ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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魚は頭にいいから、魚無限に食べたら補習授業部を秒で脱出可能では?

 ウラフラワーこと浦和ハナコさんの頭が良すぎてほげ~~~ってなってたジルです。

横で聞いてたイヴちゃん曰く。

(……あんまりに鮮やかな推理で、お茶淹れてお菓子食べてる間に終わった……)

 あっという間に全体像が出来上がっちゃって口を挟む余裕が無かった って事ね。

(おやつ美味しかった?)

(……あれでゼロカロリー、あなどりがたし……ちゃんと聞いてたよ……?)

 おやつの感想が先に出てくるイヴちゃん、本当に可愛いなあ。

 

 ともかく、今日はシンプルに時間切れって感じだった。

 外出たし、寝る前にもう一回シャワー浴びておこうってことで、シャワーの順番を先生が譲ってくれたので、浴びているイヴちゃんと情報交換という体の雑談をしてる。

五感の情報は全部切ってるけど。

 シャワーでご機嫌なイヴちゃんの快の気持ちが伝わってきてとっても気分がいい。

最近、イヴちゃんの気分に引っ張られるというか、感情が伝わりやすくなってきた気がする。

もともと、脳は同じだから感情を伝達する物質が漏れるというか、伝わってもおかしくないんだけど。なんていうのかなあ、シンクロ率?感応?うーん、肌感覚だけど違う気がする。

まあ、イヴちゃんは僕の母になってくれるかもしれない女性ではあるけど。

(……結局、ハナコさんが何で低い点数をわざと取ってたのはわからないけど……)

(評価されないこと、逆に評価されることへの疲れとかかな?)

(……?……)

(例えだけどさ、イヴちゃんは頑張って勉強をしたから、いい点数を取れて、友達から褒められる。ついでに学園からも褒められた。嬉しかった?)

(……うん、そうだね。嬉しかった、と思う……。全部が全部、自分一人でやった訳じゃ無いけど……)

 うんうん、友達と一緒に勉強会したりして勉強の整理も出来たしね。

(逆に、勉強も全然してないし、出来て当たり前、みたいなことで褒められて嬉しい?)

(……???……)

(うーん、これも例えが難しいなあ。本人からすると何も努力してない「呼吸できてえらい!」……みたいな?それを常時、絶え間なく褒められる的な……?)

(……特に嬉しくはない、かな……?)

 自分でも変な例えが出てきてちょっと自信無くしちゃったけど、まあこんな感じじゃないか。

 腕がない人間からしたら、ものを投げられるのは超能力でしょ、みたいな事を言い始めるとややこしくなるから言わんけど。

(後は、「呼吸ができるから、うちの部活で一緒に頑張らない?!」って誘われまくるとかね)

(……それは、ちょっと辛い、かな……?)

 伊原木ヨシミさんの話だと凄く誘われてたらしいし、大体こんな路線だった、気がするんだよなあ。

いや、そもそも一切勉強せずに高成績取ってるかは判らんけど。ちゃんと勉強した上でならごめんねって浦和ハナコさんに謝っておく。

 

 そういえば、と、イヴちゃんが違う話題を出す。

(……補習授業部の監督官が私である必要は、それなりに喧嘩が出来て、実在はしないけど、『裏切り者』がいたときの、ええと、時間を稼いで応援を待つ……?)

(そうそう、遅滞防御ね。自警団と正義実現委員会が応援に来てくれるはずだからっていう。まあ、中からの攻撃は自爆とかが無い限り大丈夫)

(……気になってたんだけど、どうして「監督官」で補習授業の対象外なのに、連帯責任になってるのか……)

(うーん。こないだ円堂シミコさんが持ってきてくれた、過去問の資料の山の中に入れてもらった『学業法に基づく成績が著しく不振な者に関する補習及び補習授業部の設立に関する施行令』をこないだちらっと読んだんだけど)

(……読むだけで頭痛くなりそう……)

(この手の法令とか役所の文書はカッコ囲みを飛ばして読むとそんなに難しくないよ。参照する法令は後で別途読まないと混乱するからね。いやそれは置いておいて)

 しょうもない話をしてしまった。

(監督官って、そもそも規定が無いんだよね。多分だけど、退学の条文を作ったときにも想定してなかったから在籍者を十把一絡げにしたんじゃないかな?ティーパーティーに公文書開示したらどんくらいかかるか判らないけど、とりあえずそれもしておいたよ)

(……ありがとう……)

 前世が役人の文書を読むおたくだったのか、役人だか検事、あるいは弁護士か何だったかなのか。

僕自身の謎がちょっと増えたけど、まあ、そこはどうでもいいかな。僕自身はあってもなくてもそんなに困らない存在だからね。

 

 後はあれだなあ、浦和ハナコさんは滅茶苦茶頭が切れるのが確認できたので、変な事を口走れないなっていう確認取れたってとこか。

 敵に回ったりはしないと思うけど。しないよね?トリニティ嫌いだし無くなってもいっか!みたいな思い切りの良さを発揮されないことを願っておこう。無いよね?

