ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
バイクから下りたイヴちゃんに気付いた赤司ジュンコさん含む美食研究会の面々がにこやかに反応する。獅子堂イズミさんは何か食べてる。何あれ、マンゴー?いや棘めっちゃあるしホヤ?ホヤって丸かじりする感じだっけ?イヴちゃんはホヤ(?)を無視して車両内をチェック。
(どうしたの?)
(……縛られて無理矢理連れてこられてるフウカさんとか、いないか確認しておかないと……)
こないだちらっと治安関係グループで見たけど、フウカさんの疲労が限界の時に拉致する善意の拉致パターンと、本当に美食研究会の用事だけで拉致するパターンがあるらしいので、拉致られてても即発砲といかないのは難しいところ。いや善意の拉致ってなんだよ。まあそれに関しては給食部の労働環境のせいなんだけど。ともあれ、今日はフウカさんはいないみたいだ。
追走してこないイヴちゃんを心配して先生が入れてきた無線に「……大丈夫ですが、美食研の車が溝に落ちたので、ちょっと遅れます……」というイヴちゃん。落としたって言うのかな。
「あれ、イヴじゃない!」
「さっき風紀委員会の戦車が走っていったので、つい風紀委員かなと」
「……あれは、トリニティの補習授業部が借りてる、正義実現委員会の車両……」
「あら、ゲヘナ製の戦車も使うんですね~」
「ねー、何で車止めたの?おでん食べに行こうよ~。お腹空いた~」
獅子堂イズミさんが不満顔でわめく。お腹空いたて。今ホヤだかマンゴーだか何か食べてなかった?
「車、溝から出さないと……」
「……私が、やる……」
イヴちゃんが盾を路上に低音を立てて置き、車両後部にしゃがみ込んだ。1、2……3……、とイヴちゃんが呟いた直後、車両が数十cm持ち上がり、路面に戻される。
「おお~、凄い!」
「イヴとつばぜり合いはしたくないな~」
この車両、改造とか無かったら1.7tくらいじゃなかったっけ?それプラス女の子4人でほぼ2t持ち上がるの、イヴちゃんすげーな。
立ち上がって、お礼とおでんのお誘いをしてくれた美食研究会一同を乗せ立ち去っていくtyp R200の先で、さっきまで補習授業部の受験会場だったビルが爆音と共に崩れ落ちた。試験を普通に受けてたらまだ全然終わってない時間だ。仮の話だけど、試験中に隣室で美食研究会がアレをやってたのかな。
(……とりあえず、風紀委員会に連絡だけはしておくね……)
僕は深く頷いた。
スケルチで追いついた辺りでも、Ⅱ号戦車の中のオツヤ・リチュアルめいた雰囲気はまだ変わってなかった。まあそらそうだろうけど。先生が皆を慰めるためか、懸命に何か喋ってるけど……え、何、落語?先生、色々芸達者だな……。熱意が上滑りしてる感あるし、しかもこの噺、多分トリニティに帰るまで終わらん奴やん。先生が全能でないっていうのは何となく安心するような、今この場ではちょっと困るかなっていうか。
学園に戻ってきた時間が時間なので、Ⅱ号戦車は18号校舎前に止めて、明日返すことにした。イヴちゃんのスケルチは自動走行で駐車場に戻っていく。駐車場に止めて目的地まで歩かなくても良いって最高だな。
予想してたとおり噺がオチまで終わらなかったから、浦和ハナコさんが続きを明日以降にねだってるのに苦笑いする阿慈谷ヒフミさんが、世界の終わりを目撃中のような顔をしている下江コハルさんを連れてシャワー室へ。白州アズサさんがぼそりと呟く。
「今日は入念に罠が仕込まれていたな。見破れなかったのは私のせいだ。すまない」
「"アズサは悪くないよ"」
「そうですよ。悪いのは火遊びをした猫ちゃんですし?」
「……ティーパー……」
浦和ハナコさんが、唇に人差し指を当ててシー、と悪戯っぽく笑う。名前を呼んではいけないあの組織、って感じになってしまったな。まあ、たどり着けないかもしれない状況に、美食研究会誘導に、放火(?)の疑い。何でこんな面白嫌がらせしてくるんだろう。いや何も面白く無かったわ。
本当は次の試験の打合せをしたかったけど、先生の「"皆疲れてるだろうから早く寝よう"」という言葉で今夜はお開きに。下江コハルさんと阿慈谷ヒフミさんは一緒に入ったみたいだけど、流石にキマシの塔を建てられる雰囲気じゃないな。白州アズサさんと浦和ハナコさんが気遣ってイヴちゃんにシャワーの順番を譲ってくれた。体力的にはイヴちゃんの方があるんだけど、みんなが遠慮して譲りあっちゃうと未来永劫順番が決まらないので、イヴちゃんはありがたく先に使わせてもらうことにする。
すれ違いざま、下江コハルさんがじとり、とした横目でイヴちゃんを見る。イヴちゃんは気付かなかったみたいだけど、僕の方だけが気付いた。イヴちゃんに呼びかける前に、下江コハルさんは寝室教室に入ってしまったので、注意喚起出来なかったけど、大丈夫かな。
下江コハルさん、阿慈谷ヒフミさんはもう疲れ切っているのか寝息を立てていた。白州アズサさんは『念のため一周見回りをしてくる』とベッドに張り紙してある。浦和ハナコさんは、今シャワーの番なのでいない。
イヴちゃんもシャワーを浴びて、布団に入って、宇沢レイサさん始めメッセージを丁寧に返しつつ、僕に頭の中で話しかけてくる。
(……そういえば、ジルの、昔の記憶が見えない……)
(えっ、プロテクト的なんはかけてない……はずなんだけどなあ。やってないつもりで深層心理で嫌がってるとかかな?コトダマ空間のパソコンでデータあったりした?)
