ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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市街戦が日常茶飯事ってすげーなって思ってたけど段々感覚が麻痺してきて怖い キヴォトスはルール無用だろ

 先生が銀鏡イオリさんを説得している最中に、2時方向で追加の爆発が起きた。

 爆発そのものには別に誰も反応を示さなかったけど、無線から流れてくる声で、銀鏡イオリさんが顔色を変えた。ゲヘナの治安維持という本業で、余所の手を借りるのは気が進まなさそうな感じだったけど、そうも言ってられなくなったみたいだ。

 無線で交信しつつ、スマフォを確認していた銀鏡イオリさんが溜息を吐く。

「わかった。先生達、手伝って」

 補習授業部の面々に済まなさそうな表情で片手を挙げる銀鏡イオリさんに続いて、ぺこりと頭を下げる風紀委員会の子達。可愛い。

「"状況が変わったの?"」

「うん、美食研究会が温泉開発に巻き込まれて、暴れてるらしい」

 慌ただしく検問標識やらを片付け、Sd.Kfz.250っぽいハーフトラックに乗り込む風紀委員会の子達と、同じく素早くⅡ号戦車に乗り込む補習授業部の面々。

 イヴちゃんも素早くバイクに跨がり、ゴミをゴミ袋にしまって口を縛ってから戦車に放り込んだ浦和ハナコさんが後ろに座り直す。

 先生はどたどたとした感じに戦車に走り寄り、荒い息を吐きながらよじ登ろうとした。ところを、一旦乗ってから出てきた白洲アズサさんの手を借りつつ戦車によじ登った。

 

 ハーフトラックが先導、Ⅱ号戦車が続き、イヴちゃんのバイクが最後方を警戒しつつ進む。緊急車両扱いだから信号は気にしなくて良いけど、ハーフトラックも戦車もそこまで速度が出るものではないから景色を眺める余裕くらいはある。

 目的地の廃墟地区からやや東側に進路を取っている状態。道路脇の流れ弾や爆発なんかが原因で、建物含む景色は荒れてはいるけどマメに補修がなされていて、放棄されているという感じでは無い。

 補習授業部の無線ネットワークに一時的に加わった銀鏡イオリさんが、ハッチから身を乗り出してⅡ号戦車を眺める。

『そういえば、その戦車、元ゲヘナのじゃないか?』

「……スクラップを、買ったそうです……」

『やっぱり。車体前面、そっちから見たら右側の貫通痕、去年風紀委員会に入った後の訓練で私が開けた穴だと思う。もう何年も前から不動標的兼、戦車員選抜用だったはず。よく動かすまで直したな』

 懐かしそうに目を細める銀鏡イオリさんに、浦和ハナコさんが答える。

『かなり頑張ってくださったみたいで』

 キヴォトスの戦車乗りの適性には、普通の操縦や射撃、装填の適性の他に、『乗ると何故か戦車の性能が向上する』という要素がある。

 伝統的に、『砲弾の貫通力が上がる』『装甲の防御力が上がる』『速度や旋回性能が上がる』なんてものがあるらしく、大きめの学園での戦車乗り選抜試験は希望者が実際に中に入って撃つ、走らせる、そして装甲板や土嚢を追加したうえで撃たれるなんていうのが多い。何でそんな不思議現象が起きるかは3大校でも研究してるけど良く判ってないというのが実態なのだとか。まあ火器なんかと一緒で神秘が乗ったりするんだろうけど。*1

 阿慈谷ヒフミさんは戦車の運動性能に影響している、のかはちょっとわからないけど。普通に車両の運転や操縦上手いだけの可能性全然あるしな。

 

 浦和ハナコさんの話術で、今日の風紀委員会はシナシナしてないモップこと空崎ヒナさんはお休みであることから始まり、風紀委員会の今夜の概ねの戦力配置、3時方向に展開している風紀委員会が『鉄床』で、反時計回りに旋回しつつ包囲して捕縛する作戦を展開中。

 トリニティの正義実現委員会が自治区境界に厚めに展開している事が判っているから、境界付近の風紀委員会は動かせないけど、砲兵はグリレ自走砲*2を一部引き抜いて移動中なのだとか。

 銀鏡イオリさんと補習授業部の面々は温泉開発部主力と思しき集団から見て0時方向で暴れてる美食研究会を撃破した後に、そのまま温泉開発部を押し込むという流れらしい。

 こんなペラペラ喋って大丈夫なんか銀鏡イオリさんって思ったけど、味方だから構わないくらいの判断なのかな。

 

 もうかなり火災が空を焦がしているのが間近になってきた。先導のハーフトラックが右に曲がったところでガンガン撃たれて減速。

『敵!気をつけろ!』

 銀鏡イオリさんが停車を待たずに右手の建物側に飛び降り、建物を盾に隠れた。

 Ⅱ号戦車は即座に増速、道路を突っ切って向かい側の建物陰に陣取った。ハーフトラックに注意が向いてるから行けると思ったんだろうけど、阿慈谷ヒフミさん、思い切りがすげーな。

 

 ハーフトラック後ろで一旦停止したイヴちゃんがちらりとスマフォを取り出して見ると、曲がり角の先、風紀委員会の子達が4人ほど突出して囲まれているっぽい。

 先生の指揮下に入るのを承認すると、先生の案だと、イヴちゃんがバイクで先行突破して隙を作り、Ⅱ号戦車の機銃手として風紀委員会の子が1人乗って、ハーフトラックの車載火器とセットで援護しつつ銀鏡イオリさん達+補習授業部で攻撃、解囲する計画らしい。

