ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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終わりなき襲撃 いやポリスメンとかが来るまでに終わらせないといけないんだけど

 現金輸送車が去ってから、マーケットガードは闇銀行前から散っていっていたが、正面玄関前に2人(2体?)残っている。

 マーケットガード左側とすれ違いざま、僕が首元に上段突き。右側は小鳥遊ホシノさんが後頭部に一撃。くずおれる2人を大きな音がしないよう優しく横たえる。もう一発念のため顔面に横蹴り。小鳥遊ホシノさんも同じように頭頂部をぶん殴っている。じゃあ、イヴちゃんに後はお任せ。

「さ、行こっか」

「……わかりました……」

「先生は外からハッキングといざというときの指揮と支援をお願いします~☆」

「ん、それまでは私がやる」

「腕が鳴るわ!」

 覆面水着団の先頭に砂狼シロコさんが立ち、自動ドアが開くと同時に天井めがけ一斉射。

「全員命が惜しければ動かないで」

「うへ~、怪我しないのは大事だよね~?」

「あ、あはは……。その、皆さん、怪我をしては大変ですから……」

 客も行員も警備員もひとまずは伏せたりしゃがんだりする。

 右手のカウンター手前側、非常ベルに手が伸びた行員にイヴちゃんが走り寄って足払い。実際には非常ベルも先生のハッキングで死んでるはずだが、万が一もあるもんね。

「……ばら売りで向かいの露店に並びたくないなら、大人しくして……」

 ひゅー!イヴちゃんかっけー!!!!

「監視カメラの死角、警備員の導線、マーケットガードの巡回経路と時間、全部頭の中に入ってる。命が惜しければさっきの現金輸送車の」

「わっ、わかりました!債券でも現金でも金塊でも何でも持って行ってください!命だけは!!!」

 慌ててバッグに山のように現金が詰め込まれ、おまけのように帳簿が突っ込まれる。アビドスのものだけではなく、擬装用に複数持って行くつもりらしく、砂狼シロコさんのきびきびとした指示だけが響く。

 あっ、隅っこのソファのところに便利屋68のみんながいる。伊草ハルカさんもちゃんといて一安心。変な流れにならんで良かった。のか……?雑草とか食べる暮らしも本人が楽しければまあいいんかな……。

 

 と思っている間にバッグ詰めが済んだらしい。大体4分くらい。もう一斉射して撤退する覆面水着団。なおイヴちゃん以外は普通に制服だし結局校章も隠さなかったもよう。

「あはは……。皆さん、お怪我がなくて何よりです。それでは……」

「すぐにマーケットガードを呼べ!!!」

 もちろんまだ警報は死んだままだ。皆、覆面のままブラックマーケット外れまで走り始めた。

 

 2~30人程度マーケットガードを撃退した後、無事にブラックマーケットの領域外に離脱成功した。

「あ~、ひやひやしたね~」

『上手く行って何よりです……』

「も、もうティーパーティーの皆さんに合わせる顔が……トリニティの、ティーパーティーの顔に泥を塗りました……」

「あっ、何これ?!」

 鞄を開けた黒見セリカさんが絶句していた。皆で鞄を覗き込むと冗談のような大金が詰まっている。連邦生徒会本部が書かれた10,000円札。

「"大金だね……"」

「いくらくらいあるんだろ!これでかなり借金が返せる!」

「セリカちゃん、それは駄目だよ」

 真面目な顔の小鳥遊ホシノさん。

「えっ、で、でも、このお金はあいつらが汚いことをして……」

「そう、ですね。紙幣番号の追跡もされるかもしれませんし、手を出さない方が……」

「それに、今回『あいつらは悪いし仕方ないんだ』って言い訳して使ったら、きっと私達はまた、今度は闇銀行じゃない銀行を襲ったりするよ。こんな手段に頼るようになって、アビドス高校を再建しても、それが誇れることかな?」

『私もホシノ先輩に賛成です』

「で、でも……そ、そうだ、ノノミ先輩とシロコ先輩は?」

「私も先輩に賛成ですね☆」

「ん……。銀行を襲うのはまたしたいけど、このお金は……」

(……マネーロンダリングの仕方、ジル、知ってる……?)

