ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
正義実現委員会の訓練に定期的に参加するようになったり、ファン・レイン号*1の清掃1回目は割と使用頻度が高かった正義実現委員会の子達がやってくれていたり、ミレニアム廃墟の探索とレーダ設置の手伝いを続けたり*2と概ね平和?裏に日が経っていた。例の光る弾が出るグリースガンっぽい銃は高等部寮地下の射撃場で毎晩撃ってるけど、効き目は特に感じないかな。
後は、アビドスに先生とアビドス生の顔見に行きたかったんだけど何か微妙に都合合わないんだよな。
ある日の夜、僕が鍛錬する間にイヴちゃんがスマフォをぽちぽちしていて、「あ」と声を上げた。
(ジル、これ見て……)
(ん?何だっけこの変なコアラ?熊?みたいなの)
(……Mr.ニコライ。イブキちゃんに、もらったはずのタイプ……)
丹花イブキさんにモモトークで送ってもらった写真と突き合せるとあー確かにこれだわ。何何、『ブラックマーケットでファンシーグッズを探す人のブログ ペンを持っているタイプはいくつかありこの型は生産数が1,000程度と比較的少ないが、ブラックマーケットでは割合出回っている』。あー。うん、イヴちゃんの言いたいことわかっちゃった。
(行こっか、ブラックマーケット)
(ジル……ありがと。大好き)
ホアー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????????????????????????????????????????????
1時間くらいして正気に戻ったら、イヴちゃんの怒りのメモ書き「うるさいから寝る*3」が置いてあった。可愛いな~。いやごめんて。一応アレしながらも筋トレはちゃんとしてたっぽくて汗かいてるので、シャワー浴びて明日のブラックマーケット行く支度だけして寝るか……。
ブラックマーケットに行くのはもちろん宇沢レイサさん達にも内緒だ。イヴちゃんは誘う気満々だったらしいし、実際にはキヴォトス的にブラックマーケット行きは「ちょっとした火遊び」くらいの扱いではあるらしいのだが、何しろトリニティの校則的にはばっちり違反だし、僕はこれを口実にえらい目に遭う子の事を知っている。皆密告なんかはしないだろうけど、声が大きくてぽろんとしちゃいそうな子2人ほどいるし、伏せておくに越したことは無い。授業が終わってから部屋に戻ってきて私服に着替える。今日のイヴちゃんチョイスは白のタンクトップに青の都市迷彩カーゴパンツ、夜の狩りに行かなくなって突っ込みっぱなしだったコート(流石にインナーは外してある)を羽織り、盾と
(……忘れ物とか、大丈夫……?)
(銃も鞄も別物だと大変だよね。えーと、うんうん、まあ最悪財布と銃だけあったら行けるしヨシ)
(……スマフォ無いの、少し不安……)
(ローカルでだけ動作するタブレットに画像も地図も入れたし大丈夫だよ)
夜のお仕事用に使ってたスマフォも当然名義はイヴちゃんだし、こんな事なら飛ばしSIM*4と別スマフォでも調達しとくべきだったかな。いやそれこそブラックマーケットで1個買っとくか?でもそれを留守中に家宅捜索とかされて押収されたら不味いしな。電車の中でイヴちゃんに説明して我慢してもらおう。自警団の捜査名目でっち上げて堂々と行くってのも考えたけど、犯人追跡なんか自警団やってないしな。
やってきましたよブラックマーケット。スマフォ問題は別に暇なら脳内ライブラリの映画とか見たらええやんって気付きで解決した。
ブラックマーケット、銀行なんかがある奥の方はマジで治安も危ないらしいけど、入口辺りは別にそうでもない。明らかに遊びに来てるだけ、みたいな他校の制服を着た(学校によってはブラックマーケット通いが禁止されてないとこもあるらしい)子達がきゃぴきゃぴしている。何なら近くには連邦直轄鉄道の駅もあるし*5、酒や煙草、後は人身は売ってない(売ってるんかもしれんがブラックマーケット内ですら内密にやってるんだろう)辺り、裏で連邦生徒会と繋がってるんだろうな。多分紅茶様の例えで言うと連邦生徒会が企業と組んで管理してるゴミ箱みたいなもんで、まとめられるようになってるんだろう。だから安全かっていうともちろんそうでもないし、油断するつもりは全く無いけど。
(イヴちゃん、店の中の買い物以外は僕がやるから)
(……わかった……)
入口の辺りは危ない雰囲気を漂わせてるけど単なるバッタ屋的な故買屋がほとんどだ。文字通り深入りしたくないからこの辺りで見つかるならそれに越したことは無いので端から順に回っていく。消防法とかもお構いなしに昔のド○キみたいにみちみちに商品を詰めたり積んだりしてるのはちょっと見てるだけで面白い。色んな訳わからんといったら怒られるけど、知らんファンシーキャラ一杯おるなあ。中古の銃だの刃物だの警棒だのも見てると面白い。あちこちから横流しされたっぽい銃も沢山あるけど、ヴァルキューレの制式拳銃はたくさんあるのに全然値段がついてなくてちょっと切ない。
(あっ)
(あった?)
