ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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イエロージャーナリズムの由来って漫画のタイトルなんだ

 ミレニアムのエンジニア部に頼んでいたブツ、大型チェーンソーが届いたので、そのまま伊原木ヨシミさんに頼んで輸送の手配をしてもらった。これで調印式典当日の切り札になるだろう。いつだって神をバラバラにするのはチェーンソーだ。本当はガラスの剣と核爆弾も欲しかったが、後者は連邦法違反だし、前者は白石ウタハさんの『作れるが君の持っている奇妙なナイフで良い』という結論に落ち着いてしまった。

 ショットガン(クラリオン)の銃剣に小型チェーンソーの方が良いかもと思ったんだけど、ソードオフにわざわざしてある上に、元々僕が趣味で買ったサバイバルナイフかnonfire*1を挿せるようにアタッチメントしてあるのであんまり意味が無いのでこれも却下。

 

 さて、式典当日。まだ怪我が治りきってないので、包帯をギチギチに胴体に巻いたうえで制服を着て、ナイフ2本を左腰、ショットガン(クラリオン)を右腰に差し、盾とウッドペッカー(30mm機関砲)、弾薬は一番お高い徹甲榴弾満載のほぼフル武装。

 今までは痛覚信号を僕が引き受けるだけだったのだが、痛覚自体のカットを今日は試してみる。痛覚信号引き受けながらまともに考え事をするのが厳しいからだ。

(イヴちゃん、脇腹痛くない?痛覚系のカット、出来てる?)

(……出来てるけど、触覚もない……)

(うーん、これ以上はちょっと今日は調整できないかな。なるべく右脇腹には喰らわないよう気をつけて)

(……わかった……何も無いのが一番だけど……あるんだよね……?)

(あるよ。絶対ある。これは百合園セイアさんの予言だからね)

 

 正義実現委員会本部、入口入って一番手前左側の部屋。補習授業部に出入りしていたので久々の自警団本部。

「おはようございます、レイサさん、イヴさん」

「スズミさん、イヴちゃん、おはようございます!!!!!!!」

「……おはようございます……」

 自警団の皆は既に学園敷地外、自治区内の持ち場に行ったらしい。

「特に自警団に訓示はありませんからね。今回くらいはしておいても良かったかもしれまんが」

 柔らかく微笑む守月スズミさん。イヴちゃんと警備エリアが違うので少しがっかりしているのを隠さない宇沢レイサさんに、イヴちゃんが真剣に告げる。

「……今日は、式典そのものに対する妨害も予想されています。あくまで可能な限りですが、連絡を入れたら戻ってきてください……」

「正義実現委員会とゲヘナの風紀委員会主力、近衛と親衛隊もいるのにですか?」*2

「……いるから、こそです……」

「前にイヴちゃんが言ってた『重心』ですか?」

 イヴちゃんが頷く。おお、イヴちゃん、僕の本*3読んでくれてたんだね。嬉しいな。

「……逆に正義実現委員会、風紀委員会の主力が包囲される可能性があります……」

 真剣な表情で頷く守月スズミさん、宇沢レイサさん。

「自警団の皆にも注意喚起しておきます」

「イヴちゃんに何かあったらすぐ戻りますから!」

 とはいえ、手薄な自治区内の市街地もあほが大暴れしそうだから、どこまで期待出来るかわからないけど。

 

 イヴちゃんが打合せを終えて古聖堂に向かうと、既に古聖堂入口に向かってティーパーティーの近衛師団と万魔殿親衛隊が式典準備をしており、両校の旗を掲げて睨み合っていた。平和条約の式典とは思えない空気だ。

 その後方に、先生と肩を抱かれている*4銀鏡イオリさんがいた。銀鏡イオリさんは嫌そうに見えるけどまんざらでもない表情なのを、イヴちゃんを見かけるとキリッと心配そうな顔になる。

