ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです!   作:三山畝傍

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偉い人とのOHANASHIって疲れるね まーでも相手に花は持たせられたしヨシ

 ティーパーティーの茶室(っていうのか?)テラスからくたびれて出てきた阿慈谷ヒフミさん、イヴちゃん、とおまけのジルです。近衛の人に許可をもらって盾と銃2丁を持ち上げて礼をして退出。したところで先生と遭遇した。ここで会う機会本当に多いな。

「"や、ヒフミ、イヴ、こんにちは。2人とも、また後でね"」

 ぺこりとお互い頭を下げて一言二言かわしてすれ違う。後で会うし、先生もティーパーティーのお偉方も予定詰まってるだろうしね。

 

 阿慈谷ヒフミさんがティーパーティー本部の建物を出てから周りを見て口を開く。

「その、大丈夫ですか、イヴさん」

「……何が、ですか……?」

「えっ、いえ、結構厳しいことを聞かれてませんでしたか……?」

 えっそう???割と普通なことしか聞かれなかったような……?イヴちゃんも首を傾げる。

「……そうでしょうか……?」

「え、ええ~……私の勘違いですかね……。あれは明らかにイヴさんに釘を刺していたような……。でも確かに、ナギサ様がそんな、生徒を、それも自警団の幹部だなんて重要な人にそんなこと言うはずない、ですかね……?

 ぶつぶつ呟いて納得したらしい阿慈谷ヒフミさん。疑うって何のことだろう。自警団をたぶん軍事的、組織的管理の都合上で一本化したそうだからその辺?自警団の独自性を維持したい守月スズミさんには正直悪いけど、資源的な意味では確かに一本化した方がいいし、僕もイヴちゃんもそこは別にどっちでもって感じなんだけどなあ。補助団体化の言い出しっぺとしてはよっぽどの事が無いと自警団一本化に賛成です!って言い辛いけど。

 っていうか完全にもう自警団の偉いさんポジションになっちゃってるんだよなあ。自警団の子達、所属意識も薄めで事務とか代表とかやりたがらない上に言い出しっぺがやってねって押しつけられたに近い状態なのでちょっとウケる。

(……何だろうね……?)

(わからないなあ。企業っていうかカイザーか、自警団絡みくらいしか思いつかない)

「いえ、私の気のせいかもしれません。イヴさんが疑われるようなことなんて……あ、あはは……昨日のこととか……?」

「……それならヒフミさんの方が……」

「うっ……ば、バレませんように……」

 苦笑いする阿慈谷ヒフミさん。まあバレちゃうはずなんだけど。監視カメラは闇銀行から逃走経路まで全部先生がハックしててくれたから、うん、まあ普通に制服だしな……。

 さっきの話はそれで終わり、予定より1時間ほどあったので、阿慈谷ヒフミさんに断って図書館に行くことにしたが、一緒に着いてきてくれるらしい。

「図書館、モモフレンズの本も結構置いてあるのですよ」

 またかよ。っていうか置いてあるんだ……。

「私が半分くらいリクエストしたものですけどね」

「……おお~……」

 ふふん、とドヤ顔をする阿慈谷ヒフミさんと感心するイヴちゃん。いや確かに凄い。凄い女だ……。

 

 今日も図書委員は円堂シミコさんだった。来訪に嬉しそうにしてくれるとこっちも嬉しいね。

 モモフレンズの本の新刊が入っていたらしく、阿慈谷ヒフミさんは挨拶だけして新刊を取りに行き、爆速で確保して戻ってきた。

 イヴちゃんと代わってもらって(原紙は家に置いてきた)例のナイフのおまけについてきた説明書のスキャンデータを表示したスマフォを円堂シミコさんに見せる。

「うーん……これは、多分ですけどウガリット語ですかね……。死語なので私はちょっと……。多分、委員長は読めると思いますが、何日か『誰も古書館に入れるな』とことづかっていて……」

