ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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トリニティ総合学園は陰謀と術策の蛇の巣だ。ゴミのごとき悪意と謀略がひしめいておる

 やっほー!可愛くて賢くて強くなる子の予定、天使イヴちゃんのニューロンの寄生虫、ジルちゃんだよ!いや……寄生獣か!

 イヴちゃんは種族が天使でもある。つまりエンジェルカラテにドブカスカラテを掛けて可愛さ100倍だ。わかるかこの算数が。エエッ?

 ところでイヴちゃん達って脳の構造は人間と一緒なの?先生が来たら調べてもらいたいね。いや解剖とかはやめてね?CTとかでええやん。

 

 トリニティ中等部、復学初日。荘厳といっていいような外見とそれに見合った内装。情報関係の機材はちゃんと更新されており。什器類は古いけど清潔で綺麗に整えられている。

古くさいではなくて威厳があるというべきか。環境の良さを痛感する。流石キヴォトス三大学園だね。

(……見られてる……?)

(見られてるねえ)

 あんまり好意的で無い無遠慮な視線が教室に入る前から着席するまでじろじろと追ってきた。

視線の先はイヴちゃんそのものじゃなくて、翼らしい。

(やっぱり隠して来た方が良かったんじゃ無い?翼のカバー売ってたし、元々の白いやつに似せたのつけるとかさ)

(……どっちにせよ羽の形も大きさも変わっちゃう……長いこと隠すのも、面倒かなって……)

 まあそれもそうか。健康診断とかの時に隠しようが無い気もするしね。

(ま、実害が出ない限りほっとけばいいね。さてさて、しっかり勉強頑張ってこ!)

(……う、うん……)

 

 お昼休み、机に突っ伏しているイヴちゃん。別に虐めがあったとかではない。あんまり好意的で無いひそひそ話なんかは気合入れて聴力を上げたら聞こえたけども。

そう、脳のリソースをマシマシにしたら五感が強化できるのだ。脳は常時やって脳トレしていこうと思っている。

視力も「近眼とは眼筋の筋力不足」って言い切られてたから鍛えたら治るはず。眼鏡っ子の良さは否定しないけど、イヴちゃんは眼鏡があっても可愛い、無くても可愛い。

眼鏡って蹴られたりすると割れるから危ないんだよなっていうのもあり、身体機能的な意味で良くできる部分はよくしていこうと思う。

 そうそう、この突っ伏している理由だけど。

(うわ……僕の家主の成績……悪すぎ?)

(……うう……酷いよ……)

 さっき小テストがあったのだ。すぐ結果が返ってきたけど、まあ丁度入院してた期間の分も入ってたとはいえ、あんまり良くない成績だったね。

(……普段は、もっと良い成績だし……)

(前回以前の成績見せて?)

 イヴちゃんは渋々、本当に渋々という感じでスマフォに入れていた結果を見せてくれた。

(わァ……ア!)

(……そ、そんなに……?!)

 いや流石に冗談だけど。まあでもあんまり良くは無いな。どの教科も赤点ギリギリってところだ。

(……イヴちゃん、勉強、頑張ろうね!)

(……うう……)

 

 入院期間があったからという慰め混じりのお小言を講師のオートマタさんにいただいてからの放課後、特に部活に所属してない彼女は帰り支度を始めている。

(あ、そうだ、イヴちゃんや)

(……なに……?)

(お見舞いのお礼をしにいこう!)

(……誰に……?)

