ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
真剣な表情をしてるイヴちゃんも可愛いよ~~~ってお店の窓ガラスに映ってるイヴちゃんを見てきゅんきゅんしてるジルです。いやほんまに可愛いな。
まあ今集まってる面子みんなめっちゃ顔が良いんで顔の良さ密度がすげーんだけど。難しい話ではあるけど、おえらさん的な人は守月スズミさんしかいないからイヴちゃんの経験も兼ねて頑張ってもらおう。
がんばえー!イヴちゃん!
守月スズミさんに真剣に語りかけるイヴちゃん。
「……自警団を、トリニティ公認部活にしたい……。少なくとも、補助金はもらえるようにしたいです……」
「どうしてですか?」
これまた真摯に身を乗り出して聞く姿勢を見せてくれる守月スズミさん。
「……レイサさんのような、真面目に活動している人の負担が大きすぎるので……。お金があれば、偵察用のドローンとか、GPSで自警団と正義実現委員会のパトロール範囲棲み分けとかをアプリでできます……。……後は、賛成する人だけでもいいので、夜とかのパトロール、シフトが組めたらいいなって……」
「なるほど、確かにレイサさんは連邦生徒会長失踪後にとても頑張ってくださっていました」
「えへへ」
「……でも、寝不足でふらふらするくらいなのは、良くないです……」
頷いてから、守月スズミさんは眉を寄せて答える。
「確かに。しかし、イヴさんはご存知かわかりませんが、自警団といっても明確に名簿があったり、私が全員を把握しているわけではないのです」
それと、と、言い辛そうな表情をして、一瞬間を置く。
「トリニティ自警団は伝統的に、部活化、というよりは、中枢と距離を置いてきました。これは、派閥間の抗争により、行動制限をなされることへの警戒からです」
「"予算をつけてもらうと、動きにくくなるかな?"」
イヴちゃんも同じく眉を寄せた。
先生の穏やかな問い、ううん、と呻いて目を閉じ、考える守月スズミさん。
「現状として、正義実現委員会の指揮を受ける、あるいは協力するという形でティーパーティーの間接的な統制を受けているのは事実ではあります。あくまで、それ自身の判断は自警団がしていますが。そういう意味では、『特に変わらない』というのが答えでは無いかと思います」
「……自警団として、駄目、というのであれば、もちろん無理にとは言えません。でも、今の治安悪化は……」
ちらりとイヴちゃんが宇沢レイサさんに目を向ける。
宇沢レイサさんはイヴちゃんと守月スズミさんを交互に複数回見て、これも言い辛そうに口を開いた。
「スズミさんはもちろん把握してると思いますが、私が中等部から活動を初めて以来、見たことがないくらいの治安の悪さだとは、その、思うんですが……」
自身なさげに語尾が小さくなるのを拾って、守月スズミさんは頷く。
ふぅー、と深く息をついて、守月スズミさんはスマフォを取り出す。
「自警団の、私が把握している範囲に関しては聞いてみましょう。内容は自警団の部活化もしくは補助金受領、組織化というところですね。条件闘争をしてみるのも、悪くはないでしょう。折合いがつかなければ、諦めるしかありませんが」
モモトークでぽちぽちと把握しているであろう人達――自警団のトークグループとかがあるのかな?――してくれる守月スズミさん。
「即座に回答は難しいでしょうが、あまり長く時間をかけてもしょうがないでしょう。1時間程度でとりあえず回答を待って、あとの異論は個別に聞く形にします。どちらにせよ参加も離脱も把握してないのですから」
「"私を呼んだのは、部活化とその条件に関して交渉を手伝ってほしいってことかな?"」
先生がにこやかに問いかけ、イヴちゃんは頷く。
まあ、事務室に行って話するだけではあるけど、大人がついててくれると助かる。事務室、親身な人というかロボだけど、親身なロボットの人とそうでないロボットの人の差激しいからな。
守月スズミさんも顔がほころんだ。
「先生にお手伝いしていただいた上で、自警団の自立性を保てる条件が飲めるなら、良いのではと思います」
「"私にできることなら喜んでやるよ。スズミもレイサも大変ならなおさらね。そうだ、せっかくだから、トリニティの生徒会、ティーパーティーに声かけてみようか"」
「「「えっ」」」
部活の立ち上げは別にティーパーティーを煩わせるような案件じゃないんだけどな。よっぽど政治的な話なら……いやこれ結構政治的な話か?