 別に急ぎはしないんだけどどうしようかな。とりあえずデータだけ送っておこう。読めないにしても面白がってくれるかもだし。

「シスターフッドの方なら読めるかもしれませんね。お役に立てずごめんなさい」

「ありがとうございます。今度寄ってみます」

 首を振ってから謝意を伝えた。どうせ大聖堂は行かないといけないし丁度いいや。今日は無理だろうけど。

 

 モモフレンズ本を速攻で借りる手続きを済ませて抱えてうきうきの阿慈谷ヒフミさんとカフェへ。阿慈谷ヒフミさん激推しらしく、迷わず案内してくれた。常連らしい阿慈谷ヒフミさんは注文をそもそも取られなかったけど、コーヒーアートでペロロの絵が描かれたエスプレッソ。イヴちゃんは安定のアイスココア。アートの出来映えが良くて、なるほどこれで通ってるのか……となった。阿慈谷ヒフミさんが一言断ってスマフォを出して写真を撮ってから、モモトークで先生に場所を伝えたらしくスマフォをしまう。

「……その本は……」

「これはですね!去年秋のモモフレンズイベントの写真集とデザイン資料集でして!デザイナーさんや演出さんのインタビューなども盛りだくさんなんです!実は家にもう2冊あるのですけどあまりにいい本なのでつい皆さんに読んでもらいたくなってついリクエストしてしまいました!あ、このページのペロロ様の写真が」

 早口過ぎる!何かのスラッシュメタルかラップかと思ったわ!ほげ~~~ってなったけど、イヴちゃんは大丈夫(?)らしい。しんどそうなら代わるつもりだったけどよかった。そもそもあんま判ってないのかもしれないけど。

 

 急流のごとく怒濤のように流れるモモフレンズトークを聞いている間に先生がやってきた。合流してすぐ頭を下げる先生。

「"この間はごめんね。アビドスのあの子達のためには君達の力が必要だと思って、君達の答えをちゃんと聞かないまま話を押し進めてしまって"」

「先生、顔をあげてください。私は別に、約束してしまいましたし……キヴォトスでは、約束、契約は絶対ですから。まあ、大変でしたけど……あはは……」

「……カイザー嫌いだから、カイザーのためにならないなら、大丈夫……」

(それにあいつら銀行ったって金融業務やってるだけの犯罪者だもんね)

(……うん……)

 キヴォトスでは暴力は正義だし、舐められたら○すのがキヴォトス人のお作法だしな。いわば野盗の類をタコにして違法に集めたお宝没収しただけだし。むしろもっと分捕ってブラックマーケットの中で撒いたらよかったかな。道義的には金だけ返しても良かったけど……あー駄目か、帳簿目当てなのがバレるな。

「"生徒のやりたいことを応援するのは大事だけど、言葉を尽くして、無理強いもさせないようにしないと。調子に乗りやすい自覚はあったつもりだったのだけど。反省してる"」

 まず張り倒してから話を聞かせるキヴォトス仕草に先生が爆速で染まっちゃってる方が心配なんだけどなあ。暴力装置の間接化、例えば銃の普及は暴力を振るうハードルを下げるという心理学者の説はキヴォトス人を見てたら正しいっぽいし、手榴弾の信管より気が短いキヴォトス人相手には実際これくらいしか手段がないのも判らんでもないが。あと多分先生、前世の僕より若いだろうし……。

(あ、イヴちゃん、今先生とお話したいことある?)

(……急ぎでは、特には……)

(ちょっと先生に教職経験あるか聞いてみて)

