ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
明日はお休みなので引越しのお手伝いをのんびりぼちぼち進めている代理作業員ことジルです。
イヴちゃんは夕方まで頑張ったご褒美で脳内シアターでトウモロコシ畑からサメが襲ってくるクソ映画を見ています。なんか意外と気に入っているみたいで楽しそうな雰囲気が伝わってきてええ……ってなってる。
クソ映画でしょこれ……でも自分が気に入ってるものけなされるのムカつくだろうから言わないけど。せめてサメが台風に乗って襲いかかってくるやつにしたらいいのになあ。
まあクソ映画はともかく、汚部屋ではないけど細々したものが多くて結構手間取るんだよね。生活で使うかっていうと一切使わないものは早いとこ段ボールに入れてヨシ。
買ったはいいけどどこにしまうか迷ってる間に適当に放り込んで存在を忘れてたみたいなものも結構出てくるし、イヴちゃんの大好きなコレクションの、食品を模した消しゴムとか、食品サンプルとかも梱包がちょっと大変。消しゴムなんかくっつきそうだし。
あっ写真アルバムだ!!!
(イヴちゃんイヴちゃん!!このアルバム中身見てもいい?)
(……ん……?いいよ……)
うっひょ~~イヴちゃんちょ~~~~可愛い~~~!!!でもこのアルバム、中学生なってからのしかないな……。ちょっと残念。
学校行事で撮ったやつしかないのもちょっと察してしまう。これから思い出もっと沢山作ろうね。と後方腕組保護者面しつつめくっていたら後ろの方に一枚、小学校高学年?かな?くらいの金髪ストレートの天使イヴちゃんと、これまた金髪(イヴちゃんより黄色がかってる)の天使のような可愛さの悪魔族の女の子が満面の笑顔で写っている写真が出てきた。
なんか見覚えあるような子のような、そうでないような。コウモリっぽい羽と黒い尻尾があるから、トリニティの子じゃなさそうだな。
凄く仲が良さそうだけどどういう関係なんだろう。えー何だっけこの茶色っぽいキーホルダー、クアッカワラビーのMr.ニコライだっけ?一緒につけてるし。
(イヴちゃん、この子誰?)
(……??……わかんない……)
まあかなり昔っぽいしなあ。事故のせいだったりとかしないよね……?
何となく不安になったのと、そのうち何かで調べるきっかけとかになるかもと、スマフォで写真を撮った。
アルバム無限に見ていたかったけど、典型的な片付けの罠なので鋼の精神でページを閉じて作業を再開した。
今週のお休みは日帰りでゲヘナにやってきました。イヴちゃんと「そういや行ったこと無いし温泉でも行こっか」ってなっただけで大した用事は無いのだけれども。
仲良しグループは全員予定が合わなかったので一人(プラス寄生虫の僕)です。
私服のイヴちゃん、今日はちょっとボーイッシュよりに寄せたパンツスタイル、青ジーンズに上は白ニットベストで可愛い……けどまだ寒いから普通に上からコート羽織ってるんで見えないんだよね。
鉄道でゲヘナに到着。トレーナー学園最寄り駅で降りてからもう3回も不良グループに絡まれてて何事かと思ったけど秒でしばき倒せたからよかった。
今日も良い感じに晴れているけど、ゲヘナも寒い。というか、トリニティより南にあるのに(?)寒い!実際、平均気温でいうと2~5度くらい寒いらしい。
まだ温泉に入ってないのに温泉卵とか饅頭に吸い寄せられそうになるイヴちゃんを宥めながら歩くことしばし。
お土産にも良さそうだけど荷物増えるのやだし帰りに見ようよ、なんてイヴちゃんと会話しながらぶらぶら歩いている。
ふっと通りがかりに見えた路地の奥で、あーありゃカツアゲやってるね……どうしたもんかな。
(……ジル。助けたい……)
(いいね。イヴちゃんやってみる?)
