽しい雰囲気に水が差されてしまって、ちょっとどんよりとした空気の中、それを吹き飛ばすように報野モユルさんがイヴちゃんに抱きつく。

「まーイヴちゃんはお昼会えるはずだけど、堂々とイヴちゃん分摂取は今しとかないとって思って!」

 ぎゅーっと右腕側に抱きついた報野モユルさんは、苦笑いする朝吹ソフノさんに手招きしてから、宇沢レイサさんに手を伸ばして引っ張った。

「ほら、レイサちゃんも!」

「わ、わわ、私も……い、いえ、そ、そうですよね!し、失礼します……」

 報野モユルさんが開けてくれた正面から抱きついて、イヴちゃんのお腹に顔を埋める宇沢レイサさん。

「じゃあ私もちょっとだけ」

 背中側から抱きつく朝吹ソフノさん。ニッコニコのイヴちゃん。*2

 

 団子状態のまま、今日の放課後の話、それより前の言い忘れてた話。他愛ない話を噛みしめるように聞くイヴちゃん。

 下江コハルさんの様子を心配する3人に、当たり障りがないように丸く伝えるイヴちゃん。

 ピロリ、と何かの電子音が鳴って、報野モユルさんがスマフォを見た。

「あっ、ヤバ、もうこんな時間」

「イヴちゃん、お昼とか、大丈夫?」

「……明日は初日だし……。先輩達の話も、気になる……。……コハルさん、先生、それと部長のヒフミさんと相談して、事前に連絡するね……」

 はぁぁ~、とイヴちゃん以外の一同が溜息をつく。

「先輩なんて知らね~って言えたら良いんだけど、世話になっちゃってるしな~」

「コハルちゃんも心配だし、何でそんなところに口出しされないといけないのかって思うけど」

 おろおろする宇沢レイサさん。イヴちゃんも困った顔で首を傾げた。

 

 自警団の事務室を片付けて戸締まりし、寮の手前まで宇沢レイサさんと一緒に帰ってから、着替含む荷物をがさっと支度した。

(イヴちゃん、眼鏡は?)

(……あ、う、うん……)

 さっきの話が効いてるのかな。どことなく歯切れが悪い。一応、という感じで伊達眼鏡のケースを取って鞄に放り込んだ。

 

 旧校舎に戻ったのはイヴちゃんが一番遅かったらしい。

 イヴちゃん以外の全員がシャワーを浴び終えていて、もうパジャマに着替えていた先生が出迎えてくれた。

「"お帰り、イヴ。シャワー浴びてから、部屋に来てくれる?ヒフミも一緒だから"」

 頷くイヴちゃん。

 

 下江コハルさんはもうベッドに潜り込んでいた。浦和ハナコさんと白洲アズサさんは隣の教室で扉を開けたまま小声で歓談していたらしく、戻ってきたイヴちゃんに気付いて軽く手を挙げてくれた。

 白洲アズサさんは昨日までと似たような上下黒の服だけど、ちょっと襟の辺りとかが違う。洗い替えたのかな。

 浦和ハナコさんの服装は何あれ。何となく先生の私物っぽい濃い紺*3のくたびれた部屋着らしき上着を着てるけど、ピンクのスケスケのキャミソールっぽいシャツ?ネグリジェに下着が透けて見える。何あれ?いやえっち過ぎるでしょ。イヴちゃんは気付いてないっぽくてすぐ目を逸らしたので詳しくはわからんかったけど。

 

 向かいの先生の私室になっている教室の扉も開け放たれているが、今は誰もいない。

 目礼したイヴちゃんは荷物を放り出し、急いでシャワーを浴びて戻ってきた。今日のイヴちゃんの上のシャツは半裸で剣を持った豹頭のお姉ちゃんのシャツ。*4

 地の色が薄い黄色で、ペロロのポーズが違うパジャマの阿慈谷ヒフミさんと、昨日よりやや色が薄くなった青の地味パジャマを着た先生が待っていた。今日は着こなしが普通なんだけど、風呂上がりにうっすらし直したらしき薄化粧、うーん、色気が凄いな。

「ごめんなさい、イヴちゃん。急かしてしまったみたいで」

「"ありがとう、イヴ"」

 小さく首を横に振ったイヴちゃんが勧められた席に座ると、阿慈谷ヒフミさんが扉を閉めて鍵を掛けた。

「詳しい方針は明日ですが、情報共有をしたいと思って、私からお願いしました。次回のテストの日程だけしかまだわかりませんが、対策は早いに越したことはないかと思います」

