ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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1677万色に光るロッカー もしくは開けろ!デトロイト市警だ!!ってしたいよね 怖がらせたくないからしないけど

 いやー毎日毎日忙しいね。新学期が始まったからかな。まあ僕はイヴちゃんの脳内でだらだらしてるだけなんですけど。ハッピー無産ライフ、ジルです。

 今日は授業が午前終わりなので、放課後の宇沢レイサさんグループ定例集会inファミレスの予定だったのだけれども、朝吹ソフノ(黒髪ポニテ)さんは高等部の陸上部入りたて最初の週でちょっと抜けにくく、宇沢レイサさんは欠席ということでお流れになってしまった。

報野モユル(茶髪おっとり)さんと2人でもよかったのだけれども、逆に来られない2人に配慮した感じの空気になり、じゃあ予定前倒しにしてミレニアム行くか、と別れ際、彼女にしては極めて珍しい、というか、記憶する限り初めて見るレベルの真面目な顔。

「最近、レイサちゃんの顔色悪くない?お昼も食べたらすぐ寝てるし」

「……うん、心配……」

「自警団絡みなんだろうけどね~。何だっけ?連邦生徒会長がダッシュして?ってやつ?」

 こくこく頷くイヴちゃん。ちょー可愛い。

 失踪と疾走をかけてるのかな???

「……ちゃんと寝るように……言おう……」

「うん、明日も言うけどさ、後でまたモモトークしとくわ。じゃあねイヴちゃん」

「……うん……またあした」

 ばいばいと手を振って別れる。

 宇沢レイサさん、治安悪化に伴ってなんだろうけど、明らか3月頃と様子が違うのだよな。

クラスは同じになったしお昼も一緒なんだけど、休み時間も授業中もうつらうつらしてることが多いし。

連邦生徒会の機能は回復したけど、停止中の政策諸々もそうだし、たいほったーの停止も含めて、色んな政策の歪みが出てるのかもしれない。

ちょっと何とかしないとなあ。

 イヴちゃんは歩きながら内心首を捻っている。

(……何か、出来る事あるかな……)

(うーん……あっ、こういうのはどうかな)

 かくかくしかじか、うんぬん。

(……いいかも)

 イヴちゃんのお墨付きもらったし、今晩にでも早速やってみるか。

 

 鉄道に乗って昼過ぎにミレニアム校舎に到着。

 年度替わり後にミレニアムの高等部に来るのは初めてだ。何だか新入生や編入生の華やいだはしゃいだ感じがあって楽しい。

「待ってよお姉ちゃん!」

「ミドリ遅いよー!お昼食べ損ねたんだから急がないと!全部売り切れちゃう!」

 角を曲がっててってってっと走ってくる猫耳の2人組、あれ、前見てなくない?くぉおーぶつかる!

「あっお姉ちゃん前!」

「えっ?!ぶぎゃっ?!」

 避けて他の人にぶつかるのを嫌ったイヴちゃんはその場で受け止める事を選んだ。

盾じゃなくて右手でちゃんとガードするイヴちゃん優しい。

全力疾走の推定才羽モモイさんの体当たりを受けて体幹揺るがなかったの凄いね。

 あ、やっぱり才羽姉妹っぽいな。いや、凄い声したけど大丈夫?

「お姉ちゃん?!って、ごめんなさい!あの……トリニティの制服?もしかして……」

 おろおろしていた才羽ミドリさんの目が、珍しいものを見たという感じで一瞬煌めき、立ったままピヨっていた才羽モモイさんが復活した。

「痛たた……ごめんなさ、あっ、えっ、スパイ!?……じゃない、この人、例の実験体の人だ!!」

 猫耳猫尻尾が驚きを表すようにピンと立っている。ビシーッと人差し指でイヴちゃんを指差す才羽モモイさん。

 いやイヴちゃんどんだけ有名人やねん。笑っちゃうな。

あとあんまり人を指さすのはよくないよ。あんまりにあんまりな姉の行動に興奮より心配が勝ったのだろう、あわあわする才羽ミドリさんも可愛い。

(……そんなに有名、なのかな……?)

