ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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憧れは止められねぇんだ ジャンク屋も浪漫と憧れがあるよね あっ使えそうなパーツ!とか嬉しくなっちゃう

 連邦生徒会のお呼び出しは4月になってからなので、まだ遊んでいられるな~なんて思っていたら、ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部からのお呼び出し。

 イヴちゃんと僕のおめでとうの気持ちをたっぷり込めたお祝いの差し入れを持って出かけたら、新装備をもらった上で満面の笑みの白石ウタハ新エンジニア部長に「手伝ってもらいたいことがあるんだ」と頼まれました。

よっしゃ恩返しせにゃだと思って何も聞かずに、穴が開いてた盾の表面を交換してもらってからてくてく*1着いてやってきたらミレニアム郊外の例の廃墟探索だったジルです。イヴちゃんがまた宇宙猫顔になっている……。

廃墟は特大の厄ネタなので開幕から大丈夫かなって気持ちになってきた。

「例の宇宙戦艦があっただろう。あれを作る前に予算を計上したらセミナーというかユウカに止められてね。『エンジニア部の例年の予算の3割をいきなり追加要求は無理』だってさ」

「……それは……無理では……?」

 エンジニア部が実績の塊で、ミレニアムの運営を技術と人材、実働面から下支えしてる花形部活であるのを差し引いてもかなり無理だと思う、その大規模予算は。

「浪漫の前には些細なことだと思うのだけれどもね。お、いたいた」

 現地、廃墟入口ゲート前。今日は雲量4くらい、雨の気配は無いけど、日光は遮られててやや肌寒い。

廃墟の境界線は判りやすく国境線って感じの頑丈極まり無さそうな鉄柵で遮られているけれども、両方を睥睨している連邦生徒会マーク入の自動迎撃装置は正式な立入許可をもらっている僕達に火を噴くことはない。

オムラのポンコツAIでも無いのだから安全なのはわかっているけども、機関砲の前で駄弁るキヴォトス人の感覚は理解しがたいものの一つだな。

 ミレニアムのジャケットをそれぞれ着崩した子が3人いる。あっ、小鈎ハレさんに猫塚ヒビキさんと豊見コトリさんやんけ。

こっちを見て眩しい笑顔を浮かべる小鈎ハレさん、やや気恥ずかしそうな笑みを浮かべた猫塚ヒビキさん、眼鏡を輝かせて快活な笑みを浮かべる豊見コトリさん。

「紹介するよ。ヴェリタスの小鈎ハレ。こっちが4月からエンジニア部に入部予定の猫塚ヒビキと豊見コトリ、イヴと同い年だね。新顔のマイスターもよろしく」

「ハレだよ。よろしくね。ヴェリタスはミレニアムの非公認ハッカー部ってところかな。あ、エナドリ飲む?」

「ヒビキだよ。あなたが例の実験体?」

「コトリです!解説と説明はお任せください!」

「えっと……御蔵イヴです。よろしくお願いします」

「同い年なんですね!!仲良くしてください!!!」

 お互い名前をさん付で呼ぶとさらっとまとまり、モモトークのアカウント交換しながらエナドリ缶をありがたくいただく。

しかし豊見コトリさんテンション高いなあ。どちらかというとダウナー系の子がイヴちゃん含めて多いから目立つ。

説明がめちゃくちゃ長い子、好きだし多分未来永劫説明を聞いていられる気がするんだけど、イヴちゃんの変なあだ名――実験体の方じゃ無くて白髪の方――とセットで変な化学反応を起こさないか不安なのだよな。豊見コトリさん、スィームルグとかいう鳥系統の神秘ソウルとか持ってたりしないよね……?