(美術品なんかに換えちゃうか、どっかの組織が物資調達の時に代わりに使ってもらって……いや駄目だよ?)

(……冗談……)

「決まりだね。私達に必要なのはこの帳簿だけ。お金は置いていくよ」

 しぶしぶ黒見セリカさんが頷く。イヴちゃんが鞄を持ち上げた。

「え、何?イヴちゃんが持ってくの?」

 恨めしげに見る黒見セリカさんの声に、イヴちゃんは首を横に振る。

「……大金の重みを、体験したいだけ……」

「なるほど。えっと……現金でこの重さだと、1億円くらいでしょうか☆」

「持っただけでわかるんですね……」

 皆がお金の入ったバッグを持ち上げたりしてキャッキャしていると、ブラックマーケットの方から誰かが走ってきた。

(イヴちゃん、誰か来る。覆面して)

「……誰か来るよ」

『誰か来ます』

 慌てて覆面を被り直す一同。先生は茂みに隠れた。

「ま、待って!敵対する気は無いわ!」

 陸八魔アルさんだ。よほど慌てて走ってきたのだろう、はぁはぁと息を切らしている。後ろの方で小声で「何で便利屋が?」「偶然では……?」と囁きあう声。

「あなた達、闇銀行を襲うなんてさぞかし名のあるアウトローなのよね!名前を教えてくれないかしら!?いえ、コードネームとかでも……」

「私達は覆面水着団♣本当は覆面に水着が正装なのですが……」

「『目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く』がモットーだよ~」

「そして私はクリスティーナだお♧」

「……R.I.P.9(アール・アイ・ピー・ナイン)……JE(ジェイ)……」

「か、格好良い……!しかも語尾でキャラ立てしてる人まで……?!」

「おっと、そろそろ次の仕事の時間だ。また会うことがないのをお互い祈ろうか~」

「ん、行こう」

「あ、あはは……失礼しますね……」

 感動する陸八魔アルさんと夕日をバックに撤収する覆面水着団とこっそり合流するために立ち上がった先生。うんうんこれもまた青春だね。そうか??

 

 適当なファミレスに入った一同と合流した先生。金は置いてきたから帳簿を見るだけだ。皆思い思いの食べ物を頼んで、ドリンクバーで順繰りに飲み物を取ってくる。こんなところで集まっている子達が銀行強盗帰りだなんて誰も思わんだろうな。

 帳簿を見る――前に。ふんすふんすと興奮した様子の砂狼シロコさんが身をテーブルに乗りだした。

「みんな、どうだった?」

「え?何のこと?」

「ん、銀行強盗」

 完全に自分の趣味のイベントに初参加の友人を誘った後に打ち上げをしている人のノリだ。

「あ、あはは……もう二度としたくないですね……」

「……楽しかった……けど、私も一度で十分……」

「おじさんもあんな疲れることはごめんかな~」

「襲う側も体験しておくのは有意義かもですね☆」

「案外、悪くなかったかも」

『セリカちゃん?!』

「うへ~、勘弁してよ~」

 皆が笑う。先生は苦笑い。僕もまじで勘弁してくれって思った。

 

 飲み物を飲んで一息ついてから、皆で帳簿を開いた。アビドスの名前と今日支払った額が載っている。

『やっぱり、私達が返済したお金はあの闇銀行に渡っているようですね……』

 重苦しい溜息が誰かから漏れた。

「……これが、アビドス……?じゃあ、これは……?」

 えーなになに。アビドス高校から現金700万ちょいを受け取って、その現金をそのまま右から左で他に持って行ってるのか。まあそら一々銀行に寄らないよな。現ナマでしかやりとりしないんだろうし。

「あの、そもそも利息だけで700万円以上も……?一体、アビドス高校はいくら借りて……?」

「9億6235万円」

「……凄い金額……」

(改めて聞くと凄いよねえ)

 阿慈谷ヒフミさん絶句するタイミングで、食べ物が順次配膳された。イヴちゃんはバルック・エクメーイ(トルコ料理の鯖サンドイッチ)。イヴちゃんこれ好きだよなあ。このチェーンに入ると間違いなくこれを頼んで、レモンを山ほど絞り、塩を1つまみするのが最近のイヴちゃん好み。

