ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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愉快な訓練の始まりだ!!!(クソデカ大声)二日目 やっぱ最強格はすげーっす

 今日も何も特筆すべきことのない平和な1日でお昼まで過ぎていった。強いて言うなら中間試験、1学期実力試験、期末試験の日程が発表されたことくらいだろうか。今日は例の噴水が遠くに見える木陰にシートを敷いて食べている。ご飯チョイスはイヴちゃん、学園正門出て最寄りのパン屋でサンドイッチとパンを山ほど買ってきてある。イヴちゃんは自分用のチョコクロワッサン3個入を最優先で確保している。皆の好物は知っているので概ね問題なく分けられたけど、茶髪おっとりちゃんが交換をせがんだから流れでチョコパン0.5個ずつが3人に行き、他のパンやサンドイッチが回ってきた。イヴちゃんあそこのパン屋だと絶対このチョコクロワッサン買うんだよな。

(イヴちゃん好きだよね、あそこのチョコクロワッサン)

(ううん……チョココロネとどっちにしようか、朝から悩んでた……)

 平和な悩みで何より。

(帰りに残ってたらおやつで買ったら?)

(……名案……)

 割と人気の店だから保障はできないけど。忘れてるとか他のご飯食べてる可能性もあるしね。うんうん、平和で何より。

 試験の話は当然出た。

「1年の1学期にテスト3回もあるとかダルいよね~」

「試験当日は授業短いからむしろ嬉しい」

「試験勉強が大変じゃないですか」

「……毎日予復習してたら、試験勉強、いる……?」

「学年2位様は言うことが違いますな~。っていうかさ、そうだよね!学年2位じゃん!イヴちゃん教えてよ~」

「いいよ……?勉強会、する……?」

「「「やったー」」」

 トリニティ学園ではガリ勉だのと馬鹿にされるようなことはない。ミレニアムもそうかもだけど、成績が優れてるのは尊ばれる傾向にある。それに、試験優秀者は学園から出る小遣が増えるのだ。それはもう割と馬鹿にならない額。イヴちゃん、学年が上がったっていうのもあるけど、凄い金額が上がっている。

「そういえば、イヴちゃんは何年の試験受けるの?」

「えっ、飛び級するんですか?!?!」

 一瞬で悲壮な顔になった宇沢レイサさんとびっくり顔の茶髪おっとりちゃんにふるふると首を横に振るイヴちゃん。

「飛び級はしない、けど、上の学年の試験は受けようかなって……」

 3年まで一通りやったし、過去問(普通に図書館に置いてある)解いたら3年の試験まで問題なく90点台を取れたのでイヴちゃんと相談した結果やってみようということになった。学生の試験、本来は勉強の理解度を見るだけのもののはずなんだけど、上級生の試験を受けて高得点だとお小遣査定が更に上がるんで、中間試験は様子見を兼ねて2年、実力試験からは3年のを受けるつもりだ。

「すごー。小遣増えるんでしょ!何か奢ってよ!」

「ジュースくらいなら……」

「たかるんじゃないよ、まったく」

「へへへ、申し訳ねえ、イヴの旦那」

「今度の物真似は誰ですか?」

「こないだ見た映画」

「知らね~」

 実際にはジュースくらい自分で全然買えるからなあ。けらけら笑う皆。平和で何より。

 

 愉快な訓練の始まり、2日目。今日は下江コハルさんも参加するみたい。その前にイヴちゃん的にはメインイベントがあるんだが。剣先ツルギさんとの戦闘訓練だ。今日は逆に宇沢レイサさんから応援されてイヴちゃんはふんすとなっている。安全な時に強い人との戦闘経験を積めるのはまたとない機会なので助かる。僕もちゃんと観察しておかないと。

「ひひ……」

「『後輩に先攻を譲る』とのことです。では、初めてください」

 頷いたイヴちゃんはクラリオン(STG)を構え、ノーモーションで左手の盾を投げた。左腕と盾を結ぶ鎖が鳴りながら500kg近い重量がすっ飛んでいき、同時にクラリオンを発砲。

