ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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会議が踊って、進む。パートナーの正しいリードがあれば。

 先生のかわりに、レイサちゃんが私を背負ってくれる。先生も怪我人で無理をさせていると思っていたのと、レイサちゃんの熱い体温が気持ちいい。

 うとうとしないように、レイサちゃんの背中から見ているけれど、先生の指揮で排除するユスティナ聖徒会が、明らかに減っている。無限湧きするから、どこにでもたくさんいるはず、だったのに。

「一時的にどこかに集まっているという気配もないな。正義実現委員会、風紀委員会、シスターフッド、近衛師団、親衛隊。ここがトリニティとゲヘナの『重心』だ」

 重心。打ち倒すことで、決定打を与えられる戦力。ジルは確かそういっていた。熱心に塹壕を掘っている皆の数と、ばらばらな集団を見ると、確かにここが重心なんだろうと思う。それを全力攻撃してこないのには、何か意図があるのか。

「サオリは『エデン条約の書換により、アリウススクワッドがエデン条約機構になった』と言っていた。その要が、アツコだとも。アツコに何かあったのかもしれない」

 推測に過ぎないが、というアズサさんは心配そうだ。そうか、その「アツコさん」も家族なんだ。

 

 正義実現委員会、レイサちゃんは自警団本部から自分の弾薬と飲み物(明らかに私用のスポーツドリンクが多くて、申し訳なくなった)だけを取って、すぐ戻ってきた。私の上着を掛けて、左手を隠してくれる。その気遣いが嬉しい。

「コハルさんも迎えに行くんですよね?」

「"そのつもり。それと、ミカにも会いたくて"」

 通りがかった正義実現委員に聞くと、タイミング良く牢の方にミカさんを釈放しに行ったらしい。牢からここまでは1本道だ。行き違って会えないことはない。

 

 牢の奥で、何か、怒鳴り合う声が聞こえる。

「――も、戦力が足りないでしょ?正義実現委員会全力は動かせないし、そもそも風紀委員会はトリニティ防衛のために戦ってる。後ろから撃つ?正義実現委員会はそんな命令聞かないよ」

 ミカさんの声が静かに響く。

「しかし、千載一遇の好機です!何なら近衛だけでも――」

 牢の前でのティーパーティーの制服を着た人達と、牢の中にいるミカさんのやり取りを、裂帛の気迫でコハルさんが止める。

「あんた達、何なの!牢の中にいる人を寄ってたかって!許さないんだから!」

 一瞬、場が静まり返った。

「あは、ごめんごめん、変なところでやり取りしててややこしかったね。この子達、私の部下だから大丈夫だよ」

 頷く牢の前の人達、つまりはパテル分派の人達なんだ。勘違いだと知って、耳まで真っ赤になるコハルさん。気まずさを誤魔化すように牢を開ける。

「でも、ありがとう。庇ってくれて。お礼はいずれ、ね。さ、勇敢な騎士さんに怒られるから、続きはパテル分派の会議室でしよ?」

 振り返ったミカさんがこちらに気付く。

「せ、先生……?」

「"やあ、ミカ"」

「せ、先生、聞いてた……?」

「"うん、ミカ。冷静だね。ミカは、今でもゲヘナが嫌い?"」

「そ、それを今から皆と話をしようと思って――」

「"ごめんね、今、ミカ本人から聞きたいんだ"」

 ミカさんがぼろぼろと泣き始め、ティーパーティーの部下の一部と、コハルさんがおろおろする。

「ゲヘナが憎くないと、私の行動は、駄目だったんだ。行動が先で、感情が後。どうして、こうなっちゃったんだろう。セイアちゃんは変な事ばっかり言うから嫌いだし、ナギちゃんはお馬鹿でお人好しなのに。会いたいよ、皆に……」

「"ミカ、大丈夫だよ"」

 先生が近づいて、ミカさんの頭を撫でる。

「"私が何とかするからね"」

「先生……」

 泣き出して先生に抱きつくミカさん。

 

 ミカさんが落ち着いてから、コハルさん、ミカさん、パテル分派の皆、大人数でハナコさんを迎えにティーパーティー本部に向かう。

 ティーパーティー本部の会議室のうち一つ。血と泥にまみれた、偉い雰囲気の人達と、一歩も引かずにやり合うハナコさん。

「ですから、その古聖堂そのものが攻撃されたことが――」

「シスターフッドは今までずっと秘密主義でした。ですから自作自演が――」

「パテル分派が今、ゲヘナへの全面攻撃のために――」

「我々は秘密主義では無く信仰を第一義に――」

「ゲヘナへの全面攻撃?!我々風紀委員会も親衛隊もトリニティ防衛のために血を――」

 ティーパーティー、正義実現委員会、シスターフッド、風紀委員会の幹部らしき人達と疲労困憊しながら舌戦を繰り広げるハナコさん。

 ぱんぱん、と手を叩くミカさん。

「ごめんね、皆。パテル分派からゲヘナへの攻撃なんてしないよ。ゲヘナもトリニティの防衛のために血を流してくれているのに、そんなことするわけないじゃんね。それと、ハナコちゃん、ありがとうね。ここからの会議は、仮釈放の私がやるとややこしいから、先生が預かるから」

