ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
先生は両方の生徒から言い含められて、店内の一番奥で指揮を取ることに。流れ弾怖いしね。
出ぎわに黒舘ハルナさんが先生と愛清フウカさんのために紅茶を注文していたらしく、ちょっと困った笑顔で右手を手刀型に上げる先生。チョップの概念ってわけじゃなくて、お礼なんだろうけど。テロリストである事以外は本当に気が利くなあ。
縛られたままではあるけど、先生の横に座っている愛清フウカさんもちょっと嬉しそう。逃げてもすぐ捕まりそうだからなのか、逃げる素振りはなさげ。
店を出てすぐの大通りは正義実現委員会が通行禁止措置を取ったようで、僕達と美食研究会、正義実現委員会の子達以外は誰もいない。立入禁止ゾーンのすぐ後ろには野次馬が沢山いるが、まあ流れ弾で死ぬ訳でも無し、自分で残ったんだから痛い目見ても構わんだろう。
美食研究会の背後だけでなくて、いくつかの建物の上に、パルクールでよじ登ったらしき正義実現委員会の子が何人かいる。
右上の視界の指揮下加入承認をして、イヴちゃんがトリニティ側の一番前、左端の建物寄りの位置に出る。イヴちゃんが一番前で
互いに20mくらいの距離。遊底を操作し、薬室に弾を込める間に、黒舘ハルナさんがイヴちゃんにもう一度話しかける。
「どうして、ゴールドマグロに拘りますの?イヴ、あなたは美食研究会に一緒に加われそうですのに」
黒舘ハルナさんはニスロク・ニンジャ*2のソウル憑依者なんだっけ?知恵の実か生命の実かどっちか知らんけど、その実を使った料理が得意な悪魔だったような気がする。それでイヴ・ニンジャ(仮)のイヴちゃんに親近感があるのかな。
「……寂しそうだった。私と……昔の、私と同じ……。諦めて、くれませんか……?」
「イヴの前世がマグロだったなら。もしくは、
前世の証明か。僕が知性マグロだったなら、何とかなったのかな。頭の中にいる居候の証明から始めるのは到底間に合わなさそうだな。かぶりを振って、
初弾を放ったのは黒舘ハルナさんだった。イヴちゃんの盾の左上端をかすめるような一撃。外したのか、何かの牽制か?イヴちゃんは7.62mm弾とは思えない重い弾丸を受け流して右前に出る。
同時に獅子堂イズミさんが無造作に間合いを詰めてくる。そういえばこの子、ゲームだと後衛じゃなかったっけ……って思ったけど、イヴちゃんだって前衛と中衛固定じゃないし、美食研究会しかいないときには前衛はこの子なんだろうな。食ってる間は倒れないし。もぐもぐ何かを食べている彼女に、白洲アズサさんの銃撃がお腹に突き刺さって崩れ落ちる。痛そうだけど、青い顔をした彼女はもぐもぐしてた何かを飲み込んで、何かを口に放り込んで再度立ち上がる。ほんの僅か、小さく驚愕の表情を浮かべる白洲アズサさん。
「みぞおちに決まったはず……」
「みりん砂糖めふん*3おにぎりのお陰で戦える!」
戦わなくていいです……。そういう謎ドーピング本当に要らないので……。
黒舘ハルナさんと羽川ハスミさんが狙撃戦の状況を呈している。羽川ハスミさんの方が流れ的には優勢のようだ。包囲されていて正義実現委員会の子に撃たれているというのもあるが、どうも黒舘ハルナさんはイヴちゃん、というかトリニティ勢全員を気にしているようだ。
指揮を先生任せにできるのとそうでないところの差といえばそうなんだけど、建物の陰や路上変圧器を盾にしようとしたトリニティ勢の頭上に銃撃を盛んに加えている。何だか気になるな。
僕が先生から提供される戦況データと五感由来の周辺状況を整理してイヴちゃんに伝えてるから、イヴちゃんは正面の2人、鰐渕アカリさんと赤司ジュンコさんの攻撃を捌きつつ、じりじりと距離を詰めている。
「ほっかほかの榴弾、どうぞ!」
「マグロ食べるんだから!邪魔しないで!!」
山なりの弾道で飛んでくる榴弾をクラリオンで撃墜しつつ、こっちも榴弾を撃ち返すイヴちゃん。盾を地面に叩き付け、赤司ジュンコさんの掃射を防ぐ。スコールの雨垂れのような轟音、じりりと後ろに押し返される。EXスキル的な奴なんだろうけど、一撃が重い。
(イヴちゃん、無理しないで時間稼ぐだけでいいから)
(……うん……)
先生からの指揮も、イヴちゃんの発砲すら求めてない。イヴちゃんが美食研究会というカラテ巧者の2人抑えられてるのは実際大したもんだし、あんまり効いては無いみたいだけど、上から後ろから、正義実現委員会の子達の援護射撃がちくちくと当たってはいる。
「あーもう!ちまちまにじり寄ってこないで!」
「……わかった……」
(イヴちゃん?!)