(初対面の子が一発でわかるくらいだから、相当だろうねえ)

 気軽にイヴちゃんの右手を掴む才羽モモイさん。距離近いな〜。

推定ゲーム開発部代表の才羽ミドリさんは慌てっぱなしだ。

姉を引き剥がそうと引っ張るけど、抵抗した才羽モモイさんが逆にイヴちゃんの右手にしがみつくので完全に逆効果。

イヴちゃんが2人分の体重でビクともしないので気付いてないっぽい。

 きらきらと目を輝かせて、イヴちゃんの目を覗き込む才羽モモイさんは、完全に楽しい玩具を見つけた猫って感じ。

「ねえねえ、実験体さん!私達の部に来てくれない?」

「ちょっと!お姉ちゃん、失礼だよ!」

「でもミドリもあの翼の実物見てみたい~って言ってたじゃない!」

「そ、そうだけど……」

 やっとイヴちゃんが反応した。てっきり静観してたんだと思ってたけど、そうじゃなくて、2人の矢継ぎ早の発言でフリーズしてただけだったみたいだ。

「……あ……あの、はじめまして。じ、実験体じゃなくて、御蔵イヴ、です……」

「イヴ、よろしく!私は才羽モモイ!こっちは妹のミドリ!さあさ、今すぐ来て!」

 全力で手を引かれそうになるけど、イヴちゃんの方が力が強いので全然動かない。

仮に動いたとしても今度は盾の重量も牽引しないといけないけど。

「ん?!うぬぬ……?!えっ動かない!動いてよー!今動かないと何の意味もないんだよ?!」

 姉のスゴイ•シツレイに蒼白な才羽ミドリさんが引き剥がしを試みて省略。ペコペコ頭を下げて大変そう。

「わー!イヴちゃん、ごめんなさい!」

(どうする?)

(……こんなに頼まれたら、しょうがないかなって……)

 受けるつもりらしい。別に僕は異存はない。

「……あ、あの、エンジニア部さんに、行くので……。用事、終わってからなら……」

「やったー!じゃあ終わったらすぐね!部室に来て!」

 パッと両手を離して、諸手を挙げて喜ぶ才羽モモイさんと、いきなり手を離した姉を引きずり倒さないよう、こっちも手を離して尻もちをつきそうになった才羽ミドリさんを、イヴちゃんがパッと右手を伸ばして、左手を取って助ける。

「えっ、うわっ、あっ、ありがとうございます……」

 小さく顔を赤らめる才羽ミドリさんが、姉の言葉にツッコミを入れる。

「いや、お姉ちゃん、駄目だよ一人で来てもらったら……」

 部外者立入禁止のエリアも沢山あるだろうしな。

「あっそっか!じゃあ迎えに行くから!何分後?」

 ふんすふんすと鼻息が荒い才羽モモイさんを今度こそ羽交い締めにする才羽ミドリさん。

「姉が本当にごめんなさい……。モモトークのアカウント、教えてくれませんか?終わって連絡をくださったら迎えにあがるので……」

 用件がまとまりそうになったからか、開いてる教室の時計に目をやった才羽モモイさんが「あ!」と大声を上げて飛び上がり、驚いた妹の手をすり抜けて走り出した。

「あっ大変!パン売り切れちゃう!先行ってるから!」

「ちょ、お姉ちゃん?!ご、ごめんなさい!またモモトークで連絡します!」

 ペコリと頭を下げてから、姉を追いかけて走り出す妹。あ、他の子にぶつかりそうになって怒られてる。

 凄いな。嵐のようだった。

(……凄かったね……)

(本当にね。夜遅くならないようにだけ気をつけようね)

(……うん、レイサさん、心配だし……)

 2人とも小動物っぽくて可愛いね。って言っても、イヴちゃんと身長ほば一緒だし、猫耳の分、イヴちゃんの方が小さいまであるけど。

 

 エンジニア部でも新入部員の大歓迎に遭った。

 前回の廃墟探索の時にはまだ入っていなかった子も大勢いたらしく、実際にイヴちゃんの意思に反応して動く翼にみんな大興奮。エンジニア部、やっぱり部員多いなあ。賑やかで良い事。

 あんまりの騒ぎに、顔を見に来てくれた白石ウタハ部長も苦笑い。

「すまないね、騒がしくて」

「いえ……。賑やかで、いいなって……。皆さん、楽しそうですし……」

 苦笑いして頷く白石ウタハさん。

「この間の廃墟探索の時も、シャーレとやらに納めた新機材の時もありがとう。手早く顧客の要望をまとめてもらえたそうで、ユウカも喜んでたよ。自爆機能は残念ながら現地で改修されてしまったらしいが」

 本気で悔しそうな表情だけど、自爆機能はちょっと……。

 あんなん絶対悪戯心で悪気ゼロで押す子おるて。

顧客の要望は想定して仮!って感じで、早瀬ユウカさんと相談しつつ、先生の意見聞かずに纏めちゃったから、後で何か追加の要望とかあるかも。

 それと、とこれもちょっと残念そうな顔の白石ウタハさん。

「そうそう、例の大蛇の装甲板だけど、我々で調べてる噂が新素材開発部に伝わったらしくてね。持って行かれてしまった。廃墟の残骸も調査しないといけないけど、比較検証もしたいのだけどもね」

