ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
今日は昨日決意したとおり普段より少し早く起きた。イヴちゃんは朝あまり強くないのでまだ寝ている。身支度と着替えをしてパンが焼き上がって食べる直前にイヴちゃんを起こした。今日はトーストにコケモモジャムを塗って食べる。
(……酸っぱい……けど、美味しい……)
(よかった。お肉につけても合うらしいから今度試してみよう)
(うん……)
イヴちゃんは魚のほうが好きだけど肉も嫌いではない。どんどん食べて大きくなってね。身長全然変わってないけど。体重は筋肉が増えたから割と、いややめておこう。イヴちゃんの可愛さ自体は進化し続けてるからね。
いつものお出かけ前の鏡の前チェックをしてから、調整しておいたドアノブを5mmほど下げて、ドアの蝶番にシャーペンの芯を挟む。別に新世界の神になったりしたいわけじゃないが。
(……ジル、何……?)
(防犯対策だよ。帰ってきたら芯を抜くの忘れないようにしないとね)
(……勝手に誰かが入ったら、芯が折れる……?)
(そうそう。めちゃくちゃどうでもいいけど、ビリケンって100年くらい前の近代ゆるキャラ(?)らしいね)
(???? ふーん……?)
ビリケンの写真イメージまで出したけどイヴちゃん的にはそんな興味ないらしい。まあそらそうか。キヴォトスで1回しか見たことないしな。キヴォトスにも伝播してること自体はすげーんだろうけど。つーか
ちょっとだけ早めに着いたけど、別に普段と大して変わることはもちろんなく、昼休みを迎えて、今日は宇沢レイサさんの周りの席の子が外に食べに行くらしく、了解をもらって机と椅子を借りてご飯を食べることになった。席を準備してもらっている間にいつものパン屋へ行ってさらっと買って戻ってきた。今日のお昼ご飯チョイスはイヴちゃんの番で、みんなのためにパンと飲み物を買ってきたのだ。皆の定番1つと普段から外したものを2つずつ(
「……おまたせ……」
「ありがとうイヴちゃん」
「イヴちゃんの選んでくれたパン、楽しみですね!」
「私のはどうせみんなの分を取るから少なめなチョイス、わかってるね~」
「もー、やるから無理に取ろうとしないで!イチゴ落ちる!」
「イチゴをおくれよぉ~ソフノちゃんよ~。あとそこのパインもおくれ~」
「端っこのちっこいやつならあげるよ」
「……私のチョコチップメロンパンもちょっとあげる……」
「じゃあ私の焼きそばパンもどうぞ」
とわいわいやっていると、後ろから声を掛けられた。
「御蔵イヴ」
「……何?……」
下江コハルさんだ。小首を傾げるイヴちゃん。
「あなた、次のテストは2年のを受けるって本当?飛び級するの?」
「……うん、受ける。飛び級はしない……」
特に隠してなかったし、気の早い子はもうどのテスト受けるか決めたり話したりしてるから話が伝わったんだろう。
「そう。私もあなたと同じテスト受けるから。実力テストも、期末テストもね」
びしっと言い切る下江コハルさん。
「……『僕は君に挑戦する。そして抹殺する』……って、やつ……?」
「抹殺はしないけど?!」
えっちじゃないから死刑じゃないのか?何だと?イヴちゃんに魅力が無いってやつは○す。でもイヴちゃんを性的な目で見るやつも○す。
と僕が脳内でセルフ反復横跳びしていると、おずおずと
「あの、下江さん。イヴちゃん、実力テストからは3年のを受けるって……」
「ミ゜」
完全に硬直した下江コハルさんに何かあわあわする宇沢レイサさん、にやにや笑う報野モユルさん。ふーん、っていう顔のイヴちゃん。あれ、下江コハルさんって何か謎に上の学年のテスト受けて事故ってなかったっけ?別にゲームとこっちの現実が一致してるとは限らないから、普通に高成績の可能性も全然あるけど。ほんまか?ともあれ前言撤回する気はないらしい。
今日は大聖堂に1人で行くつもりで話していたら、一緒に行こうという話になり、陸上部がある朝吹ソフノさん以外の3人で大聖堂に放課後行くことになった。
「授業以外で初めて行くね~、大聖堂」
「私もです!」
「……考えてみたら私も……ん、何……?」
のだが途中で6人の生徒に囲まれた。反射的に2人の一歩前に出る宇沢レイサさんと、射線から報野モユルさんを庇う位置に動くイヴちゃん。格好良い。
しかし相手は全然荒事慣れしてなさそうだし、並の不良ならかすりもしないこの2人に喧嘩売る雰囲気の顔触れではない。そもそも銃も構えてないけど何だろう。
「やっと見つけました!」
「もう逃がしませんよ!」
「全くふらふらと……」
「な、何事ですか?」
「……やる……?」
宇沢レイサさんとイヴちゃんが銃と盾を構えると、慌ててリーダー格らしい子が両手をあわあわ振る。
「何でですか?!やりませんよ?!」
「私達は報野さんを迎えに来ただけです!」