先生の指揮にない動き、でも、鰐渕アカリさんも屋根の上の正義実現委員会の子と撃ち合ってるタイミングだから悪くはない判断だ。
焦れてこれも屋根にいた正義実現委員会の子を撃っていた赤司ジュンコさんに答えて、イヴちゃんが盾を大きく振りかぶって投擲した。
「撃、ひゃああ?!」
銃撃を予想してたところで意表を突けたらしい。とんでもない速度でかっ飛んでくる500kgの金属塊から身体をかわすために地面に転がった赤司ジュンコさんに、イヴちゃんが全力ダッシュで間合いを詰める。盾、次いで左腕と盾を結んでる鎖が頭上を通過。
牽制のために擲弾を撃とうとした鰐渕アカリさんにクラリオンを連射、動きを止める。慌てて銃弾を撃ちながら立ち上がった赤司ジュンコさんに、被弾の痛みを堪えつつイヴちゃんが右手を伸ばす。
「……掴んだ……」
「あっ、やば。ちょ、離して~?!」
赤司ジュンコさん、1年にしては相当強い方だろうけど、膂力でいえばまあそこまででもないだろう。右手で左肩を掴んで引っ張り、その動きで盾についた鎖を引き戻す。
右足で左足首にローキックを入れ、引きずり倒して背中、腎臓の辺りに
赤司ジュンコさんを仕留めたけど、イヴちゃんもかなり無理をしたからか、引き戻した盾の陰にしゃがみ込む。
(大丈夫?!痛覚、もらうからね!)
(……大丈夫……)
スゥーッ、フゥーッとチャドー呼吸をして痛みを堪えるイヴちゃん。やっぱり赤司ジュンコさんの一撃はかなり重くて結構痛い。動けない程じゃ無いけども、精悍な動きはそのままだとキツいな。僕が痛覚を引き受けたから、イヴちゃんはしゃがみ込んだまま、突出した獅子堂イズミさんの方向に向けて狙いをつけずにクラリオンの残弾を連射。
赤司ジュンコさんに親指錠をかけて拘束したタイミングで、獅子堂イズミさんが何度目かの地面に転倒し起き上がり、食べようとした手を羽川ハスミさんの銃弾によって止められた。宙を舞う白いもの。
「あっ?!私のおにぎり?!」
「これは、無理そうですね~」
「別れて逃げることにしましょう」
「きひひ、そうするか?」
獅子堂イズミさんが白洲アズサさんと下江コハルさんに協同撃破されたところで、後方から黒いセーラー服、禍々しい血の滴るような2丁のショットガンを持った生徒が乱入してきた。腹に響く斉射音で、潰れた空缶のようにぶっ飛び、反対側の建物の壁に叩きつけられる鰐渕アカリさん。
剣先ツルギさんが来て完全に勝ち目が無くなったと判断したのだろう。躊躇せず、綺麗な動きで路地の奥に走り出し、右側の壁を蹴って左の室外機によじ登る黒舘ハルナさん。ああ、そうか。宇沢レイサさんとイヴちゃんのパルクールを見てたから、それを警戒してたんだな。逃げるための切り札に残してたから、尚更意識してたのか。
道なき道を自由のために走り始める黒舘ハルナさん。うーん、犯罪者が遁走してるだけなのに動きというか所作が綺麗で、謎の気品がある。すげー。
なんて感心してる僕を尻目に、イヴちゃんも別のルートであっという間に屋上によじ登る。
後ろから飛んで来た分厚い円盤状の何かを右手でキャッチし受け取るイヴちゃん。阿慈谷ヒフミさんの声が追いかけてくる。藍色の拳2つ分くらいの半径で厚さは指くらいか。中身がみっしり詰まったフリスビー、もしくは対戦車地雷みたいな感じの重い何か。
「逃走ルートに向けて投げてください!」
頷いて追跡に走るイヴちゃん。
パルクール慣れしてないのか、単に地元で無いからか、イヴちゃんに比べるとルートの比定が甘い。あっという間に屋根を蹴ったイヴちゃんが追いつき、右手のフリスビー?を投擲する。
黒舘ハルナさんが鋭敏に反応し銃撃、左側に逸れたフリスビーはやや下方の壁に張り付くと、場違いなまでに陽気な音楽と白い気持ち悪……風変わりな鳥の立体映像を映し出した。
「え、何ですの、目が離せません……それどころではないのに……」
黒舘ハルナさんの目が数秒立体映像に釘付けになっている間に、足場にしていた室外機にウッドペッカーで銃撃。機関砲弾が室外機をビル壁から剥がし、路地裏に叩き落とした。
キモ……ペロロ様の立体映像にまだ目が釘付けになっている黒舘ハルナさんに、自由落下+盾の重量を加えた膝蹴りを室外機越しに叩き込み、意識を刈り取ったイヴちゃんは、小さく息を吐いた。
キヴォトスでのみりんはノンアルコールみりんが主流なので、飲酒はしていません。
原作だと確か美食研究会はナレ死してた筈なんですが、本作だと前回の出番の時にナレ死させてたので一寸な……と思い書きました。
戦闘力はとんでもないのですが、流石に先生の指揮付で正義実現委員会副委員長+一般モブちゃん、真性アウトロー、ゲリコマ戦の達人、自警団の有力者、正義実現委員会エリートを相手にするのは無理です。
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