ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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右ストレートでぶっ飛ばす まっすぐ役を揃えてぶっ飛ばす

 3つめのアトラクションは、水羽ミモリさんとの対決だった。

「あ、イヴさん、レイサさん」

「おはようございます!!!」

「……おはようございます……。ミモリさんの、担当は何ですか……?」

(おはようございます。エンチキください)

 「そうですね」と、ちらっと悪戯っぽい笑みを浮かべる水羽ミモリさん。彼女はイヴちゃんの中にいる僕を知っているし、こちらは水羽ミモリさんが本当に読心能力を持っているのを知っている。秘密を共有している者同士のこっそりとした笑みの交換。

「折角だから、トランプでのポーカー1本勝負にしませんか?私、心を読むのが得意で、普段はできませんから。イヴさん、どうでしょう?」

「イヴちゃん、頑張ってください!」

「……頑張る……。レイサちゃん、私の手札は見ないでくれる……?」

「は、はい!」

 両手でおまじないでもするようにイヴちゃんの右手をきゅっと握ってから離す宇沢レイサさん、小さく頷き返すイヴちゃん。宇沢レイサさんには内緒の話で申し訳ないけど、本物の読心術者とカード勝負で普通には勝てないよな。

(イヴちゃん、じゃあ僕がやるから、眼と腕だけ使わせてくれる?それと、頭の中で歌を歌っててほしい。なるべく大声で)

(……歌は何でもいいの?じゃあ……"Something's tearing me down and down.And I can't help but feel it's coming from you")

 Pendulumの"Propane Nightmares"か。ぽっぺっぽー、ぽっぺっぽぺーというギターシンセの間奏も再現するイヴちゃん可愛い。選曲がちょっと意外だったけど。

 

 新品のトランプを開けて、和楽姫の警備と運営委員を兼ねてるんだろう、そばに控えていた百花繚乱の子が不慣れな手つきでシャッフルして、カードをお互いに配ってくれる。

(……私は手札を見ないから。"In a trail of fire I'll burn before you bury me.")

 イヴちゃんの美しいソプラノの声が脳内に響き渡る。ぷろぱんずないとめあー、と、"Propane Nightmares"の間奏もしっかり思考で歌ってくれるイヴちゃん。宇沢レイサさんは約束を守って札を見ずに、イヴちゃんの右肩に抱きついて首筋を見ている。これはこれでちょっと気が散るけど、宇沢レイサさんは思考を誤魔化す術が無いからしょうがない。

 

 ♥と♣の3と♥と♠6の2ペア、悪くない引きだ。札を1枚だけ交換するが、特に役は変わらない。はたと気付く。

「そうだ、何を賭けますか?お金とか?」

 キヴォトスでは賭博は色々な条件はあるものの合法だ。

「ふふ、じゃあ1,000円を賭けましょう。負けても2回までは失格にならないということで」

 金額も健全な額だしまあ良いだろう。水羽ミモリさんが本当に楽しそうに言う。読心術者の彼女からしたらカードでの真剣勝負自体初体験だから楽しいんだろうな。

 

 純粋な腹の読み合いなら、読心術を使わなくても水羽ミモリさんは上手いんだろう。だから僕達は次の手を打つ。

 札を全部伏せてから僕は眼と腕の操作権もイヴちゃんに返す。僕は頭の中でエレキギターをピロピロ弾き始めた。脳内でのギター演奏に集中して、スウィープ、タッピング、ハンマリングにブリングにと早弾きのために意識を集中。

 これで、何も知らず、情報は何も読み取れないイヴちゃんの完成ってわけ。

 

 金額上限を健全な金額で決めちゃうと、ここでの腹の探り合いが起きないことに気付いて、お互いに苦笑いしながら上限の1,000円までベット。水羽ミモリさんは少し上気した楽しそうな顔で、役が強いか弱いかは全くわからないまま。イヴちゃんはそもそも札が全く判ってないので当然だけど、緊張した様子もなく札を見せ合う。

