ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
真っ赤を通り越して真っ青になってる伊原木ヨシミさん大丈夫?って心配しながらちらちら見てるイヴちゃんのおまけ、ジルです。いやほんまに大丈夫?笑いすぎちゃう?
「ヨシミちゃん、大丈夫?!」
「大丈夫なわけないじゃない!笑い死ぬかと思ったわよ!」
「なるほど……これがそうなのか……」
「"個人情報、どうなってるんだろうね……"」
謎に重々しげに柚鳥ナツさんがスマフォをテーブルの上に置く。キャスパリーグ トリニティ で検索すると普通に写真出てくるんだよね。まあめっちゃバッチリくっきりってわけでもないんだけど、個人特定するくらいにはまあ十分なやつ。個人情報はどうなってんだ個人情報は。禁じられた写真投稿してんじゃねえか。
「あ、あの。不良は不良ですけど、別にほら、恐喝とか窃盗とかは聞いたことありませんでしたし」
「はぁ……いいよ、そういうの。喧嘩が好きだったし、誰かを泣くまで撃ったこともある。暴力に酔ってる、どうしようもない不良だったんだよ、私は」
「……食べる?腹が立ったら、甘い物を食べるのがいい……」
「いらない。帰るから」
イヴちゃんの助け船も空しく、杏山カズサさんは席を立って言い捨て、走り出した。
「"カズサ?!"」
「「あっ」」
「先生、レイサさん……追いかけてあげて」
「"わかった!"」
「は、はい……!」
さらっと全員分の会計をシッテムの箱経由の大人のカードで済ませていく先生、初めて大人らしいスマートさを見たかも。スイーツ部のスイーツは部費で出てる気もするけど。
「……残っちゃった……」
宇沢レイサさんのパフェ、手つかずで残ってしまった。
「先生が払ってってくれたし、みんなで食べちゃおう。笑いすぎてお腹減っちゃった」
「カズサちゃん、大丈夫かな……」
「なあ、みんな。聞いて欲しいことがあるんだ。食べながらでいいから」
ん、と首を傾げるイヴちゃんと言い出しっぺ柚鳥ナツさん以外の放課後スイーツ部の面々。
トリニティ辺縁、ゲヘナ及びD.U.の境界に近い地域。どの主体も及び腰あるいは治安維持に無関心な権力の空白地帯。ヘルメット団員にスケバンの共通性が薄い顔触れ。接点はキャスパリーグへの恐怖ただ一つ。
「で、こいつがキャスパリーグの舎弟か?」
「あいつが足を洗う時にも勢力の激変があったが……奴が組織を新しく立ち上げて戻ってくるなら……」
「早いとこ締め上げて吐かせたらいいだろ」
顔にも身体にも青あざを作り縛り上げられて転がされている少女は不敵に笑おうと試みているのだろうが、半泣きを奇妙に歪めた表情を作るのが精一杯だった。
「アタシが先輩の事を吐くわけねえし!」
「ったく、強情なガキだな。中坊のくせに」
「根性だけは一人前だよな」
「まー埋めちまえば首くらいのあたりで吐くべ」
「生コンだってタダじゃねーんだからさあ」
「アタシは吐かねえ!!!」
舌打ちした赤ヘルメットが腹に蹴りを入れる。ぐえ、という悲痛な悲鳴。
先生は息も絶え絶えだった。足は長いものの、運動不足は覆いがたいものだったのだ。トリニティでも指折りの身体能力の2人に追いつくのは到底無理だった。故に、先生が2人のいる公園にたどり着いた時点でほぼ2人の話が終わっていたのはやむを得ないことなのだ。
「人生なんて、いつだって後悔だらけだし、恥ばっかりじゃないですか。その点なら、私の方が杏山カズサより圧倒的に勝ってる自信がありますよ!」
「……そんなことで張り合われてもね」
「だから、恥ずかしがっても隠してもいいと思います。ただ、忘れたいと思われるのはきっと悲しいんじゃないかなって……」
「……まあ、何となく言いたいことはわかったよ。それはそれとしてあいつらはシバくけど」
「それは止めません!」
先生は安堵した。カズサとレイサには確かにしっかりした繋がりがあるのだなと。と、レイサの端末が振動した。
「あっ、自警団の応援要請です!」
「"い、イヴ達には言っておくから……"」
「ありがとうございます!じゃあ私はこれで!」
先ほど同様とんでもない勢いで駆けだしていくレイサ。
「慌ただしい奴」
駆けだしたはずのレイサがバックして戻ってきた。
「"レイサ、どうしたの?忘れ物?"」
「あ、あの、これなんですけど。杏山カズサの舎弟さんでは?」
レイサのスマフォに表示された自警団員の応援要請に『100人以上の不良が集結中、攫われている子がいるかも』と添付された荒い画像。縛り上げられ倒れ伏した少女は、見覚えのある姿だった。
