ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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古書館の私物化ってそういう……まあ無秩序に人入られても困るのは確かなんだろうけど

 先生が帰ってこなくてしばらく経つ。っていっても別に何かあったわけじゃなくてアビドスに寝泊まりしているからだが。十六夜ノノミさんから安否を知らせる写真が送られてきてるから無事は間違いないし、リモートワークもできるから大丈夫っちゃ大丈夫なんだろうけど。紙の手紙類だけが溜まってないか心配だな~と思ってシャーレに顔を出そうと思ったのだけれども、よく考えなくても連邦生徒会の手があいた生徒が電子化して転送してるよね。……してるよね?

 そうそう、頼んだアレ(シール型GPS)は無事来ていた。磁気の肩こりを取るアレっぽい直径でぺらぺらなのでどっかに忍ばせたり勝手に貼るのにも便利。まあよっぽどの案件がないとやらんけど。

 とりあえず今日のお昼休み、宇沢レイサさんグループ(仮称)の皆に、トリニティ校章のメタルステッカー的*1を準備してその裏に貼って、全員の銃に貼ってもらうことにした。もちろん、ちゃんとGPS機能は緊急時にしか使わず2~3日しか保たないし、全員が参照できる状態にすることを説明し、どうしても嫌になったら焼いて捨ててもらうよう言った上でだ。お互いにGPS情報は参照できるスマフォアプリはインストールして*2、お互い位置情報参照を無条件許可するように設定はしたのだけれども、スマフォを拉致されたときに落としたり破壊されたりする可能性もあるので。銃も多分取り上げられはするから悩ましいんだけどね。拉致とか誘拐とか身近なキヴォトスまじでアレ。

「位置情報アプリにこんなのに、イヴちゃん心配性過ぎじゃない?」

「まあ、今は治安良くないですから……」

「ちょっと、スマフォのバッテリ切れるからいま位置情報参照するのやめてよ」

「……ふふ、通知100件以上来てる……」

 報野モユル(茶髪おっとり)さんが目の前にいる全員の位置情報を参照しまくってるだけなんだけど。気持ちはわからんでもない。ピンポンダッシュとかお好きでしょ。イヴちゃんの以外のスマフォはタフネスでも何でも無いからあんまぶるぶるさせると本当にバッテリヤバそう。通知乱打してないでお昼ご飯とかたべなさい。

「もう放っておいてご飯食べよ。レイサちゃん、あとでモバブ貸して」

「いいですよ」

「モバブあるんだ。じゃあ昼休み終わるまで何件通知送れるかチャレンジしよ」

「もーやだこいつ」

「……多分、アプリでしばらくしたら弾かれるから……」

「ミ゚」

「今どこから声出しました?」

 今日のご飯は宇沢レイサさんチョイス。テイクアウトできる和食屋のどんぶり飯。といっても女の子用にサイズ調整がしっかりできる。宇沢レイサさんは焼肉丼、朝吹ソフノ(黒髪ポニテ)さんは親子丼、報野モユル(茶髪おっとり)さんはカツ丼、イヴちゃんにはマグロ赤身刺身付ネギトロ丼。ツキジのネギトロめいた死、もとい普通にネギトロだ。美味しそう。

「みんなでちょっとずつ分けてよ~」

「モユルのも取るから」

「あっそのカツ大きすぎるよ~!隣のにしてよ~」

「いいですよ」

「……どうぞ……」

 今日も楽しそうで何より。ちゃんと全員違う具をちょっとずつ食べられたのも良かったねえ。隣の人の食べてるご飯って美味しそうに見えるよね。

 

 今日は古書館にやってきた。宇沢レイサさんといつも通り手を繋いで、報野モユル(茶髪おっとり)さんも一緒だ。

「あーこれ古書館なんだ。たまに通るけど何の建物なんだろって思ってた」

「私も初めて来ました!!」

「……大きい声を出すと、多分怒られるから、お静かめに……」

「「は~い」」

 駄目そう。

 

 駄目も何も、そもそも入れなかった。インターフォンを押したら古関ウイさんが出てきてくれたけど、初めましての挨拶する2人を見てあからさまに嫌そうな顔をする。

「古書館は部外者出入り禁止ですから……この資料だけ、お渡ししておきます」

 預かったのはUSBメモリだ。モモトークで送るには容量が大きかったから送れなかったらしい。中身を聞く前にあっさり追い返されてしまった。部外者出入り禁止だっけ???

