ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
RABBIT小隊、生活安全局の2人、イヴちゃんの臨時混成チームはあっさりカイザーPMCを制圧し、ひとまずは子ウサギ公園に身を隠すことになった。
今日こそ本当に敵が押し寄せて来かねないので、かわりばんこに、温かいお湯で浸したタオルで身体を拭いて、頭だけを洗う各自。尾刃カンナさんの世話は先生が申出たが、自分で出来るということで固辞していた。
「先生も巻き込まれて拉致されていたのですね。カンナ局長がいなければ危なかったと」
「あの狂犬がか。にわかには信じられないな」
「とりあえず怪我の消毒もしたし、テントで寝かせてるけど、勝手に起きるんじゃない?公安局長だし、多分大丈夫」
「今のうちに、情報共有、しておく……?」
霞沢ミユさんが月雪ミヤコさんを見る。
「"現状の確認は必要だね。アロナ……の声は皆は聞こえないから、私がまとめるけど"」
先生が
・D.U.は戒厳令発動中、通信・物流・移動が禁止、行政もシャットダウン。
・D.U.外部に通じる全ての通信制限のため他学園自治区からの応援は困難。室長達の行方も不明。
・戒厳令の取消には行政制御権の奪還が必要。しかし、行政官は不信任決議可決により権限喪失。
・解消には不信任決議案同意の6人の室長が撤回するか、再信任可決をしないといけない。
「……メビウスの帯、ですね……」
「"うん、問題が堂々巡りしてる。カイザー、敵ながら見事なタイミングでやってくれたよ"」
「つまり、今の連邦生徒会は何の役にも立たないって事だね。くひひ、いつも通りじゃん」
「全くだ。あいつらが役に立った事なんてない」
「一企業に行政権限を奪われるなんて……SRTが維持されていれば最悪の事態は避けられたはずです」
「サンクトゥムタワーはカイザーに掌握されたまま……どうすれば……?」
「"ちょっと待ってね……シャーレの地下にある『クラフトチェンバー』をこっちが取り戻せれば、何とかなるみたい。リンもシャーレ内部に捕まってるみたい"」
「つまり、カイザーPMCに掌握されているシャーレを奪還するのですね」
「ここにいる私達だけで、やるの……?」
「……スケルチでD.U.を強行脱出して、誰か連れてくることもできるかも……」
イヴちゃんのアイデアに先生は首を横に振る。
「"イヴの危険が大きすぎるよ"」
「ヘリ*1もそんなにスピードが出る機体じゃないしな。カイザーPMCの航空機に捕まるか、MANPADSでやられかねない。ま、ちょうどいいな。いつかシャーレをぶっ飛ばしたいと思ってたところだ」
空井サキさんがけらけら笑う。
「わかりました。本官も頑張ります!」
「でも、そう簡単に行くかな。相手はキヴォトス屈指の大企業、カイザーだよ?先生が脱出したことはわかってるだろうから、私達が来るのも想定してるだろうし」
中務キリノさんと合歓垣フブキさんが難しい顔をする。
「私達だけで、本当に行政官を助けて、シャーレを奪還できるのかな……」
「ミユ、出来るか出来ないかでは無くて、やるしかないんです」
「そうです!キヴォトスの平和が、私達の手に掛かってるんです!」
イヴちゃんが小さく手を上げる。
「……1つ、思いついたことがあります……。ヘリとバイクで行くなら、ヘリには無理して6人くらいしか乗れませんから、残りの2人はスケルチに乗らないといけませんよね……。カイザーPMCのビルを襲います……」
「"イヴ、それは……"」
「……大丈夫です。襲うと言っても、警備を撃ち倒してから、外から最上階に
「"――経路を見てみるね。ルートにも無理がないなら、撹乱効果は大きいと思う"」
先生がシッテムの箱を睨んで何事かを呟いている。
結局、カイザーPMCビルはルートが離れすぎていて難しいけれども、手近なカイザーの建物を襲撃できそうなら、という話に落ち着いた。
「"よし、RABBIT小隊、キリノ、フブキ、イヴ……始めようか。ミヤコ、作戦名をお願い出来る?"」
「そ、そうですね……ではこれより、シャーレ奪還の『パセリ作戦』を――」
「いや、なんでパセリなの?もっとカッコいいのないの?」
「えっ、その……ウサギが好きな食べ物なので……」
「じゃあ、ニンジン作戦なんてどうでしょう?」
「それはこの間使ってしまって……」
「……『バロウ作戦』なんてどう……?ウサギが穴を掘るのを、burrowって言うんだって……」
月雪ミヤコさんはホッとした顔で提案者のイヴちゃんを見る。
「『
「"よし、皆、行こう!"」
当初はヘリとバイクでシャーレを直接襲撃する予定だったが、ドローンによる事前偵察で危険度が高すぎることから、地上を歩いて移動する事になった。スケルチは自動走行の電動静音モードで、皆の荷物や弾薬を積んで着いてきている。
「バリケード、PMC哨兵に軽戦車まで……厄介だな」
「もう少し支援があれば、突破できると思うのですが」
考え込む月雪ミヤコさん。後方から大勢の気配。振り返るとヴァルキューレ公安局の生徒達が大挙してやってきていた。
「連絡を受けて参りました!先生!私達も力になります!」
「公安局の皆さん……!」
「あれ~?いつもなら絶対に自分からは動かないのに……」
感涙しそうな中務キリノさんと皮肉気な合歓垣フブキさん。
「偶然子ウサギタウンの近くで局長と先生の姿を目撃しまして!我々も一助にならせてください!」
「これなら、行けそうですね。先生、指揮をお願いします」
月雪ミヤコさんの言葉に、先生は笑顔で小さくかぶりを振った。
「"指揮はミヤコがお願い。私はそれを補助するから"」
「はい、ありがとうございます。では、皆さん、今からD.U.の戒厳令を解除し、カイザーの陰謀を阻止しシャーレを奪還する『
あっさりと複数の防衛線を突破し、シャーレに一番近かったカイザーPMCの支所ビルをイヴちゃん単独でスケルチに乗り、銃撃に向かう。
「"イヴ、5分以内で戻ってきて!"」
「……わかりました……」
(『バロウ作戦』の支作戦、イヴちゃんなら何て名前にする?)
(……『ストリートスイーパー』作戦……)
(なるほど、落ちてるゴミを掃除するんだからぴったりだね)
銃撃音に負けない、V8のドロドロとした爆音をスケルチが奏でる。
「動くな、ぐあっ!?」
誰何してきた指揮官含め、8階建支所ビルを守っている哨兵数人をあっさり撃ち倒して、イヴちゃんは盾をスケルチから外す。
(……本社ビルじゃなくて残念だけど、応援の妨害もできるかな……)
(そうだね!)
爆音を上げて
(……すっきりした……)
(今度はPMC本社ビルかカイザーグループ総本社をやりたいとこだね!)
イヴちゃんの羽根がピコピコ動く。凄く機嫌がいい時の仕草だ。
「……今日は時間が無くて良かったですね。今度やるときはもっと酷い目に遭わせてあげます……」
倒れているカイザーPMCの将兵に言い捨て、スケルチに盾を戻してシャーレに戻る。1階正面の確保は無事終わったようだ。
「"イヴ、戻った?リンの居場所もわかったよ。行政官から連絡があった"」
3階の今は使われてない部屋に監禁されているらしい。
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