ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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睡眠時間を削るのは却って効率に良くないけど、現代人はやることが多すぎて、睡眠時間を削るとポ○モンスリ○プ由来の蘊蓄が出て来て眠れなくなるんだよ

 寝る時間を削るのは本当は良くないんだけど、特に白州アズサさんと下江コハルさんが不味いので、ギリギリまで時間を削って勉強に励むこと数日。辛うじて合格ラインに至った状態で試験前日を迎えた。

 もう皆寝る時間なんだけど、先生、阿慈谷ヒフミさん、イヴちゃん、そして下江コハルさんが先生の寝室になっている教室に集まっている。先生は普通の黒一色のパジャマで、胸元とお尻の生地がいじめられている感じのうおえっろって服装。*1阿慈谷ヒフミさんはフードがペロロになってる本格的なペロロパジャマ、イヴちゃんはKreatorの"Hate Uber Alles"*2っぽいバンTにタイガーストライプの短パン、下江コハルさんはピンクの普通のパジャマ。

「さっさと寝なさいって言ってたのあんた達なのに、何で起きてるのよ」

「……一応、確認しておきたいこととか、打合せがあって……」

 イヴちゃんが済まなさそうな顔で言う。先生、部長(ペロキチ姐)監督官(大天使イヴリエル)と、一人だけ管理側でないからか、つまらなさそうな顔で、ふん、と鼻を鳴らす下江コハルさん。

 先生と阿慈谷ヒフミさん、イヴちゃんが会場を確認している。公式に送られてきたもの、掲示板情報両方だ。妨害がここまで来ると偽情報や偽通知が送られてこないとも限らない。

「"第19分館で間違いないね"」

 頷く阿慈谷ヒフミさんとイヴちゃん。こっちの見間違えも無くしておかないといけないから、僕も含めて確認しておく。トリプルチェック(ジェスチャー:現場猫)、ヨシ!

「……ところで、先生、ミカさんから返信は……?」

「"無いね……"」

 先生の答えに、溜息をつく阿慈谷ヒフミさん。

 

 白州アズサさん、数分ほど間を開けて浦和ハナコさんもやってくる。

「皆、まだ起きてたのか」

「私も何だか眠れなくなって来ちゃいました」

 イヴちゃんがハーブティーを淹れに行く。

 

 全員にお茶を配った直後に、イヴちゃんの治安維持アプリに通知。

『明日00:00以降、第19校舎はエデン条約関係資料の搬入のため、正義実現委員会により封鎖されます。ティーパーティーのセキュリティクリアランスがウルトラヴァイオレット未満並びに自警団員含め生徒は立入禁止。正義実現委員会も校舎内への立入は禁止です。』

『明日00:00以降、戒厳を発令します。ティーパーティの指示なき生徒は、校舎及び寮より出ないこと』

「「「えっ?」」」

「"好意的に考えると、第19校舎の外で試験を受けさせてくれる。なんてことはないんだろうな"」

「試験を受けたいなら、正義実現委員会を敵に回せという意味でしょうね」

 浦和ハナコさんが投げやりに聞こえるほど淡々と言う。

「そ、そうよ!この間*3みたいに、ハスミ先輩にお願いしたら……」

 やっぱり淡々と否定する浦和ハナコさん。態度では判りづらいけど、かなり頭にきてるみたいだな。

「難しいでしょう。そうすると、ハスミさんまで正義実現委員会から追放か退学になるかもしれません。ですが、どうして、私達をこんなに目の敵にするのでしょう?『裏切り者』の定義で一番近いのはイヴちゃんですけど、別にイヴちゃんが実際に裏切っている訳では無いのは、シスターフッドでも確認できていることですし、ティーパーティーも把握していそうですが」

 シスフ、イヴちゃんの身辺調査もしてるんや……まあ自警団の幹部やもんな。わからんではない。けど怖。

「そんな、じゃあどうすれば……」

「強行突破までは多分できるでしょうけど、正義実現委員会と戦いながら試験を受けるのは現実的では無いですよね。私達を本気で退学にさせたいのでしょうか……」

 おろおろする下江コハルさんと、完全に目が据わっている阿慈谷ヒフミ(ファウスト)さん。

 

