ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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金だからって下品とは限らない 日光浴びたらまあうん そうなるな

 ティーパーティー本部を出たところで、ティーパーティーの制服を着た人が走って出てくる。目付きは悪いけど穏やかな、ヘリパイロットと整備担当の先輩、飯郡(いいごおり)ハナハさんだ。補習授業部の掃除の時に会ったっけ?何だかお久し振りな感じだな。

「イヴさん、お怪我は大丈夫かしら?」

 頷いて左手首と左目を見せて、安堵の笑みを浮かべてくれる飯郡(いいごおり)ハナハさん。

「ごめんね、帰り際に。ナギサ様がお呼びなの。レイサさんもご一緒で大丈夫だから」

 一瞬嫌な顔をしちゃうイヴちゃんと苦笑いする飯郡(いいごおり)ハナハさん。

 

 ティーパーティーのテラス。呼ばれるのは慣れたもので、イヴちゃんも宇沢レイサさんも武器を預ける。*1宇沢レイサさんはちょっと警戒気味。イヴちゃんは全然気にせず紅茶と茶菓子をいただいている。

 桐藤ナギサさんは穏やかな笑顔。

「御蔵さん、宇沢さん、ご足労ありがとうございます。お怪我も治られて何よりです。今回は自警団の話ではなく、補習授業部の、御蔵さんへの報酬のお話です」

 ぱあっとイヴちゃんの顔が輝く。宇沢レイサさんは不思議そうな顔。

「……黄金のパスタサンプルですね……?」

 少し申し訳なさそうな顔をする桐藤ナギサさん。

「はい、お約束通り、お貸しいたします。が、本来展示を予定していた部室棟のスペースがエデン条約調印式の事件で損壊してしまっていまして。体育祭で事務用に使う、テントでも構いませんか?」

「……もちろん、構いません……」

 喰い気味に頷くイヴちゃん。ああ、あれか、という顔をする宇沢レイサさん。

「警備の都合上、1日だけになってしまいます。部室棟でしたら施錠や警備システムもあったのでもう数日お貸しできたのですが」

 申し訳なさそうな顔で紅茶を一口飲む桐藤ナギサさんに、首を横に振るイヴちゃん。

「……むしろ、芸術を野外で展示できる好機かなって思います……」

 ふふ、と微笑む桐藤ナギサさん。

「エデン条約調印式の前々日にしようかと思いますが、いかがですか。どちらにせよ、授業はエデン条約調印までお休みになりそうですし。警備は正義実現委員会1人をローテーションでつけます。もちろん、非常時には応援を呼んでもらいますが、イヴさんご自身にも警備をお願いして大丈夫ですか?」

「私も1日一緒に警備につきます!」

 頷くイヴちゃんに、元気一杯に手を挙げる宇沢レイサさん。嬉しそうな笑顔で微笑んで手を握るイヴちゃんに、デレっとする。明らかに芸術品目当てじゃなさそうだけど、イヴちゃんも芸術品のような可愛さだからしょうがないね。

 

 今度こそティーパーティーから解放されて、宇沢レイサさんグループだけでのお疲れ様会をいつものファミレスで。後から合流した円堂シミコさん、朝吹ソフノさん、報野モユルさんがイヴちゃんの無事を喜んでくれた。下江コハルさんは補習授業部から正義実現委員会に戻る手続きの都合、伊落マリーさんは今週末の調印式再準備の都合で欠席。

 イヴちゃんはいつものバルック・エクメック*2でご満悦。皆、あえてエデン条約調印式の話は避けて、新しい漫画や小説、ちょっと早いけど次のテストの準備などの話をしてくれる。気遣いが嬉しい。表情に出にくいのでわかりにくいけど、イヴちゃんもニコニコ。

 

 当日、大噴水の近く、イベントテントに鍵の掛かった頑丈なガラスケース、中に鎮座するのは黄金のパスタサンプル。パイプ椅子が3つ置いてあり、イヴちゃんと宇沢レイサさん、そして最初の警備に当たる下江コハルさんががティーパーティーから引継を受ける。大通りのT字路になっていて、場所的には決して悪くないのだけど、通りがかる生徒の反応はイマイチ。*3