は?と報野モユルさんを見る2人、と囲んだ6人。
「え~、見逃して欲しいな~」
「駄目です!部活の活動費を使った分、ちゃんと出席をしないと。純文学部は出席率も報告しているのですから」
「来たら来たで楽しそうではないですか」
「それに昨日と一昨日『明日は行くね~』『明日こそは行くね~』ってモモトークに書いてました!」
「ちゃんとカッコ気が向いたらって書いてたよ~」
「……あの、あなた達は……?」
「失礼しました。我々は純文学部、私は副部長を務めています。報野モユルさんと同じ部活です」
「なんか行くまでがダルいんだよね。めっちゃ面倒くさい場所にあるし。帰り遅くなるのも面倒くさいしさ~。っていうか副部長までわざわざ迎えに来たわけ?」
完全にしらーっとした目で見ている全員。ちょっと汗をかきながらもへへへ~って笑うこの子、もうすげえよ、大物だ。っていうか1回も出席してなかったんだ……。
「構いませんか、お連れしても?」
(間違いなさそうだけど、一応本人に確認しとこう。良い感じでこっそりね)
(うん……)
盾を地面に置いてから、小さく飛び上がるように報野モユルさんに抱きついて耳元で囁くイヴちゃん。あっ、宇沢レイサさんが真っ赤になりながら羨ましそうなちょっと悔しそうなすげー顔してる。
「……どうしても嫌だったりしたら、一緒に逃げるけど……」
うーん、と上を向いて考えながら、宇沢レイサさんにちょいちょい手招きし、寄ってきた宇沢レイサさんを抱き寄せて女子高生団子を作る報野モユルさん。
「……顔出してないのは確かなんだよね……。他の子がいたら安心だし、行くかあ~」
「あっ、あの、モユルちゃん、晩ご飯はどうします?」
宇沢レイサさんが銃を完全に手から離して遠慮がちに抱きつきつつ、他の6人にも目線をやったうえで報野モユルさんに尋ねる。
「今日は純文学部のメンバーが全員揃うので、できればモユルさんは夜もお預かりしたく」
「……そういうことなら、しょうがない……。じゃあまた明日ね、モユルちゃん……」
「お2人もぜひ一度覗きに来てください。モユルさんのお友達なら歓迎しますよ。部活棟の不便な場所ではありますが」
「はいっ!ありがとうございます!」
こくこくと頷く2人。
あ~やっぱめんどいよ~と嘆きながら純文学部一同に引きずられて行く報野モユルさんのスカートのポケットに飴ちゃんをいくつかイヴちゃんがねじ込んでから*1見送り、気を取り直して大聖堂へ向かう。おばちゃんみたいだけど、報野モユルさんは甘味があると比較的きびきび動けるので正しい配慮。
大聖堂に入ると、奥の方でシスターフッドの人達と、他に一般生徒で1、2人祈りを捧げている人達がいた。
うおでっか……固定資産税いくらかかってんだろ……いやトリニティ内の公共施設だからかかってないだろうけど。他のトリニティの施設に負けず劣らず古びているが気品があって美しい建物だ。ステンドグラスもまさに信仰と美と経済力みたいな三位一体性を感じ……ってまあミサの授業があるから普通に来てるんだけど。でも何回見てもすげーなって思う。
入口で受付?をしていた伊落マリーさんがてってっとかけてくる。毎日教室で見かけるのにいつもめっちゃ可愛いし清楚なのに謎の色気があるし獣耳ずるいよなあ。多分本拠地なので地形ボーナスも入っている。まあイヴちゃんも負けんが。
お祈りしている人がいるからだろうが小声で、でも嬉しそうに挨拶してくれる伊落マリーさん。
「宇沢さん、御蔵さん、こんにちは」
「はい、伊落さん、こんにちは」
「……こんにちは……」
よかった、宇沢レイサさんがめっちゃ大声で元気な挨拶しなくて……。ちょっとずつ成長しているのを感じて何だか嬉しい。後方保護者面どんだけすんねんって感じだが。
「とても素晴らしいことです。ささ、お2人もぜひ、祈っていってください……」
「何だか、緊張しますね」
ちょっと固くなった宇沢レイサさんにくすりと微笑む伊落マリーさん。
「授業でも来ておられるでしょう?いつもと同じでだらけたりしなければ大丈夫です」
「……そういえば……」
そういえばて。イヴちゃん、本当関心ないなあ。まあ僕も正直結構下心っていうか、保険かける用途で来てるから純粋な信仰とは程遠いんだけど。あーいかんいかん。下心はありつつも、せっかく来たんだから真面目にやらんとな。 ささやき えいしょう いのり ねんじろ!
聖書もちゃんと読み返さないと。読むべきものばかりが溜まっていく今日この頃。時間が無限に欲しいです。
同じ話(ちょっとだけ細部が違う)を2話投稿してしまいました…済みません。
担当者はケジメし西に向かいましたのでご安心ください。
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赤帯大変有難い。励みになります。嬉しい。