 クラスメイトは全員出席していたけど目当ての子はいなかった。あのお見舞いに来てくれた子は別のクラスらしい。

麻酔と鎮痛剤で僕も彼女もまとめて意識朦朧としてたから断言できないけど、前世記憶由来の知ってる子のはずなんだよな。

 そうそう、僕の持ってる漫画とか音楽がほとんどこの世界には存在してないみたいだから、多分前世でいいと思う。つまりやっぱりここはメキシコことキヴォトスだし、きららグランドセフトオート。

で、病床にいたときの推測の続きだけどゲーム内であって僕も彼女も01の情報体ということは多分なさそうだ。あくまで肌感覚と我思う故に我あり(Cogito ergo sum)由来のショボい推測に過ぎないけど。

 

 あまり気乗りのしないイヴちゃんを宥めすかして見舞いに来てくれた彼女を探しに隣のクラスにやってきた。

あ、教室に入った途端に天使が通ったな。彼女含めて周りにいる子達は皆天使種族だけど。よっぽどこの翼は目立つらしい。まあ喧嘩売ってきたりしない限りは関係無いから、目的の子を探す。

 あっいた。

(……確か、宇沢さん……?)

(そう、宇沢レイサさんだね)

 イヴちゃんが恐る恐る声を喉から絞り出す。

「……あの……」

「あっ、イヴさん?!退院おめでとうございます!!!!!」

 声でっか!また周りの子がしんとなってしまった。

久々にキレちまったぜ……いや別にキレてはないけど。屋上は開いてるかわからないしなあ。

(お外!お外に誘って!)

「……あの……宇沢さん、お外で……その、お話しませんか?」

 顔を真っ赤にした宇沢さんこと宇沢レイサちゃんがイヴちゃんと目を合わせて頷く。何この空気。

 

 宇沢レイサさんには彼女自身の要望でサイダーとバニラのアイス、彼女はホットココア。自販機前のベンチに春めいたまだ肌寒い風が吹く。遠くから運動系部活の準備の声が響いてる。

 ほんの少し隙間を空けてベンチに座った2人の間に、何となく気まずい沈黙が流れた。

「……あの……」

「あのっ!」

 沈黙を破るタイミングまで同時。う、うん……二人ともコミュニケーション苦手なのが伝わってくるな。

「……お、お先に……どうぞ……」

「いえいえ!イヴさんこそ!」

(イヴちゃんがんばえ~!)

(……うう……他人事だと思って……)

「……お見舞い、来てくれたんだよね。ありがとう……」

「いえっ!友達ですから!」

「……えっ……」

「えっ」

 愕然として硬直し、もにょもにょと口を動かして目を左右に泳がせ、真っ赤になる宇沢レイサさん。あーこれ……相手の好感度だけが高いやつ?わァ……ア!

(こ、これを機に友達になるんだよ!頑張れイヴちゃん!)

(……そ、そんなこと言われても……)

「そ、そうですよね……迷惑、でしたよね……」

 もう声も震えてるし、このままだと泣きそうだ。

「……そんな、ううん。ありがとう。宇沢さん……」

(名前で!名前で呼んで!)

 努力して声を絞り出すイヴちゃん。

「……れ、レイサさん……」

 ぱあっと顔が明るくなる宇沢レイサさん。がしっと両手を握られて肩をビクッとさせるイヴちゃん。手温かいなあ。

「3年になってもよろしくお願いします!イヴさん!」

「……う、うん……よろしく」

 モモトークのアカウント交換をしてからこの後しばらく、この間のテストの話と、自警団活動の話を少しして別れた。

2人とも最初のアカウント追加で僕は泣いちゃった。

 

 イヴちゃんは寮に帰る前に学園事務所に顔を出した。入院中にメールで連絡をやり取りしていた事務員オートマタさんが出てきてくれた。

「ごめんね、わざわざ」

「……いえ……大丈夫、です」

 この間の事故、カイザーの方の最初に轢いた側は逃げちゃったらしく、トリニティ事務局から抗議文を送って、その返事が来ているそうだ。

あの日、防犯カメラとか目撃者の証言でイヴちゃんは青信号を渡っていて信号違反のカイザー車両に撥ねられたのがわかっている。

もう一台の空中衝突する羽目になったトラックの運転手さんはちゃんとヴァルキューレに出頭していて、直接会うとややこしくなる可能性があるのでお見舞いには来てなかったけど、お詫びの果物が届いていた。