「きひっ!」

 盾はジャンプして躱され、反撃の無造作な射撃を左に半身になって散弾半分程度を気合で堪えつつ間合いを詰めながら鎖を引いて回収、空中に向け更にクラリオンを連射。

「きひひ!」

 空中で羽ばたいて少しだけど右に避けられ、いくらかは翼で防がれた。反撃の銃撃をイヴちゃんは盾で防御しつつ前進。とんでもない衝撃だが、斜めにしていなしクラリオンの弾を込めつつ間合いを詰める。剣先ツルギさんが撃ち切ったところで盾を持ち上げ今度は右に身体を振りつつウッドペッカー(30mmMG)とクラリオンを同時に撃つ。

「無駄だァ!!!」

 30mm機関砲弾と散弾を喰らいながら多少足がよろめきつつも前進してくる剣先ツルギさん。どうも物理衝撃でよろめいてるだけでそんなに効いては無いのか?どんなタフネスしとんねん!手持ちの銃をリロード――に見せかけて2つとも投擲してくる。ウッドペッカーは撃ちながらクラリオンをぶん回して飛んできた散弾銃を叩き落としたところで背中から取り出した銃で2発被弾。発砲を諦めガードしかけたイヴちゃんに剣先ツルギさんが更に突進してきた。上からクラリオンの銃身で2丁のショットガンを押さえつけようとするが、銃の鍔迫り(?)を持ち上げて悠々と制してそのままイヴちゃんを空中にぶん投げた。クラリオンだけを撃って盾を構え2発被弾、盾をもう一度投げようとしたイヴちゃんに跳び蹴りが突き刺さる。辛うじて右腕はガードに回せたけどこれは不味いか。空中をかっ飛んでプレハブに叩き付けられて壁をぶち破り、奥の壁にウケミ。よしよし催眠学習しておいた甲斐があったな。僕のやる時ほどではないけど、ちゃんと衝撃を熱に変換できてる。右腕は痛くて上がらないみたいだけど、イヴちゃんはまだ諦めてない。ウッドペッカーを構え――後ろの壁が吹っ飛んだ。

「終わりだ」

 完全にホラー映画の登場の仕方やんけ。爆速で建物の裏に回ったらしい。ごりっと後頭部に2丁の銃を突きつけられ、盾とクラリオンを捨てるイヴちゃん。捨ててから左足を引いて左回し裏拳。容赦なく撃たれてイヴちゃんは意識を失った。47秒。まあかっ飛んだ時間もあるからそんなに変らんか。でも頑張ったし最後まで諦めなかったの偉い。

 

 イヴちゃんが意識を失ってる間、下江コハルさんと宇沢レイサさんが甲斐甲斐しく手当をしてくれた。っていっても湿布貼るくらいしかないんだけど。僕は意識失ってないから身体動かせない事はないんだけど、まあこの負けもイヴちゃんのものだから僕がカバーに回るのもおかしいかなって。右腕は折れてはなさそうだけどちゃんと救護騎士団に見てもらった方がいいと言うことで、救護騎士団がこの後来てくれるらしい。それに、宇沢レイサさんがイヴちゃんを膝枕してくれてるし。

「……どうして、あそこで諦めなかったのかな」

「イヴちゃんは強いので!!!」

「あ、あなたに聞いてないし!!!」

 

 イヴちゃんがかぶりを振りながら目を覚ました。

(……負けちゃった……)

(イヴちゃん、よく頑張ったよ)

(ジルなら、勝てた……?)