 水羽ミモリさんは♥と♦の7のワンペア。

「ああ、負けてしまいました。でも、カードで本気の勝負ができたのは初めてです」

 しみじみと、負けたけど嬉しそうに微笑み、ワンペアのカードを撫でる水羽ミモリさん。

 宇沢レイサさんは勝った実感が薄くて反応が薄いイヴちゃんの代わりに、更に肩にぎゅっと抱きついて勝った喜びを表現してくれた。

「……次は、もっとルールを考えて、みんなで一緒に楽しめるカードゲームをしましょう……」

 みんな、で水羽ミモリさんと宇沢レイサさんの顔を見るイヴちゃん。優しい。

 

 水羽ミモリさんに勝って次のアトラクションはお城を模した迷路。案内役は本来は勇美カエデさんらしいが、『勇美カエデ:離席中』と立て看板に紙が貼られていて、その代わりにだろう、百花繚乱の子が困り顔で立っている。

「本来は迷路を突破してから担当者と戦闘なのですが、担当者不在なので迷路の突破だけで大丈夫です」

「得しましたね!」

「……そうだね……」

 仲良く手を繋いだまま迷路に踏み入る2人。

「迷路って言っても、そんなに本格的な感じなんでしょ、うわ?!」

 入口近くから早々に本格的な罠だ。手を繋いだままだったので、フロア半分近い大きな落とし穴に転げ落ちかけた宇沢レイサさんをイヴちゃんが軽々と引き上げる。

「あ、ありがとうございます。びっくりしました!」

「……レイサちゃん、怪我とかない……?思ったより本格的みたい……」

 真っ赤な顔で、それでも嬉しそうにイヴちゃんの右腕に抱きつく宇沢レイサさんと、飛び道具とかの罠が無いか周りを見渡すイヴちゃん。まあ刻命館とかでも罠はコンボで使ったりするし、こんな大きい罠躱したら何かあってもおかしくないもんね。

 

 と、警戒していたが後半はあっさり抜けられた。建物の内部を巨大な戦車が通った跡があって、壁やら罠やらは大体が踏み潰されており、そこを抜けるだけで罠を突破できたのだ。

(……万魔殿のティーガーかな……?)

(罠どころか壁まで壊すのもあり、っていうのがいかにもキヴォトスだね)

「後半はちょっと拍子抜けでしたね」

「……でも、お陰で後ろのチームには追いつかれてないし、悪くない順位になりそう……」

 

 イヴちゃんが言った直後、飛行船のホロ中継が、爆破されて落とされた橋を飛び越えるティーガーを映し出す。僕達の現在地点からだと300mくらい歩いて左折したところだ。

 参加者が誘拐犯役の人達に追いつくと、本来は戦闘があるはずだが、誘拐犯役の人達もさすがに戦車は無理だと判断したらしく、銃火器や刃物を地面に投げ出す。百花繚乱数人が駆け寄っていき、誘拐犯役の人達は連行というか退場していく。演技が堂に入っていて本当にしょんぼりしているように見える。さすが目玉イベント、スタッフの人達も気合が入ってるな。

「他のチームの人はまだお城の中なのかも!チャンスですよ、イヴちゃん!」

 宇沢レイサさんに手を引かれ、一緒に走るイヴちゃん。

「……レイサちゃん、待ってよ……」

 くすくすと笑いながら着いていくイヴちゃん。角を曲がると、落ちた橋に歩行者用の仮設橋が架けられており、ティーガーまで歩いていけた。

「あ、イヴお姉ちゃん、レイサ先輩だ!」

「……イブキちゃん、お姫様役、お疲れ様……。キャンディ食べる……?」

「お疲れ様です!」

 イヴちゃんが手ずから包装紙を剥いてキャンディを丹花イブキさんにあーんさせてあげるのを羨ましそうに見る宇沢レイサさん。

(……ジル、イブキちゃんと陰陽部と先生に許可を得ないといけないけど、アンコールをしてみない……?)

 イヴちゃんに詳細を聞いた僕は小さく笑ってしまった。

「……ね、イブキちゃん、皆が楽しくなるいたずら、やってみない……?」

「いたずらなのに、皆が楽しくなるの?」

「……そう。ちょっとグッズの準備量は増えるかもしれないけど……」

 小さく、本当に小さくいたずらっぽく笑うイヴちゃん。




 評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり、誤字報告本当に有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。

 明日は親族の大きい手術があり、数日お休みになる可能性があります。
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