青信号で予期できない状態だったけど、一応、法的には責任があるらしくて、どっちも会社持ちにはなるけど賠償金を彼女に払うのと罰金刑になるらしい。

クビになったりはしないそうだけどちょっと可哀想。いやあっちの運転手さんはまあ本題じゃないしいいや。

「カイザーの回答は『当該車両及び運転手はカイザーグループ内に存在しない』でした」

「……え……?」

 お~、ある意味満額回答だね。舐めとんのか。クソデカ学校であるトリニティ相手にそんな強気の態度を取れるのは流石の大企業って感じだ。

「トリニティ事務局内で協議を進め、訴訟にするかどうかを決めますが……」

 随分言い辛そうだ。パワーバランス的に訴訟が実際に起こせるかはわからないってところか。

事務員さん個人がどうこうじゃないけど、何しろ政治絡みだしね。ムカつくけど。

「……わかりました。ありがとうございました……」

(そのうちカイザーをキャン言わせたろうね、イヴちゃん!)

(……い、言わせられるかな……)

 言わせられるようになりたいねえ。

 

 校門をくぐり、深い深い溜息をつくイヴちゃん。思わずという感じで口から独り言が漏れた。

「……つ、疲れた……」

(どっちが?)

(どっちも……でも宇沢さ……レイサさんの方が、かな……)

(まあ独特のノリの子ではあるよね。でも悪い子じゃないんだよ)

(うん……がんばる)

 頑張らないで欲しいという気持ちと頑張って人間関係作って欲しいという心が2つある。いや元々彼女と僕で2つあったね。頑張ろう。

 あとさっき決めたんだけど、僕は生徒さんをフルネームとさん付けで呼ぶようにしよう。ゲームの記憶とかとごっちゃになったりして気安く呼んでもめたりしたら鬱陶しいしね。

(あ、イヴちゃん。まだ帰る前に寄るとこあるよね)

(……?)

 

 雰囲気としてはホームセンターに近い感じの大きな店の一角。お客様サービスコーナーにいる犬の人から銃を返してもらう。

ほんまに犬やな……立ってる……喋ってる……。犬種に詳しくないけど、柴犬かな?

「毎度ありがとうございます。銃身とピカティニーレールが折れ曲がってしまっていたので交換しています」

「……ありがとう、ございます……」

 事故でひん曲がってしまった彼女の愛銃を修理に出していたのがもう終わったという連絡を午後にもらっていたのでトリニティお膝元の銃砲店にやってきていた。

 えー……何だっけこれ。ショットガンなのはわかる。

(……これ、安かったから買っただけ……。軽いし、持ち歩きやすい……撃ったことないけど……)

 サイガ-12S isp.083 TAS……かな?多分。彼女の見せてくれたオンライン説明書には勿論サイガもロシアも全然名前は出てこないし、違う銃の可能性もあるけど。

 銃身を短くしてあって軽くて使い勝手はよさそう。とっくの昔から衣服を着てない人より銃を持ってない人の方が少ないとかいう治安オワオワリのキヴォトスでステゴロはリーチの都合もあってちょっと厳しいかもだしね。

 しかし新聞で見てたこの治安の悪さ、連邦生徒会長の失踪は単なるトドメやったんやな。

治安悪いから銃は撃てるに越したことは無いし、セルフディフェンスは人類固有の冒すことができない権利だから大事にしよう、って誓いを新たにした。

(そのうち射撃場とかで練習一緒にしようね。そういえばこの子の名前は?)

(……何だか銃撃つの怖いな……。えっと、クラリオン……)

(ラッパみたいな見た目だから?)

(……うん。それと、撃たないといけないときは危ない時だから……)

 2,600Hzで鳴るラッパかあ。それと終末のラッパを掛けてるってコト…?!ポエット!

 

 キッチンカーでサンドイッチを買って食べて帰宅。帰宅してすぐ手洗いうがいし鞄と銃を壁際に引っ掛けるイヴちゃん。育ちの良さがわかるね。僕なら鞄は投げ捨ててそう。

(晩ご飯はお外で軽く美味しいサンドイッチ食べたし、勉強しよっか)

(……えっ……勉強……?!)

