ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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ミレニアムでイヴちゃんが生活してても全然咎められないし違和感も無くなってきてちょっと笑っちゃう

 イヴちゃんは先生と一緒に、3日間は廃墟の射界清掃の手伝いをすることになった。本当はエンジニア部やヴェリタスも人手を出してくれる予定だったのだけれども、どちらも精神ダイブ装置の改良に集中するということで、先生とイヴちゃんのコンビが廃墟調査の最新版の地図データをもらってのお出掛け。

 といっても、現場で襲撃してくるロボットやドローンを撃退するだけで、実際の建物解体はミレニアムの建築部が重機や爆破でやってくれるし、建築部も自衛用の装備や人員は揃っているので、先生の指揮下で問題無くセンサー類を回収しながら、例の天童アリスさんを見つけた工場だけ吹き飛ばさないように気をつけつつ、がんがん解体が進んで行く。無人の場所で、キヴォトス人らしい荒っぽさでがんがん建物が無くなって平地になっていくのは爽快ですらあった。誰もいないし隣の建物もどうせ壊しちゃうし良いよね、みたいな。

 3日目には先生もイヴちゃんもすっかり慣れて、まずは廃墟入口から奥行2kmの無人地帯を作り上げて、再利用できそうなものを除いて瓦礫を埋め、天童アリスさん工場(仮称)をばらして移築するところまで片付いた。工場床下、縦穴の中身も持ち出せるものは全部持ち出してしまうらしい。

 防衛設備としては、まずは旧式化した戦車を無人化したものと、地雷原を設置して、4日目以降にトーチカや有刺鉄線を設置していくそうだ。

 

 3日目の夜、シャワーを浴びて、先生からコーヒー牛乳をご馳走してもらってから、イヴちゃんと先生はダイブ装置の現物を確認しに来ていた。

「"明日、これでアリスの精神に入るんだね"」

「……見た目は普通のカプセルですね……」

 しゃがみ込んで確認作業をしていた豊見コトリさんが手を止めずに解説を始める。とてつもなく長い解説を要約すると、「中で寝ることで、精神エネルギーの送受信機を兼ねているカプセル自体が真ん中にある受信専用カプセルで寝ている人間(今回は天童アリスさん)の精神に入れる」そうだ。

 真ん中の受信専用のものを含めると、イヴちゃん含めたゲーム開発部員全員分の数が揃っている。

「……私は、違う手段で入ることになると思いますが、準備してくれてありがとうございます……」

 イヴちゃんは丁寧に調月リオさんに頭を下げる。調月リオさんは真顔で答える。

「元々単なる予備として準備していたものよ。あなたはミレニアムの学籍はないから、そういう意図は無いわ」

「『気が利くでしょう』とでも言っておけば良いのに。そういうところですよ」

 うんざりした顔で明星ヒマリさんがツッコミを入れる。

「当日はこの清楚天然水美少女の私と、ドブ底ヘドロ女のリオ始め、エンジニア部とヴェリタスが総力を挙げてサポートしますので任せておいてください」

「"頼りにしてるよ"」

「……よろしく、お願いします……」

 

 当日、「万が一のときのために、寝る時用の服装で」と言われたので、ゲーム開発部の皆はそれぞれ才羽モモイさんがピンク、才羽ミドリさんが緑、花岡ユズさんが赤、天童アリスさんが白の、同じデザインのパジャマを着ている。

「……お揃い、可愛いね……」

「まさかパジャマがいるとは、この海のモモイの目をもってしても見抜けなかった」

「お姉ちゃんの目には期待してないけど、今度泊まるときまでにイヴちゃんのも用意しておこう」

 才羽モモイさんの言葉に、イヴちゃんは自分の着てるDeathの"Scream Bloody Gore"ジャケの黒Tシャツ*1をドヤッと胸を張って見せつける。下はカーキ色のハーフパンツ。本人的にはお気に入りのデザインだが、ミレニアムの他の面々的にはバンドロゴは意外と好評だったものの、ジャケは「何か裏ボスがいるラスボス辺りっぽい」「可愛くない」と評判はイマイチだった。

 

 15分後から作戦開始ということで、緊張で寝つけないなんてことがないように、皆で同時に配られた睡眠導入剤を飲む。イヴちゃんと僕のカプセルはモニタリングだけ。天童アリスさんはもう眠っており、才羽モモイさんは秒で寝つき、腹を固めた花岡ユズさん、才羽ミドリさんが眠りにつく頃、イヴちゃんもうとうとし始めた。

(お休み、イヴちゃん。向こうでね)

(……うん、頑張ろう、ジル……)

 

