ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
本編には影響がありません。
先生の説明は、「"推測の段階を出ないよ"」と前置きしたが、大体イヴちゃんと僕の考えているのと同じだった。
「再開発を手掛けている『カイザーコンストラクション』と火器を扱う『カイザーインダストリー』は同じ系列会社。資金移動は難しくないでしょう。もし、先生の言うとおり、子ウサギタウンの再開発での利益を、事前に火器として還元することで公安局へと流していたとしたら」
「公安局はその武器の対価として浮浪者達を追い払えばいいってことか」
「それ、違法じゃないのか?」
「もちろん違法です。万人に奉仕すべき警察学校が、私企業のためだけに働いているわけですから」
「警察と企業が結託して市民を攻撃とか、意味わかんないな、もう」
「……一応、浮浪者は軽犯罪法*1違反ではある……」
「わ、私達も当てはまってる……」
「ややこしくなるからその話は置くとして」
イヴちゃんのささやかな豆知識を一旦脇に置く仕草をする月雪ミヤコさん。
「"もちろん、まだ色々と推測の域だけどね"」
「公安局が本当にそういった取引をしたとは限りません。『銃器の宣伝のために公安局と契約して銃器をリースした』なんて可能性もあります。しかし」
尾刃カンナさんの反応からすると、そんな合法的なものではなさそうだ。
「……というか、私が余計な事を言ったから、しばらくしたらそういう契約がでっち上げられるかも……」
あっ、という顔をする一同。
「ヴァルキューレの記録ってことは、ローカルサーバだよね。外からはハッキングはできないか」
「決定的な証拠を、早めに捕まえないといけないってことか」
考え込むRABBIT小隊の一同。
「ヴァルキューレに潜入すれば、取引記録があるのではないでしょうか」
「あの要塞に忍び込む、か。お前正気か?ヴァルキューレの本館だろ?何百人いると思ってるんだ?」
「ちゃんとした支援があっても難しそう……」
「普通に警察と、後はメディアに流すかかな」
「"警察の問題を、警察に?"」
「……一応、公益通報の窓口はあるけど……」
「ま、普通に考えて握り潰されるよね。公安局長直々の案件だし」
「ヴァルキューレでトラブルがあったとき、それを調査する上位機関……」
「"防衛室、他の行政委員会、シャーレ……"」
「そして、SRTです」
月雪ミヤコさんがきっぱりと答えた。
「私達がやるしかない、か…」
「で、でも、今の私達は学校もないし……」
「"君達がそう信じるなら、私が責任を取るよ。だから、怪我をしないように行ってきて"」
RABBIT小隊の皆が笑う。
「変な人ですね」
代表して月雪ミヤコさんが応える。
「ですが、お陰で決意は固まりました。私達はSRT。キヴォトスにおける困難な犯罪行為に真っ先に投入される特殊部隊」
「秩序維持のため、犯罪者を速やかに制圧し……」
「可能な限り全火力を瞬く間に投下し……」
「気付かれる前に、その場を去る……」
「正規の手続きでは、ヴァルキューレの不法行為は解明できないでしょう。皆さん、作戦の準備を」
RABBIT小隊の決心が固まったところで、イヴちゃんが小さく手を挙げる。
「……ヴァルキューレの事に、トリニティの私は協力できない……」
「だろうな。当てにしてない」
そう言いながら、少し寂しそうな空井サキさん。
「30mm機関砲の火力と判断力は惜しいけどね、くひひ」
「……だから、私の代わりに、傭兵をやっている友達を呼ぶ……。先生、今回は指揮で着いていかないですよね……?」
「"うん、子ウサギ公園で待ってるよ"」
「……内容的に、他の当番生徒を呼べないですし……。RABBIT小隊の皆が戻ってくるまで、自動防衛装置の範囲外に出ないようにしてくださいね……」
「"全然信用されてない?!"」
先生の安全のためだからしょうがない。
スケルチと一緒に適当な廃屋に入る。スケルチの荷物入れから取り出したのはこんなこともあろうかと入れっぱなしにしておいた変装セット一式。翼カバー*2、銃を新しく調達しておいたパーツに交換した
いつも首元に巻いている赤黒いスカーフをゲリラ巻きにして顔全体を隠して、服も着替える。上はSteven Wilsonの
(……名前、どうしよう……)
(うーん、No.9のままでコードネームは良いとして。『
(……はすら、はじめ……。うん、それで行こう……)
スケルチは自動走行で夜中に子ウサギ公園に戻るように設定。ハジメちゃん、もといイヴちゃんは堂々と子ウサギ公園に歩いて行く。
銃を向けて警戒するRABBIT小隊の全員と苦笑いする先生に挨拶するイヴちゃん。
「……御蔵イヴの友人、傭兵の
困惑した顔で頷くRABBIT小隊一同。
「あの、はい、わかりました……」
「いや、どう声を聞いても御蔵なんだが」
「しっ、サキちゃん、駄目だよ……」
「くひひ、よろしくね『ハジメちゃん』。そうだ、他に何か火器を持ってく?30mm機関砲無いから寂しいでしょ?」
思わず頷きそうになるのをぐっと堪えるイヴちゃん。
「……私は御蔵イヴではないから寂しくはない、です……。でも重火器は欲しい……」
「あいにく重機関銃はほとんど売払っちゃって。ヘリのミニガンはいざという時のために置いておかないとだし、7.62x51mm弾を使うこれとかどう?」*6
イヴちゃんはスリングで汎用機関銃を2脚をつけたまま肩にかける。普段500kgの盾を持っているのを考えると、本体が12.5kgのこの銃は羽根のように軽い。山のように弾帯を身体に巻き付けるイヴちゃん。手榴弾も持てるだけ持つ。
「……無いよりは、マシ……」
「くひひ、気が合いそうだね」
夜の闇と共に侵入が決まった。侵入予定時刻は午前1時ちょうど。『クローバー作戦』が始まる。
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