「……それは、残念……です」

「エンジニア部はエンジニア部でやることが目白押しだから、あれもこれも手をつけて中々進まないのは申し訳ないがね。そうそう、前に言ってた宇宙戦艦の予算が出てね。早速主砲から作っているんだ」

 速射砲じみた速度で話題が展開する。

 宇宙戦艦、セミナー的にもオッケーなんだね。予算つけちゃったんだ……。

「……エンジンとか、じゃなくて……?」

「まずはロマンを形にしないといけないと意見がまとまってね」

「……なるほど。ロマン、大事……」

 うんうんわかるなあ。まあ予算どんだけ使うかによるけどさあ。

あっイヴちゃんと白石ウタハさんがっちり握手してる。楽しそう。

「そうそう、ロマンといえば。新装備だけど使ってみたかい?」

 首を横に振るイヴちゃん。僕も使ってないからなあ。たいほったー無くなって、夜のお仕事無くなっちゃったし。

 残念そうに続ける白石ウタハさん。

「使ったら是非データをいただけるかな。そうだ。追加の装備もできたから早速装備していくといい。手が空いてる部員はイヴの翼に装備をつける手伝いをしてくれないかな?」

 白石ウタハ部長の一声で、わらわらと作業を放り出してまた人だかりができた。

楽しそうで何よりだし、慕われているようでほっこりするね。

新しいこっちの装備はもうちょっと使い勝手いいかな。そうでもないかも……。

実戦で使った方が良いけど、翼の装備を使わないといけないレベルの実戦なんか起きない方が良いっていう、難しいところだね。

 

 今回の新装備は本当に地味なものなので――実戦でお披露目がいつになるかわからないからアレだけど――前装備したモビーディックワイヤーと連動もできるショックバトンが前回の新装備。

今回装備するのは質量は持ってない残像発生装置ことホログラム発生装置。

生徒が気合(多分神秘を込めるってことなんだろう)を注ぎ込むことによって映像にリアリティが出るらしく、翼に付けてるときまたは手持ちの時と、地面に置いて作動させた時のリアリティが明らかに違った。

神秘isなに……?どういうこと……?

流石に本物と全く同じ!とまではいかないけど、一瞬動揺を誘ったりもできるだろう。

ついでにスピーカーもつけてもらったので、1回だけならデコイに使ったりできるかも。

 

 新装備のテストを終えた連絡直後、意気揚々と走ってきたのか、爆速でイヴちゃんを迎えに来た才羽モモイさんと、申し訳なさそうにしながらも、同じようにイヴちゃんとその翼に興味津々な才羽ミドリさんに先導され、彼女達の部室に案内された。

 才羽モモイさんが勿体ぶって古くて小さいドアを開けた。

「ゲーム開発部へようこそ!」

「モモイ、ミドリ、お帰り」

 ゲーム雑誌や攻略本、プラグラミングやグラフィックの書籍と、多種多様なゲームハードにコントローラ、複数台のラップトップパソコン。ゲーム関連っぽいグッズもてんこもり。お菓子やジュース、家電類もあって圧が凄い。どの棚も天井一杯まであって、壁が見えない。

