ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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「『敵歩兵の攻撃を妨害し、あるいはこれを撃退し得るは阻止弾幕射撃なり……総攻撃に際し攻者の前進を不可能にしたのは、多くはこの射撃の成功した場合であり、可能にしたのは、塵姻または電話線の切断によって、この射撃をなし得なかった場合である』一九一五年七月、独参謀総長訓示)」(金子常規『兵器と戦術の世界史』)


そういや天童アリスさんの中の人その2の名前聞いてなかったなの巻 話し合いながら殴り合うのは大変だから

そういや天童アリスさんの中の人その2の名前聞いてなかったなの巻 話し合いながら殴り合うのは大変だから

 

 イヴちゃんが続ける。

「……現状、4kmの捜索と掃討で、不可解な軍隊のロボットの侵入そのものは阻止できている、と言えると思います……」

 続けて、と促す調月リオさん。

「……センサー類は再利用して更に前進配置。廃墟へのゲートから、可能な限り廃墟の建物を崩して平地を作りましょう……。無人地帯を作って、地雷原と、レーザーワイヤ*1、は効果が薄いかもしれません、有刺鉄線を引きましょう……」

「地下から侵入されるおそれもあるわ」

「……センサー類に、地中レーダと音響探知機能をつければいいのでは……。廃墟産のスクラップも、調査用の施設と、溶鉱炉をゲートの向こうに建設して、廃墟から持帰るのは溶かした後のインゴットだけにすれば安全。溶鉱炉と調査施設も、ロボットで守らせればいいと思います……」

「私が作ったAMASと、無人の火砲類ね」

「え、何何?どういうこと?」

 提案の合理性に頷く調月リオさん、先生、才羽ミドリさん。どういう事か判って無さそうで宇宙猫顔の才羽モモイさん。少し嬉しそうに、美甘ネルさんが笑う。

「つまりアレか?今回の仕事は、廃墟の建物をぶち壊すのに変更ってことか?」

 イヴちゃんが判って無さそうな才羽モモイさんに説明する。

「……廃墟入口のゲートから何kmか、建物を壊して無人のだだっ広い平野を作るの。防御はロボットと、無人制御の火砲や機関銃をトーチカに入れて置いておく。あとは地雷原、有刺鉄線を張って、万が一守り切れなさそうならアラートを出して、ミレニアムの戦力で迎撃する……」

 才羽モモイさんが納得する。

「つまりこっちからは撃ち放題にする地域を作るってことか。そうすると、あの変なロボットがミレニアムに近づけなくなるから、アリスは安全!」

 

 射界清掃、当然キヴォトスにもある概念だが、銃弾で人死にがほぼ出ないキヴォトスではゲヘナの教本で触れられているくらいで、ここまで大規模な射界清掃は多分キヴォトス初らしい。

「"イヴ、良いアイデアを出してくれてありがとう"」

 ふるふると首を横に振るイヴちゃん。肩口のゲーム開発部のロゴを誇らしげに見せる。

「……私も、ゲーム開発部員ですから……」

「この規模だと、『清掃』というよりは『大規模解体工事』ね。でも、私だってトロッコを誰かが死ぬ方向に切りたくは無いわ。感謝するわ、イヴ。ただし、解体工事が終わる数日までは、念のためアリスはセミナーの、そうね、反省室にでも入ってもらうことになるわ」

「ゲーム機とかを持って行って、私達も一緒に入っていいならいいよ!」

 才羽モモイさんが力強く条件交渉をし、調月リオさんは即座に頷く。

「構わないわ。食事類はセミナーに用意させる。その間出席できない授業に関しても公休の扱いにしておくわ」

 調月リオさんが、深く深く、恐らく人殺しをせずに済むという安堵感から溜息を吐いた。小声で「エリドゥの予算に関してだけ何とかしないといけないわね」という呟きがイヴちゃんの強化された聴覚に入る。あー、何かあったね。横領都市だっけ?マジで横領で街作ってるんだ。それで経営が傾かないミレニアムも怖えけど。

「戦士イヴに感謝を!」

 全力で抱きついてくる天童アリスさん。イヴちゃんの肋骨とかちょっとミシって言ったけど大丈夫だよね?

