ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

204 / 209
眼帯ってどことなく中二ソウルを刺激するよね まあ包帯なんだけど

 ミレニアムエンジニア部製超大型バイク(スケルチ:Squelch)と、盾、ついでにメンテもしてくれた30mm機関砲(ウッドペッカー)が帰ってきた。

 スケルチが『I shall return.ただいま戻りました、マスター』というメッセージを表示し、ちょっとうるっとするイヴちゃん。僕がいない間に頑張ってくれてたから、僕もちょっとうるっと来た。

 そして、エンジニア部の白石ウタハさんからスケルチからの伝言という形でメッセージ付。

『本来は私自身か誰かが行きたかったのだが、ミレニアムでちょっとした問題があってね。また顔を出してくれたら嬉しい。怪我は大丈夫なんだね?無理しないように』

 その後、技術的な説明が延々続いたものの、エンジン排気量が8,500ccから9,000ccにアップして、盾をつけたままでも最大450km/hを安定して出せるようになったというのと、防御力は肉抜きをして速度を優先したまま据え置きだということ、そして、1秒間だけならスケルチを宙に浮かせられるほどのロケット加速装置をつけたこと。

(……スケルチが、飛べるんだ……)

(イヴちゃんの翼も込みならもう何秒か行けそうだね)

 盾も素材を変えて軽量化したものの、中に弾薬を詰める量をその分増やしたので、全備重量だと500kgのままだそうだ。

 クラリオン(ショットガン)だけだとちょっと不安だったし、スケルチが直って嬉しいので、満面の笑顔*1で早速お礼のメッセージを送るイヴちゃん。『喜んでくれて何より。エデン条約が落ち着いたら顔を見せて欲しい』という返事で、心配してくれてるんだなあ、というのと、何か問題があったんだなというのが伝わってくる。

(……郊外の廃墟の話かな……)

(いずれにせよ、急いでは無いのと、電話とかモモトークだと話辛いみたいだから、また今度聞こう)

(……そうだね……)

 

 翌日。イヴちゃんは桐藤ナギサさんの護衛のうち1人として、「左目と左手首に白包帯を巻いてくるように」と治安維持アプリ経由でティーパーティー本部に呼び出され、連邦生徒会にやってきていた。急な話だったので、ティーパーティーの近衛師団から2人、イヴちゃん、羽川ハスミさん、そして護衛ではなく同行者として、錠前サオリさんという変わった面子だ。イヴちゃんと羽川ハスミさんは形の上では錠前サオリさんの監視もするようにということだったけれども、リムジンに乗ってやってきたので監視もへったくれもなかった。物珍しそうにD.U.の様子を見て緊張を誤魔化そうとしている錠前サオリさんに、イヴちゃんがぽつりぽつりと建物の解説をしてあげている。

「御蔵さんは、後ろで立っていてくださるだけで結構です」

 直前になって桐藤ナギサさんから受けた説明はそれだけで、連邦生徒会の会議室に入室するトリニティの一同。

 七神リンさん、不知火カヤさん、尾刃カンナさん*2、そして少し離れたところに先生が座っている。

「"ナギサ、ハスミ、イヴ、サオリ、お疲れ様"」

「ええ、先生もご苦労様です」

 桐藤ナギサさんが優雅に答え、羽川ハスミさん、イヴちゃんが小さく礼をし、錠前サオリさんは深々と先生に礼をして、勧められた席に桐藤ナギサさんと錠前サオリさんが座る。護衛の僕達は当然座らないけれども、イヴちゃんだけが桐藤ナギサさんの席の横に呼ばれ、わざとらしく立たせられる。

 

 沈黙が場を支配する。連邦生徒会側と先生にはコーヒー、桐藤ナギサさんと錠前サオリさんにだけ紅茶が供されるが、先生以外は誰も手をつけないし誰も発言をしない。最初に発言をした人間が責任を取らされるのを恐れているかのようだ。