 ものがとんでもなく多く、雑然とはしているけど、床は綺麗に片付いた部室。

 中で出迎えてくれたのは、滅茶苦茶見覚えのある青髪ツインテール、太ももの優しいお姉さん先輩こと早瀬ユウカさんがモニタから振り返り声をかけてくれた。

「……あれ……ユウカさん……?」

「えっ、イヴ?!」

 割とくつろいだ感じでソファに座り、ポッキー的なお菓子を食べながらゲームに興じる早瀬ユウカさんがいた。

流石にだらけているレベルでは無いけど、ジャケットと靴も脱いでるし、明らかにオフですよ~って感じ。

仕事終わってるか休憩時間なんだろうし、別にサボってる訳でも無いだろうから慌てなくてもいいのに、わたわたしている。

コントローラには『早瀬』と貼ってあるから私物っぽい。

「あっ、違うのよこれは!ゲーム開発部は活動実績が去年発表したゲームだけだったから注意をね!?」

 ぶー、って感じで才羽モモイさんがツッコミを入れた。

「えー、ユウカ昨日もゲームしてただけじゃん」

「まあ遊びに来てくれるのは歓迎ではあるけど……」

「ほ、ほんとよ?!」

 お姉さん顔を取り繕おうとする早瀬ユウカさんの意外な一面にくすくす笑うイヴちゃん。

「……ユウカさんもゲーム好きなんですね……。同じ……」

「ふ、ふふ。まあね。セミナー業務の引継も終わったし、新作をやりたくて」

「あっ、ユウカ今日もそれやってるの?!対戦しよー!」

「はいはい、いいわよ」

 楽しく賑やかなやりとりとは別の静かな気配。

 入口入ってすぐのロッカーから視線と息遣いを感じる。

多分イヴちゃんの足音を感知して引っ込んだのかな?誰もロッカーの中に触れないまま。

(……ロッカーの中、誰かいる……?)

(あ、ゲーム開発部の部員の子に、有名なゲームプレイヤーがいるらしいから、多分その子。人見知りな子らしいし、紹介してくれるまで放っておこう)

(……ええ……。ま、まあ、ジルが大丈夫っていうなら、大丈夫、かな……?)

 いや、僕は知ってるから大丈夫だけど、確かにちょっと、誰も何も言わないシチュがホラーじみてるな。

 

 才羽ミドリさんはスケッチブックを取り出し、イヴちゃんの背中から翼にかけてスケッチし始めた。

「う、ううん……欲を言えば脱いで欲しいですけど……」

「……シャツの中を見るだけなら、いいよ……?」

「えっ、いいんです?!」

 嬉しそうな才羽ミドリさん。早瀬ユウカさんと才羽モモイさんは対戦に夢中。

  エッッッッ!?!?って思ったけど同性だしええんか……ええんかな……?

まあでも、普通に体育の授業前に着替えとかしてるもんね。

「で、では失礼して……あっいいにおい」

 うん……??制汗剤の匂いかな……?

「いえ、おほん……これはあくまでゲームのための取材なので……」

「……あ、あの……ところで、ロッカーの中の方は……?」

 どうしても気になっちゃったっぽいイヴちゃんがおずおず尋ね、早瀬ユウカさんが咎める。

「えっ、ちょっとモモイもミドリも紹介してなかっ、あっ!?ちょっと!!今のずるくない?!」

 早瀬ユウカさんのキャラが画面内でぶっ倒れる。キャラ挑発動作を重ねる才羽モモイさん。

「ずるくないです~。コマンドです~。ロッカーの中にはねー、当ゲーム開発部部長の花岡ユズがいまーす。えいっ」

「あーっ!うっそ!何いまの!?」

 しゃかしゃかー、みたいな動作で第2ラウンド初手から体力思い切り削られて慌てる早瀬ユウカさん。

 才羽ミドリさんがペンを走らせながら呟く。

「ユズちゃんはちょっと、まだ好感度が足りなくて出てきてくれないかも……」

「いや、そんなシステムなの?あっ、あー……」 

「ぶしつに かえるんだな まってる しごとも あるだろう」

「今日の分はちゃんと終わらせてきたわよ。あー駄目。全然駄目だわ。練習時間取らないといけないかも。あ、イヴ、やる?ミドリ、いいわよね」

 コントローラを差し出して優しく微笑む早瀬ユウカさんから、嬉しげにコントローラを受け取る。

「……はい……初めてですけど、がんばります!」

「体傾けたりしないなら大丈夫です」

 不遜に笑う才羽モモイさん。

「ふっふっふ、私、接待プレイとかしないから!」

「ま、今の見てたらわかるわよね」

 呆れつつも笑い、次のスナック菓子の袋を開ける早瀬ユウカさん。オフの姿尊いなあ……才羽モモイさんも可愛いけど。

そしてキャラクタが動く度に右に左に動くイヴちゃん愛らしすぎる。格ゲーなんだけど。

あと、体傾けないでって言いたいのを我慢してるっぽい才羽ミドリさん優しい。

 

 スケッチがいい感じに一段落した才羽ミドリさんが全員分のご飯を買ってきてくれたので、終電近くまでゲーム開発部+早瀬ユウカさん、イヴさんの面子で楽しんだ。

 皆はほか弁っぽい唐揚げ弁当。イヴちゃんは事前に「魚が好き」と言っておいたお陰か焼魚弁当。

 花岡ユズさんは弁当を受け取る時も手すら出てこなくて何もわからんかった……。




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 紙での小説の書き方に基づいて書き続けていたロートルとしての改行等を改めつつ、同時に加筆修正を行いました。話の本筋には変更ありません。2025.01.23
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