しかし、たまにはエナドリもいいね。脳に直接キく感じ。アーイイ。遙かに良いです。

 

 今更ではあるけど、ミレニアム発のあだ名が実験体ちゃんとかにならないか段々不安になってきた。

最悪、何かあったらミレニアムに転校したらいいやって僕は思ってるんだけど、転校早々あだ名が実験体はちょっと嫌だなあ。

 楽しそうなお喋りに水を差すのもなんだけど、そろそろ本題に切り出さないと、比喩じゃなくて日が暮れてしまう。冬の日は短いからね。

「それで、今日は何を……?」

「あれ、ウタハ先輩、説明してなかったの?」

「ごめんごめん。途中だった。今日はミレニアムの廃墟探索と回廊設置を手伝ってほしくてね。仕事は簡単、寄ってくるドローンやオートマタは全部排除して」

「その間にエンジニア部がこのレーダー、センサー、バッテリ、発電モジュール一式をまとめたこのユニットを建築物に埋め込む。私はヴェリタス謹製の制御送信プログラムがちゃんと動いてるか確認と、場合によってはデバッグ担当。本当はリモートでもできるから来たくなかったんだけど……」

 ユニットの見た目はコンクリっぽい灰色に塗られた長方形の箱って感じ。イヴちゃんのこの盾とサイズあんま変わらないね。この中に機械一式が入っててスタンドアローンで動くって事だね。

「エンジニア部も割とインドアだけど、ヴェリタスは本当に外で見かけないから、チーちゃんが外に出ろというのもわかるね……」

「運動をしない弊害というのは凄いですからね!具体的にはカルシウム吸収効率の低下から始まり筋肉量の減少による」

 豊見コトリさんの高速詠唱始まった~~。イヴちゃんは秒で眠気全開になってしまったらしい。えっそんなに……??

(イヴちゃん頑張って意識保って!)

(……ね、寝てない……)

(ほんと~~??)

 高速詠唱を謝りつつも遮って説明を続ける白石ウタハさん。

 廃墟に沸くドローンやオートマタは誰かが放棄した施設をこれまた誰かが勝手に復旧して使用しているのか、生産元不明ではあるものの、技術力の高さが伺えるもの。かつ非常に敵対的で危険なのだそうだ。

「今回の目的はセミナーに依頼されたマッピング及び回廊の設置。後は廃墟そのものの調査、というと結構ふわっとしてるけどね」

「でも、何でエンジニア部に依頼を?C&Cとかに頼めば……」

「確かに……」

「スクラップの回収による情報収集がセミナーのもう一つの目的だからね。正直、イヴが協力してくれなかったらC&Cに話を持って行くつもりだったのだけど」

「私、そんなに強くないですけど……」

 ん?と首を傾げる僕。同じく怪訝そう、かつ大真面目に聞き返す白石ウタハさん。

「あれ、とびきり凶悪な指名手配犯を盾だけで仕留めてヴァルキューレに突き出したのだろう?エンジニア部の盾がしっかり役に立っていてよかったよ」

 宇宙猫顔になるイヴちゃんと今度は僕も。狐坂ワカモさんの事だろうけど、話に尾ひれついてない?

「「「おお~!」」」

「た、盾だけではない、です……。あの人、滅茶苦茶強かったので……」

 何か身に覚えが無いところで期待値が上がっていくの嫌だなあ。変に期待されて幻滅されたりしないか、まあ、この子達はそんなことは無いと思うけども。

(まーでも、相手はロボット市民とかと違って意思とかがないただの機械のはずだから、気軽にぶち壊していこう)

(……う、うん……練習にもなるし、私がやってもいい……?)

(もちろん!)

 やる気を見せてくれるイヴちゃんに諸手を挙げて喜ぶ僕。

 ちょっとずつ実戦経験は積んでってもらいたいからね。大歓迎だ。

 

 正面に敵がいる陸戦を行う部隊は時間のうち90%を戦闘が占めるという。雲霞のごとく沸いてくるロボットやドローンを相手に、この少人数に関わらず4時間で2km近く前進できたのは驚異的かもしれない。