「"おはよう、イヴ。怪我は大丈夫?"」

「イヴ、『事故』に遭ったんだろう?大丈夫か?」

「……聞いてますか……」

 小声で囁く銀鏡イオリさん。

「情報部からな。それに、パテル派の首長も姿を現さなければわかるさ。大変だったな」

 ぽんぽんと頭を軽く叩くように撫でてくれる。面倒見の良い優しい先輩の表情だが、言ってる事は結構ギリギリだ。思わず僕は周りを見る。

「どいつもこいつも浮ついてて聞いてないさ、見てみろ」

 なるほど、近衛師団や親衛隊の取材慣れしている子を除いて、どこか浮ついた雰囲気が漂っている。馬鹿でかいカメラを抱えたクロノススクールと、それ以外のマスメディアの一団が原因だ。クロノススクールだけでもテレビ部門、新聞部門、ラジオ部門、雑誌部門、その他諸々って感じで、とんでもない人数がうろうろしている。

 何だっけ?いかにもイエロージャーナリズムって感じのテレビ部門の、金髪に褐色の、下乳丸出しの痴女みたいな格好をしたなんとかシノンさん。*5いやマジで何なんだあの服。クロノスの制服ってあんなのなのか?カメラクルーは普通に下乳隠れた服着てるけど。ティーパーティー、万魔殿の事務方、正義実現委員会、風紀委員会、シスターフッド、両学園の事務局職員と様々な人種がインタビューされる方は忙しくて迷惑そうだったり、ちょっと嬉しそうだったり、あるいはテレビに映るためにわざと近くを通ったり、カメラの後ろでピースしてたりする千差万別な状況でカオスだ。

「先生は早速インタビュー受けてデレデレしてたな」

「"誤解だよ。私はイオリしか見て無いから"」

 眼前の痴話喧嘩が気になって集中できなくなってきた。

 とんでもないざわめきだが、強化した聴覚で、とりあえずマスメディアの方に聞き耳を立てておこう。

「ご覧ください!両学園の雰囲気はまさに一触即発で、とても平和条約の締結式典とは思えません!おや、あちらにいる大盾のは先日トリニティ自警団の組織化に尽力したと噂の御蔵イヴ氏です!早速インタビューを――」

「……先生、イオリさん、また……」

 その場を逃げ出すイヴちゃん。イヴちゃんの可愛さをキヴォトス全域に配信する好機だと思うんだけど、クロノスのテレビ部門は滅茶苦茶たち悪いから正解だな。

 

 古聖堂の警備をしている正義実現委員会、風紀委員会の委員はどちらも一緒に訓練をした顔見知りだが、念のためということで学生証を提示させられる。

 中は正義実現委員、風紀委員、シスターフッドでごった返しているが、剣先ツルギさん、羽川ハスミさんがこっちに声をかけてくれる。

「イヴさん、ご苦労様です。体調は大丈夫ですか?」

「うけけ……ひひ」

「『先日は待機命令で役に立てなくて済まなかった。今朝の爆発物点検で、実際に爆発物が発見された。感謝する』とのことです」

「……ありがとうございます……爆発物、やっぱりありましたか……」

「前日の点検で十分、とはいきませんでしたね」

「ひゃは……」

「『ゲヘナの風紀委員長は車両で5分後に到着見込みだ。顔なじみだろう?挨拶くらいしておく時間はある。それと、イヴも自警団の顔なんだから、マスメディア慣れもしておけ。何ならインタビューを受けてくるのもいい』とのことです」

 毎回思うけど、圧縮言語と翻訳凄いね?!っていうか、爆発物あったんだ。

(……まだ平和な時間だと思ってたけど……)

(やっぱり、予言は当たるんだね)

(……嬉しくない……)

 ほんとだよ。でも、これで中からの脅威は除去できたかな。一応は。

*1
ブラックマーケット入口の店でイヴちゃんが買ったお気に入りのナイフ

*2
ティーパーティーの近衛師団、ゲヘナの万魔殿親衛隊は『アスファルト行進用』と一般的に治安関係者は見ているので頭数に入らないことも多い。まあ儀典と事務仕事がメインだから、実際に練度は低い事が多いんだけど。

*3
脳内ライブラリの蔵書

*4
先生が女性だから大丈夫なのか?同性でも普通にセクハラっぽいが。銀鏡イオリさん、まじで先生特効の淫魔的なソウルなのかな。

*5
川流シノンさんらしい。報道姿勢はともかく、顔とお色気で一部でカルト的な人気があるのだとか。




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