 コトダマ空間で目が覚める。温かい感触から、イヴちゃんに抱っこされているのかな?と振り向くと、百合園セイアさんでちょっとだけびっくりした。甘えて抱きついたりしたらちょっと恥ずかしかったな。

「やあ、イヴ、ジル。予定通り進んでいるようだね」

「……ありがとう、ございます……」

「予定通りなのはわかるんです?」

「わかるとも。窓の外を見てごらん」

 人1人分ほどの隙間の先に、ミレニアムの古めの校舎、ゲーム開発部が入っている一室の外壁が見えてびっくりしてしまった。

「百合園セイアさんにお願いしたいのは3つです。あの外壁をそのまま維持してもらうこと。中に2人いて、イヴちゃんと先生、ゲーム開発部員3人の5人、合計7人が入るはずなので、もし万が一誰かが外に蹴り出される(Kickされる)かそれ以外の誰かが入ろうとしたら阻止してもらうこと。緊急時にイヴちゃんか僕が助けを求めたらこっちのコトダマ空間に引きずり出して戻してもらうこと」

「外壁と、人数と、イヴの緊急脱出だね。了解した」

 百合園セイアさんは窓から外に出る。透明な水が、百合園セイアさんを避けるように引いていき、トリニティの石畳1人分が足場として現れた。

「あの水は、何か意味があるのですか?」

「さあ?その気になれば足を踏み入れることはできるが、温かくも冷たくも無い、恐らく清潔な真水だとしかわからなかった」

 真水かどうかわかるってことは、味も見ておこうしたんだな。

「さて、中に2人いるのは私もわかるが、何か識別できたりしないかな」

 ミレニアムの技術がベースになっているから、今回は使えるんじゃないかと、僕は思いつきを口にする。

「WhoIs、って唱えてみてください」

 唱えた途端、僕からエレキギターのレギュラーチューニング開放弦試し弾きのような音が出、百合園セイアさんの頭の上に「Seia」、イヴちゃんの上に「Eve」、ゲーム開発部室の中に「Alice」「Key」と表示が出た。

 一瞬目を丸くした百合園セイアさんとイヴちゃんがWhoIsと呟くと、狐の鳴き声のような音、ついでアコースティックギターのレギュラーチューニング開放弦試し弾きのような音が聞こえた。

 

 直後、がらりと窓が開いて、好奇心で目を輝かせた天童アリスさんが身を乗り出した。僕は慌ててイヴちゃんの後頭部にしがみついて只のぬいぐるみのフリをする。

「イヴ!来てくれたんですね?!そこの人が、魔法使いですか?」

 ふふ、と微笑んだ百合園セイアさんが自己紹介をする。

「初めまして。魔法使いの百合園セイアだよ」

「勇者、天童アリスです!手伝ってくださって感謝を!イヴ、こっちに来てください!」

(僕はこっちに残っておくよ。距離があった方が、逆に緊急時に役立つかもしれない。あと、精神空間は弱気になったら負けるから、とにかく強気でね!)

(……わかった……)

 首元のLANケーブルを伸ばして僕を窓際に置くと、緊急時に巻き取って撤退できるように、右翼のモビーディックワイヤー(思考誘導ロケット付ワイヤー)の先端を窓枠の内側に突き刺してから、天童アリスさんの開けてくれた窓から天童アリスさんのローカルコトダマ空間のゲーム開発部に飛び移った。

 ぬいぐるみのフリをしてイヴちゃんのローカルコトダマ空間側でぬいぐるみのフリをしながら、イヴちゃんの視界を借りる。中はほぼ現実のゲーム開発部と変わらないが、埃が無くて清潔なのと、まだゲーム開発部に導入されていない最新鋭ゲーム機が置かれているのがおかしみを誘う。

「有線接続なの、人型汎用決戦兵器みたいです!」

 ち~~~~っとも汎用でも決戦用でも無いあれかー。

 そして奥に、天童アリスさんと同じ姿で、紫の目を爛々と輝かせた人物が立っていた。頭上には「Key」の文字。そうだったそうだった、Keyさんだったね。あれ、ケイさんだっけ?

「あなたが王女を誑かす人間ですね。散々殴ってくれたのを覚えていますよ」

「……もう一回、やる?……」

 イヴちゃんが超強気の返事をしたのは事前の打ち合わせ通り。ぴくり、とKeyさんが眉をひそめる。

*1
こっちの世界にもDeathの音源が何枚かあるらしい。特徴的な死神と鎌を模したバンドロゴもそのまま伝わっている




WhoIsコマンドが使えたのは、ミレニアムの精神ダイブ装置に基づいてアリスのコトダマ空間が成立しているからです。
仮にセイアの能力だけで接続した場合はWhoIsコマンドは使えません。
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