もっとも、敵の統率が余りにお粗末で、ウッドペッカー(30mmMG)ちゃんの大火力の前に鴨撃ちも同然だというのも大きいが。

固定砲台として銃を撃ちまくるイヴちゃんもそろそろ疲れてきたし、常時撃ち続けている訳では無いとはいえ、冷却時間が足りてないから、銃身はもう真っ赤に過熱している。

理想は例の王女(アリスさん)がいる地下までのマッピングなのだが、そもそも場所がわからないのでどうしようもない。

他の面子も戦闘に残骸回収にとてんてこ舞いで休む間もないから、かなり前から顎を出してるし、そろそろ引き時じゃないだろうか。

白石ウタハさんもそう思ったようで、作業中のユニット設置が終わったのを見計らって後退の指示が出された。

 

 後退戦は難しいというが、しんがりのイヴちゃんと白石ウタハさんというか雷ちゃんの戦闘能力は相当なもので、追撃にきた機械群は残骸を晒すだけの結果になった。

流石にその残骸は拾って来られなかったが、廃墟の初訪問としてはまあ上出来だろう。怪我人も特に出なかったし、ああでもウッドペッカーの銃身は交換かな……。

予備銃身は家にあるからいいけど。

全員がゲート外に出て装甲車に乗ってからも、イヴちゃんは念のためキューポラから身を乗り出して警戒していたけど追撃はしてこなさそうだ。

本当に今のところかもしれないけど、あいつら廃墟の外には出てこないのだな。

 お腹一杯、という顔の白石ウタハさんが溜息と一緒に感想を呟く。

「やれやれ。疲れたね。次は敵戦力の情報が事前に得られるから、もう少し楽になるはず。まあ、ユニットを起動してレーダーを動かしたら逆探知で破壊されるかもしれないから、使いどころは考えないといけないけどね」

「……雷ちゃん、すごいですね……」

 ゲームではイマイチカタログスペック通りの強さがわからなかったというか、対人より対機械向けなのだろうか。

運用方法上、神秘を載せにくいからピンと来なかったのかな?

「ふふ、そうだろう。イヴも流石、素晴らしい火力だった。今日は助かったよ」

「……えへへ……」

 小さくはにかむイヴちゃん。

(イヴちゃん、よく頑張れたね)

(……ありがと、ジル……)

 固定砲台としてのイヴちゃんももちろんツヨイというか、恥ずかしくない戦果を挙げられたんじゃないかな。

イヴちゃんは別に普段からバチバチ殴り合ってるわけじゃないから、初心者向けの場数を踏める丁度良い仕事だったなって感じではある。

しかしこの単調な攻勢は廃墟の奥まで行っても同じなのだろうか。装甲車の中でああでもないこうでもないと騒いでいる次期1年生とヴェリタスの解析に期待だね。

なるべく色んな部位が見られるよう、遭遇する機械類の違う場所をぶち壊すようにイヴちゃんに頼んでて、イヴちゃんは苦心しながら何とかリクエストに応えられたように見えてたけど。実際集めた戦果はどんなもんだろう。

見た目だけだと生産元が違うか同じかも素人目にはわからない。色合いは普通に灰色鉛色のが多くて真っ白装甲のは見当たらないので、少なくともまだ預言者堕ちはしてなさそうだが。

廃墟にはお宝が山ほど転がってるらしいし、預言者くんもいるしで興味は尽きないけどね。

(帰ったら美味しいもの食べて寝ようね)

(……そうだね。ていうか、もう眠たくなってきちゃった……)

(もう何もないだろうし、僕が代わるから、寝てていいよ)

 なおミレニアム校舎に戻ったら今日の実戦で使うタイミングがなかった新装備実験で射爆場に直行する模様。次回でええやんってなっちゃった。

 まあ、新しい玩具は最高だし、速攻で振り回したくなる気持ちもわかるけど。

*1
実際はピラーニャ装甲車っぽい8x8の車に乗った




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 紙での小説の書き方に基づいて書き続けていたロートルとしての改行等を改めつつ、同時に加筆修正を行いました。話の本筋には変更ありません。2025.01.20
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