ハッピーエンドさんが好きです!でも家主さんがもーっと好きです! 作:三山畝傍
偵察と観測をしていた自警団の子は正面戦闘に加入しなかったからパトロールを続けるらしく現地でお別れだった。うーん勤勉。
正義実現委員会の後片付けをする子達に一言断ってから、撤収する子達に混じって帰りもくそうるさいトラックに乗せてもらって、正義実現委員会本部でシャワーを浴びて汗を流してから牛乳を飲む。宇沢レイサさんはイチゴミルク、イヴちゃんはコーヒー牛乳。静山マシロさんと下江コハルさんは普通の牛乳だ。正義実現委員会の売店で売ってる牛乳、無調整のもあって美味しいんだよね。
寡黙な顔触れが多いのと、宇沢レイサさんは人見知りが発動しているらしく居心地がちょっと悪そう。下江コハルさんも何だかもじもじしている。
「さっきはお手伝いありがとうございました」
牛乳を飲み終えた静山マシロさんがくつろいだ顔で言う。
「いえいえ、トリニティのためですから!」
「……うん……」
ちょっと硬いけど笑みを浮かべる宇沢レイサさん。こくこく頷くイヴちゃん。
「あっ、イヴちゃんはこの後どうします?」
「……大聖堂、かな……」
「あー……」
「シスターフッドにご用事があるのですか?」
「……ううん、お祈り……」
「おお~」
「私は一緒に行ったら寝てしまったので、晩ご飯の時に合流しましょう」
「眠くなりますよね……」
「ですよね!」
「……なる……」
大聖堂というかミサの授業、滅茶苦茶眠くなるよねって話で盛り上がる2人。意外なところで打ち解けたみたいで良かった。下江コハルさんは会話に参加しようとしてるのか、手元のスマフォと周り3人を見てはもじもじしていたけど、ちょっと声をかけるタイミングがなかったな……。
1年生の正義を実現する者同士だしとモモトークのアカウントを交換した。一応、下江コハルさんも教えてくれたけど渋々って感じだったし大丈夫かな。ずっともじもじしてたのも聞けなかったし、大丈夫かな。
まあ別に今すぐどうこうって話でもないだろう、多分。とりあえずお祈りしにいこう。今日こそは例の取説の話も聞かないとね。っと、その前に一旦お家帰ろう。宗教的にヤバいとか万が一の事があったらナイフ没収されるかもだし、僕が買っておいた予備のと交換しとこ。あと、タダでお願いするのも何だし差し入れにクッキー買っておいたからこれ持っていこう。
今日は1人でお祈りを終えて(イヴちゃんはもちろん寝たし疲れてるだろうから起こしてない)、この間より人が気持ち少ない大聖堂の中で、伊落マリーさんと小声でお話しつつ、差し入れを渡す。
「シスターフッドの方ならどなたか、読めるかなと思いまして」
「あっ、御蔵さん、差し入れありがとうございます。それと、うーん、この文字ですが、私はちょっと、読めませんね。ごめんなさい。ですが、先輩方ならわかるかも。シスターヒナタがあちらにいらっしゃるので、聞いてみましょう」
伊落マリーさんがしずしずと近づいていって声をかけると、びくりと座っていた子が跳ね上がった。え、寝てた?イヴちゃんも寝てたから特に何かいうつもりはないけど。いやシスターなのにええんかな。結構大きな音を立てて駆け寄ってくる豊かな黒髪のデッッなシスター。若葉ヒナタさんだな。
「は、はじめまして!若葉ヒナタです!」
声デカいっす。思わずきょろきょろ辺りを見回してしまった。皆慣れてるのか特に反応してないけど。伊落マリーさんは苦笑いしている。僕はスマフォにナイフの取説を表示して渡す。
「御蔵イヴと申します。あの、ナイフにこんな説明書がついてまして……」
「うーん……『神聖……力……断つ……銀にして……』」
おおー、さすがだ。読めるんだなあ、って感動したのもつかの間。ちょっとしょんぼりした様子で若葉ヒナタさんは言う。