(……うん、ジルのフォルダがあって……再生はできたけど……どのファイルも、砂嵐?みたいなノイズで何にも見えないし、ガビガビ音しか聞こえなくて……)
(1つ2つくらいなら、僕がノイズバンドか何かやってて、演奏効果かなんかかもだけど、変だなあ)
深層心理なるものが僕にそもそもあるかわからんし、このプロテクトも、イヴちゃんとの契約であった「排泄とか入浴とかは避ける」ってこ……うん?何かイヴちゃん面倒くさがって僕に風呂とか任せてるけど。うん。うん、まあ、そこ以外は基本、全部お互い見られるはずなんだよな。ローカルコトダマ空間のパソコンでイヴちゃんの記憶が見られるのは確認したけど、そういや僕自身の記憶なんてどーでもいいから探しすらしてなかったわ。(……急がないけど、見ておいて……)
(おっけー。でも、僕の記憶なんてみて面白い?)
(……見えなかったからわからない。でも……)
そらそっか、てへ。
(……ジルのことなら、たくさん知りたいよ……?)
い、イヴちゃん!!!!!!!!しゅき!!!!!!!
感極まって頭の中で騒いじゃったみたいで、『ぷんぷんです』、ってコトダマ空間のモニタ横に付箋が貼ってある。ごめんて。
PCの手前で寝てるイヴちゃんは、心なしか寝苦しそうだし、フートンの模様が『不安』になってる。これ、前は『安らぎ』じゃなかったっけ……?やっぱり、今日の事が堪えてるのかな。でも今僕が出来ること、何もないんだよな。ごめんね、イヴちゃん。役に立たない寄生生物で。
まあともかく、僕だけイヴちゃんの記憶を見て逆は出来ないってのは信頼関係にも関わる、真面目な話だよな。はーイブキちゃんのブランコ押してるイヴちゃんかわよ~。いや僕のフォルダ僕のフォルダ。
確かに、HDDのMemoryフォルダに「Eve」の他に「Jeyll」ってフォルダがあるな。こないだ、イヴちゃんの可愛い生活を眺めるのに夢中で気付いてなかったわ。
試しに目に付いたファイルを開けてみると轟音ノイズに砂嵐。うわ何じゃこりゃ。いくつか開けても結果は同じ。そもそもファイルにパスワードが掛かってるとかじゃないから、僕の意思で見せないようにしてるんじゃない、と思うんだけど。多分。うーん困った。
とりあえず、このコトダマ空間のパソコンでどこまでやってくれるかはわからないけど、HDD自体のエラーチェックと、コマンドプロンプトで
時間掛かりそうだし、今日はこれくらいにして、僕も寝るかな。明日こそ良いことあるよね、ジル太郎。
Ellegarden最高でしたね。16年ぶりにElleのライブ見たのですが、嬉し泣きしそうになりました。その前の打首獄門同好会、10-feet、The Oral Cigarettesも素晴らしかったですが。サンボマスターが入場規制で見られなかったのは悔やまれます。
連休の間に書き溜めしたかったのですが、片付けや睡眠負債の返済、初詣や遠方の家族のゴタゴタを処理していたらなーんも出来ませんでした。
明日から労役が始まるのでペースが落ちてしまいますが、頑張ります。
1/21、少しだけ追記しました。ジルが一番気にしているイヴについて触れてないのはおかしいので…。