「え~と、イヴちゃん見せて。どれどれ……カタカタヘルメット団に補助金、500万円」

「えっ?!うちを襲ってきてる奴らでしょ?!」

「なるほど。カタカタヘルメット団のスポンサーがカイザーということなのですね」

『土地買収に邪魔だから、という線がますます濃くなりましたね』

「でも、アビドス砂漠なんて何もないけどね~。お金になるものがあったら、とっくに手つけてるし」

「ん……逆にわからなくなってきた……」

『そうですよね……』

 チェーンとはいえ安価で高レベルな美味しい飯にケチがつく空気だが、まあこの流れで明るく楽しくなりようがないよな。半分オツヤ・リチュアルみたいな雰囲気になってしまい、何となく食事に集中というか逃避する一同。先生はホットコーヒーを飲みながら、熱心に帳簿を見ている。

 

 サラダだけしか頼んでなかった阿慈谷ヒフミさんが、ミニトマトをつつき回すのをやめて口を開いた。

「と、ともかく、アビドス高校の現状と、カイザーグループについては、ティーパーティーに報告しようと思います。イヴさんも同席してくれませんか?」

 頷くイヴちゃん。あっ、ちょっとだけイヴちゃん代わって。

「……構いませんが、私とヒフミさんは、学園内で知り合ったということで、お願いします。証拠資料は、交戦して逃げられた不良の落とし物ということにしましょう……」

「あ、あはは……ブラックマーケットで友達になったなんて言えませんしね……」

 ほんまやで。っていうか今気付いたけど、レインコートか何か買って皆に羽織ってもらえれば良かったのか。何となく水繋がりだし、制服も隠れるし。次がないことを祈るけど、次があったら提案しよ。

「トリニティが動いてくれるならすごく助かる!」

「いや~、ティーパーティーは少なくともアビドスの現状については知ってると思うよ~」

『えっ』

「えっ」

「そうですよね~」

「3大校クラスなら、他の学校の状況は定期的に調べてるでしょ。アビドスは元最大最強の学校だったんだし、情報更新はしてる。と思うのは自意識過剰かな~?」

「で、でも、同じ学校のヒフミさんとイヴちゃんが言ったら助けてもらえるかも」

「……私は、影響力ないから……」

「仮に助けてくれるって言われたとしてもさ、私達はマンモス校の動きをコントロールできないんだよね~」

「なにかされるかも、ということですか?ナギサ様に限ってそんなことは……」

 えっそうか???めっちゃしそうじゃない???偏見かなあ……?

「善意であったとしてもだよ。悲しいことにね」

「『銀の弾丸』はなかなか見つからないものですね~」

「え、何?銀の弾丸って高そう!」

『セリカちゃん、狼男に効く銀の弾丸を万能の解決策になぞらえた例えです』

「へえ~」

 素直に感心する黒見セリカさんが砂狼シロコさんを見る。

「ん。銀は柔らかいから、銀の弾丸で撃たれたらきっと私は凄く痛い」

「シロコちゃん以外も一緒かもね~」

 皆の控え目な笑い声。空気がかなり軽くなったね。場を和ませるために何か言おうか迷っていたっぽい先生も安心してまたコーヒーを飲んでいる。いや先生ご飯とかは?あ、まだ来てないのか……。

 

 それにしてもティーパーティーとまたOHANASHIか~。やだな~。桐藤ナギサさんはじめ、ティーパーティーの行政官とか近衛師団(正義実現委員会とは別にティーパーティー直属の衛兵がいる。砲兵隊もここの所属。実際に師団規模の人数はいないらしい)の人達何かすげーじとっとした目でイヴちゃんを見てくる子いるし。まあでも嫌がっててもしょうがないか。明日までに考えないとな。




 火曜日に無事書けましたが、水・木は病院ハシゴの予定と金曜も所用があって多分土曜まではお休みになりそうです。すみません。

 評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。
 赤帯大変有難い。励みになります。嬉しい。
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