「"ミカ、ありがとう"」

「ううん、面倒を押しつけるみたいでごめんね」

「……ハナコさん、お疲れ様……」

 ちらりと私の目と左手(包帯と上着で隠れているけれども)を見て少し悲しそうな顔をしてから頷くハナコさん。

「いえ、自警団の幹部が出てくださるのも助かります。レイサちゃん、お願いできますか」

「はっ、はい!」

「……ごめんね、レイサちゃん。鎮痛剤と麻酔で頭が回らなくて……」

「いえ、お任せください!」

 

 最終的に、会議は「交代で防衛線を維持して、ローテーションで睡眠と休養、治療に充てて、翌日に戦えるメンバーで古聖堂を奪還する」という話になった。

 先生曰く「"古聖堂という場所自体が必要なんだ"」ってことらしい。

 

 私は最優先で救護騎士団のベッドに寝かされ、同じベッドに宇沢レイサさん。レイサちゃんはぎゅっと私を抱きしめる。

「な、え、どうして同じベッドで寝るの?!」

「イヴちゃんには看護が必要だからです!」

「……それに、お泊まりで一緒に寝てるから……」

「だ、え、駄目、し……ううん、今日だけは許すけど、えっちなのは駄目なんだから!」

 えっちなのは駄目、という言葉に顔を赤らめるレイサちゃん。どうして恥ずかしがるんだろう。何もしてないのに。

「……レイサちゃん、温かい……」

 ますますレイサちゃんが温かくなった気がする。私の意識は、眠りの泥の中に落ちていった。

 

 翌朝、見覚えのある太陽に三角の校章付のヘリが見事なMANPADS回避機動をしながら下りてくる。着陸を待たずに飛び降りてくるホシノさん、シロコさん、ノノミさん、セリカさん。アヤネさんは操縦席からこっちに手を振る。

「やあやあ、ヒフミちゃんと先生に頼まれて、前回の借りを返しに来たよ。イヴちゃん、怪我は聞いてるから、無理しないで」

 ひらひらと手を振るホシノさん。

 セリカちゃんが近づいてきて、ぎゅっと悲しい顔、無言で抱きしめてくれる。包帯と上着で隠せてるから大丈夫だと思ってたんだけどな。

 

 麻酔と鎮痛剤、そして何よりレイサちゃんの暖かさのお陰でぐっすり眠れて、昨日よりは頭が働いている。相変わらず左目も左手も脇腹もじくじくと痛むが、昨日の歩くのが辛いほどではない。

 朝方、美食研究会、便利屋68の人達も合流してくれた。

「先生、車両ごと爆破されてから合流が遅れて悪かったわ」

「同じく、便利屋の皆さんだけでなくて風紀委員会とすら合流できませんでした」

 先生に頭を下げる便利屋の社長さん(陸八魔アルさんというそうだ)のアルさんと美食研究会のハルナさん。

 便利屋の中から、一人の紫髪の女の子が歩み寄ってくる。

「あの、以前助けていただいた伊草ハルカと申します。あ、ありがとうございました……!」

 全然記憶にない。首を傾げる。

「げ、ゲヘナの温泉街で……」

 ああ、思い出した。ジルが座禅しに行ったときのだ。あの時のジルの事を思い出して、泣きそうになってしまう。泣いたら、駄目だ。

 頭を横に振る。あの時戦ったのはジルじゃなかったけど、ジルならこう言うだろう。

「……気に入らなかったから、ぶっ飛ばしただけ……」

 何故か横で聞いているアルさんの顔が輝く。何か面白い事を言えただろうか。




 昨日、予約投稿日間違えて2話連続投稿してますね。別に良いのですが…。

 ゲームイベント戦闘だと、正義実現委員会に戻るのは、イヴを背負ったまま後衛として戦うレイサを見られるステージになります。メンバーはヒフミ、アズサ、レイサ。

 コハルの黄金の魂は発揮されましたが、拙作ではミカがパテル分派をちゃんと統率しているので、牢の前に詰めかけたパテル分派は過激派、穏健派どちらも混じっていますが、ミカへの忠誠は失われていないため、空振りになってしまいました。
 但し、パテル分派は「ミカが失敗時に備えてクーデターの時に使ってくれなかった」不信感や悲しみ、配慮への感謝は個々人それぞれ持っています。
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