(あっ、今気付いたけど、正義実現委員会にも言っておいた方がいいかも。羽川ハスミさんとかに連絡しておいて)
(……うん、わかった……)
先生もどこかにぽちぽち連絡を送っている。今日の今日は無理かもだけど話が進むといいなあ。
シャーレの仕事の話を含めて先生に対する質問、逆に先生から自警団活動についての情報交換的な楽しい雑談に熱中してる間にあっという間に時間が経って、守月スズミさんが答えが返ってきた分をさらっと纏めてくれた。
「部活化については賛成4割、反対3割、棄権1割、他無回答。
補助金については賛成7割、反対2割、他無回答。
組織化については賛成8割、棄権2割。」
「部活化は意見が分かれましたね!」
「ちなみに、レイサさんは……?」
「私は別に部活化しても良いと思いますよ。自警団が自警団なのは変わりませんし、活動がより良くなるならいいと思います!」
にこやかな宇沢レイサさんと、ちょっと歯に物が挟まったかのような守月スズミさん。
「先ほど言いましたけど、心理的には熱烈に賛成とは言い難いのですよね。ティーパーティーのひも付きになるのは心理的な抵抗感があります。が、現状と自警団員の負担を考えると、消極的に賛成するしかないかと思って、賛成票を投じました。団員がいなくなるなら、それもまた意味が無いかなと」
自警団活動の負担に耐えかねて離脱する団員が出てくる可能性も、もちろんあるんだよなあ。
ティーパーティーのお政治に巻き込まれて身動き全然取れなくなるのは確かに困るけど。
答えたくないならいいけど、と前置きして先生が問う。
「"正義実現委員会とは違う組織として活動している自負もある、とか?"」
小首を傾げた守月スズミさんが言葉を選びつつという様子で答える。
「正義実現委員会と別に不仲なわけでは無いですし、お互いわだかまりがあるわけではないのです。が、あちらが手の届かないところや、方針が違うところを我々が受け持っているという現状があります」
うんうん、と頷く3人。
「シャーレに嫌味を言いたいわけでは無く、寧ろ連邦生徒会の惨状に苦言を呈したいところではありますが、現状では紐、あるいは鈴は受け入れざるを得ないかな、と。もちろん、今までと同様、参加者全員に『自警団活動のために組織化や補助金を受け入れろ』というつもりはありません。自警団自体、統一した方針を持つ、というより、しっかりした組織の体をあえて避けている性質があるので。ティーパーティーあるいは正義実現委員会との協同についても打ち合わせをしたうえで納得して動くように盛り込み、今まで同様『協力を要請する』のが現実的なところでしょうか」
「"その線で話をしにいこうか。ティーパーティー、ナギサが会ってくれるって。スズミに代表をお願い出来る?"」
「凄く嫌ですけど、わかりました」
「……ごめんなさい、迷惑をおかけして……」
「いえ、自警団の伝統的には思うところもありますが、自警団、トリニティ、ひいてはキヴォトスを取り巻く治安悪化が余りに酷すぎるのは確かです。手をこまねいていたと言われても仕方がありません」
「私がもっと頑張れれば……」
「……ううん、レイサさんは頑張ったし、スズミさんも出来る事はしていたと思います。……ね……?」
きゅっと宇沢レイサさんの手を握るイヴちゃん。
ほあああ~~~脳が、脳が!でも尊い!