 驚愕と嫌悪の気持ちがはっきり伝わってくる。まあ感情が伝わるまでもなく、言葉の響きがもう嫌そ~~~~。めっちゃ嫌そう。

(まあまあまあ、良かったら僕が教えるからさ)

(……ジル、勉強できるの……?)

 そういう意図はないんだろうけど、あほみたいに言われてしまった。まああほだけどさあ。

どうも僕、一応大学レベルまでの教育は受けてるっぽいんだよね。キヴォトス基準、ジルちゃん調べ。

(任せてよ。偏差値30くらい上げて「何で私が東大門(トンデムン)に?!」って言わせてみせるから)

(……東大門……なに……?)

東大門(トンデムン)*1、ラケダイモン*2、ドラ○もん*3で世界三大門*4なんだよ)

(……??)

 そりゃどれもないか。ま、ぼちぼち始めよう。別にガリ勉しようって訳じゃないけど、勉強の習慣づけは大事だしね。

 睡眠学習も出来るし、時間がないわけじゃない。勉強がわからなくてつまらない状態はイヴちゃんの不幸になるだろうからってだけだし、嫌にならない範囲でやってくことにしよう。

*1
興仁之門、お城の門であって別に学校とかは関係ない。

*2
古代ギリシア、ドーリス人による都市国家、スパルタのこと。スパルタ人の自称がラケダイモンもしくはラケダイモーン。別に学校とかは関係ない。

*3
22世紀の未来から来た超高性能戦闘ロボット。丸い身体は避弾経始を強く意識したもの。どら焼きが好物。別に学校とかは関係ない。

*4
別に学校とかは関係ない。何なら門に関係してるのは東大門だけ。




★1 御蔵イヴ
トリニティ総合学園中等部3年生
年齢 14歳 身長143cm

トリニティ総合学園中等部3年生、帰宅部。温厚でぼんやりした雰囲気で、友人グループ形成に乗り遅れて友達がほとんどいなかった。成績もあまりよくなかったが中学2年生の冬に交通事故に遭ってから活発的になり友人も増えた。元々の趣味は可愛い消しゴムと食品サンプル集め。映画鑑賞と読書、音楽と新しい趣味とトレーニングに興味を持ち始め、成績も大きく伸びたのだとか。ときおり宙を見上げて固まってぼんやりしている時があり、友人に苦笑いされている。また、普段は寡黙だが饒舌になるときもあるのだとか。

役割 STRIKER MIDDLE 貫通 軽装備 市街D 屋外B 屋内C SG
誕生日 7月24日
EXスキル COST3 Bury Your Damage 扇形範囲内の敵に対して攻撃力の650%分のダメージ
ノーマルS 小さな知恵のメロディ 20秒ごとに攻撃力を28%増加、発動後すぐにリロード
パッシブスキル Fear Of A Blank Κιβωτός 防御力を14%増加
サブスキル 催眠学習の成果 EXスキルまたはノーマルスキルの発動と同時に、会心値を8.5%増加(15秒間)

固有武器 クラリオン(サイガ-12S isp.083 TAS)
イヴが自衛用に持っているショットガン。中学2年生まで1度も撃ったことがなかった。体力と筋力がない彼女用にソードオフで軽量化されており、ピカティニーレールもついているが何もつけていなかった。名前の由来は終末のラッパから。銃を撃つ事が殆ど無かった彼女からすると、この銃を撃つのは日常を破壊する合図でしかなく半ば忌み嫌っていたが、怪我の軽減にも貢献してくれたという意識から少し愛着が沸いた。触るのも怖かったので友人からもらった星型のアクセサリをピカティニーレールにつけた以外は無塗装。

 紙での小説の書き方に基づいて書き続けていたロートルとしての改行等を改めつつ、同時に加筆修正を行いました。話の本筋には変更ありません。2025.01.19
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