ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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真実和解委員会

 今日も学校は臨時休校。エデン条約調印式は今週末になり、警備態勢を再度練り直すことと、古聖堂ではなくて大聖堂で行う事になった。前回はなぜかゲヘナ側の調印を空崎ヒナさんが行う事になってたけど、今回は普通に羽沼マコトさんが行うらしい。

 警備計画は基本的に前回分を踏襲だけど、今回はイヴちゃんがそもそも怪我人*1不参加になるから話が少しこじれて結局本部詰めになり、宇沢レイサさんが代わりに大聖堂周りの巡回と先生の護衛を行う事になった。正義実現委員会からも先生の護衛を何人か出すらしい。まあ先生も前回怪我してるしね。

 アリウス分校という脅威は事実上無くなったものの、巡航ミサイルの在庫やらアリウス分校の中の急進派やら、それ以外の他校の工作の可能性が残ってる以上、手を抜けないということで、まあ大変だなって他人事顔もしてられないのだけれども。イヴちゃんほどでも無いけど、怪我をした子も多いし、イヴちゃん自体が強くて期待されてるっていうのも事実だしね。

 

 さて、先生が音頭を取る形になって始まった『エデン条約調印式真実・和解委員会』*2、委員長が直接関わりの無かった百合園セイアさん、補佐として蒼森ミネさんと歌住サクラコさん、ゲヘナ側が元宮チアキ議員、オブザーバに先生という何というか濃い顔触れだなって感じ。実際にはゲヘナ側はほぼ名前のみになりそう*3ということで、事実上はトリニティ側に乗っかる形になるそうだ。

 アリウス側は本来はベアトリーチェを呼ばないといけないけど、そんなこと出来るはずもなく、実働指揮を取ったアリウススクワッドが矢面に立つ事になるらしい。

 被害者側として、一番大怪我をしてかつ自警団の幹部という立場がある、イヴちゃんが最初のケースとして選ばれて、ティーパーティーの大会議室横の控え室に呼ばれてやってきた。宇沢レイサさんも心配だからとついてきてくれて、イヴちゃんの隣に傍聴席を用意してもらっている。*4

 

 控え室で2人でお茶を楽しんでいるとノックがあり、イヴちゃんが応えると3人入ってきた。百合園セイアさん、蒼森ミネさん、歌住サクラコさん、2人に先に名乗って挨拶してくれる。イヴちゃんと宇沢レイサさんも立ち上がって応える。

「やあ、こっちで会うのは初めてだね、イヴ。レイサも初めまして。イヴからよく聞いているよ」

 イヴちゃんにてくてくと近づいてきて自然にイヴちゃんの頭を撫でる百合園セイア(セクシーフォックス)さん。イヴちゃんも嬉しそうに目を細めていて、何だか懐いている感じがある。宇沢レイサさんが面白くなさそうな顔をしているのを見て「取らないよ」と微笑む百合園セイアさんと、慌てる宇沢レイサさん。イヴちゃんの事じゃないなら楽しいんだけど。

 蒼森ミネさんは鋭い目付きでイヴちゃんの左手首を触診して、瞳孔にペン型のライトの光を当てて安堵の溜息。

「救護は不要のようですね。安心しました」

 歌住サクラコさんは僕がお祈りのためにたまに顔を合わせているので、蒼森ミネさんが「問題ありません」という発言を聞いて微笑んでくれる。うーん、心配して来てくれてるのはわかるんだけど、帝国のマーチが聞こえるんだよな。気のせいかな。

 

 3人が退室してから待つこと10分ほど、落ち着いた雰囲気の大会議室に、先ほどの3人と先生、アリウススクワッドの4人が円卓に座っていた。

 先生が「この集まりはあくまで和解を目的とするものだよ」と言った1分後に、錠前サオリさんが重々しく口を開いた。

「御蔵イヴ、そして宇沢レイサ、お前達は約束を守ってくれた。今度は私が約束を守る番だ。左手首と左目を、望むならそれ以上を差し出そう」

 一瞬びくりとなってからおろおろする宇沢レイサさん。イヴちゃんも口を開く。

「……別に、要りません。それに、治すところまで、私は提供できないから……」

 一滴も血を流さずに肉を取りなさい、的なトンチ*5だな。まあ、イヴちゃんが「……じゃあ喜んで……」とは言わないと思ってたけど、改めて安心した。

「……私が望むのは、私以外への人へのお詫びと、転入生達の生活の安定だけです。私達は自警団ですから……」

 イヴちゃんは言葉を一度切って続ける。

「……きっと怪我するより大変だと思いますが、スクワッドの皆さんには、指導者として頑張って欲しいなって……」

 うんうん、と笑顔で頷く先生、百合園セイアさん、歌住サクラコさん。蒼森ミネさんは真顔で頷いてる。何か約2名*6、圧が強いな……。

 安心した表情で囁きあうスクワッドの面々と、「そうか……」と嬉しそうだけどどこか寂しげに呟く錠前サオリさん。

「……人質を取るみたいですけど、これから皆さんを取りまとめてくれるかどうかで、許すかどうか、決めていいですか?……」

 虚を突かれたかのようなアリウススクワッドの面々。錠前サオリさんが溜息をついて答える。

「重い宿題だな。だが、私が、私達がしたことに比べればそこまででもない、か。わかった。結果で示そう」

 宇沢レイサさんは少しだけ不満そうだったが、イヴちゃん本人がそういうなら、という顔で、左手をきゅっと握って頷いてくれた。

 

 ティーパーティー本部を出たところで、聖園ミカさんに出会った。ジャージ姿で、奉仕活動を早速しているみたいだ。同じようにジャージ姿の、部下らしい子も何人かいる。

「お、イヴちゃん、レイサちゃん。和解委員会?お疲れ様」

「お疲れ様です!!!」

「……奉仕活動ですか……?」

「そうそう。パテル分派の子達で、自発的に手伝ってくれる子もいてさ。結構楽しくやれてるよ。あ、イヴちゃんもレイサちゃんもパテル分派に入ってくれるなら歓迎するからね☆」

 バチバチやり合ったのに平然と言い残して本部に戻る聖園ミカさんとその部下達。ちらっとティーパーティー本部内で聞いてた噂で「パテル分派の3割は派閥を抜けたり、別派閥に移った」って聞いてたから、奉仕活動に手伝いに来る人がいるくらいには人望があるんだな、って、ちょっと意外だった。意外って言ったら失礼かもしれないけど。

 でも、そうだ。何か聖園ミカさんいじめられたりするんじゃなかったっけ?もう完全に忘れかけてる知識だけど。この様子なら問題無さそうだけど、一応、イヴちゃん達にも伝えておくか。

(イヴちゃん、聖園ミカさんはクーデターの首謀者ではあるから、いじめられたりするかもしれない。気をつけておいてあげて。自警団とレイサさんにも言っておいてあげて)

(……わかった……)

 その場で宇沢レイサさんと、治安維持アプリで皆に伝えておいてくれたので、自警団の目が届く範囲では一安心。自警団の中でもよく思ってない人はいるだろうから、そこは気をつけないとだけど。

*1
という事になっている

*2
長いので和解委員会って呼ぶ。

*3
風紀委員会は交戦の当事者だし、丹花イブキさんの一件の調査以外はトリニティの調査に協力だけになりそうだとか。

*4
傍聴者として発言は禁止。

*5
そうでもない

*6
シスフの暗黒卿と救護騎士団長




明日はKraftwerkのライブを見に行くのでお休みです。
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