 頷いたイヴちゃんが、先生と阿慈谷ヒフミさんに「苦手を洗い出すくんver2」を送る。

 中身を見ておお、と感心してくれる阿慈谷ヒフミさんと先生にちょっと嬉しそうなイヴちゃん。

「……先に、渡しておけば良かったですね……」

 あんま時間無い上に、浦和ハナコさんが見てくれてるから出過ぎた真似かなって思ったんだよなあ。

「いえ!とんでもないです!助かります!これを元に、2年生までの範囲を足していけばいいので。後で、先生とイヴちゃんにチェックしてもらいたくはありますが」

「……科目を手分けして、やりましょう。先生、全体の見直しとか改善も……。明日以降でいいのでお願いしたいです……」

「"うん、3人でやれば早いかな。ありがとう、イヴ。改善も見てみるよ"」

 それぞれ着眼点が違うし、完成後に全員分入替えて見れば良いということで、早速作業を始めることになった。

「"ところで、このファイル名は……?"」

「……ユウカさんに前、数学を教わったときにくださったファイルが、こんな名前で……」

「"へえ、ユウカのセンスっぽくないな。あ、ユウカはミレニアムの生徒で、すごく数学が得意で優しい子なんだよ"」

「ミレニアム、モモフレンズのイベントでもないと行く事が無いので、どんなところか気になります」

 軽く雑談を交えつつ、手は止めない一同。

 

 手分けして1時くらいには片付いたので、起きてからまた目を変えて見直そうということで生徒の寝室に戻った阿慈谷ヒフミさんとイヴちゃん。小声で「お休みなさい」と囁きあい、それぞれのベッドに戻る。

 

 寝る前に、ふっと下江コハルさんのベッドを覗き込んだイヴちゃんが、頬の涙の跡を見て小さく息を呑んだ。

(……コハルさん、泣いてたんだ……)

(あ、いや、イヴちゃん、あー……欠伸の跡かもしれないし)

(……うん……)

 気にしないでってイヴちゃんに言いかけたけど、友達の事を気にするなっていうのも変な話なんだよな。重い溜息をついたイヴちゃんはベッドに転がり込んだ。

*1
パッと見はわからんと思う

*2
多分クラスメイトならわかるくらいニコニコ

*3
先生は青系っぽい色が好きそうなのと、サイズが明らかに大きくて合ってないので

*4
Pan4eraの"Meta1 Magic"みたいな。ダサい。




 フィリウス分派とその指示を受けている情報局のエージェント(情報局に弱みを握られたり報酬で協力している一般生徒)が『補習授業部に注意しろ』という噂の発信源なので、そもそもフィリウス分派の影響力が強くない部活には影響がありません。
 純文学部は中堅~中の下規模の部活で政治的影響力も大きくないのでフィリウス分派が予算の話にかこつけて「純文学部の規模の部活だと吹き飛びかねない」とカマすくらいの工作に行っています。
 陸上部は文武両道を掲げるトリニティの中でかなり規模が大きく、有力な部活なので直接接触工作は避けて噂として吹き込むのに留めていますが、今年は晄輪大祭があるのでピリピリしています。
 先輩方も悪気で言っている訳では無いのですが、純文学部は怯えているけどモユルが世話になったので、バレないように良い感じにするようにと説いています。
 陸上部はそういう政治が得意な部員もいますが、正義実現委員会や自警団とは接点が薄く、『補習授業部の補習対象者が狙い撃ちにされているようだ』くらいの把握です。
 「バレなきゃ大丈夫、上手くやれ」(これもトリニティ上層部が反抗的な生徒を把握する為の罠という面もありますが)はトリニティの隠れた教訓の一つで、ソフノもモユルもイヴとコハルと距離を置く気自体は全くないのですが、最悪のところ、補習合格までは会えないかな~という覚悟は準備しています。

 実際、トリニティに限らずですが、大手校は政治的怪文書や変な噂が凄く出回って層です。

 イヴにユウカが渡したファイルは2年の時のリオが作ったもので、「成績をより上げたい」と思い相談したノア用のものを本人了承のもと改良して流用しています。

 評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。
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