「私にはちょっとわからなさそうです。シスターサクラコに尋ねてみましょう」
えっ嘘でしょ。まあ見た目ほどヤバい人じゃないらしいしええか……。まだ顔合わせた事無いよな。
伊落マリーさんが呼んできてくれるとのことで大聖堂の中で待つこと15分くらい。若葉ヒナタさんは別口の用事があるからと退出したから手持ち無沙汰で、待ち時間ももったいないしスマフォとか触ってるのもあんま見目良くないなと思って祈っていると後ろから足音と威圧感が近づいてきたので目を開いて立ち上がる。あ、イヴちゃんが起きた。
振り返るとシスの暗黒卿、もとい、歌住サクラコさんが立っていたので頭を軽く下げてアイサツする。後ろに伊落マリーさんが控えてくれている。笑顔なのに何かすごい謎の圧を感じるな。
「御蔵イヴさんですか?お待たせしました。歌住サクラコです」
「いえ、こちらこそ、お忙しいのにありがとうございます」
「いえいえ、
(……何だか、怖い人……)
(怖くない人だよ。多分……。まだ僕が喋ってた方がいい?)
(……怖いから、お願い……)
真面目でいい人のはずなのに、何か僕も自信なくなってきた。恐る恐るという感じでスマフォを渡してしまう。あっ、そうか、この人のニンジャソウル、
鋭い目(と僕からは見える)で文字を読んでいく歌住サクラコさん。
「どれどれ……。『この短剣は、「聖なる銀と鋼」です。注意。己を傷つける可能性。主な構成材料は、鉄、銀、
まじで単なる取説なのか。思ってた以上にしょうもなかった。専用砥石は探しようがないだろうし、まあ良いだろう。
「『獣、悪霊、妖異にも極めて有効性があることが当社の実験により証明されています』。他はほとんど同じメーカーの宣伝のようですね。
「ありがとうございます。いえ、結構です」
イヴちゃんはぷるぷるしてる。可愛い。いや僕も割と怖なってきたわこの人。
獣はまあわかる。いやこれ本当に普通の獣?獣の病にかかった人とかじゃない?あと、悪霊に妖怪?あーいや、おるな、この世界。なんか……
(……オバケに……効くんだ……?)
(イヴちゃん、今度夜中に机を海に燃やしに行くときとかさ)
(行かない)
(はい)
行かないか~。秒で即答だったな。まあ僕も現実のオバケと遭遇したいかっていうとそこそこ遠慮したくはあるんだけども。でもどうせ遭遇する羽目になりそうだからなあ。
「差し入れもありがとうございました。
「お忙しい中、助かりました。もちろん、伊落さんはクラスメイトですから」
「御蔵さん、また明日」
「そうだ、伊落さん、今度、お昼を一緒にいかがですか」
いつもシスターフッドの人達と食べているみたいだから割と社交辞令のつもりだったのだけれども、伊落マリーさんの表情が明るく輝いた。
「はい、ぜひ!」
意外な食いつきだったな。でも、友達増えるに越したことないしこれはもっけのハッピーやね。他の3人は別にアカンとは言わんだろうけど、最悪2人で食べることも選択肢に入れとこ。僕はぷるぷるしてるイヴちゃんを宥めながら大聖堂を辞去した。
サクラコ本人には一切含むところがないので、傍点はジルの主観で振られています。何も深い意味はありません。
サクラコさん「続きを読みますか?」(続きも同じようなことしか書いてないけどご興味があるなら読みましょうか?の意味)
サクラコさん「祈る方を歓迎します」(祈る方を歓迎します、の意味)
サクラコさん「マリーのこともよろしく」(マリーは可愛い後輩なので是非仲良くしてあげてくださいの意味)
ジル・イヴ「コワイ!」
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最近滅茶苦茶忙しくて書く速度下がってますが頑張ります。