(……これ、昔、好きだった……)
青い蛙を模してるけど何故か額にV字型の角がある可愛らしいキャラクタ。けろ○ぴっぽいな。けろぴおんとかいう名前らしい。違うけどまあ別に急いてるわけじゃない。
(買ってく?)
(……見るだけにする……)
ぼったくりって程ではないけど、古のグッズなのもあって結構高いのだよな。イヴちゃんの好きだったこの蛙ぬいぐるみも別に買っても構わんけどちょっとなあって思うくらいには結構良いお値段を要求してくる。モモフレンズ、本当に人気があるグッズなのかなあ。店に棚1個あったら上等、くらいの占有率なんだが。
次の店は他と比べてぼろっちい店だった。ブラックマーケット入口という、安全な場所で火遊び感覚を味わいたい子達の寄る一等地としてははっきり言って勿体ないみたいな感じ。品揃えも他店に比べて精彩を欠くというか、正直しょぼい。
(……あっ!)
(うん?何か掘り出し物あった?)
イヴちゃんは一度通り過ぎたカウンター横のバスケットケース前に駆け寄る。
(……これ、凄い……)
バスケットケースの1番底に押し込まれるように入っていた鞘付のナイフを、ぬいぐるみやら他のがらくたみたいな置物をかき分けて取り出した。うん?イヴちゃん何でこれ見付けたんだ?って思ったけど、確かにバスケットケースだから底が見えないわけじゃないか。鞘には『nonfire』と書かれている。
「あの……これ、見てみてもいいですか……?」
しょぼくれたおじいさんっぽい犬の人が古本を読みながらレジに座っていて、イヴちゃんが声をかける。
その時、その犬の人がナイフを見た時の表情は明らかに驚愕としか言いようがないものだった。
「あっ、ああ……いいよ。錆びて抜けないなら無理に引き抜かないでね」
はは、と乾いた笑いを漏らし、立ち上がって奥の部屋*6に入っていった。奥さんっぽい老女?の犬?と何か言い争っているのが断片的に聞こえる中、イヴちゃんは周りに気をつけながらナイフを抜いた。刃渡り18cmくらいだろうか。刃の背側、柄の先数センチ先が鋸状になっているいわゆるサバイバルナイフだ。色合いは照り返しがない鈍い銀色という感じ。
(……凄い綺麗……欲しい……)
普段、イヴちゃんというかキヴォトス人はあまり刃物に興味を示さない。白兵戦用としては効果が薄いどころか、下手をすると肌すら傷つけられずに折れるから鈍器の方が推奨されているくらいだ。刃物を実用レベルで扱う狐坂ワカモさんは例外だし、僕も買ったけどキャンプの時に折角だからって使っただけで結局ぶら下げてるだけ。何か、何となく嫌な予感がするんだけど何だろうなあ。でもぼろい店の小汚いガラスケースに映ったイヴちゃんは宝物を見付けたように目をキラキラさせていて、僕の何となくでやめとこうっていうのは気が引けた。
(ま、まあそんなに気に入ったなら買う?)
「お、無事抜けたかい。こいつには説明書もあるんだ。よかったら上げるよ」
古代語*7で書かれてるな。これはヘブライ語か。Bも一応勉強はしてるけど全部はぱっと読めない。でも、タイトルははっきり読めた。
「……お値段は、おいくらですか?」
「結構古いもんなんだよね。でも、私らも置いてある事すら忘れてた物だし……特別に1万でどうだろう?ネットなんかなら好きな人はもっと出すと思うんだが」
僕が考えに浸っている間に、一度やってみたかったらしい値引き交渉をイヴちゃんがし始めた。店主さんも応じてくれている。
「この値段だから、返品はできないよ、いいね」
満足の行く結果らしく笑顔でこくこくと頷いてお金を渡したイヴちゃん。普通のナイフより安い値段、6,500円で買えた。おまけでナイフポーチまでつけてくれそうになったが持ってるので断った。
初めての値引き交渉も楽しんだっぽくてほくほく顔のイヴちゃん、目的忘れてない?今日はナイフポーチつけてないから鞄にナイフを放り込んでから、僕に交代して店の壁を背後にしてタブレットを取り出し、念のため途中で見落としてなかったかグッズを再確認。
(……誰か近付いてくるね……)
(うん、ちょっと見てみる)
ブラックマーケットの奥側から、どうも僕達に向かって歩いてくるっぽいんだよな。この店が目当ての可能性もあるけど。道の向かいのカーブミラーにちらっと目をやる。トリニティの制服にブロンドのツインテール、白いバックパックに茶のタイツ。あっ。トリニティ学園の人間と接触したくないし離れようと思った瞬間、とんでもない速度で間合いを詰められた。
「あの!!!もしかしてですけど、Mr.ニコライさんのグッズをお探しなのでは?!」
で、出た~~~~~~~!!!!!!Ms.ペロキチこと阿慈谷ヒフミさん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ナイフを買う下り、大好きだった洒落怖の某話をオマージュしています。
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