ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
いつも通りの授業、いつも通りのお昼休み。昨日の話をする訳にはいかないから、その辺は誤魔化すしかなかったのだけれども、普段隠し事をあまりしないから不自然さが凄く、宇沢レイサさんグループの皆にくすぐられて笑い転げてたイヴちゃんを尊いなあ……って思いながら眺めてたジルです。こんにちは。
今日のお昼ご飯チョイスは
「ソフノっちに任せるんじゃなかった~。こんなん絶対お腹空くじゃん」
「モユルは嫌なら食べなくて良いよ」
「あー嘘!ソフノさんのチョイス最高!」
「味は美味しいですよ?」
「……美味しい。でも、確かにあんまりお腹に持たないような……」
「パンをたくさん噛むのよ。そうすると保つから」
味は良いんだよな確かに……。あとまあ確かに噛むのは大事。
「つーか筋肉ばっかりなのにまだ痩せたいわけ?」
「油断するとすぐつくから……モユルはいいの?」
「彼女が『これくらいが最高!もちもち!』って褒めてくれるから~。こないだもさ」
「うざ。聞くんじゃなかった」
さて放課後。1年の教室に阿慈谷ヒフミさんが迎えに来てくれた。何でも「後輩の様子を見に来るというのに憧れてました」とのこと。先輩が呼びに来てティーパーティーに行くということでちょっと皆心配していたけど、まあ怒られに行くわけじゃ無いし、説明は僕からするから大丈夫。ってまあ僕がやるやらんはわからんだろうけど。っていうか怒られないよね?
昨日書いた報告書、後で残るとまずい部分*1を省略しておいたらまじで簡素極まる形になってしまった。一応阿慈谷ヒフミさんにも渡しておく。昨日の一件そのものはイヴちゃんは不良を張り倒した以外は無関係で通す気だし、去年の話だから話を合わせるも何も考えなんでいいだろう。
あ、先生からメッセージが来てる。『今日トリニティのティーパーティーに話をしに行く用事があるから、会えないか」という趣旨でイヴちゃんが了承の返信をしていた。
割と頻繁に来てる気がするけど、あんま来たくないなティーパーティー。形式張ってるしなんか近衛の皆さんに「よう知らん雑種が伝統あるティーパーティーによォ……」みたいな目で見られてる気がしてならんのだよな。妄想かもしれんけど。
紙報告書をティーパーティー事務局に出して終わりか代理人に話を聞いて終わりかと思ったが、今回も桐藤ナギサさんが会ってくれるらしい。盾と銃2丁を近衛の人に預け*2扉を開けてもらう。
「よく来てくださいました、ヒフミさん、御蔵さん」
「やっほ、ヒフミちゃん、イヴちゃん」
2人とも凄いお嬢様というかお姫様感凄いな。イヴちゃんもお姫様力では負けてねーが。「こんにちは、ナギサ様、ミカ様」
「……こんにちは……」
阿慈谷ヒフミさんはしょっちゅう呼ばれているのか場慣れした感じ。イヴちゃんは固いけど、ガッチガチってほどでもない。
しかし桐藤ナギサさん、まじで阿慈谷ヒフミさん溺愛してるんだな。こないだとも、今日のイヴちゃんに対する態度も全然違う。別にイヴちゃんは向こうからしたら関わりも薄いフラットな1生徒で、片方は溺愛してる子ってなったら流石に政治慣れしたトップの子でもちょっとは態度に出ちゃうんだな。
むしろ聖園ミカさんの方がフランクな分、2人の扱いに差がない感じまである。
(じゃあ代わるね)
(うん……お願い……)
「さて、ティーパーティーの皆様はお忙しいと思いますから、手短に申し上げます」
流れるように『トリニティ自治区外で、たまたま知り合った御蔵イヴ及びアビドス高校生徒と協同で不良を撃破した際、逃走した不良が落とした資料』として例の帳簿のコピーの一部を手渡す阿慈谷ヒフミさん。嘘750くらい並べてるのに全然表に出てない辺り、傑物なのは間違いないんだろうな。あわせてアビドス高校の現状について伝え、背後にカイザーグループの思惑があるという推論込みで話していく。
例の
「アビドス高校については確かにティーパーティーでも把握しています」
「ま、可哀想ではあるけどよくある話だよね」
「その、何とかなりませんか?」
「いや、正直さ~、よその学校の話は連邦生徒会の領域じゃん?」
正論だ。連邦生徒会が麻痺してかつてんでやる気が無いから宙ぶらりんになってしまっているというか制度の隙間に落ち込んでるというかなんだが。
「各学園は、相互内政不可侵が原則です。それに、アビドス高校を救済するコストを払うことを、全生徒に説明できますか?」
うっ、と言葉に詰まる阿慈谷ヒフミさん。トリニティの領土から集めた税という銭を出す以上、説明しうる理屈は必要だよな。現状のアビドス、なーーーーーーーーーーんもねえから多少考えても何も出ない可能性高いが。
僕は小さく手を挙げた。
「ん、イヴちゃん、何かあるの?」