(……えっ、私……?あ、そ、そうだよね……。う、うん……)
(危なそうだったらちゃんと言うし、本当にダメなら代わるから)
(……う、うん……)
紫がかった黒髪ボブのうつむいてる女の子を囲んでるチンピラが5人か。
囲まれてる子に当たるかもだけど、まあ許してもろて。おずおずと盾を持ち上げるイヴちゃん。数百kgのものが片腕で持ち上がるの、ちゃんと毎日の鍛錬の成果が出てるなあって嬉しくなるね。いやキヴォトス人なんなんだ。鍛えると何とかなるの凄い。
アイサツ前のアンブッシュは1回だけ大丈夫。イヴちゃんの正義の鉄槌30mm機関砲で悪は滅びた。まあ一発でぶっ倒れてヘイローも消えてるし、反撃もへったくれもないよね。
あー良かった良かった。いつものアプリで通報しておけばゲヘナの風紀委員会が来て回収して、小銭も稼げるしね。うまあじ成分たっぷり。
助けた女の子がイヴちゃんに駆け寄ってきて、深々と頭を下げた。
イヴちゃんは顔を上げて女の子の目を見ながら親指錠をかけようとして苦戦している。
「あ、あの!ありがとうございました!」
「……ん、ううん……」
「お、おお、お名前とか……お聞きしても……?」
あれっ、全然顔見えんかったから気付かなかったけど伊草ハルカさんやんけ!
危機は去ったのにまだぷるぷるしてて可愛いなあ。
もしかして陸八魔アルちゃんさんが助けるところだったとかないよな……。
イヴちゃんの視界から便利屋メンバーを探しても特に見当たらないし、大丈夫。だといいなあ。
あっ、えっ、名前?!
(……ジル、どうしよう……偽名、とか……?)
(名前かあ……言っても大丈夫じゃない?)
敵対フラグじゃないだろうし大丈夫だろう。ほんまかなあ。
「……御蔵イヴ、です」
「こ、こんな路傍の石にも劣る私を助けてくださってありがとうございます!!本当に!!あっ、あっ!荷物持ちましょうか?!」
「……い、いいよ……だいじょうぶ……」
ペコペコとコメツキバッタもドン引きする速度で頭を下げる伊草ハルカさんを宥めて、ついでにお勧めの温泉を聞いてからその場を後にしたのだった。
(……何だか、疲れた……。でも、ちょっと親近感……)
(友達になれるかもね)
口下手友達はちょっと大変そうだけど、なれたらいいなあ。
そうそう、イヴちゃんは悪魔種族の子を見ても特に嫌悪感とかは沸いたりしないらしい。羽川ハスミさんは失言由来だったらしいし大丈夫なのか、聖園ミカさんとかの派閥はそういう要素がある人が多いらしいし、天使族にも個体差があるのか……。
イヴちゃんがふんわり温厚温和大天使イヴちゃんだから、って可能性もあるのかなあ。わからんわ。これはもっと材料を集めないとだめ、保留。
ゲヘナの温泉は、水着着用のエリアと水着不可の全裸で入るエリアが分かれていることが多いらしい。イヴちゃんが恥ずかしいって言ったので、今日は普通にほぼ全域が水着ありエリアになっている有名な温泉に来ています。スクール水着のイヴちゃんちょー可愛い。ヤバい。
温泉温かいなりィ……っていうかめっちゃ熱いわ。70度て。でもキヴォトス人なので平気です。いや割とイヴちゃんもあっつい……ってなってたけど。前世体感だと45度のお湯くらいな感じ。
温度によって湯船が区切られてて、この熱さのお湯はほとんど入ってる子がいなかった。もう1個上のぐらぐらしてる90度の湯船は1日1人使うかどうかくらいらしい。今日も誰も入ってなかった。あほなのかな?
でも我慢したお陰で、美少女天使イヴちゃんがすべすべ美肌美少女大天使イヴちゃんにレベルアップ。鍛錬で地味に溜まった疲労も抜けたかな。
これからヒノム火山に行くし、美味しいもん食べてお昼にしようってことになった。
(……熱めだったけど、良い汗かいた気がする……。サウナも気持ちよかったね……)
(火山降りたらまた温泉行こう!)
(……うん……次は違うところ行ってみる……?)