 調月リオさんが先生に向けて告げる。

「それと、先生。悪いけれど、廃墟の『解体工事』に立ち会ってくれないかしら?アリスの籍については不問にするけれど、アリスを発見した建物だけは再調査後の破壊か、同じく廃墟内のどこかに移築して調査したいの」

「"も、もちろん構わないよ"」

「……私も、手伝います。ヴェリタスとエンジニア部の他に、廃墟に慣れているのは私だと思うので……」

 

 廃墟のうち数km解体後の無人地帯(防衛陣地)は、調月リオさんが図面を引くことになった。

「ただし、これは対処療法に過ぎないわ。根治療法が必要」

 言いかけた調月リオさんの言葉を遮るように扉が開き、見覚えのある車椅子に乗った明星ヒマリさんが入ってくる。

「貴方、どうしてここに。隔離室は」

 絶句する調月リオさんに、ドヤ顔の明星ヒマリさん。

「エイミが助けてくれました。あのくらいの数なら、エイミならちょっと疲れるくらいですよ。それより、根治療法と言いましたね。何をするつもりだったのですか?」

「催眠による安全装置、マイクロチップによる位置把握、それから」

 話にならない、という顔で明星ヒマリさんが溜息を吐く。

「どれもアリスの人権無視なうえに、アリスに対してしか安全装置がかけられません。精神ダイブ装置があるでしょう?あれを使って、アリスの内なる脅威を説得しましょう」

「ダイブ装置の安全性は――」

「私が手伝います。それと、イヴ。トリニティには、夢に潜れる能力者がいるというのは本当ですか?」

 一瞬躊躇った後、イヴちゃんは頷く。

(イヴちゃん、先生の護衛が成功したら、百合園セイアさんにもご褒美をもらえることになってるんだ)

(……ジル、ありがとう。使おう……)

 そこで友達のために、大事なお願い事を躊躇無く切れるイヴちゃんをとっても誇らしいと思うよ。

「……その人に、電話して、協力を仰ぎます……」

「リオ、傍受を切ってください」

「わかったわ。今から電話して戻ってくるまでね」

 トリニティもきっと通信傍受やって当たり前なんだろうけど、ここまで堂々と言われるとちょっとヒくな。

 

 ゲーム開発部員でも明星ヒマリさんと会ったことがある人と無い人がいるらしく、改めて明星ヒマリさんが自己紹介をしてから、先生を含めて、無人地帯の設計とダイブ装置の改善案を話し合っているゲーム開発部室から出た。

 イヴちゃんが百合園セイアさんに電話をかけ、これまでのざっとした経緯を説明する。

『精神自体の補強というか、カウンセリングに近いが、似たようなことはしたことがある。精神の接続も、別にやったことがある。しかし、本当に願い事はそれでいいのかな?』

 イヴちゃんは再度、迷い無く頷く。

「……大事な友達のためなんです……」

『わかった。じゃあ、当日に予定を空けておいて、まずはイヴの精神空間を訪れることにする。そこからそのアリスという生徒の精神空間に繋いでみよう。しかし、やっぱりサンクトゥス派(うち)に欲しい人材だね。そうそう、ミレニアムにいる間の公休も手配しておくよ』

 百合園セイアさんが笑って電話を切った。

 イヴちゃんは皆が心配しないよう、『ミレニアムで手伝う仕事ができた』と宇沢レイサさんグループにメッセージを送ってから、活発な議論の進むゲーム開発部室内に戻った。

 

 廃墟の大規模解体工事は今日からミレニアムの建築部に依頼し、まず2日で平地を作り、特火点(トーチカ)他を1日で作ることになった。精神ダイブ装置の改善も平行して進め、4日後にダイブしてアリスの中にいる誰か*2を説得することになった。

*1
キヴォトスにはレーザのものもあるが、この場合は棘の代わりに刃物がついてる有刺鉄線のこと

*2
僕が速攻で張り倒したので名前を聞けてない。名前を聞くところからだな。




 補足説明として、射界清掃とは、要するに「射撃の邪魔になる物を全て排除する」ことです。基本的にはキヴォトスでも、大型火砲・機関砲の攻撃力>ロボットの防御力なので、ロボットに銃砲弾を当てやすいように廃墟の建物を破壊して、残骸は廃墟内で穴を掘って埋め、リサイクルできる鉄骨等は新設する工場で再利用します。

 また、リオがこれで引き下がるかは解釈が分かれると思いますが、原作でもC&Cにタコロボット回収させていて、失敗するまではアリスに接触しなかったので、本作ではリオが納得するとしました。
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