ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
先生を除く一同で地下の食堂に降りてきた。
お昼ご飯は冷凍パースニップ*1入のミンチカツと、これもレトルトの、つぶ貝のみりん蒸し。ブロス*2を阿慈谷ヒフミさん、浦和ハナコさん、イヴちゃんが作った。
白洲アズサさんと下江コハルさんは休憩時間だけどご飯が出来るまでは単語帳とかを見ていてということで、本とにらめっこしている。
美味しい匂いが漂い、ご飯が揃ったところで先生が採点を終えて降りてきた。今回は模試なので1人で採点してたけど、思ったより早く片付いたようで良かった。
冷凍とレトルトでも味は悪くない。みりん蒸しの汁か、スープにパンを漬けると美味しい。
模試とはいえ、試験からの解放で皆の口も軽く、雑談が弾む中、元々あんまり口数が多くないイヴちゃんと、下江コハルさんは静かだ。
「……美味しくない……?」
「えっ、い、いや、美味し……まあまあ!」
ツンツンしてる下江コハルさん可愛いね。うん、と頷くイヴちゃんももちろんちょー可愛いんだけど。
昼休憩を挟んで成績発表。
「"それじゃあ、今回は一気に発表するからね"」
プロジェクタにでん、と点数が映された。
補習授業部模試、結果
浦和ハナコさん――69点(合格)
白洲アズサさん――76点(合格)
下江コハルさん――64点(合格)
阿慈谷ヒフミさん――79点(合格)
(参考:監督官)
御蔵イヴ――99点(合格)
阿慈谷ヒフミさん、白洲アズサさん、下江コハルさん、イヴちゃんの口から安堵の溜息が漏れた。
「"みんな、頑張ったね。おめでとう"」
「ふ、ふん!やっぱり私はエリートだから、これくらい簡単だし!」
「本当に大したものだ。私も無事、合格点を取れて安心した」
くすりと微笑む浦和ハナコさん。
「ふふ、良かったです。私も、良い感じの点数が取れました」
イヴちゃん惜しかったな。本番に弱いから、本番だと100点は厳しい気がするしな。別に100点でないといけないってことは全く無いんだけど。
って、え、やっぱあの点数って狙ってんの?こわ。
安堵で顔を緩めた阿慈谷ヒフミさんが、ぱんと手を叩く。
「皆さん合格点を無事取れて、安心しました。本番は明後日ですから、気を緩めることなく、追い込みの勉強をしていきましょう」
同意の声がタイミングバラバラ、ぱらぱらとではあるけど、皆から上がる。
夜ご飯を食べて寝る支度を済ませて、イヴちゃんも着替えてから先生の部屋に。今日のシャツは灰色の身体の女の子が胸を物理的にガバッと開いてるジャケ絵。*3
先生、阿慈谷ヒフミさん、浦和ハナコさんと打合せ中に宇沢レイサさんからメッセージが入った。
『今日も少しだけ時間が出来たので、会えませんか?外で待っています』
スマフォを見て嬉しそうな顔をしたイヴちゃんに、先生が優しく声をかける。
「"レイサ?いいよ、行ってきて"」
「今日の打合せはこれくらいで大丈夫ですから」
「うふふ、本当に仲良しですね」
阿慈谷ヒフミさんも浦和ハナコさんも快く送り出してくれ、イヴちゃんがにこりと頷いて*4立ち上がる。
旧校舎を出たところで待っていた宇沢レイサさんが、イヴちゃんを見てぱあっと満面の笑顔を浮かべる。
今夜も晴れていて、旧校舎周りは他に建物が少ないから星も綺麗だ。まあいうて校舎敷地内なので、そこまで劇的には変わらんけど。
旧校舎入口すぐのベンチに2人並んで座って、おずおずと、でもしっかりと右手を握る宇沢レイサさんの手をイヴちゃんが握り返した。
「……レイサちゃんが来てくれると……安心する……」
「私も、顔を見られてとっても嬉しいです!!」
2人とも輝くような笑顔。仲良きことは素晴らしきこと、なんてしみじみしてしまう。
宇沢レイサさんが8割以上話して、イヴちゃんが時折相槌を挟む、一見一方的に見えるけど、とっても楽しい雑談が数分。
今日も宇沢レイサさんはパトロールのついでに時間を捻出して寄っただけなので、楽しい時間はあっという間だった。
「……そういえば、明日もパトロール……?」
本来、補助金を出してもらって自警団員もシフトを回してるので、なんかのでっかいイベントとかで人が出払ってるなんて事でもなければ、宇沢レイサさんも毎日出ないで済むようになってるはずなので、イヴちゃんの疑問も尤もだ。
「そうなんです。ゲヘナ方面への鉄道と道路、それと自治区境界の警備に正義実現委員会がたくさん出るように指示されてて、私達自警団はゲヘナと逆方向の手薄な側を警備してほしいということなんですが」
治安維持アプリで明日夜の地図を表示すると、自警団担当部分はゲヘナと真逆の側に指定されている。かなり範囲が広いので、確かに明日は会いに来てくれるのは無理そう。首を傾げて残念そうな宇沢レイサさんと、イヴちゃんもしょんぼり。
こちらを何度も振り返って別れを惜しむ宇沢レイサさんを見送ってから、ベッドに戻ってきたイヴちゃん。
もう打合せを終えて、阿慈谷ヒフミさんは既に寝ているし、浦和ハナコさんはベッドでスマフォを見ていたけど、戻ってきたイヴちゃんにちらりと手を挙げてくれた。
白洲アズサさんもちゃんと寝ていて安心。
下江コハルさんもこっちから見ると背中を向けて寝ていて、スマフォを見てまだ起きているみたいだ。
イヴちゃんはベッドに腰掛けて、下江コハルさんに「お休み」と声をかけた。返事が無いけど、イヴちゃんもベッドに潜り込む。
「イヴ。ちゃんと、合格できると思う?」
下江コハルさんが小声で、背中を向けたまま問う。誰が、と言わなかったけど、それも聞くまでも無いだろう。
「……今日、出来た。『練習で出来ない事は本番で出来ない』って言うけど……練習で出来てるから、きっと出来る……」
数秒の間。小さく息を吐いて頷く下江コハルさん。
「そう。……お休み」
「……うん、お休みなさい……」
イヴちゃんがうつらうつらし始める前に、僕はイヴちゃんに声をかける。
(明日の夜、何かあるのかな)
(……
(うん、ゲヘナ手前に広く正義実現委員会の戦力を撒く感じだったから)
(……美食研究会のSNSアカウントに、トリニティ近くのお店の訪問予定が書いてあったけど……)
要注意アカウントなので、僕達治安維持機関側もSNSやってないけど、まめにチェックしている。
(ゲヘナ領の店だけど、そこへのピンポイント対策、って訳じゃ無いのが気になるんだよな)
(……テロリストだからって、トリニティに入れないわけじゃないし……)
そうなんだよなあ。イヴちゃんの言うとおり、単に飯食った後にトリニティ側に足を伸ばす可能性も全然あるし、事前の爆破とかしなかったら誰に咎められる訳でも無いし。
(考えすぎなのかな。まあ、どっちにせよ僕達が出来る事もないか)
(……手伝いに行く事になったら、覚えておかないと、くらいかな……?)
現実そんなところか~。
おねむになってきたイヴちゃんとお休みの挨拶をして、僕も寝ることにした。
明日はDark Tranquillityのライブに行くのでお休みです。
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