ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
冬も深まってきて屋台のおでんが美味しいこの頃、イヴちゃんの幸せな顔で追加のご飯3倍食べられたジルです。
おでんでご飯OK派?NG派?僕は両方!
トリニティの学生さん目線では高えモンはあらかた食ったけど、こんなボロい屋台の80円の大根がいちばんうめえ。暴力って何なんだろうな。
今夜のお仕事はですね、繁華街にも駅にも近く汚れ仕事が多い、つまり養える数が多くなり不良グループの密度も劇的に高くなる再開発予定エリアにやってきました。
冬の大気の澄み切った今と、もののあはれすら感じる廃墟の景色の良さとは真逆の案件。この辺りは特に、再開発の利権諸々で企業から懸賞金がついたりしていて、キヴォトスの闇の深さを痛感するね。
1つのビルを掃除(隠語)したら他の不良グループを刺激して次のグループがと連鎖爆発しそうなので慎重に行かないとね。
数日かけて地道にやるかなあ。とりあえず攪乱や火力支援用にと用意しておいた2B14っぽい、軽い迫撃砲を屋上に設置して盾と愛銃を隠す支度をしながら、廃墟じみた再開発地区を眺めていると、テナントの明かりもなく街灯も疎らな死んだ街の路地を誰かが走っているのが見えた。
戦場――キヴォトス全土がある意味そうだが――に迷い込んだのか?誰かに追われているらしく、ジグザグに逃げて建物の角や廃自動車を盾にしつつ撃ち返している。
発砲炎が季節外れの蛍みたいで綺麗だね。追っ手側は大人数らしく、発砲炎や曳光弾の数が圧倒的に多い。
だがはっきり言って追っ手側は練度不十分、下手糞極まりないのが見て取れる。どこぞの馬鹿がろくに狙いもつけずに撃ったロケット弾が風に流されて逸れ、盾にされていた建物の南隣の窓に飛び込み室内で爆発が起きた。
中からわらわらと別のグループが湧き出てくる。「何だ?!カチコミか?!」みたいなガヤも聞こえてくる。あー、先が読めてきた。
欲の皮を突っ張らせて1人で何とかしようなんて気はもとより無いので、素直に自警団と正義実現委員会に通報の連絡を入れ、集団の様子を確認する。
数分でヘルメット団複数の分派、スケバングループこれも複数、その他不良がお互い銃撃や殴り合いながら結果的に1人を追い回すカオスな大波が出現した。大半は誰を追い掛けてるかすらわかってない大乱闘キヴォトスシスターズ。最悪だな。
先頭に立つ追われてる子は猫耳黒髪ショートのうわ杏山カズサさんだ。自警団と正義実現委員会を呼んだのは不味かったか……?
僕はゲームでは確かお迎えしてなかったから断片的な話しか知らないのだよな。確か中学時代はキャスパリーグなる二つ名で荒ぶっていたけど栗村アイリさんの百合力で改心したのだったか。つまり今、助けると不味いのか?
いや、逆に僕のやってる不良掃討がバタフライエフェクトでここの不良人口密度が爆上がりして本当は自力で切り抜けられたのがヤバい『~集団リンチを見過ごしてしまったので原作が変わってしまったけど後悔してももう遅い~』とかになったら洒落にならんしな。
まあ僕が助けても僕に感謝が向かない方向に誤魔化したら大丈夫だろう。助けた直後に、何の意味も無く「悪くない。それでは私が相手をしよう」とか言って襲いかかってみるとかね。
そうとなったら助けに入りたいところだけど、あの大人数のお祭りに、夜のお仕事用のアサルトライフルwithグレネードランチャーではちょっと厳しい。正直なところ、違法な事はほぼしてないけど、身バレして不良連中に目つけられたくないから、あんまり夜は使いたくなかったけど、盾と
偽装用に使ってるコートとシュマグも一緒に隠した。こんな廃ビルの屋上に来る人間なんていないと思うけど、念のため軽く置引防止用のブービートラップも仕掛けて、後は楽しい迫撃砲花火を打ち上げたらおっぱじめるとしよう。
防犯意識の高まりと普通人なら普通に絶命する仕掛けを手際よく作れる自分にキヴォトスに悪い意味で染まったなと思う。
まあ、やるんなら本気でやろうか。その方が楽しいだろう。ハハハッ!
杏山カズサさんとグループの先頭の間に照準を合わせて迫撃砲に榴弾、榴弾、照準を集団最後方より少し後ろに変えて照明弾を射出。
しゅぽしゅぽしゅぽと気の抜けた音が可愛い。やってることは破壊を撒き散らす行為なのだが。
迫撃砲は歩兵のお供。このモデルは空挺部隊用の軽量なので軽さもグッド。
砲弾が着弾する前にビルの屋上から助走をつけてうおーっ!ホップ、ステップ、ジャンプ!かーるいす!
