ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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余裕のある日程の出張、それは浪漫 お昼ご飯は何を食べるかも楽しみ

 1時間目の授業が終わった途端、学園事務室に呼び出されてちょっと緊張気味のイヴちゃんのおまけ、ジルです。

(まあ本当に身に覚えないし落ち着こう)

(……うん、そうなんだけど……)

 まじで身に覚え無いんだよな。昨日の美食研究会張り倒しで半分逃げられた事にお叱りなんてことはないだろうし。何度か顔を合わせた(多分、普通に見分けづらい)ロボ事務員さんから要約すると「ティーパーティーから依頼があり、昨日捕まえたテロリストの移送と、万魔殿から『この時期に民兵を書類上も整備して戦力化するのはいかなる意図があってのことか』と通知があったので言い出しっぺとしてゲヘナへの他意はないとお使いをしてほしい。授業中なので前者は断っても構わないが、了承があれば2件ともまとめて行い公休にする」とのこと。あえて自警団のNo1を出さないのは舐められたくないというのと、補助金欲しい!!!って言うたお前が一番説明しやすいやろ?というまあある意味真っ当?か?まあ良いんだけど……って感じの話だった。ティーパーティーのお使いだから公用出張でちゃんと交通費以外のお小遣い(おちんぎん)も出るらしい。

(いいんじゃない?)

(……じゃあ、行く……レイサちゃんも誘っても大丈夫かな?)

(授業大丈夫かなあ)

 宇沢レイサさん、成績は可も無く不可も無くなので1日休んだところでただちに影響はないだろうけど。複数人出張でもOKらしいしまあいいか。

「行きます!!!」

 即答だった。半分あきれ顔の朝吹ソフノ(黒髪ポニテ)さんとお土産よろしくねと笑う報野モユル(茶髪おっとり)さん、他クラスメイトに見送られ手を繋いだうえで堂々と退出する2人。楽しい遠足の始まりだ!

 あっ、風紀委員会にも挨拶したいから自警団のメルアドでメールしとこ。

 

 列車に護送車両が接続され、猛獣用の檻みたいなのに入れられた獅子堂イズミさんと赤司ジュンコさん。他にも捕まった子はいるが、ゲヘナ生はこの2人だけらしい。護送するのは宇沢レイサさんとイヴちゃん、正義実現委員会の2人、3年の子と1年の子1人ずつだ。よかった。仲正イチカさんがいたらまさかあのイベントで温泉開発部長が乱入してくるんじゃ……って不安になるとこだった。

「あれ、ヴァルキューレ行きじゃないんだ」

「ふぅん。ゲヘナまで直通なら1時間ちょっとってとこかな。あ、ねえ、お腹空いた!」

 ヴァルキューレに移送しなかったのは政治的配慮らしい。ちなみにクッションもちゃんとあるしご飯はさっきちゃんと提供されていた。

「さっき食べてませんでしたか……?」

「……食べてた……」

「お腹空いた~!」

 溜息をついてイヴちゃんが鞄をごそごそ。出てきたのはアルフ○ート(チョコオンビスケット)

「……みんなで、分けよ……?」

「「え、くれるの?!」」

 任務中なので、と遠慮していた正義実現委員会の子達も含めて分けると1人2枚にしかならないけどまあそれはそれで。食べて数秒後に獅子堂イズミさんが空腹を訴えて騒ぎ始めたのは笑ってしまったけど。捕まった人と捕まえた人とは思えない和やかな談笑の時間だった。

 

 ゲヘナの駅で正義実現委員会から風紀委員会に引き継ぎ。彼女達は先に帰るらしい。さっきまでの和やかな雰囲気が一転、治安機関職員同士のバチバチした睨み合いの後、無事檻ごと引き渡される2人。

「じゃーね!」

「もう爆破とかはしないでくださいね?」

「それは無理かも!」

「……無理なの……?」

 無理そうだなあ。

 