ヒノム火山のアクセスできるいわゆる表側は誰でも登れる。登山ったって観光化されてるし、裾野も狭くて、ぶっちゃけほぼロープウェイで山頂まで上がるだけだ。
もちろん、活火山なのでガス警報とか出てたら諦めるしかないけど。
ヒノム火山下、ロープウェイ駅前。新装開店したらしきお店から美食研究会の面子が出てきて心臓止まりそうになった。自前の心臓ないから止まらんけど。
爆破されてないから当たりらしく、ピンと来るものがなかったからさっき軽く温泉卵とかつまんだだけだったし丁度いいなって入ったらやっぱり当たりで、美味しいご飯でした。
美食研究会のSNSで事前に予定がわかるというのを隣に座っていた美食研究会判定待ちしてたらしき、わざわざ他の学園から来てたらしい2人組が話してて、今度からチェックしておこうとケツイを新たにした。
イヴちゃんももちろん僕もSNSやってないんだよな。書くこととか割と一杯あるような、でもイヴちゃんと話してるだけで楽しいから別に要らないような。
晴れた日なのであちこちの学園から来た生徒や獣人、オートマタの観光客はそれなりにいるけど、ロープウェイは運搬能力が高く、さくっと登れて楽々。
ヒノム火山は活動が活発なので、火口までロープウェイを引いたところで噴火で吹き飛んだりしかねないから途中の2,500mあたりまでになっているのだとか。
そこから山頂までは火山活動の影響で常に登山規制されてて登れないらしい。もちろん観光サイトの記事曰く、『ゲヘナなので完全にブッ飛んだ子は気にせず登頂を試み、そしていくらキヴォトス人でも溶岩に焼かれると大体の場合は洒落にならんし実際死ぬので、厳戒の規制線を引いてる風紀委員会にしばき倒されて麓に送り返される』というのが定番なんだとか。
そんなやべー奴はたまにしか出ないそうだけど。たまには出るんかい。キヴォトスまじで魔境だな。
(……火山、おっきいねえ……)
(いやほんとにね。でかァァァイッ説明不要!って感じだね)
4,000mちょっとだかで、山全体の裾野もとんでもなく広いのがここヒノム火山。
ロープウェイのあるこっち側はただのでかいまばらに植物が生えている、荒れ地が続く山。
稜線の向こう側からはアビスという人が立ち入らない地域になっているのだとか。
要はあれ?ネザーオヒガン?
今日は火山活動もヤバくなさそうで大丈夫らしくて良かった。
登った先は広場になっていて、家族連れや百合ップル*1などを初めとした観光客で賑わっている。
さてさて、火山観光ももちろん目的ではあるのだけれども、本命もちゃんとしないとね。
もくもくと噴煙を上げる火山をバックに、親しい人間以外には無表情にしか見えないドヤ笑顔のイヴちゃん自撮りが終わって手近なベンチに腰掛ける。
いつも通りブーツを脱いで、盗難防止の諸々もしてと。
(じゃあイヴちゃん、1時間くらいはちょっとやってるから、寝てていいよ)
(……うん、わかった。お休み……)
元々寝付きが良い方だったけど、鍛錬の影響なのか神経関係を良い感じに出来ているのか、マジでイヴちゃんは秒で爆睡だ。
これから目を閉じちゃうし脳内ライブラリも使えない*2から起きてても特に楽しい事ないからいいけどね。
さて、今日のゲヘナ訪問目的2つ目。神秘鍛錬のための座禅瞑想、ヒノム火山編。
空に近い上に火山という活動、力そのものから神秘パワーアップ的な何か得られないかな~という安易な思いつき。
神秘らしきエネルギーを何とな~く動かせるようになった気がほんのりしなくもないと推測をやや感じているので上手く行きますように。
いや何もならんかったわ。観光客さん達のクスクス笑いと、ちょっと戸惑った風紀委員ちゃん達の困惑の目線くらいしか得るものが無かった。
わからないだけで何かいい影響が出てるとかならいいんだけど。
じゃ、イヴちゃん、温泉寄って帰ろ。起きて。
(……ん、終わった……?どうだった……?)
(今回も何の成果も得られませんでした!!だったねぇ……)
(……そっか……上手く行くといいね……)
(本当にねえ)
まー観光楽しかったしご飯美味しかったからいいや。
もう一度ヒノム火山の雄大な風景を眺めて写真パシャパシャ撮ってモモトークの友人ズグループトークに投擲して、山頂のお土産屋さんで変でチープなお土産を幾つか買った。
麓に降りるまでに検索した温泉に寄ってもう一回心身の洗濯をきっちりして帰った。
今回の討伐チンピラグループは12、人数は延べ55人です。多過ぎやろ。こんなのってないぞ。ゲヘナいい加減にしろよ……。
まあお小遣い稼ぎにはなったんだけども。イヴちゃんはドン引きしてました。
ゲヘナに伝わる黙示録的な何かがあるらしいですし、ヒノム火山はトリニティのカタコンベやミレニアムの廃墟同様、忘れられたものが流れ着くやべー場所らしいですね。
そのうちメインストーリーとかで出るのでしょうか。楽しみです。
キーホルダーの描写に誤りがあったのを訂正しました。
誤:ドンギマリ鳥ことペロロ 正:クアッカワラビーのMr.ニコライ
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紙での小説の書き方に基づいて書き続けていたロートルとしての改行等を改めつつ、同時に加筆修正を行いました。話の本筋には変更ありません。2025.01.20