 

 なんて思い悩んでる間に、イヴちゃんがシャワー終わったようだ。

(……服、着たから、もう大丈夫……)

 イヴちゃんの合図で僕は五感の共有を再開した。鏡にはシャワー後で上気した頬、部屋着で髪を下ろしたイヴちゃんの姿。ちょ~~~可愛い。

 今日の部屋着は、聖園ミカさんが例えに出したからって訳でも無いだろうけど、でかい白鯨が帆船を撃沈してるジャケットのやつ。*1

 下の黒ズボンは毎日履き替えてるけど、サイドポケット付とそうでないのがある程度の違い、今日はポケット無し。

 先生が順番を待ってるだろうから、毎晩のお手入れに関してはざっと乳液と化粧水を塗っただけで、細かいところはベッドですることにしたらしい。うーん、今日も赤い瞳が美しいね。

 

 シャワー室前で、先生とすれ違って、再度お休みの挨拶。先生はメイク落としてるけど、メイク落としても素でめっちゃ美人でビビる。キヴォトス唯一の先生だけど、百合吸い込み力でめっちゃ教育に悪そうなんだよな。

 

 生徒の寝室に戻ってくると、確かに白洲アズサさんがいない。普段、もうイヴちゃん寝てる時間なんだよな。

 ベッドに腰掛けていた浦和ハナコさんは小さくこっちに手を上げてくれて、イヴちゃんも目礼で応える。阿慈谷ヒフミさんはもう寝てるみたいで、ベッドが膨らんでいて静かな寝息が聞こえる。

 ベッドでもぞもぞしている下江コハルさんが、イヴちゃんが戻ってきた気配でこっちに寝返りを打った。

 じとりとした目線に、イヴちゃんは小首を傾げて応える。

 ふん、と鼻を鳴らして逆を向いた下江コハルさんに、イヴちゃんが「お休み」と呟く。

 数秒の間の後。

「うん」

 と小さく答えが返ってきたのに安堵したイヴちゃんも、吐息と共にベッドに潜り込む。

 モモトークで宇沢レイサさんグループに『しばらくお昼は無理そう、ごめんね』とメッセージを送る。遅い時間だからか、パトロールからそろそろ帰ってきて寝る支度してるであろう宇沢レイサさんだけが反応してくれた。

 ちい○わの星みたいなキャラが思い切り眉間に皺を入れて凹んでるスタンプ。

 イヴちゃんも似たような顔をしてるし、わかる。

(政治的に凄いややこしい事態に巻き込まれてるみたいだしね、僕達)

(……コハルさん達を助けて、ご褒美にパスタサンプルを借りる……。目標はシンプルなのに、道のりが遠い……)

 ぶん殴って解決なら、宇沢レイサさん呼んで二人は自警キュアでタコにしたら良いんだけど、勉強だからなあ……。おまけに政治もついてくるから、政治無振りの僕達にはちょいキツい。スクワットと腕立て伏せで政治がわかるようになればいいのに。

 ああうん、パスタサンプルね……あのギンギラのやつな……。何がそんなにイヴちゃんの心を捉えてるのか、判るんだけどわかんね~。

 

 翌日、朝ご飯はレンズ豆のスープに舌平目のオーブン焼、白米のご飯だった。先生が準備しておいてくれたらしい。

 早起きして準備してくれたんだって恐縮してる阿慈谷ヒフミさんに、先生は笑顔で手を横に振った

「"下準備してある切り身が入ってたから、オーブンで焼いただけだよ"」

 スープも食べ応えがあって良い感じ。トリニティのスープの傾向、どちらかというと具材たっぷりで『食べる』のに重きを置いてる気がする。

 

 朝ご飯を食べ終えて、先生と下江コハルさんは軽く休憩を挟んで、先に勉強の支度をしてもらうために教室に行ってもらった。

 残りの面子で手早く片付けをしている間に、浦和ハナコさんが何気なく切り出した。

「ところで、アズサちゃん。夜はどこに行ってるのですか?」

 ぴくりと反応する阿慈谷ヒフミさんとイヴちゃん。

「うん?ああ」

 しばらく言い淀む白洲アズサさん。コップを洗い終えて換気扇を止め、片付けるものが何も無くなってから言い辛そうに口を開いた。

「気付いていたか。先生に危害を及ぼさないタイプの罠を仕掛けていた。くくり罠*2とか、スネアトラップ*3の類だ。先生が間違って引っかかっても、問題は無い。後でイヴには位置を伝える」