再びやってきました、ティーパーティー本部。
どうぞこちらに、と先導し案内してくれたティーパーティー委員ちゃん。
豪勢な扉を開けて案内してくれると、今日は桐藤ナギサさんしかいなかった。
優雅に一礼する桐藤ナギサさんとお付きの子。
「初めまして、シャーレの先生、宇沢レイサさん。スズミさんと御蔵さん、こんにちは。ティーパーティーのホスト代理、桐藤ナギサです」
「"初めまして。よろしくね、ナギサ"」
「よっ、よろしくお願いします!」
「ご無沙汰しています、ナギサさん」
「……こんにちは……」
先生、守月スズミさん、イヴちゃん、宇沢レイサさんの順で桐藤ナギサさんに近い席に座る。
美味しそうなスコーンも出てくるけどイヴちゃんも宇沢レイサさんもカチカチ……いや宇沢レイサさんのスコーンにクリームとジャム塗ってあげたりしてるからイヴちゃんはちょっと慣れてきたのかな。
先生は話がこじれない限りは見守るつもりのようだ。
イヴちゃんは話を聞きながら、ガチガチの宇沢レイサさんのために小声でおやつの方の説明とかをしている。あれっ?本題じゃ無くて?
目が笑ってない桐藤ナギサさんと、これまた目が笑ってない守月スズミさんが表面上は和やかに話している。
「用件は先ほどのとおりですね?」
「はい。キヴォトス全体の治安悪化に伴い、不良生徒が特にゲヘナ方面から流れてきています」
「それは、印象としてですか?」
「いえ、尋問の結果ですね。先日、正義実現委員会と協同で準備した報告書が稟議されているはずですから、じきに上がってくると思います」
「自警団の皆さんはどうお考えですか?」
集約結果を表示したスマフォを桐藤ナギサさんに見せる守月スズミさん。
「伝統的に組織に所属を好まない生徒が多いので、部活化は意見が割れました。今時点で早急に正式な部活とはしたくなく、今後の検討としたいのですが、装備の追加調達と連携強化として情報共有は過半数の賛同を得られています」
意見も含めてしっかり示していく守月スズミさん。桐藤ナギサさんは頷き、紅茶を飲んで沈思黙考。
参加者全員に目だけを動かして視線を向け、ティーカップを置いて提案する桐藤ナギサさん。
「これは単なる思いつきですが、自警団の皆さんに正義実現委員会への所属を求め、あわせて予算の追加をするというのはいかがですか?」
「論外ですね」
秒で即答する守月スズミさん。うわあ言い切った。
桐藤ナギサさんはまた紅茶を一口。
あっ、今のやり取りに驚いたのか、宇沢レイサさんがケーキひとかけ落としかけたのをイヴちゃんがナイスキャッチ。
「正義実現委員会と自警団は協力関係にあり、敵意はもちろんありません。ありませんが、お互い補完的な活動をしていると認識しています。正義実現委員会への加入を求めたところで、賛同者はほぼいないでしょう」
紅茶の表面に目を落として再び小さく考える桐藤ナギサさんと、強めの語尾で言い切る守月スズミさん。
「……なるほど」
空気が重くなってきたのを察知してあえてだろう、先生が明るい声で褒める。
「"このケーキと紅茶、すごく美味しいね"」
「はい!」
「……美味しい……」
「本当にそうですね」
「この茶葉は私が選んだのです。気に入ってもらえて何より」
緊迫した雰囲気は無事崩れ、桐藤ナギサさん含め全員笑う。
「ご意見、確かに承りました。フィリウス領袖の私としては、概ねの線で要望を受け入れます。部活化については期限は設けませんが、決定次第再協議しましょう。他の分派から大きな反対が出ればその限りではありませんが、今日今からこの線で進めましょう」
「ありがとうございます」
「ただし、補助金を出すとなった場合、用途のチェックは他の部活同様行いますし、代表者は置いてください。正義実現委員会とのアプリでの情報共有は、担当者と別途協議をお願いします」
「それはもちろん」
まあそれはそうだよね。何でも良いから使ってね!なんてお小遣いにはならんやろうなあ。
「そして、事務室を置いてもらいます。事務員含む人事はお任せしますし、常駐しろとは言いません。ですが、場所は正義実現委員会本部の空いている1室を使っていただくことになるかと思います」