 万魔殿(パンデモニウム)から迎えの人が来ていてちょっとびっくり。

「宇沢レイサさんと御蔵イヴさんですね。お待ちしておりました。万魔殿の棗イロハと申します」

 けだるそうな表情で迎えてくれたのは棗イロハさんだった。

「はいっ!!!よろしくお願いします!!!!!」

「……お願いします……」

「車を用意しているので、こちらに」

 ダルそうに溜息をつく棗イロハさん。宇沢レイサさんが元気だから……いや関係無いか。素かこれ。多分。車は普通のリムジンだった。戦車とか装甲車で迎えに来てもらうことが普通な気がしてるの、キヴォトスに毒されてるんだろうなあ。

 

 万魔殿にはすぐ着いて、大して待つことも無く通された。ちょうどお昼時なのだろう、良い匂いがしている。当然のようにしっかり手を繋いでる2人に棗イロハさんは何か言いたげだったけど我慢したようだ。

「ゲヘナ、初めて来ました!」

「……私は、久しぶり……」

 本当に立派な建物だなあ。管理も掃除もしっかり行き届いていて、ゲヘナって実はすごいしっかりしているのではって気がしてくる。

「どうぞこちらに。はー疲れた」

 戻ってきたからか地金が出かけている棗イロハさん。しっかり!まだライフは残っていましてよ!

 

 通されたのは議長室(ドア横に偉大なる羽沼マコト様像なる金ぴかの像が2つ置いてある)、の隣の会議室だった。

「おお、待っていたぞ。キキキッ。書面でよかったのにわざわざすまんな」

 四角に高級そうな机と椅子が配置されている会議室、上座にいるのは万魔殿会長の羽沼マコトさん。と、その膝の上で本を読んでいる可愛いのは丹花イブキさん。膝の上???まあ手繋いでやってくる仲良しさん達に言われたくはないかな……そうか??イヴちゃんが時間無くて駅で買った2人チョイスのお土産のお菓子を渡す。

「サツキ先輩とチアキはどちらに?」

「昨日思いついた監査に行っているに決まっているだろう」

「ああ……また馬鹿なことを……」

「キキキッ、おっと、客人を待たせていたな。座ってくれ。私こそが万魔殿議長にしてゲヘナのリーダーである羽沼マコト様だ」

「丹花イブキだよ!よろしく……??」

 丹花イブキさんがこっちをというかイヴちゃんを見て硬直した。人見知りって感じではないと思ってたんだけど違ったかな。

「トリニティ自警団の宇沢レイサです!!!!」

「……御蔵イヴ、です……」

「もしかして、イヴお姉ちゃん?!」

 がばっと立ち上がり、慌ててスマフォを引っ張り出して何か探し始める丹花イブキさん。えっもしかしてあのアルバムの?羽沼マコトさんの手を振りほどいててってってと駆け寄ってくる。可愛い。

「これ!!!覚えてない?!!!」

 今より小さな金髪の少女2人、多分過去のイヴちゃんが自撮りで撮ったのだろう。部屋にあったアルバムと同じ写真。スライドするともう1枚、変なキャラクタのチャームをそれぞれ持って笑顔の写真。どっちも同じモモフレンズのMr.ニコライだっけ?茶色いやつだけどポーズが違う。イヴちゃんが持っているのが羽ペンを持っていて、丹花イブキさんが持っているのが原稿用紙みたいなものを持っている。

「ね!今日来る人のお名前聞いて、もしかして!!って思ったの!お姉ちゃんと交換したこれ、覚えてる?!」

 小さなポーチにつけられたMr.ニコライのチャーム。何年か経っているからくたびれてるし原稿用紙パーツの角とかは折れてたのを補修してたりして大事にされていたのがわかる。

「トリニティに何日かお泊まりで用事で行ったときに、周りが大きなお姉さんばっかりで退屈だったし、ゲヘナの子は誰も遊んでくれなくて……。イヴお姉ちゃんは優しかったから」

