ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
ミレニアムの大会議室で、ゲーム開発部が中心になり、セミナー*1、エンジニア部、ヴェリタスとC&C、そして特異現象捜査部の出揃った大祝宴は楽しかったけど、凄まじいカロリーの暴力だった。炭水化物とたんぱく質しかない。ピザ、コーラ*2、多種多様なエナジードリンク*3、小さなハンバーガー*4、フライドチキン、ポテトスキン*5、マカロニ&チーズ、ホットドッグ、ポテトサラダ*6と、そりゃこんなにカロリーと脂と塩を満載したら美味いに決まってるでしょ、っていう内容を、ミレニアムの皆は躊躇無くもりもり食べていく。
料理が出揃って乾杯の音頭を先生が取る。先生の挨拶は簡素なものだった。
「"ミレニアムの皆の頑張りに乾杯"」
我先に料理に飛びつく才羽モモイさん、先生の飲み物を持ってくる才羽ミドリさん、部屋の隅に陣取り、自分の分の食べ物はしっかり確保している花岡ユズさんと、宴会始まりは性格が出る。
料理の山を見た先生とイヴちゃんは見つめ合って、フライドチキンやポテトスキンに申し訳の様に添えられた野菜を2人でさりげなく確保していく。ミレニアムの皆は全然気にしていない中、どうにか小鉢2杯分のサラダを確保出来てニッコリの先生とイヴちゃん。いや本当、凄いな。
「"若いってすごいなぁ"」
ぽつりと呟いた先生の声はしみじみしながらも、どこか嬉しそうだった。イヴちゃんは首を傾げたけど、僕も何となく同意してしまう。
ニコニコと天童アリスさんとイヴちゃんに甲斐甲斐しくピザを切り分けてくれていた早瀬ユウカさんが、やっとお説教から解放されたと一息ついている調月リオさんに囁く。
「終わったら続きですからね」
びくりと身体を震わせる調月リオさんと、怒気にあてられて、自身が怒られてる訳でも無いのに肩を寄せ合う天童アリスさんとイヴちゃん。可愛い。
宴会は夜遅くまで続き、食べ過ぎ飲み過ぎ*7でダウンする子が相次いで自然解散になった。先生の目が無かったら机の上や床に寝転がったりする子もいたんじゃなかろうか。
先生は早瀬ユウカさんに頼まれて、今回の後始末のためにセミナーと打合せをこれからするらしい。早瀬ユウカさんのお説教と平行しながら自分の後始末をさせられる調月リオさんはしょんぼりとした雰囲気ながら、どこか憑き物が落ちたような顔だった。
イヴちゃんはゲーム開発部に泊まっていくことを勧められて、今日はシャワーを借りてから、黒いカーゴパンツに上はNargarothの"Black Metal ist Krieg (A Dedication Monument)"*8に着替えてドヤ顔をするも、ゲーム開発部は当然誰もブラックメタルを履修していないので反応が薄いのに少し落胆するイヴちゃん。
(シンフォブラックからなら布教しても伝わるかもだけどね)
(……これも名盤なのにね……)
ゲーム開発部の床にだらだらゲームをしながら雑魚寝するゲーム開発部の一同。イヴちゃんは来客だからとソファを勧められたけど一緒に寝る方が楽しいと断った。
「あー、食べた食べた!楽しかった!」
「お姉ちゃん、絶対食べ過ぎだよ」
「でも、美味しかったね」
「勝利の宴に相応しい内容でした!リオ会長とも仲間になれましたし!」
まあ確かに何となく勝ち戦の後の宴って、肉!肉!肉!みたいなイメージあるけど。そう思えば今回の宴会も正しい、のか?
対戦中のゲームのバランスや、ゲーム開発部の次回作のゲームの構想、イヴちゃんの学生生活の話、逆にゲーム開発部の皆の普段の学生生活の他愛ない話をしているうちに1人、また1人と寝落ちしていく。最後まで起きていたのは一番体力があるイヴちゃんだった。
(……ジル、今回もありがとうね……)
(僕はアドバイスしかしてないから。皆とイヴちゃんのお陰だよ。さ、イヴちゃんもお休み)
コトダマ空間では、百合園セイアさんが先に待ち構えていて、イヴちゃんを膝枕していた。えっ、イヴちゃんの枕は僕の仕事なのに。*9
百合園セイアさんは穏やかに僕に微笑む。イヴちゃんはコトダマ空間内でもまだまどろんでいるらしく、
「やあ、遅かったね。宴会が長かったのかな」
「ええ。生徒会に相当する部活と、他にもいくつもの部が参加してましたから」
「今回の代償なのだけれども、『お願い』の権利を使うにしては簡単だった。どうかな、お願いは保留にして、パテル分派からサンクトゥス分派後援会の移籍と、ドライブに付き合ってもらうというので」
「えっ、イヴちゃんはまだパテル分派後援会に入ってる……?」
「それはそうだろう。リーダーと喧嘩したら自動的に除籍、なんてシステムはないよ」
喧嘩かぁ。めちゃくちゃ頑丈になったはずのイヴちゃんの肋骨にヒビ入ったけどね。
「……ぅうん……いいんですか……?」
イヴちゃんが寝ぼけ眼で応える。
「もちろん。『魔神への願い事は自分のために使うべき』という、アビドスだかの諺もあるしね。私は魔神ではないけど」
「僕達には得しかないような」
「私にも、確実にドライブに同行する、可愛い後輩との約束ができるメリットがあるからね」
「……移籍は、スズミさんとレイサちゃんに相談してからなら、問題無いと思う。ドライブはもちろん大丈夫だよね……?」
「そうだね。相談してから答えるで構いませんか?」
「もちろん構わないよ。守月スズミも、宇沢レイサも今のところサンクトゥス分派には入ってないはずだけどね」
話は決まった。この約束のうち後者のドライブの件を後悔するのは相当後の事。
翌日早朝、寝てなかった主にセミナーの人達、そして同じく寝てないらしい先生に見送られ(ゲーム開発部の皆には置き手紙を残した)てスケルチで帰ったイヴちゃんは、まずは守月スズミさんと宇沢レイサさんにモモトークで後援会移籍の話をして了解を得た。授業が始まる前に、トリニティの事務局で、早速パテル分派からサンクトゥス分派に移籍の手続きをした。後援会の移籍自体は稀にあることだし、パテル分派は特に今、求心力が落ちているせいか、事務局の職員さんも慣れた様子だった。
そのまま教室に直行し、報野モユルさんに「何だかつやつやというか、てかてかしてない?」と指摘されて、昨日の宴はやっぱり駄目だったんだ、と反省したイヴちゃんがこの日はサラダと軽めのご飯で済ませたのは別の話。