空中でウッドペッカーが吠え狂う。30mmの鉄の雨が集団を分断する。思っていたより不良の大波は進行が早かったらしく、杏山カズサさんとそれを追う2グループ10人強と、残り50人ばかりに分断された。
興奮かそれとも練度の低さか上からの攻撃に気付いてすらいない連中もいるようなので、僕は射撃停止して盾を地面めがけて勢いよく投擲した。
300kg強の鉄塊が鎖のこすれる音を立てて上空を一瞬飛翔した後、アスファルトに叩き付けられ轟音を響かせ、ほぼ全員の視点が一ヶ所に集中する。
ピンを抜いた手榴弾を5個投げ、ビル壁を蹴って反対側に跳びつつ、空中で鎖を引いて盾を引き戻し、更に反対側に跳んでもう1斉射。
おまけに爆薬で繋いだ手榴弾3個セットを投擲。爆発が相次ぎ、ざっと15人近くが倒れ伏した。
着地して地を薙ぐように左腕を振り回し、致死の線を引く。といっても、キヴォトス人は30mm機関砲弾でも死なないから致死でもなんでもないのだが。
「な、何?!」
「ちょっと、押すな!押さな痛い痛い!」
「乱入してくるとはとんでもない奴だ」
「イヤん!」
「ぐああっ!ら、ラブさん……!」
変わらず互いの集団が撃ち合う状態から、集団の垣根を越えて僕に火線が集中する状況になり、盾を構えてクラリオンをぶっ放し、そのまま手近な……何ヘルメット団か判らん子をシールドバッシュ。
こいつら同士の銃弾で削り合ってもらいたい。見もせずに後ろ手にクラリオンをぶっ放しつつ次の獲物を探し、おっと!盾を構え直しショットガンの3連射を防いだ。
「ちょっとちょっと、あんた誰に喧嘩売ってるかわかってるの?このヘルメット団幹部の河駒風ラブ様に痛い痛い痛い痛い!」
燃えるような赤髪ロング、P○BGか何かみたいなヘルメット――ロシア軍のK6-3だったか――を被った女の子、今日は顔にまだ絆創膏を貼っていないが、河駒風ラブさんやんけ……雑沸きボスみたいな遭遇しやがってよ……。
絆創膏いっぱいつけてあげるね?かなり痛そうではあるが、撃たれて吹き飛んだ訳では無く、被弾した反動を使って後ろに下がっただけだな。
「ちょっと!人が話してる間には撃つなってママに教わらなかったの!?」
河駒風ラブさんを守ろうと射線に入る健気なヘルメット団員を撃ち倒しつつ僕の背後を取ろうとしたスケバンをクラリオンの銃口でつついてからゼロ距離射撃で撃ち倒しつつバックステップ。
つんざくようなウッドペッカーの射撃音と薬莢がちゃりんちゃりんと転がる音が心地よい戦場音楽を奏でてくれている。銃を撃つ間の多幸感と無敵感堪らん。それにばかり浸ってはいられないのだけれども。
僕もイヴちゃんも残念ながら名有りキャラではないのだ。油断すると実際死ぬ。
「私に母はいない!」
「あっ、えっ、ご、ごめってちょっとまだ撃つの!?きゃーっ!!!」
割と気まずそうな顔をして銃を下ろした河駒風ラブさんをがんがん撃つ。良い子だね。
でも撃つよ。遮蔽物を使っているが、30mm銃弾の前では紙屑同然だ。エアコンの室外機やら車両止めやらが冗談のように吹き飛び、ビルの外壁もスイスチーズのように穴だらけになる。
これだからでかい銃をぶっ放すのは止められない。あー、風倉モエさんと仲良く出来そうな気がする。
撃ってはいるけど今のは嘘じゃ無いよ。イヴちゃんにはいると思うけど、僕は現世には多分いない。
クラリオンをリロードして仲間が倒れたのを見て逃げようとしたスケバンの襟を掴み、力ずくで引き寄せて左足を払い、河駒風ラブさんめがけて投げつけ、ピンを抜いた手榴弾を1つは山なりに、もう一つは宙を浮いたスケバンの身体の影からすり抜けるように投げつけた。
爆風に押されるようにまた何人か倒れた。スケバン勢力は見たところ全滅か撤退したようだ。好機。
「あ、あんた……ゆ、許さなうっ?!」
あれだけ撃ってまだ動けるのか。神秘の差なのか、鍛え方が悪いのか不安になるな。よろめきながらも出てきた河駒風ラブさんを盾の陰に引きずり込み、チェーンを首に巻き締め上げながらの銃口をねじ込んだ。
「全員動くな!幹部を死ぬほど痛い目にあわせたいか?」
「嘘でしょ、エグすぎる……」
「あたしらでもあそこまでやらんし……」
「お前らが撤退するならこいつは撃たない。武器を捨てろとは言わない。弾倉だけ捨てて地面に弾を撃ってから1ブロック離れろ」
残り20人くらいのヘルメット団員達は大人しく僕の言うことに従い、小さな銃声がぱらぱらと響いた。
こちらというか僕に裸絞*1を掛けられているこの子を気にしながらとぼとぼと離れていく。
眼球や耳口その他の穴に銃弾を撃ち込んだらどうなるのだろうという好奇心はあるけど、試したいとは思わない。
まあ、僕やイヴちゃんがそんな目に遭いたくないから相手にもやらないというだけだが。まだ意識があるこの子に銃口を押して駄目押し、よしヘイロー消えた。
親指錠をかけてから、一瞬「撃たないのを約束したのはこの子だけで下がっていく奴らは撃ってもいいだろうし背中から撃つか」と思ったが、この子を引きずっていって杏山カズサさんを助けにいけば盾になるだろう。
卑怯とは言うまいね。撃たなかったし約束は破ってないよ。
そう思った途端、とぼとぼと歩いていた連中のうち何人かが倒れ、残りは何かに追い立てられるかのようにこっちに向かって突撃してきた。
とはいえ、お互いビルの陰や遮蔽物を使っていたさっきとは違い、道路上を馬鹿みたいに走ってくるのでウッドペッカーの火線でバタバタとあっという間に倒れ伏した。
突撃破砕射撃も顔負けだな。迫撃砲他の火砲の援護が無いけど。
最後の1人を撃ち倒す前に強烈に悍ましい気配を感じ、射撃を中止して盾を構えた瞬間、上空から飛んできた1発の銃弾が盾を弾き飛ばしかねない勢いで着弾した。
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紙での小説の書き方に基づいて書き続けていたロートルとしての改行等を改めつつ、同時に加筆修正を行いました。話の本筋には変更ありません。2025.01.19