ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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 初期先生のどうしようもなさが垣間見えるのが好きです。当該話は先生に関してそういった描写があります。
 また、キヴォトスの倫理観は割と終わっており、かつ闇銀行は所詮犯罪組織という割り切りがあり、先生はキヴォトスに割と早く染まってしまっているという前提で書いております。


ん。銀行の襲撃に対戦車ライフルが使われた実例もある

 鯛焼き屋近くの小さな公園、ベンチや植え込みの縁などに思い思い腰掛ける皆。アビドスの皆が何故ここにやってきたか、先生がシッテムの箱に映っている数々の鹵獲兵器を阿慈谷ヒフミさんとイヴちゃんに見せる。

「なるほど、兵器の流通経路を……」

 っていうか、アビドスの皆がここに来てるってことは、もう黒見セリカさんは誘拐されて無事奪還された後なのか。先生に訴えておいたことが役に立ったなら良かったけど、とにかく無事で何よりだ。

「あ、返還期限切れの押収品、いい感じに使えてるよ。ありがとね、イヴちゃん」

「……いえ、私は何も……」

「あんなの取りに来るわけないもんね」

「ん。取りに来たら校門横に銃を置いてから入ってもらう」

 入ったら無抵抗でボコられるのがわかってるのに、そりゃ誰も取りに来ないだろうな。

「それに、アビドス高校の校則をちゃんと読み直したりするきっかけにもなりました~☆」

『ついでに現状確認の総ざらえをしましょう、って地籍図も見たら、土地の大半がカイザーグループに渡ってしまっていることもわかりましたけどね……ふふ……うふふ……』

 暗い顔で笑う奥空アヤネさん。

「あ、あの、とにかく、ただ歩き回って冷やかすだけでは、ちょっと難しいかもしれません。ブラックマーケットは広大ですし、独自の治安機関に金融機関もあって、独自の経済圏が構築されていますから」

「なんかヒントでも探すしかないんだどね~。2人とも、何かブラックマーケットの大物にコネとかない?」

 ふるふると首を横に振る阿慈谷ヒフミさんとイヴちゃん。

「ブラックマーケット、ある意味すごいですね~☆」

「"広さだけでも普通の学園いくつ分あるんだろうね"」

「面積と経済力、どちらも並の学園2~3個分はあるそうですよ。3大校はもちろん、百鬼夜行、山海経、レッドウィンターみたいな列強クラスほどではないでしょうけど……」

 自力で治安維持出来るクラスの学園ほどじゃないけど、相当デカいってわけかー。はえー。

「……企業が主導権争いをしてる、って聞いた……。ちょっと雇われたい……かも……」

 こんなところに噛んでる企業、ろくでも無さでいうたら相当立派な気がするね。ムラクモとかクロームみたいな名前があったら僕もくらっと来ちゃいそうだけど。って冗談だよね……?

「あはは……冗談ですよね……?」

「でもヒフミさん、本当に詳しいですね」

「そうですかね?危ないから、下調べをしっかりして来ただけですが……」

「よし、決めた。ヒフミちゃんは道案内もお願いできそうだし、イヴちゃんは腕っぷしに自信あるでしょ?おじさん達の捜し物が見つかるまで付き合ってよ」

「ええっ?!」

「わあ☆良いアイデアですね!」

「ヒフミさんとイヴちゃんがいいなら、お願いできませんか?」

(イヴちゃん銀行強盗はしないって釘刺して!!!!!!!!)

(?????銀行、強盗……??わかった……)

「……銀行強盗以外なら……」

「ん。銀行は襲う」

「襲わないわよ?!」

「あ、あうう……私なんかでお役に立てるかわかりませんが、お世話になりましたし、喜んで引き受けます」

「よーし、じゃあ、ちょっとだけよろしくねー」

 

 といっても、やることはそれほど変わらない。冷やかす店の種類が変わっただけだ。先生はどうしてもタッパとヘイローのない大人であることから目立つので、同じデータを保存して持ってきていた十六夜ノノミさんが中心に聞き込みをしている。

「それにしても……ここまで入手経路を隠すのは異常ですね」

「なに、ヒフミちゃん。普通はできないって感じ?」

「できなくはないですが、ここまでやるか、って感じです。ここに集まってる企業は、ある意味開き直って悪さをしてますから、逆に変に隠したりしませんし、ロンダリングするにしても、もう少し安上がりな方法がありそうですが……」

「……適当な不良に渡して、戦ったフリさせて捨てさせて拾う、とか……?」

「ヘルメット団には企業のスポンサーがついているところがあるそうですから、そういうのもありえますが……」

 