 まあ僕が知りたいだけで深い意味はないんだけど。

「……先生は、その、教職の経験は……?」

 先生は首を横に振った。

「"教員免許は持ってるし教育実習はもちろんしたけどね。元々はただの会社員だよ。今思ったけど、キヴォトスでも有効なのかな……"」

「意外です。先生は何というか、場慣れしている雰囲気がありました」

 同意して頷くイヴちゃん。いやあ、とかぶりを振る先生。

 先生が来たときに頼んでいたらしいレモネードのソフトクリームフロートが来た。あれも美味しそうだな。

「"いや、正直なところ、こんな銃弾飛び交う中での仕事は初めてで、はは……"」

 やらかしちゃったなーって思ってちょっと弱気になってる感じなのかな。仕事の量は激減してるけど、心理的な負担はあんまり代わってないのかもしれない。

「……困ったら、いつでも呼んでください。私、シャーレの部員なので……」

「トリニティに関することなら、私も少しは力になれるかもしれません」

「"2人ともありがとうね。あ、お詫びってわけじゃないけど、お土産"」

 先生が明らかに今開けてねって感じなので開ける2人。

「ありがとうございま」

 あっ、阿慈谷ヒフミさんが謎の高周波を出して固まっちゃった。ムンクの『叫び』みたいな顔芸してるけど。先生の制服を着たモモフレンズのチャーム一式を持って硬直している。

「"連邦生徒会ビルの新しいお土産で、シャーレの制服を着たモモフレンズのグッズを出すらしくて、試供品を複数セットもらったから……ヒフミ、大丈夫……?"」

「こ、こんな、こんないいものをもらっていいのですか……?」

 エスプレッソを爆速で飲み干し立ち上がる阿慈谷ヒフミさん。

「先生!ありがとうございます!!こんな貴重なもの、今持っていて銃撃戦に巻き込まれたりとか何かあったら困るので、すぐ帰って保管します!また!!!!」

 代金を払おうとして先生が会計済だと聞いて、お礼を言って走り去っていく阿慈谷ヒフミさん。山岡はんの鮎はカス!!!!って言い出さないか心配なレベルだったわ。こわ~~。

「"あ、うん。そんなに喜んでくれたら嬉しいよ……"」

「……これは……」

 イヴちゃんもぷるぷるしている。何?何もらったの?えー何だこれ。

「"この間、シャーレに営業に来た業者さんが紹介してくれた新製品なんだけど"」

 う、うわ~~!USB延長ケーブルナポリタン*1じゃん!!こっちにもあるんかよ!!!うわ~USB2.0*2だ!!イヴちゃんはニコニコでめちゃめちゃ写真を撮っているけど、まず宇沢レイサさんグループにナポリタン写真を送ってから、先生とナポリタンを持って映った写真をモモトークで先生宛に送って満足したらしい。

「……凄く、嬉しい……先生、ありがとうございます……!」

 イヴちゃんの喜びが言葉からも意識からもばりばり伝わってくる。

「"うん、喜んでくれてよかった"」

「……食品サンプルが好き、って言ったの、覚えててくれたんですね……」

「"すごく生き生きしてたからね"」

 自分で言うくらいだし先生めっちゃ調子に乗りやすい人ではあるっぽいから改めて「先生にとっての正義って何?」みたいな事を聞いて追い釘刺そうか悩んでたけど、この状況では無いかな~。釘刺して先生の判断が鈍ったら困るって悩んでたし、うん、先生にはこう……何か良い感じで、高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処してもらおう。キヴォトスの歴史がまた一ページ。 

*1
フォークで持ち上げられたナポリタンスパゲティのサンプルがUSB延長ケーブルになってるやつ。食品サンプル代が大半を占める

*2
古い規格で転送速度が遅い




 阿慈谷ヒフミさん自身もトリニティ上層部仕草(嫌味でない)を身につけているので、何らかの理由があってとぼけているのか、まさか気付いてないのはあり得ないよなと考えながら、今さっきのあからさま過ぎる警告を自分が繰り返すのは敵対表明に近いと判断し深くツッコまないようにしています。
 先生が調子に乗っちゃうエピソードンは今後出します。足ペロ以外のも。

 トリニティ仕草が難しすぎるのでマックス・ヴェーバーの『職業としての政治』を読み返してちゃんと勉強して書きたい今日この頃。時間が無いのですが…。
 明日は労役、病院3軒ハシゴに追加の所用があるので恐らくお休みです。

 評価、感想、ここすき、お気に入り、しおり有難う御座います。皆様の反応が書き続ける力になります。
 赤帯大変有難い。励みになります。嬉しい。
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