(家でも見られるけど、どうする?)

(……図書館の端末、借りようかなって……)

 悪くない。2人も見たいかもしれないし。っていうか2人に見せても大丈夫な奴なのかな。危なそうなら僕が止めるか。

 

 図書館で久々に来てくれた事を円堂シミコさんに喜ばれ(結構ご無沙汰してた)、端末を借りて許可を得たうえでUSBメモリを読み込む。中身は15年前の新聞記事と情報公開によって開示された学園間の契約書の写し。

「なになに、『ミレニアムとレッドウィンターが衛星開発並びにロケット打上げで合意』。いつの記事、これ」

「契約書もありますね。あちこち黒塗りされてますけど」

「……これが、面白いのかな……?」

 宇沢レイサさんもイヴちゃんも報野モユル(茶髪おっとり)さんもあんまりわかってない感じだけど、わざわざ古関ウイさんがイヴちゃんに対して渡したってことはあれかな。

(この衛星についてミレニアムで調べてみなさい、ってことじゃない?)

(……なるほど……?)

 14年というのは初等部~高等部まで一貫して関わった生徒がいたとしても卒業しちゃうので事業自体が忘れられる一区切り。って『月刊学園研究』に書いてた気がする。

 

 宇沢レイサさんも報野モユル(茶髪おっとり)さんもテンション上がってうっかり大声出しちゃって円堂シミコさんに怒られたりはしたけど、楽しかった。

「うちの図書館、こんなに充実してたんだね~」

「はい!面白かったですね!」

「……もっと、通いたい……」

 学生証があれば8冊まで借りられるけど、明らか読み切れない量だなと判断してちょっと減らすように忠告したイヴちゃんえらい。2人が速読家の可能性もまあ無いだろうし。

 

 部活終わって合流したソフノさん含め4人でご飯――今日は鰻、キヴォトスでは絶滅危惧にはなってないらしい――を食べて満足して帰ってきた。イヴちゃんが本を読んでる合間にトレーニング。今日イヴちゃんが読んでるのは図書館で借りてきた『第一回公会議――トリニティ成立前史としての研究』という本。拷問と私闘を禁じたある学校の画期的な法の精神の登場の後に起きた大戦争でキヴォトス全体の倫理観が圧倒的に後退し、恐慌でとどめを刺された話とか、まだ最大最強の学校として君臨していた頃のアビドスの関わりだとかアリウスとかユスティナ聖徒会の話も出てきて面白いけど、イヴちゃん的にはちょっと堅苦しすぎたらしく、途中で飽きてしまったようだ。後で読もうかな。クロノスの中でも真面目な政治経済誌もあるらしく、その中の連載をまとめた単行本を借りてきたし、そっちも読まないとなんだけど。

 

 後は、寝る前にキヴォトスのニュースをイヴちゃんと一緒にチェック。まじでろくでもない扇情的な記事が多いな。何かまともな新聞があるとしたらだけど、課金して読まないとなのかな……って思っていたけど、治安機関関係者は『ヴァルキューレ週報』を無料で読めるらしい。早速登録してみた。まあヴァルキューレの中の人が書いてるんだから、ポジショントークはありで読まないといけないけど。うーんでも文章がまた堅い。イヴちゃんは力尽きて寝てしまった。ざーっと流し見て……『ヴァルキューレ活動予算、見直しという名の削減ありき予算編成を許すな』かあ……。「実績を出せないから予算が削減され、予算が削減されるから更に実績が出せない。このままでは独立性を失って他校の庇護下に置かれるか営利企業化するか、さもなくば解体されるのでは。SRTを見習い、優良生徒を一元運用しての特殊部隊の編成なども考慮すべき」SRTがこれからどうなるかって思うとなあ。まだSRT浮いたままなのかあ。先生になんか言ったらアクションしてくれるかな。いや、そもそもまだ動いてもない話で何ともならんか。予言が出来ます!とかカマしといたら良かったんかなあ。ボロ出ても困るししゃーないか。もうちょい読んだら僕も寝よ。

*1
金属製で相当強い粘着テープ付

*2
自警団参加してない2人はまだ入れてなかった




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