 収穫がさして無いまま数時間歩いた。皆ちょっとくたびれてきている。

「ん……?」

 ふと、砂狼シロコさんが通りを横切る現金輸送車を見た。

「シロコちゃん、襲っちゃ駄目だよ」

『あれ、今朝集金に来たカイザーローンの車両では……?』

「ほんとだ。あいつ、毎月来てる銀行員よ!」

 通りの先、ブラックマーケット内でも特に立派な建物の前で車両が止まり、頑強そうなオートマタが2体迎えに出てきた。降りてきたロボットを見て、アビドス勢は間違いないと言いあう。区別つかんねんな……。

「えっ、カイザーローン……?!あの建物、ブラックマーケットの闇銀行ですよ」

「え、ブラックマーケットに銀行があるの?」

「もちろん、普通の銀行と違って後ろ暗い組織ではありますが。キヴォトスの盗品の15%があそこに流されているのだとか。横領、強盗、誘拐、あらゆる犯罪行為で得られた財があそこに流れ、違法な火器や兵器に変わって、また別の犯罪に使用される。お金という論理以外は何もない犯罪の基点の1つですね」

「銀行が犯罪を煽っているようなものでは?」

「あの闇銀行自体も犯罪組織ですから……」

 キヴォトスまじで闇深すぎんよ~。

「連邦生徒会は何をやってるのよ!」

「……連邦生徒会としても、あちこちで悪さをされるよりは……まし……?」

 イヴちゃんの呟きに一瞬黙り込む一同。

「アビドスの事にだけ気を取られてて、外の世界を知らなさすぎたかも」

 ぽつぽつと言う砂狼シロコさんの呟きを遮るような、重々しい統率の取れた足音。

(イヴちゃん、気をつけて。何か来るよ)

「……何か、来るかも……」

『武装した集団が接近中です!気をつけてください!』

「あっ、マーケットガードです!隠れましょう!」

 阿慈谷ヒフミさんの指示に従い、建物の陰に隠れる一同。

「……装備が、整ってる……」

「ブラックマーケットの治安機関でも、最上位の組織ですから……」

 さっきの現金輸送車のための警戒をしているらしい。通りの向かい側にも同じような連中が展開している。現金を例の銀行員が引き渡し、車両共々去って行った。

「さっき、カイザーローンと仰ってましたね」

(カイザー、嫌い……)

(ほんとだよね。いつかしばく)

「有名なの?不味いところ……?」

「グレーゾーンで上手く振る舞っている多角的企業で、トリニティの区域にも進出しています。『ティーパーティー』が目を光らせてはいるのですが……」

「……遠慮してる、感じ……?この間、パテル分派のお茶会でも、カイザーの人がいた……」

 ふぅ、と溜息をつく阿慈谷ヒフミさん。

「そうですね。ティーパーティーの各派閥にも最近たくさん献金しているようです」

「うへ~。大きいところには大きいところの悩みがあるんだねぇ~。お金もらっての悩みなのは贅沢だけどさ」

「ところで、皆さんの借金とはもしかして……カイザーローンからアビドス高校は融資を……?」

「借りたのは私達じゃないし、話すと長くなるのですけどね……」

「アヤネちゃん、さっきの現金輸送車のルート調べられる?」

『駄目そうです。全てのデータをオフラインで管理しているみたいです』

「そういえば、返済も現金だけでしたよね。それはつまり……」

「返したお金が、ブラックマーケットの闇銀行に……?」

「私達の働いたお金が、犯罪資金になってたってこと?!」

 再びの沈黙。

『まだそう決まった訳では……証拠も足りませんし。あの現金輸送車の動線を把握して……』

「……集金確認の書類、渡してた……」

「あれを見たら証拠になりそうです……が、書類はもう銀行の中ですね」

 しまった。さっき現金輸送車粉微塵にしておけば銀行強盗しなくて済んだのか。ああ~。もう遅いが。

「闇銀行のセキュリティはブラックマーケットの中で一番固いですし、マーケットガードがたくさんいる中では……。それ以外の集金ルートの確認方法は……」

 先生がシッテムの箱で防犯カメラハッキングと画像解析して追いかけるとか?

「うん、他に方法はないよ。ホシノ先輩、ここは例の方法しか」

 あっ、やっぱりハッキングでいける?っていうか、僕もこの間話に出ただけでまだ全然ハッキング勉強できてないしな~。

「なるほど。あれかー。あれなのかー」

 いや現実逃避してる場合か?嘘でしょ……。

「ええっ?!」

「あ、そうですよね!あの方法なら!」

「……普通の金庫なら、ウッドペッカー(30mmMG)で何とかなったかも……置いてきたの、残念……」

 イヴちゃん?!?!?!?!?!っていうか何で判ったの!?