(うーん、あんだけ地力に違いがあるとなあ。最初に鍔迫りした時に全部捨てて蹴り入れたら、とか思わなくも無いけど、多分効かないだろうし。後は武器の違いで射程を、おっと)

「イヴちゃん、大丈夫ですか?!」

 下江コハルさんは意識が戻った途端にさっと離れたけど。宇沢レイサさんはそのまま抱いてくれている。温かいし柔らかいし良い匂い。

「うん……レイサちゃん、ありがとう。負けちゃった」

「ひひ……」

「『流石に後輩にすぐ負けるわけにはいかない。良い根性だった。空中で動けるようにした方がいいな』」

(……アサルトブースト使えばよかった……)

 そうだねえ。僕もイヴちゃんも『でかい武器は間合い詰めたらめっちゃ効くし当たるじゃんね』って思って間合い詰めがちだけど、相手の得物考えたら距離開けて撃った方がいい場合も勿論あるんだよな。今回はアドバイスも無しのつもりだったから何も言わんかったけど。

「きひ、ひひ」

「『火器の射程の違いを生かすように。1対1では中々難しいだろうが、環境と状況を作るのも実力のうち』」

「30mm砲弾が当たってましたけど……効いてないのですか……?」

「くひ?ひひっ」

「『いや、もちろん痛いし効いたが、私は耐久力回復力が並外れているので一気に撃ち倒されない限り早々倒れない。76mm砲でも直撃1発なら耐えたことがある』……。そうですね、ツルギの再生力は折り紙付です」

 言ってお腹をちらっとめくってみせる剣先ツルギさん。青あざみたいなのが確かにできてるけど、みるみるうちに治っていっている。すげー。「いや30mmもあるのあれ」「大砲じゃん」「振り回してる方も何発も喰らって耐える方も怖い」みたいなざわめきが見学者から漏れる。

(あ、イヴちゃん、チャドー呼吸して。ほら鼻から吸って、口から吐いて)

 スゥーッ、ハァーッ。戦闘が終わってから僕が痛覚預かってた右腕他の痛みが見る見る引いていく。この間の世界と噛み合った感覚以来、これも効果が気持ち以上に上がってる気がする。

「救護騎士団です。怪我人はどちらですか?」

「はいっ!」

「ずいぶん元気な怪我人さんですね?」

「……私が怪我人です……」

 鷲見セリナさんだ。膝枕されてるのを見てよっぽど重傷なのかとギョッとしていたけど、右腕他を見ると「軽い打撲のようなので湿布で大丈夫ですよ。痛みが続くならまた来てください」とのことだった。僕の感覚的にもそうだろうし、かなり痛み小さくなったしまあ大丈夫だろう。

「……ご心配をおかけしました。ありがとう、レイサちゃん」

 起き上がり際にきゅっと抱きつくイヴちゃん。ひゃい、とちょっと抜けた返事。

「くひひ」

「『タフだな。将来が楽しみだ。今日は昨日話題に上がったパルクールを指導してもらいたいが、可能か?』そうそう、ツルギ、あなたはティーパーティーから呼ばれていますよ」

 タフという言葉は剣先ツルギさんのためにある、のでは……?

「ぎひ」

「『最後まで訓練を見ていきたかったが済まないな。またよろしく』」

「……ありがとうございました。右手はちょっと痛いので、実技は厳しいですが、口頭なら……」

「私も少しは心得があります!!!高いところに登って名乗りを上げるのに必要なので!!!!」

 なるほどなあ、みたいな微妙な空気が流れつつ、今日は「高所を取ると射角も情報も得られ常に優位」という羽川ハスミさんの解説を受けながらイヴちゃんと宇沢レイサさんの指導の下、パルクールの練習。訓練場のプレハブだと微妙だったので正義実現委員会本部の建物の片付けをしてから外壁をよじ登るという不思議な絵面になった。危ないし不法侵入になる可能性もあるので平時に街の中とかでうっかりやらないように、という注意をしてから訓練を終え、シャワーを浴びて今日はジュースをご馳走してもらった。今日の反省会は高いところを取った後にどう利活用するかみたいな話だった。薄い屋根にうっかり重火器据えてぶち抜いたら使えなくなるからね。

 今日は2人は都合が付かず、宇沢レイサさんも夜のパトロールに当たってるらしいので軽くスイーツを食べてチョココロネを買って帰宅。今日はしっかり運動したしカロリー的には余裕。後でプロテインも飲もうね。




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 赤帯に戻りました。わー嬉しい。
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