「"その、今日の議題だけど。先日のエデン条約調印式の被害届の取下げでいいんだよね?"」

 数分の沈黙を見かねた先生の発言で、ようやく会議が動き出す。

「そうです。アリウス分校のエデン条約に対する黙許と引換えに、我々は被害届を取下げる用意があります。当事者である先生は、被害届を出していないと伺っていますが?」

「"うん、私は特に大丈夫だからね"」

 身体に傷はついてしまったというのに、先生は優しいな。一部の変態行為を除くと本当に教師の鑑だと思う。

「あれほどの大規模な事件で、ですか」

 尾刃カンナさんはまるで噛みつきそうな顔で、しかし事実上の上司に当たる不知火カヤさんを見る。

「アリウス分校を事実上トリニティの管轄とし、内部で刑事処分をしてくれるのであれば構わないのでは?自治区には不介入が原則です」

 七神リンさんは正直余り興味が無さそうだ。興味が無いというのを顔に出すのがそもそもどうかと思うけど。

「それでは連邦生徒会の立場がありません」

 不知火カヤさんが噛みつく。

「我が校で最も被害を受けた生徒、御蔵イヴさんは了承してくださっています」

 初耳ですけど、という驚いた顔で桐藤ナギサさんを見るイヴちゃん。*3

 初めて紅茶を口にしてから、「御蔵さんは、アリウス分校に報復したいと思っていますか?」と軽く口にする桐藤ナギサさん。

 イヴちゃんは当然、首を横に振る。

 桐藤ナギサさんが暗黙裏に言いたいのはこういうことか。

『左手と左目を一時的にでも失った生徒がこう言っており、なおかつエデン条約の調印とアリウス分校の再建援助事業を控えているのに、被害を受けた生徒にもトリニティにも何もしてくれなかった連邦生徒会は口を出すな』

 こんな真面目な会議の席で言う話じゃないけど、「イヴちゃんが交通事故で怪我したときにトリニティと連邦生徒会が何をしてくれましたか?」って言いてぇ~。

「錠前さんも、エデン条約調印式にアリウス分校の代表として、黙認の立場で立ち会ってくださいますか?」

「それが償いになるなら、もちろんそうしよう」

 きっぱり答える錠前サオリさん。会議の大勢は決した。

 

 不満げなままの不知火カヤさんに、イヴちゃんを連れて近づく桐藤ナギサさん。

「今回のお詫びという訳ではありませんが、防衛室が困った時に、トリニティと御蔵さん本人が問題無いと判断すれば、お手伝いをする許可を正式にトリニティが出します。御蔵さんも構いませんね?」

 あー、そういえば不知火カヤさん、イヴちゃんに粉をかけてたね。あの時は断ってたけど、結局受ける流れになっちゃうのか。一瞬考え込むイヴちゃん。

(……ジル、受けて大丈夫、だよね……私自身にも判断できるって事だし……?)

(うん、そうだね。良いと思うよ)

 頷くイヴちゃんと、渋々頷く不知火カヤさん。

「ありがたく受けとっておきましょう」

 実力者なのは間違いないけど、秘密裏に使える訳では無いから、あんまり嬉しくないってところかな。

 その話が終わってから、先生が桐藤ナギサさんに話しかける。

「"ナギサ、エデン条約とアリウス分校の再建は任せて大丈夫なのかな?"」

「先生、もちろんです。お怪我を負われた先生には申し訳ありませんが」

「先生、改めて済まなかった。どんな償いでもする」

 先生は困ったような笑顔で一言。

「"サオリが幸せになってくれるのが、一番の償いかな"」

 この先生、顔も良いし教師としては聖人君子だし、何を持ち得ないんだろう。一部の生徒への変態行為への抑止かな?

*1
普通の生徒が見たら判らないけどイヴちゃん検定1級の僕はわかる

*2
初対面だけど名札に『尾刃』と書いてあるから多分そうだろう

*3
イヴちゃん検定を持ってないとわからないくらいの顔




 今回の会議により、アリウス分校生の刑事処分はトリニティ持ちになり、アリウス分校生の指名手配、矯正局入は無くなりました。

 なお、先生の変態行為は実際にしたこと、してないこと含めて色々と噂になっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。