「その、ゲヘナ学園との何らかの条約締結をされるのですよね?」
「あれ、まだイヴちゃんに言ってなかったの?自警団に下ろしてない感じ?」
ふぅ、と溜息をつく桐藤ナギサさん。じろりと仕事が遅いだの野次る聖園ミカさんを一瞥した。
「確かに、ゲヘナ学園との不可侵条約を締結する予定です。それがアビドス高校とどう関わりが?」
手持ちの報告書とあわせて
「アビドス高校は生徒数5人しかいませんが、1人1人が極めて強力な戦闘能力を持ち、かつ独立した政治勢力です。恩義を売りつつ首根っこを押さえ、トリニティが転覆すると不利益しかない状況を作ることで、例えば条約調印式の際に、強力かつ寝返る心配を絶対に持たない傭兵として雇えます」
こいつ何かエグいこと言い始めたな?!みたいな目で見る阿慈谷ヒフミさんは一旦スルー。どっちにせよ先生が援軍として引き連れてくるはずだから、実際には大して損しないはず。あんまりここで「いざとなったら合併するか連邦生徒会に圧力かけて委任統治学園にしたらいい」みたいな押し方すると交渉自体がまとまらないおそれがあるから言わんとして。
お、動画再生始まったっぽいな。
「御蔵さん、具体的に……は?」
「えっ、何これ凄ーい!特撮?」
「アビドス高校の事実上の生徒会長、小鳥遊ホシノさん及び生徒の十六夜ノノミさん、そして私が『アビドスの大蛇』と交戦した時の動画です」
タイムスタンプは右上に表示されてるから省略。
「確かにいい動きしてるね!」
「先ほどヒフミさんが仰ったとおり、カイザーグループの息がかかった武装勢力の攻撃を断続的に受けていますが、それもほぼ独力で撃退しています」
「ふーん、
「現在、アビドス高校が抱える借金は約11%の利率ですから、これをより低い金利でトリニティの金融機関に借り換えさせるだけで恩義を売る効果は期待できます。また、アビドス高校が存在すること自体がこのアビドスの大蛇への即応戦力にもなるでしょう」
「……ってナギサちゃん?さっきから静かだね?」
真顔になった桐藤ナギサさんの顔色を見てあわあわしている阿慈谷ヒフミさんの仕草がちょっと面白い。
「御蔵さんの提案はわかりました。もう二つ、伺いたいことがあります。この大蛇についてなぜ今の報告になったのですか?それと、他に情報はありますか?」
「そもそも他校の問題だったので、ティーパーティーに報告しようという発想が出てこなくて……。あ、装甲板を交戦した結果、回収したのですが」
いっけね~!!!現物残ってたじゃん!今度持ってくるから許してもらうしかないな。うーんこのガバよ。
「……が?」
「ミレニアムサイエンススクールに預けていまして……」
「は?」
桐藤ナギサさんの手元でぴしりと何か音がした気がする。
「入口で預けた盾がミレニアムの友人が作ってくれたものなのですが、あれの性能向上に繋がるかなと……。今度、提出します」
「あははは」
「わかりました。もう一つ。御蔵さんは、我々ティーパーティーを、いえ、トリニティを信用してくださっていますか?」
ん?何かイマイチ判らん質問やな。何?「こないだ自警団に予算認めたったやろ、建前か形式か知らんけど幹部なんやろ?自警団の礼はどうした?」的な話?
「はい。自警団がトリニティを信頼しているように、しています」
そうなると、まあこれが満額回答かな。紅茶を一口含む桐藤ナギサさん。僕もイヴちゃんも普段あんま喋らんから喉渇いたな。あ、紅茶美味い。でも僕もあんま味詳しいわけじゃないから砂糖3つ入れちゃお。
「アビドス高校への何らかのアクションについては一旦検討とさせてください。ヒフミさん、御蔵さん、ありがとうございました」
「そうだねー。すぐ決められる話じゃないし。額が額だけにね。お疲れ様」
「いえ、ナギサ様、ミカ様、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
(イヴちゃんありがとうね)
(……何の話してるかあんまりわからなかった……)
(ごめんごめん、後で説明するね)
とりあえずボールは投げたし、装甲の破片のその欠片だけ返してもらって、そのうちティーパーティーに提出するか~。優雅に礼をする阿慈谷ヒフミさんとぺこりという感じの礼をするイヴちゃん。可愛いね。
ジル(ミレニアムとの深い繋がりと、伝統的な自警団に対するティーパーティーの疑心を一切知らない)
イヴ(政治に関わった事が無い一般通過高火力生徒。何も考えてない)
桐藤ナギサ様(つまりビッグシスターにはこの大蛇の情報が早期に伝わっていて?企業に対する対応による不満からか報告を遅らせ、挙げ句「自警団をティーパーティーが信用していない程度には信用していない」という回答ということですか?)
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