 警備もそこそこに、そわそわした様子でイヴちゃんの左目と左手首をちらちら見る下江コハルさん。

「イヴ、手と目は、その……大丈夫?」

「……うん、何とも無いよ。心配してくれてありがとう……」

「べっ、別に心配とかしてないし!ライバルの視察だし!」

 ツンと顔を背ける下江コハルさんのわかりやすすぎるツンデレ仕草にほんの少し、小さく笑うイヴちゃんと下江コハルさん。

 

 下江コハルさんは、「次の調印式で自分が重要な役割を任せられるのを見てなさい、怪我人なんだから」と、心配してるんだか自慢したいんだか判らない話をしながら、一応警備の仕事も忘れないようにと、ちらちら黄金のパスタサンプルを見ている。

 パスタサンプルの警備そのものはイヴちゃんがしっかりというかガン見してるから大丈夫だと思うよ。何がイヴちゃんの琴線に触れてるかわからないけど。

「ねえ、このパスタサンプル、美術館の中でもこんな感じだった?」

「……黄金は、光の当たり方によって印象が全然違う。暗いところで柔らかい光が当たると落ち着いて見える。今みたいに、昼間の日光の下だと、凄く下品さが強調されて良いと思う……」

「褒めてるの?」

「褒めてるんです?」

 下江コハルさんと宇沢レイサさんのツッコミが重なる。

 

 下江コハルさんと交代要員が来たところで、大通りの向かいからデモ隊がやってきた。トリニティの制服を着た子が過半だが、ティーパーティーの制服を着た子もちらほらまじっている。

「聖園ミカの判決は軽すぎる!」

「我々は再審を要求する!」

「分派の長として相応しくない、退任しろ!」

 下江コハルさんが少し表情を暗くする。

「最近毎日、判決反対、厳罰要求デモやってるの。ちゃんと届け出は出てるけど、銃撃戦にならないかも心配」

 なるほど、厳罰派か。プラカードにも「聖園ミカは裏切り者」「クーデターは重罪」など書かれている。

 

 大通り逆方向からもデモ隊がやってきた。こっちはほとんどがティーパーティーの制服を着ている。

「聖園ミカ様の判決は重すぎる!」

「脅迫された情状酌量を加えるべき!」

 こっちは罰の軽減派デモか。となると、大抵はパテル分派なのかな。プラカードには巡航ミサイルやらユスティナ聖徒会をおどろおどろしく描いた絵が描かれている。

 デモ隊の先頭がかち合って睨み合ったところで、下江コハルさんが「イヴとレイサは警護続けてて!」と飛び出す。

「正義実現委員会よ!そっち(軽減派)のデモ隊、許可を得ている時間とルートが違うから、正しいルートに戻りなさい!」

 銃を構えかけていた軽減派が下江コハルさんと正義実現委員会のもう1人に機先を制される。正義実現委員会とやり合う気はさすがに無かったらしく、大人しく、厳罰派の野次を浴びて苛立った様子を見せつつも下がっていく。

 混乱を収めてからドヤ顔をする下江コハルさん。イヴちゃんは首を傾げた。

 

 結局、黄金のパスタサンプルを真面目に見てくれた人は30人にも満たない人数で、忙しい中、見舞いがてら様子を見に来てくれた伊落マリーさんが笑いを堪えていたのと、朝吹ソフノさんが苦笑い、報野モユルさんが爆笑してたのが一番いい反応だったけど、イヴちゃんは満足そうで何よりだった。

 事件らしい事件もデモ隊くらいしかなかったしね。ティーパーティーがパスタサンプルを回収して、テントを片付けてから宇沢レイサさんとイヴちゃんの2人(皆都合が合わなくて捕まらなかった)でパスタを食べて帰った。

「……1日パスタを眺めていたら、やっぱり食べたくなるよね……」

「そうですね!ずっと黄色を眺めてたから、雲丹クリームにします!」

 くすりと笑うイヴちゃん。イヴちゃんは普通にパスタサンプルと同じ、ミートソースにしていた。

*1
といっても、盾を修理に出してるので、ショットガンとナイフだけ。

*2
鯖をパンでサンドしたトルコ料理

*3
日光の下だとより下品に見えるのでそれはそう。




 評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。是非よろしくお願いいたします。

 明日は活動報告の通り京都に行くのでお休みの予定です。書き溜めが尽きてしまっているので、数日休みになるかもしれませんがよろしくお願いいたします。
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