 頷くイヴちゃんと、小首を傾げる浦和ハナコさん。

「罠、ですか。何か危ないことがありそうですか?」

「うん。ああ、いや。今は何ともだが。用心するに越したことは無いだろう」

 嘘が下手か?あからさまに目が泳いでいるし、浦和ハナコさんはもちろん、他の誰の目も見てない。

「アズサちゃん、困ったことがあったらいつでも教えてくださいね。私は部長ですし、ハナコちゃんも、イヴちゃんも、先生も手を貸してくれます。コハルちゃんもきっと」

「ありがとう。もし、万が一があったら、私が前に出るつもりだ。イヴも手伝って欲しい。皆は、先生を逃がすのを最優先にして欲しいんだ」

 こくこく頷くイヴちゃん、万が一を想定したのだろう、顔を曇らせる阿慈谷ヒフミさん。浦和ハナコさんは表情を変えずに続ける。

「先生に、何かある、ってことですか?」

「いや、先生は重要人物だから。そういうことも有り得る、というだけだ」

 嘘が下手か?キッチン下の収納の扉を開けて何かを探すような素振りをしてるけど、手は宙を彷徨って声がちょっとうわずっている。先生を狙った闖入者を想定してるって事だな。

「その辺りの役割分担はしっかりしないといけませんね。万が一、に備えて。ね、ヒフミちゃん?」

「え、ええ。そうですね?!」

 小さく肩を跳ね上げた阿慈谷ヒフミさん、心配そうな視線を向けるイヴちゃん。

 試験勉強に加えて追い脅威の発覚、部長としてお労しやって感じだもんなあ。

 

 今日の勉強をはじめてしばし。

 ミレニアムのエンジニア部から『補習授業部 御蔵イヴ様』宛で宅配便が届いた。一抱えする大きな段ボール1つ。

 中を開けると、丸かったり四角かったりするプラスチック製、こぶし大の機械が8個ほど入っていた。ソーラーパネルや風車みたいなものがついている。

『SNSで先生の手伝いをしているのを知ったので、無電源で作動する警報装置を送ります。製品化済の用事が済んだ試作品なので、返却不要。また、翼のユニットのアップデートデータを送りました。詳細はメッセージで』

 

 モモトークを開けると、警報装置の手書きの説明書と、翼のスタンバトンのアップデートパッチが入っていた。内容を要約するとこう。

『コンセントから距離が遠い場所にも設置出来る赤外線センサ類、電力は自力発電、蓄電してバッテリで動作する。警報音が大音量で鳴るか、スマフォに警告メッセージ送信、両方を選択可能。ふたを回して開けると簡単メンテナンス、自爆機能付』

 ミレニアム脅威の技術力だなあ。開けたら自爆装置の爆薬と雷管、信号装置がついてたのでイヴちゃんがパパッとむしり取る。電源ボタンをオンにして、閉めてから同梱のダクトテープ*4で上から接合部を閉めると完成。

 もう一つの方は、なになに。

『翼のスタンバトンをアンテナとして機能させるアップデートです。例の衛星が使用できます。一度発射すると冷却期間が必要なので連射不可能なのは注意。ミレニアムでの試験は終わったので、スケジュールは調整不要』

 マジか。例の攻撃衛星が使える……ってコト?!

(やったねイヴちゃん!手数が増えるよ!)

(……いいね……)

 イヴちゃんも僕もニコニコになってしまった。衛星軌道から撃てるごんぶとビームとか浪漫しかないからね。

*1
Mastodonの"Leviathan"っぽい

*2
足首を捕まえる罠

*3
これも足首を捕まえるけど、逆さ吊りになる

*4
ミレニアム生はダクトテープ大好き。




 電源不要の警報装置の製品版は試作品より電波送信出力が高いものです。昨年発売され、治安最悪のキヴォトス、特にインフラが破壊されやすいゲヘナでベストセラー商品になっています。
ただし、妨害が簡単なのと、キヴォトス人はバレても撃ってぶっ壊したらいいや!って脳筋全開なので、重要度が低く電気を引いてない倉庫等への不法侵入対策用途が主です。

補習授業部監視要員から『イヴ宛にミレニアムから謎の装置が届いた』という通報を受けた桐?ナ?サ「こんな時期にわざわざ判りやすく物資を送る?防諜、逆に盗聴や監視用装置?」(警戒ポイント↑↑)

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