(そっかさっき銀行強盗はしないって言ったからか~。あれネタ振りじゃないからね?!)

「えっ、まさかあれ?私が思ってるあの方法じゃないよね?」

 砂狼シロコさんがこくりと頷く。ちょっとごめんイヴちゃん代わって?!

「あのう、全然話が見えないのですが……」

「残された方法はたった一つ」

「せ、先生……」

 僕の震え声は生き生きとした砂狼シロコさんの頷きの前に消えた。

 スッと取り出された覆面4人分。

「銀行を襲う」

「はいっ?!」

「だよねー、そうなるよねー」

「はいいっ?!」

「わあ☆悪い銀行をやっつけちゃいましょう!」

「えええっ、ちょっと待ってください!」

「せ、先生……?」

 もう一度声を振り絞る。先生はかがんで僕と目線をあわせ、目をあわせた。これは希望が。

 先生は僕に手を伸ばし、スカーフをほどいて優しい手つきで僕の頭に巻き付ける。変に巻き付けただけ。先生の下手くそ!!ゲリラ巻きはこうすんの!!!夜の狩りでやり慣れてたのでしゅぱぱぱっと巻き終える。ってそうじゃねえ~!!!!何いい笑顔でサムズアップしとんねん!!!!!Pip-B○yみてーな表情すんじゃね~!!!!!!

 ってしまった?!何か参加表明みたいなことしてしまった?!

(……ジル、私がやるよ……)

(イヴちゃん?????)

(今日が、支払日(Payday)ってことだよね……)

(イヴちゃん?!?!?!?)

「イヴさんまで?!」

「ふう……マジか。みんな本気なのね。じゃあ、とことんまでやるしかないわね!」

『はあ、了解です。止めても無駄でしょうし……どうにかなる、はず……』

「ごめん、ヒフミ。あなたの分の覆面は準備がない」

「うへー、ってことはバレたら全部トリニティのせいだって言うしかないねー。幸い、トリニティ生が2人もいるし」

 何が幸いやねん。バレたら守月スズミさんに張り倒されるだけで済まなさそう。まー金目当てじゃないし寧ろ守月スズミさんもサムズアップしてくれるかな。いや想像つかんわ。

「ええっ……!?そ、そんな……ふ、覆面……何故……?」

「ヒフミちゃん、とりあえずこれをどうぞ☆」

 数時間前に買って捨てる場所がなかったからだろう、十六夜ノノミさんが折りたたんで保管していた鯛焼きの紙袋。まだほんのり小麦とあんこの良い匂いがする。

 マジックで5と書かれた紙袋を被った怪しい女子高生が誕生した。

「見た目はラスボスだね」

「似合ってますよ~☆」

 僕もイヴちゃんに代わる前に、さっき貰ったぼろっちいエコバッグの端を引きちぎってマジックを借りて文字を書く。R.I.P.9/JE。0~5が埋まってるし666にするかな~ってちょっと思ったけど、ここは白い閃光か、赤い破壊者にあやかろう。

Requiescat in pace(安らかに眠れ)ですか……」

「?御蔵イヴなんだから、E.MかM.Eにしないの?」

「セリカちゃん?」

「それはちょっと……」

「……本名のイニシャルは、さすがにちょっと……」

「それはない」

「ん」

 全包囲からツッコミを受けて真っ赤になる黒見セリカさん。可愛いね。

「う、うう……どうしてこんなことに……」

「さっき『今日は付き合ってくれる』って約束したもんね」

「私、もう生徒会の人達に合わせる顔がありません……」

「大丈夫!悪いのはあいつらだから!」

「じゃあ、先生、例の台詞を」

「"銀行を襲うよ!"」

「はいっ!出発です☆」

『覆面水着団、出撃しましょうか』

 そうだった。そんな名前だったな。こんな集団に参加した上で銀行強盗っておいは恥ずかしか!生きておられんごつ!

 まあ正直ね?いきなり壁よじ登ったりして逃げたら何とかなりそうな気もするんだけどさ。前世で好きだったゲームの名シーンを実際に見られるってなるとさあ。

 一番問題なのはここがゲームじゃなくて現実だってことだけどね!すまっほ置いてきて良かった~。バレませんように。っていうかみんな校章とか学生証は隠して????




 金庫のサイズによってはメートルクラスの厚さのところもあるらしいので実際は金庫次第なのでしょうけど。昔、仕事で行った日本銀行はどうだったか思い出せないのが悔やまれます。

 評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。
 赤帯大変有難い。励みになります。嬉しい。
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