 数十秒、あるいは数分か。重々しい沈黙を破り、白州アズサさんが誰とも目を合せずに呟くように告げる。

「皆に言わないといけないことがある」

 更に数十秒、身体を震わせて沈黙していた白州アズサさんが口を開く。

「ティーパーティーのナギサが探している『トリニティの裏切り者』は、私だ」

 先生と阿慈谷ヒフミさん、下江コハルさんが驚くように白州アズサさんを見る。

「その、どういう意味ですか?」

「言葉の通りだ。私は、アリウス分校という、かつてトリニティから分かれた学校からやってきた工作員なんだ。書類上の身分を偽って、トリニティに潜入している」

「アリウス分校って、何……?」

「かつてトリニティの連合に反対した、分派の学園の一つです。反発のトラブルでキヴォトスのどこかで潜伏していると聞いていますけど……」

 浦和ハナコさん、やっぱり詳しいな。イヴちゃんはその辺も含めて、百合園セイアさんに聞いているので驚きはしない。

「私はずっとそこにいた。今はこうしてアリウスの任務の元、ここにいる。任務の内容は、ティーパーティーの桐藤ナギサのヘイローの破壊だ」

 全員が息を呑む。基本的に死から遠ざけられているキヴォトスでの『ヘイローの破壊』は、埋めたり沈めたりするのと同じ意味での隠語、即ち殺害だ。暴力は身近でも、殺人は却って遠いキヴォトスでは特に忌避される言葉。

 

 皆の動揺が収まりきらない中、白州アズサさんが再度口を開く。

「アリウスはティーパーティーを破壊するためなら何でもするつもりだ。アリウスはまずミカを騙して私をこの学園に入れた。詳細は知らないが、『トリニティと和解したい』とかそういう嘘をついたのだろう」

「ミカさんは確かに政治には向いていないと言われてましたが……。そのまま、スケープゴートにするつもりなのかもしれませんね。アリウスがトリニティを憎んでいることは知ってましたが、なるほど」

「ま、待って……嘘だとかは思わないけど、私達とは今、関係無くない……?アリウスのことはわからないけど、私達補習授業部と何の関係があって、何で、アズサはこんな話を今してるの……?」

 頷く浦和ハナコさんに、下江コハルさんが不思議そうに訊ねる。

「……正義実現委員会が手薄な状況を作らせたから、ですか……?」

 イヴちゃんの問いかけに、白州アズサさんが頷く。

「そうだ。明日の朝、アリウス分校の生徒達がナギサを狙って潜入する。だから、私はナギサを守らなければいけない」

「トリニティ全域に戒厳令が出ているタイミングで、正義実現委員会はいませんものね。アリウス分校は要人襲撃のために、ここまで私達を釣り餌に使ってくれたってことですね?」

 キレッキレ(頭の良さと怒り両方)やな、浦和ハナコさん。白州アズサさんではなくて、その向こうのアリウス分校の指揮官に大してだろうが、その怒りに白州アズサさんが目を伏せる。

「ま、待って!アズサはティーパーティーを壊しに来たのよね?!何でそのアズサが守るの?!」

「アズサさん自身は、最初からその目的でトリニティに来た。違いますか?」

「……アズサさん自身は、二重スパイだから……?」

 発言が被り、おや、と浦和ハナコさんがイヴちゃんを見る。イヴちゃんは単に百合園セイアさんから答えを聞かされてただけで、擁護したかっただけなのだろうけど。浦和ハナコさんが「腕っぷしだけじゃなくて頭も回るのか」みたいな顔でイヴちゃんを見ている。イヴちゃんは可愛いし賢いけど、必要以上に株が上がっちゃったような。

「アリウス側には連絡係として虚偽の報告をしながら、裏切る準備をしていたのでしょう。さっき会っていた人が、現場の指揮官ですか?」

「……見ていたのか」

「どうして、ナギサさんを守ろうとするんですか?誰の命令ですか?」

「これは誰かの命令じゃ無い。私がそうしたいんだ。桐藤ナギサがいなければエデン条約は成立しない。キヴォトスの混乱は深まるだろう。そうすれば、またアリウスみたいな学園が産まれるかもしれない」

 浦和ハナコさんが虚無的に笑う。

「とっても甘くて、夢みたいな話です。今回の条約の名前と同じくらい。つまり、アズサちゃんは嘘つきで裏切り者だった」

 浦和ハナコさんが身を乗り出す。

「トリニティでも、アリウスでも本音を隠し、アズサちゃんの周りは皆騙されていた。そういう理解で良いですか?」

 冷たい刃のように、浦和ハナコさんが囁くように言う。

 無言で浦和ハナコさんを見る一同。阿慈谷ヒフミさんとイヴちゃんは言いすぎだ、と言いたそうな顔をしている。

「いつか言ったとおりだ。私は皆の心も信頼も裏切ることになる、と。『トリニティの裏切り者』はハナコでもヒフミでもイヴでも、もちろんコハルでもない。私のせいで補習授業部は危機に陥っている。私の事を恨んでくれ。これは私のせいだ」

 重い沈黙。それを破ったのは、先生だった。

*1
この人何着てもえろいな

*2
ゲヘナの女の子が多分ミレニアムの子の口に旗をぶっ刺してる結構痛そうなジャケ絵

*3
Ⅱ号戦車の件だろう

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