あの冬の日のようだった。あの日と違って、別々の不良グループが反目しあっているわけではないが。
「悪いね、宇沢」
「いえ、これも自警団エースの務めです!それに、悪い子ではなかった……ですかね?多分……?」
「急に不安にならないでくれる?まあそれに関しては同意するけど」
「では先生からの合図を待ちましょう!『ファン・レイン号』*1も今日が初陣ですし、楽しみですね!」
「えっ、なんて?」
「この間イヴさんが買ってきたトラック型の自走砲です!『走る閃光弾号』か『イヴさん号』、『自警団のスーパースター号』などの候補もあがってたんですが」
「なんて?」
先生からメッセージが入った。『ファン・レイン号に撃たせて、座標はここ』
「撃ちます!」
補助金で導入できた位置情報等共有アプリを使えば、自警団員のパスワードと要請で気軽に撃てる。数km以上の遠距離から1門だけの砲撃なので、迫力で言えば全く大した事は無い。だが、砲撃元すらわからない状況で一方的に撃てるというのは大きな効果がある。
「着弾と同時に突っ込む……は?」
折角の不良達が混乱している好機の初動を強者である2人は生かせず立ち止まってしまった。
まあそら立ち止まっちゃうよね。杏山カズサさんと宇沢レイサさんの待機してる位置の向かい側、半端な高さの廃ビルにパルクールの要領でよじ登った僕が縄ばしごを上からかけて放課後スイーツ部の面々と先生が登り、この前、翼につけた新兵器ことホログラム投影機で『キャスパリーグ参上!』とくそださいフォント*2で上方に投影しているからだ。全部先生ってやつのせいなんだ……。いやまじで柚鳥ナツさん原案だけど先生の指示なんすよこれ……割とイヴちゃんノリノリだったけども……。「柔らかい地域をスイーツの如く食べ尽くし掌握する」「キャスパリーグが支配する」「殺伐」とか変なメッセージを表示するホログラム。全員マスクをしたりサングラスをかけたりバットを持ったりと、思い思いの不良っぽい格好をしている。イヴちゃんは革ジャケットにトゲトゲ、パワーメタルバンドとかでよくある感じの奴だ。これでもイヴちゃんの可愛さが損なわれないの凄いね?
「キャスパリーグだと!?」
「出た!奴が出た!」
「うう……先輩……助けに来てくれたんすね……?!」
ざわめく不良達の中、砲撃が止まる。自動砲撃、重心の都合で20発くらいしか自動装填できないのだ。どっちみち
「わ、私こそがキャスパリーグ四天王その一!恒星の宇沢!!!!」
「はあ?!」
「ちょ、嫌よ!何で私があいつの手下なんかしないといけないの!」
「……ヨシミ、本当にいいのかい?そんなことを言っても?」
怒りのあまりだろう、ふるふると身を震わせる杏山カズサさんを柚鳥ナツさんが指さす。人を指ささないの~。
「!!!! 私こそがキャスパリーグのもっとも忠実な
「私は四天王にして放課後スイーツ団浪漫担当参謀、ナツだ」
「あ、あははは……わ、私も……?四天王、アイリです……」
「何が!放課後スイーツ団だ!!!!!」
ぶち切れまくってる杏山カズサさん。やめたげてよぉ。
「そして私が……キャスパリーグの下僕、四天王、人形遣いのイヴ……」
「ちょっと!!!イヴまで?!?!?!?!?!」
「四天王のくせに5人いるのか?!」
「……四天王は4人でなければならない……そのような惰弱な言葉遊びにキャスパリーグは興味がない……」
「"ええ……"」
また伊原木ヨシミさんが笑いすぎてまだ何も始まってないのに膝をついてる。大丈夫かなあ。僕もここでそれ引用するの?!ってイヴちゃんに笑いながら喝采送ってるけど。先生も含めたら6人おるんだよな四天王。多いわ。
「くそ、とにかく放課後スイーツ団だか四天王だかしらんが、今やっちまえばあいつの時代も終わる!行くぞ!」
「そもそも別に私の時代とか求めて無いし!!」
挟撃状態で、こっちは上を取っているから優位なのは間違いないが、砲撃で3割くらいしか減ってない。
「始めましょう、キャスパリーグ……」
「"イヴ、案外気に入ってる?"」
「レイサさんと、皆と一緒だからかな……それに、ナツさんとカズサさんのお手伝い、したい……」
うんうん。イヴちゃんが楽しいと、僕も嬉しいよ。
『甘い秘密と銃撃戦』宇沢レイサの報われなさっぷりにぼりしょん大サーカスしていたので書きたかったことが出来て良かったです。自身の力不足は痛感しましたが。ナツ→カズサの気遣いが染みる。
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