「……ハナコさん、降りて……私が突破して、助けに行きます……」

「あら、楽しそうですね♥私もそのまま、連れてってください」

 更にぎゅっと抱きつかれて、背中に柔らか感触。イヴちゃんは一瞬躊躇ったものの頷いた。

 先生としても特に異論無いようだ。

「……落ちないように、気をつけて……撃てそうなら、撃ってください……」

『イヴ、無理しなくて良いからな。最悪、後退する数分を稼いでくれたら十分』

 気を遣ってくれている銀鏡イオリさんに、短く「……了解……」と返すイヴちゃん。

 

 補習授業部の面々が車両から降りて援護射撃をする中、風紀委員会の子が1人、Ⅱ号戦車の駐まっている建物陰までダッシュ。あっ、転んだ。下江コハルさんがダッシュで助け起こして担ぎ上げ、反撃とばかり手榴弾を投げてから走って戻る。

 やっぱり戦車は戦場で人気があるので、こちらの視界に入っている温泉開発部員の意識と火線もほとんどがⅡ号戦車の隠れている物陰を意識しているみたいだ。

 30秒ほどしてから準備が終わった合図が先生から伝わる。風紀委員会の子達が閃光手榴弾と発煙弾を投擲、角から顔を出したⅡ号戦車と、やられたっぽく発砲していなかったハーフトラックの車載火器が息を吹き返す。

 派手な戦場音楽に負けず、化け物じみたエンジンを全開にしたスケルチがハーフトラックと建物の隙間をすり抜けて飛び出した。あっという間に400km/h近くまで加速したのでGが凄い。ウッドペッカー(30mm機関砲)と8000cc越えのエンジンが戦場音楽を圧して響き渡った。

「うわっ?!」

「何?!」

 馬鹿でかいバイクとイカれた爆音、凄まじい火線に反射的に飛び退いたり道を開けたりと、反応は様々だけど結果的に道をイヴちゃん達に譲る温泉開発部員達。後ろの方にいた子は咄嗟に反応したが、浦和ハナコさんがばらまいた弾で慌てふためいて物陰に隠れた。

 数発の銃弾は掠めたものの、あっという間に風紀委員会の子達が盾にしている家屋横にたどり着いたイヴちゃん達。スケルチを路地裏に駐め、更に風紀委員会の子達を後方側から包囲を試みていた温泉開発部員数人を撃ち倒すイヴちゃんと浦和ハナコさん。浦和ハナコさんはバイクの加速を楽しめたのかニコニコだ。

 2人ともイヴちゃんの盾の後ろに一旦隠れて様子を伺う。

「……私は、上から援護しようと思います……」

「わかりました。私は……」

「イオリ先輩が来てくれるまでここを守ります!」

 浦和ハナコさんの尋ねる視線に、怪我はしてるけど、まだ意気軒昂な風紀委員会の子達が元気よく答える。

「頑張りましょう」

 頷く浦和ハナコさん。

 イヴちゃんは路地裏に走り、スケルチのシート、配管パイプと蹴り上がり、ちょっとした出っ張りや庇に指を引っ掛け、するすると屋上に上がった。

 9時方向、6時方向はこのブロックが戦闘エリアの端、他2方向は3ブロック先くらいまでドンパチ賑やかにやっているらしい。

 スマフォのカメラでざっと周囲を録画すると、先生というかシッテムの箱がデータをリアルタイム処理して僕達と、ついでに治安維持アプリに流してくれたらしい。

「"すぐ応援に行くから、イヴは上から火力支援お願い"」

 補習授業部も、銀鏡イオリさんも相当強い方だし、ここ自体はまあ問題無いだろう。まだ相当時間はあるとはいえ、終わった後の休憩時間も必要だし、本当は直前ぎりぎりまで勉強もできるに越したことはない。思ったより長引いたりしなければ良いんだけど。

*1
この試験で撃たれる時に、当然死にはしないけども、音はうるさいし装甲板を留めてたボルトが跳ね回ったり、場合によっては貫通した砲弾が当たったりして痛いし怖いしというのがあり、『遊びで乗る』以外の戦車乗りは地味に人気が無い。

*2
38(t)戦車に15cm歩兵砲を積んだもの。何となく車体バランスが不安になる見た目、砲塔はオープントップ。




 ゲームストーリー中の戦闘イベント メンバー編成変更不可
 編成:Attacker イオリ、アズサ、コハル Specialヒフミ
 NPCアタッカー:イヴ(ライダースーツ)、ハナコ(制服)、イオリ達の後ろからついてくる風紀委員会モブ3人、包囲されている風紀委員会モブ4人

 全員Lv50固定。イヴ、ハナコがバイクで画面左端から突撃突破、画面外に消える。目を回している温泉開発部をスタート地点から撃破していく。5秒後、温泉開発部員は衝撃から回復。30~1分程度で突破したイヴとハナコが風紀委員会モブ4人を連れて画面右側から戻ってくる。
 温泉開発部員はかなり数が多いが、イベント戦闘でありほぼ苦戦することはない。風紀委員会モブ合計8人は結構バタバタやられるが、回復や誘導手段がなく、全滅してもペナルティはない。

※ストーリー実装時点ではアタッカーのイヴ(ライダースーツ)、同じくアタッカーのとしてのハナコ(制服)は実装無。ヒフミは最初からクルセイダーちゃん(グラフィックの都合でヒフミ(水着)流用と思われる。但し、ヒフミ本人は制服)に乗った状態で登場。クリアまで降車しない。

 後日実装された追加イベントで、EX Challengeステージに同じようなシチュエーションが実装された。
 イヴとハナコ、風紀委員会モブ4人がやられないように3分守るか、包囲しているヘルメット団を全滅させる内容。風紀委員会モブは3人までやられてもゲームオーバーにならないが、やられればやられるほど味方にデバフがかかる高難易度。水着シズコか体操服ユウカがいても全員にシールドを張れず阿鼻叫喚となった。

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