「……ごめん、事故にあって、昔のことあんまり覚えて無くて……」

「!! ご、ごめんね……?」

「私こそ……思い出せなくて、ごめん……」

 泣き出しそうになった丹花イブキさんにかがんで頭を撫でて微笑むイヴちゃんまじで天使だなあ。あっ天使でしたね。宇沢レイサさんはいい話だな~っていうのと記憶がってところのショックが半々ずつみたいな滅茶苦茶再現が難しい顔をしている。

「何だ、イブキの友人だったのか。それならなおのこと歓迎せねばな!ゲヘナが誇るゲヘナ料理と羽沼マコト様の偉大さを堪能していくといい!」

「手配が遅れたのと、この後すぐに要人と茶会の予定が入っておりまして、少なめの量になってますがご容赦を。後で菓子のお土産も差し上げますので」

 事前のあほっぽい印象と違って意外と器量があると思わせておいて自分の台詞で台無しやん。さすがギャグ時空に生きてる人だな。

 

 少し早めかつ量少なめ(イブキちゃんが丁度良い量)のランチ(に合わせてるっぽい)をいただきながら、キヴォトス全体の治安悪化に対応して装備充実と団員の負担減を計る意図での補助団体認定だったのを説明したところあっさり羽沼マコトさんは納得した。1品ずつコースで持ってこられるご飯は確かに美味しかったけど辛めの味付けが多くて2人も丹花イブキさんも水をたくさん飲みながら食べていた。

「キシシシ、せっかく来たのだ。学園内を見学していくといい」

「実際、こんなもの(許可証)無くても誰が入ってても誰も気にしませんけどね」

 イヴちゃん、宇沢レイサさん、丹花イブキさんのモモトークアカウント交換の儀と山盛りのお土産お菓子、見学許可のリストバンド(紙で出来ていて終わったら捨てていいという適当というか合理的というか)をもらって、みんなで写真を撮ってニコニコ。

「イヴお姉ちゃん、レイサ先輩、また来てね!」

 本当はこれで済ませたいし、これはイヴちゃんの友達を利用する最低なやり口なのはわかってるけど、まだ見ぬゲヘナシナシナモップのシナシナ度を大幅に下げるために必要な行為なので許して欲しい。

(イヴちゃんちょっと代わってくれる?ありがとう、ちょっとだけごめん。汚いことするから)

「イブキちゃん、風紀委員会の人達は好き?」

「? うん!たくさん遊んでくれるし、とっても優しいんだよ!」

「じゃあ、必要無い仕事で忙しくなったら困りますよね?」

「うん、そうだね~!」

「……イブキちゃんが困るそうですよ?」

 最後の一言は、当然羽沼マコトさんへ。

「くっ、どこまで知ってる……?」

「いや別に隠してないでしょ。さっきのもそうだし」

 さっきの監査うんたらも風紀委員会宛だったのか。

「治安機関のカウンターパートとして、ゲヘナの風紀委員会が不要な仕事で麻痺しているのは困ります」

 疑問符一杯で見上げる丹花イブキちゃんと宇沢レイサさん。丹花イブキさんの頭を撫でてからイヴちゃんにまた交代。なぜか撫でて欲しそうな顔をしてた宇沢レイサさんの頭をイヴちゃんが撫でる。かわよ。

(ごめんねイヴちゃん。イヴちゃんの友達を出汁にしちゃった)

(……謝っておく……)

 しゃがみこんで丹花イブキさんの頭をもう一度撫でる。

「都合良い事を言わせちゃった……ごめんね、イブキちゃん。もう一つ、ごめんねなんだけど……その……風紀委員会のことも、ちゃんと見ておいてあげてもらえないかな」

「わかった!」

 ごめんね丹花イブキさん、イヴちゃん。

 

 ともあれ、これでシナシナ度が下がる事を期待しつつ万魔殿を後にし――。

「あれ、レイサとイヴ、どうしたの?」

 あらゆる場所がくそでかの美人と遭遇した。先生やん。




 評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。
 赤帯に戻りました。わー嬉しい。安定してくれたらもっと嬉しいですが頑張らないと。
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