「事務室はわかりましたが、その配置は何とかなりませんか?」
かぶりを振る桐藤ナギサさん。
「ティーパーティーとして、対外的な予算付の説明のために『正義実現委員会と連携を物理的にも近い距離で行っている』というのは曲げられません。補助金の条件としてはこの3点は必須です。ああ、代表者はスズミさんがやってくださるということで構いませんか?」
「……わかりました。代表者も私が引き受けます」
守月スズミさんは苦虫をかみつぶしたような顔をしている。事務室の配置は嫌そうだけど、まあしょうがないのか。代表者に関しては異議無さそうだけど
うーん、桐藤ナギサさん的には、これを機に正義実現委員会にくっつけたい感じなのかな。
桐藤ナギサさんは出口に立っているティーパーティー委員に目を向けた。お茶会はこれで終わりということだろう。
「"ナギサ、忙しいのにありがとうね"」
「「「ありがとうございました」!」……」
「ああ、もしよろしければ先生とはもう少しお話をしたいのですが」
「"構わないよ。じゃあまたね、スズミ、イヴ、レイサ"」
ぺこりと頭を下げて退出する3人と座り直す先生。
ティーパーティー本部を出るまでは雰囲気に圧されてか無言だった3人。
出てから、少し気が重そうな守月スズミさん、ホッとした表情の宇沢レイサさん、申し訳なさそうなイヴちゃんが顔を見合わせ、歩きながら話し始めた。
「……急な話だったのに、ありがとうございました……」
「いえ、いずれ必要なことではあったのでしょう。効率に問題があったのは確かです。自警団の独立は堅持しますが。代表者もある意味今まで通りとはいえ、気が重いです」
「な、なるべく手伝いますから!」
「レイサさん、ありがとうございます」
「……私も……できる範囲で……なんとか……」
「助かります。それでは、私は正義実現委員会に挨拶と事務室の下見に行ってきます」
「あ、私も一緒に行きます!」
「……ハスミさんには連絡しておきましたから……。あ、私も事務室の準備……手伝います……」
ハスミさんからはさっきメッセージが返ってきていた。短く『歓迎します(笑顔の絵文字)』というもの。
売店で正義実現委員会向けの差入れを買って、急遽準備された空き部屋を3人で掃除し、治安組織向けのGPS位置情報とスケジュールアプリの設定を済ませ、正義実現委員会の担当者と素早く打合せをしてURLを守月スズミさんが把握している限りの自警団員に撒いた。
守月スズミさんの把握してない部員にもリレー方式で連絡をしてもらうよう伝え、近くの洋食屋で晩ご飯を食べて、イヴちゃんが宇沢レイサさんに無理をしないよう釘を刺してから解散した。案外素直に行ったと言っていいんじゃないだろうか。
守月スズミさんは治安崩壊度がやばくかつ実際の動きとして正義実現委員会と協同で警備などを行っているので、名を捨てて実を取らざるを得ないと判断しています。いつの間にか代表になっているのは内心ちょっと嫌がっているけど他にやる人が居ないので渋々。
一般的に同じ目的の組織を並立させると資金や人員の資源が分散してあまり効率が良くありません。
ティーパーティーの伝統的な見解として「自警団は治安維持そのものには協力的だが正義実現委員会に加入したがらず、ティーパーティー含む権力に必ずしも忠実とは限らない、砂の民の集まり」となっています。というのを踏まえたうえで。
桐?ナ??「ミレニアムに深い繋がりがある怪しい1年生が先生と自警団の代表と有力者を引き連れて組織化と助成金を要求?もしかしてシャーレの権限まで含んだ反乱のための手駒作りでは……?それとも情報収集のための土台作り……?迂遠な脅迫……?正義実現委員会に置きたくはないが、逆に尻尾を出したらすぐ捕まえられるよう紐をつけて小屋に入れた方がマシか……」(胃痛)
紙での小説の書き方に基づいて書き続けていたロートルとしての改行等を改めつつ、同時に加筆修正を行いました。話の本筋には変更ありません。2025.01.27